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2005年10月31日

最新掲載記事(週刊東洋経済)

舩越園子の最新掲載記事は、
10月31日発売の週刊東洋経済でご覧いただけます。

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2005年10月26日

最新掲載記事(ライブドア第7回)

舩越園子の最新掲載記事(ライブドア 生ゴルUSA 第7回)は
下記でご覧いただけます。

http://sports.livedoor.com/magazine/list?magazine_id=25

最新掲載記事(ライブドア第7回)

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最新掲載記事(ライブドア第7回)

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ゴルフカートの運転手

アメリカのシニアツアーであるチャンピオンズツアーでは、昨年まで試合におけるカート使用が許可されていた。今年からはカート使用が禁止になり、足腰に故障をもつ選手たちが訴訟を起こす事態に発展している。

それはさておき、10年ほど前、チャンピオンズツアーに初めて取材に行って、とても驚いたことがあった。当時はもちろんカートが使われていたのだが、ふと見ると、有名選手が自分でカートを運転し、キャディはその横にちょこんと座って、「ら~くらく」という表情だったからだ。普通に考えれば、ラウンド中に選手を助けるべきキャディがふんぞり返り、選手に運転させているなんて、おかしいではないか。だが、あっちを見てもこっちを見ても、大抵の場合、選手が自らハンドルを握っており、なんか変だなあと首を傾げたものだ。それ以来、同じような光景を目にしても、それが当たり前なのだろうと思って、気にも留めなくなっていた。だが、ここ最近、その疑問が再び浮上した。

シニアではなくレギュラーツアーの米PGAツアーでも、選手のカート使用を目にすることがある。もちろん試合中ではないが、複数のコースを使用する試合の場合は練習日にカート使用が許されることがあるのだ。その1つ、フロリダ州オーランドで開催されたフナイクラシックは、マグノリアコースとパームコースの両コースを使うため、練習ラウンドの時間をセーブするためにカート使用が許される。

で、その練習日、あのビジェイ・シンがキャディを横に座らせ、自分で運転している姿を発見した。あのビジェイも自分で運転するのか、と思ったら、かつての疑問がどんどん膨らみ始め、周囲を見回した。すると、やっぱり選手が運転するパターンのほうが圧倒的に多いことがすぐにわかった。なぜキャディではなく選手が自ら運転するのだろうか。

運転するシン.jpg
ゴルフの練習も、カートの運転も、どちらも楽しそうなシン。
Photo/JJ Tanabe

そう思いながらテクテクとコースを歩いていたら、後ろからカートでやってきたクレッグ・バーローのキャディが「乗っていくかい?」と声をかけてくれた。「いいの?ラッキー!」と飛び乗り、このときとばかりに疑問をぶつけてみた。「あなたは、いつも自分でカートを運転するの?それとも選手が運転するの?」キャディの答えは、こうだった。「いや、運転するのは選手のほうだ」

どうしてなのだろう?「オレはイギリス人なんだけど、ヨーロピアンツアーでは、普通はキャディが運転して選手は横に座る。でも、アメリカツアーでは、選手が運転したがるんだよ」「なぜ?」「さあ、なぜだろう。たぶん、アメリカ人だからだろうなあ」「なるほど~」

そう答えたものの、何が「なるほど」なのか、よくわからない。ただ、「アメリカ人だから」という言葉に一理あるのは確かだ。個人主義のアメリカ人。合理主義のアメリカ人。自由を求めるアメリカ人。自分で運転したほうが、好きなときに好きな方へ好きなスピードで行けるし、好きなときに好きなところで止まれるし、だから人に頼むより運転するほうがいいということ。そのほうが選手にとっては自由だということ。キャディは選手に雇われているわけだけど、雇用主の選手がカートを運転してはいけないなんて誰が決めた?‥‥というところだろうか。

同乗する宮里.jpg
今年の米LPGA・QT1次予選での風景。藍ちゃんも、カートの運転には慣れている。
Photo/JJ Tanabe

ビジェイはアメリカ人ではなくフィジー人。だが、アメリカ生活が長く、すっかりアメリカナイズされているビジェイは、考え方もアメリカンになっているに違いない。そう言えば、アーノルド・パーマーの大会であるベイヒルインビテーショナルでは、パーマーが自らカートを運転して会場内を行き来する姿を毎年、見かける。キングでさえ、自分でカートを運転する--アメリカとは、そういう国なのだ。

舩越園子

ゴルフカートの運転手

アメリカのシニアツアーであるチャンピオンズツアーでは、昨年まで試合におけるカート使用が許可されていた。今年からはカート使用が禁止になり、足腰に故障をもつ選手たちが訴訟を起こす事態に発展している。

それはさておき、10年ほど前、チャンピオンズツアーに初めて取材に行って、とても驚いたことがあった。当時はもちろんカートが使われていたのだが、ふと見ると、有名選手が自分でカートを運転し、キャディはその横にちょこんと座って、「ら~くらく」という表情だったからだ。普通に考えれば、ラウンド中に選手を助けるべきキャディがふんぞり返り、選手に運転させているなんて、おかしいではないか。だが、あっちを見てもこっちを見ても、大抵の場合、選手が自らハンドルを握っており、なんか変だなあと首を傾げたものだ。それ以来、同じような光景を目にしても、それが当たり前なのだろうと思って、気にも留めなくなっていた。だが、ここ最近、その疑問が再び浮上した。

シニアではなくレギュラーツアーの米PGAツアーでも、選手のカート使用を目にすることがある。もちろん試合中ではないが、複数のコースを使用する試合の場合は練習日にカート使用が許されることがあるのだ。その1つ、フロリダ州オーランドで開催されたフナイクラシックは、マグノリアコースとパームコースの両コースを使うため、練習ラウンドの時間をセーブするためにカート使用が許される。

で、その練習日、あのビジェイ・シンがキャディを横に座らせ、自分で運転している姿を発見した。あのビジェイも自分で運転するのか、と思ったら、かつての疑問がどんどん膨らみ始め、周囲を見回した。すると、やっぱり選手が運転するパターンのほうが圧倒的に多いことがすぐにわかった。なぜキャディではなく選手が自ら運転するのだろうか。

運転するシン.jpg
ゴルフの練習も、カートの運転も、どちらも楽しそうなシン。
Photo/JJ Tanabe

そう思いながらテクテクとコースを歩いていたら、後ろからカートでやってきたクレッグ・バーローのキャディが「乗っていくかい?」と声をかけてくれた。「いいの?ラッキー!」と飛び乗り、このときとばかりに疑問をぶつけてみた。「あなたは、いつも自分でカートを運転するの?それとも選手が運転するの?」キャディの答えは、こうだった。「いや、運転するのは選手のほうだ」

どうしてなのだろう?「オレはイギリス人なんだけど、ヨーロピアンツアーでは、普通はキャディが運転して選手は横に座る。でも、アメリカツアーでは、選手が運転したがるんだよ」「なぜ?」「さあ、なぜだろう。たぶん、アメリカ人だからだろうなあ」「なるほど~」

そう答えたものの、何が「なるほど」なのか、よくわからない。ただ、「アメリカ人だから」という言葉に一理あるのは確かだ。個人主義のアメリカ人。合理主義のアメリカ人。自由を求めるアメリカ人。自分で運転したほうが、好きなときに好きな方へ好きなスピードで行けるし、好きなときに好きなところで止まれるし、だから人に頼むより運転するほうがいいということ。そのほうが選手にとっては自由だということ。キャディは選手に雇われているわけだけど、雇用主の選手がカートを運転してはいけないなんて誰が決めた?‥‥というところだろうか。

同乗する宮里.jpg
今年の米LPGA・QT1次予選での風景。藍ちゃんも、カートの運転には慣れている。
Photo/JJ Tanabe

ビジェイはアメリカ人ではなくフィジー人。だが、アメリカ生活が長く、すっかりアメリカナイズされているビジェイは、考え方もアメリカンになっているに違いない。そう言えば、アーノルド・パーマーの大会であるベイヒルインビテーショナルでは、パーマーが自らカートを運転して会場内を行き来する姿を毎年、見かける。キングでさえ、自分でカートを運転する--アメリカとは、そういう国なのだ。

舩越園子

ゴルフカートの運転手

アメリカのシニアツアーであるチャンピオンズツアーでは、昨年まで試合におけるカート使用が許可されていた。今年からはカート使用が禁止になり、足腰に故障をもつ選手たちが訴訟を起こす事態に発展している。

それはさておき、10年ほど前、チャンピオンズツアーに初めて取材に行って、とても驚いたことがあった。当時はもちろんカートが使われていたのだが、ふと見ると、有名選手が自分でカートを運転し、キャディはその横にちょこんと座って、「ら~くらく」という表情だったからだ。普通に考えれば、ラウンド中に選手を助けるべきキャディがふんぞり返り、選手に運転させているなんて、おかしいではないか。だが、あっちを見てもこっちを見ても、大抵の場合、選手が自らハンドルを握っており、なんか変だなあと首を傾げたものだ。それ以来、同じような光景を目にしても、それが当たり前なのだろうと思って、気にも留めなくなっていた。だが、ここ最近、その疑問が再び浮上した。

シニアではなくレギュラーツアーの米PGAツアーでも、選手のカート使用を目にすることがある。もちろん試合中ではないが、複数のコースを使用する試合の場合は練習日にカート使用が許されることがあるのだ。その1つ、フロリダ州オーランドで開催されたフナイクラシックは、マグノリアコースとパームコースの両コースを使うため、練習ラウンドの時間をセーブするためにカート使用が許される。

で、その練習日、あのビジェイ・シンがキャディを横に座らせ、自分で運転している姿を発見した。あのビジェイも自分で運転するのか、と思ったら、かつての疑問がどんどん膨らみ始め、周囲を見回した。すると、やっぱり選手が運転するパターンのほうが圧倒的に多いことがすぐにわかった。なぜキャディではなく選手が自ら運転するのだろうか。

運転するシン.jpg
ゴルフの練習も、カートの運転も、どちらも楽しそうなシン。
Photo/JJ Tanabe

そう思いながらテクテクとコースを歩いていたら、後ろからカートでやってきたクレッグ・バーローのキャディが「乗っていくかい?」と声をかけてくれた。「いいの?ラッキー!」と飛び乗り、このときとばかりに疑問をぶつけてみた。「あなたは、いつも自分でカートを運転するの?それとも選手が運転するの?」キャディの答えは、こうだった。「いや、運転するのは選手のほうだ」

どうしてなのだろう?「オレはイギリス人なんだけど、ヨーロピアンツアーでは、普通はキャディが運転して選手は横に座る。でも、アメリカツアーでは、選手が運転したがるんだよ」「なぜ?」「さあ、なぜだろう。たぶん、アメリカ人だからだろうなあ」「なるほど~」

そう答えたものの、何が「なるほど」なのか、よくわからない。ただ、「アメリカ人だから」という言葉に一理あるのは確かだ。個人主義のアメリカ人。合理主義のアメリカ人。自由を求めるアメリカ人。自分で運転したほうが、好きなときに好きな方へ好きなスピードで行けるし、好きなときに好きなところで止まれるし、だから人に頼むより運転するほうがいいということ。そのほうが選手にとっては自由だということ。キャディは選手に雇われているわけだけど、雇用主の選手がカートを運転してはいけないなんて誰が決めた?‥‥というところだろうか。

同乗する宮里.jpg
今年の米LPGA・QT1次予選での風景。藍ちゃんも、カートの運転には慣れている。
Photo/JJ Tanabe

ビジェイはアメリカ人ではなくフィジー人。だが、アメリカ生活が長く、すっかりアメリカナイズされているビジェイは、考え方もアメリカンになっているに違いない。そう言えば、アーノルド・パーマーの大会であるベイヒルインビテーショナルでは、パーマーが自らカートを運転して会場内を行き来する姿を毎年、見かける。キングでさえ、自分でカートを運転する--アメリカとは、そういう国なのだ。

舩越園子

2005年10月25日

ドロボーヒゲ

今年のいつごろからだったか、忘れてしまったのだが、タイガー・ウッズが無精ヒゲをたくわえるようになった。口の周りがヒゲだらけ。なんとなく、漫画やお話に登場するコソドロみたいなヒゲなので、仲間うちで彼のヒゲを「ドロボーヒゲ」と命名した。

ところが、その後、米ツアー選手の間で、そのドロボーヒゲが密かに流行り出したから笑ってしまう。だからといって、じゃあ誰がドロボーヒゲなのかと問われてしまうと、誰々だと答えられない。なぜなら、タイガーの真似をしてドロボーヒゲ顔になった選手の大半は無名選手だからだ。

一昨年から昨年にかけて、イアン・ポールターが髪をカラフルな色に染め、マスターズ委員会からお咎めを受けるという出来事があったが、あのときポールターは、「髪は自分のアイデンティティだ」と語り、私はそれなりに共感した。そう、選手というものは、ゴルフスタイルにしろ、ポリシーにしろ、個性にしろ、自分なりのアイデンティティを保つべき。でなければ、125名もいるシード選手、1試合150名前後もいる出場選手の中で自分を目立たせ、引き立たせることは難しい。だが、自己主張がなければ人気も出ない。人気が出なければ、スポンサーも獲得しにくい。だから、選手がPI(パーソナルアイデンティティ)を確立することは、とても重要なことなのだ。

タイガーのドロボーヒゲは、いまさらヒゲでPIを確立しようとするものではないだろう。彼はすでにスーパースターなのだから。タイガーの場合、ドロボーヒゲはちょっとした気分転換に違いない。で、真似し始めた選手たちにとって、ドロボーヒゲは「タイガーにあやかりたい」の一心だろう。なぜって、もしPI確立のためだったら、タイガーとは異なるものにすべきであって、同じヒゲでもドロボーヒゲではなく、王様ヒゲとか、まったく別のシェイプのヒゲを選ぶはずだから。

そんな中、ドロビーヒゲをたくわえ始めた1人、ブレット・クイグリーに声をかけてみた。「なぜ、そのヒゲにしたの?」と尋ねたら、クイグリーいわく、「ん?これはね‥‥このところ嫌なことばかり続いていたし、考えすぎて精神病になっちゃいそうだったし、だから気分転換に伸ばしてみたんだ」とのこと。あれっ?私の想像は的外れだったのだろうか?タイガーにあやかりたいからではなかったのだろうか?

しばらく談笑を続けていたら、クイグリーがこう続けた。「タイガーも気分転換にヒゲ伸ばしているんでしょ?だから僕も、気分転換にヒゲを伸ばしてみた。このヒゲ、結構、タイガーっぽいでしょ?」ビンゴ!やっぱりタイガーの真似だった。タイガーにあやかりたいという気持ちだったのだ。

だが、ちょっと考え込んでしまった。だって、タイガーにあやかりたい、タイガーの真似をしたいと思っている限り、なかなかスターにはなれないんじゃないですか?気持ちはわからなくもないけど、やっぱり自分らしさを主張してほしいと思わずにはいられない。たとえ、ヒゲの1つでも‥‥。

泥棒ひげタイガー.jpg
タイガー・ウッズ=賞金の“大ドロボー”とは、少々言いすぎか!?
泥棒ひげクイグリー.jpg
ブレット・クイグリー=飛距離だけならタイガーにも引けを取らない、隠れた飛ばし屋。
PHOTO/JJ TANABE

ドロボーヒゲ

今年のいつごろからだったか、忘れてしまったのだが、タイガー・ウッズが無精ヒゲをたくわえるようになった。口の周りがヒゲだらけ。なんとなく、漫画やお話に登場するコソドロみたいなヒゲなので、仲間うちで彼のヒゲを「ドロボーヒゲ」と命名した。

ところが、その後、米ツアー選手の間で、そのドロボーヒゲが密かに流行り出したから笑ってしまう。だからといって、じゃあ誰がドロボーヒゲなのかと問われてしまうと、誰々だと答えられない。なぜなら、タイガーの真似をしてドロボーヒゲ顔になった選手の大半は無名選手だからだ。

一昨年から昨年にかけて、イアン・ポールターが髪をカラフルな色に染め、マスターズ委員会からお咎めを受けるという出来事があったが、あのときポールターは、「髪は自分のアイデンティティだ」と語り、私はそれなりに共感した。そう、選手というものは、ゴルフスタイルにしろ、ポリシーにしろ、個性にしろ、自分なりのアイデンティティを保つべき。でなければ、125名もいるシード選手、1試合150名前後もいる出場選手の中で自分を目立たせ、引き立たせることは難しい。だが、自己主張がなければ人気も出ない。人気が出なければ、スポンサーも獲得しにくい。だから、選手がPI(パーソナルアイデンティティ)を確立することは、とても重要なことなのだ。

タイガーのドロボーヒゲは、いまさらヒゲでPIを確立しようとするものではないだろう。彼はすでにスーパースターなのだから。タイガーの場合、ドロボーヒゲはちょっとした気分転換に違いない。で、真似し始めた選手たちにとって、ドロボーヒゲは「タイガーにあやかりたい」の一心だろう。なぜって、もしPI確立のためだったら、タイガーとは異なるものにすべきであって、同じヒゲでもドロボーヒゲではなく、王様ヒゲとか、まったく別のシェイプのヒゲを選ぶはずだから。

そんな中、ドロビーヒゲをたくわえ始めた1人、ブレット・クイグリーに声をかけてみた。「なぜ、そのヒゲにしたの?」と尋ねたら、クイグリーいわく、「ん?これはね‥‥このところ嫌なことばかり続いていたし、考えすぎて精神病になっちゃいそうだったし、だから気分転換に伸ばしてみたんだ」とのこと。あれっ?私の想像は的外れだったのだろうか?タイガーにあやかりたいからではなかったのだろうか?

しばらく談笑を続けていたら、クイグリーがこう続けた。「タイガーも気分転換にヒゲ伸ばしているんでしょ?だから僕も、気分転換にヒゲを伸ばしてみた。このヒゲ、結構、タイガーっぽいでしょ?」ビンゴ!やっぱりタイガーの真似だった。タイガーにあやかりたいという気持ちだったのだ。

だが、ちょっと考え込んでしまった。だって、タイガーにあやかりたい、タイガーの真似をしたいと思っている限り、なかなかスターにはなれないんじゃないですか?気持ちはわからなくもないけど、やっぱり自分らしさを主張してほしいと思わずにはいられない。たとえ、ヒゲの1つでも‥‥。

泥棒ひげタイガー.jpg
タイガー・ウッズ=賞金の“大ドロボー”とは、少々言いすぎか!?
泥棒ひげクイグリー.jpg
ブレット・クイグリー=飛距離だけならタイガーにも引けを取らない、隠れた飛ばし屋。
PHOTO/JJ TANABE

ドロボーヒゲ

今年のいつごろからだったか、忘れてしまったのだが、タイガー・ウッズが無精ヒゲをたくわえるようになった。口の周りがヒゲだらけ。なんとなく、漫画やお話に登場するコソドロみたいなヒゲなので、仲間うちで彼のヒゲを「ドロボーヒゲ」と命名した。

ところが、その後、米ツアー選手の間で、そのドロボーヒゲが密かに流行り出したから笑ってしまう。だからといって、じゃあ誰がドロボーヒゲなのかと問われてしまうと、誰々だと答えられない。なぜなら、タイガーの真似をしてドロボーヒゲ顔になった選手の大半は無名選手だからだ。

一昨年から昨年にかけて、イアン・ポールターが髪をカラフルな色に染め、マスターズ委員会からお咎めを受けるという出来事があったが、あのときポールターは、「髪は自分のアイデンティティだ」と語り、私はそれなりに共感した。そう、選手というものは、ゴルフスタイルにしろ、ポリシーにしろ、個性にしろ、自分なりのアイデンティティを保つべき。でなければ、125名もいるシード選手、1試合150名前後もいる出場選手の中で自分を目立たせ、引き立たせることは難しい。だが、自己主張がなければ人気も出ない。人気が出なければ、スポンサーも獲得しにくい。だから、選手がPI(パーソナルアイデンティティ)を確立することは、とても重要なことなのだ。

タイガーのドロボーヒゲは、いまさらヒゲでPIを確立しようとするものではないだろう。彼はすでにスーパースターなのだから。タイガーの場合、ドロボーヒゲはちょっとした気分転換に違いない。で、真似し始めた選手たちにとって、ドロボーヒゲは「タイガーにあやかりたい」の一心だろう。なぜって、もしPI確立のためだったら、タイガーとは異なるものにすべきであって、同じヒゲでもドロボーヒゲではなく、王様ヒゲとか、まったく別のシェイプのヒゲを選ぶはずだから。

そんな中、ドロビーヒゲをたくわえ始めた1人、ブレット・クイグリーに声をかけてみた。「なぜ、そのヒゲにしたの?」と尋ねたら、クイグリーいわく、「ん?これはね‥‥このところ嫌なことばかり続いていたし、考えすぎて精神病になっちゃいそうだったし、だから気分転換に伸ばしてみたんだ」とのこと。あれっ?私の想像は的外れだったのだろうか?タイガーにあやかりたいからではなかったのだろうか?

しばらく談笑を続けていたら、クイグリーがこう続けた。「タイガーも気分転換にヒゲ伸ばしているんでしょ?だから僕も、気分転換にヒゲを伸ばしてみた。このヒゲ、結構、タイガーっぽいでしょ?」ビンゴ!やっぱりタイガーの真似だった。タイガーにあやかりたいという気持ちだったのだ。

だが、ちょっと考え込んでしまった。だって、タイガーにあやかりたい、タイガーの真似をしたいと思っている限り、なかなかスターにはなれないんじゃないですか?気持ちはわからなくもないけど、やっぱり自分らしさを主張してほしいと思わずにはいられない。たとえ、ヒゲの1つでも‥‥。

泥棒ひげタイガー.jpg
タイガー・ウッズ=賞金の“大ドロボー”とは、少々言いすぎか!?
泥棒ひげクイグリー.jpg
ブレット・クイグリー=飛距離だけならタイガーにも引けを取らない、隠れた飛ばし屋。
PHOTO/JJ TANABE

2005年10月22日

タイガーの予選落ち

米PGAツアーのフナイクラシックは、ハリケーン「ウィルマ」の接近に伴い、第2ラウンドの残りホールが土曜日の早朝へ持ち越されたりと、スケジュールも狂い気味。そんな中、大きな番狂わせも起こった。あのタイガー・ウッズが予選落ちの憂き目を見たのである。

タイガーの予選落ちは、今年のEDSバイロン・ネルソン選手権に続く2回目。カットラインが6アンダーという中で、タイガーは4アンダーで17番ホールを迎えた。最終2ホールをバーディ、バーディで上がらなければ予選通過できないという苦境下、17番のティショットをややひっかけてフェアウエイ左側に持っていったところで、プレーはサスペンデットになった。

そして翌朝、第2打は右方向にしか出せなかったのだが、フックもかからず、ボールはグリーン右手前の池の淵へ。寄せはピンを2メートルほどオーバーし、返しのパーパットも入らず、何やら情けないボギー。この時点で予選落ちは、ほぼ決まってしまったのだ。

最終ホールがイーグルなら‥‥そんな期待を抱いていたファンもいただろう。しかし結果は、当たり前のパー。悔しがるでもなく、落ち込むでもなく、タイガーは予選落ちした。

ところで、今週のタイガーには、ちょっと謎が多かった。フナイクラシックの会場は、タイガーの自宅があるオーランドのすぐそば。スタンフォード大学ゴルフ部時代の旧友ノタ・ビゲイを自宅に招き、一緒に滞在しながら試合会場へ来ていた。噂では、毎晩、パーティもどきの大騒ぎをしているとかいないとか。タイガーの妻エリンは、とうとうコースに姿を現さず、やっぱり夜のパーティのための準備でもしているのだろうかと、噂の信憑性は高まっていった。

おまけに、予選ラウンドはタイガーとビゲイが同組。予選通過なるかどうかの瀬戸際でさえ、タイガーはビゲイのグッドショットに笑顔で拍手を送っており、見ているこっちのほうが、タイガーは真剣なんだろうかと、ちょっぴり首をかしげたくなった。

米メディアも、やっぱり同じような疑問を抱いたのかもしれない。予選落ちしたタイガーを囲み、彼らが口にした質問は、「アンタ、本気で予選通過を狙ったの?」と言いたげ。朝、練習場にも行かず、いきなり17番ホールのセカンド地点へ行ったタイガーに、こんな質問。
記者「ウォーミングアップは家でやってきたの?」
タイガー「そう、自宅でやってきた」。

どうも信じられない。なぜって、家を出たころは、まだ7時。練習したのなら、それより前の6時台。まだ夜明け前で真っ暗だったはずだ。
記者「暗闇の中でウォーミングアップしたの?」
タイガー「そう、その通り」
どうも疑わしい--記者たちはみな、そんな顔のままだった。

ノタ・ビゲイ&タイガー.jpg
2人は大学ゴルフチームのチームメイト。
PHOTO/JJ TANABE

もう1つ、「なぜ?」という疑問が残るのは、タイガーが使ったドライバーに関することだ。初日、タイガーが手にしていたのは、ナイキの新しいドライバー、「サスクワッチ」の460CC。しかも、タイガーはプロ仕様ではなく市販モデルを使っていた。そして2日目は、以前から使っていた「イグナイト」の460CCへ戻した。このチェンジは何だったのか。「新しいドライバーは、いいドライバーなんだ。でも僕の調子もスウィングも悪すぎて、新しいドライバーの性能を活かせなかった。それで、メジャー優勝したときに使っていたドライバーへ戻し、自信を取り戻そうとしたんだ」。タイガーのこのコメントを聞いて、ナイキ関係者はほっと胸を撫で下ろしていることだろう。いや、これは予選落ちしてもスポンサーに気を遣うタイガーの「余裕」だったのだろうか。

タイガー&SQドライバー.jpg
Drive for show...ドライバーは見世物!?
PHOTO/JJ TANABE

ともあれ、タイガーの予選落ちは大会にとってもギャラリーにとっても残念な出来事だった。しかし、ビジェイ・シンまでもが予選落ちしたことで、今年の賞金王争いは、ほぼタイガーで決定した。予選落ちした直後に、そのことを米メディアがタイガーに伝えたのだが、アテストテントから出てきたタイガーに向かって、予選落ちしたにも関わらず、「コングラチュレーション、タイガー!」と始める米メディアには驚いた。もちろん、「おめでとう!賞金王がキミに決まったようなものだよ」と続いたのだが、さすがのタイガーも、いきなり浴びせられた「おめでとう!」には、数秒間、戸惑いの表情。

で、最大の疑問。タイガーは予選落ちして悔しいのかどうか。賞金王のことを聞かされても、「いろんなタイトルや賞が欲しければ、僕はもっと試合に出ていたよ。僕が一番欲しいのは優勝だからね」と答えたタイガー。そう、彼にとって意味があるのは勝利だけ。だから、この予選落ちは、そりゃうれしくはないだろうけれど、予選に落ちたから悔しいというわけではないのでは?どうですかねえ、タイガー?

タイガーの予選落ち

米PGAツアーのフナイクラシックは、ハリケーン「ウィルマ」の接近に伴い、第2ラウンドの残りホールが土曜日の早朝へ持ち越されたりと、スケジュールも狂い気味。そんな中、大きな番狂わせも起こった。あのタイガー・ウッズが予選落ちの憂き目を見たのである。

タイガーの予選落ちは、今年のEDSバイロン・ネルソン選手権に続く2回目。カットラインが6アンダーという中で、タイガーは4アンダーで17番ホールを迎えた。最終2ホールをバーディ、バーディで上がらなければ予選通過できないという苦境下、17番のティショットをややひっかけてフェアウエイ左側に持っていったところで、プレーはサスペンデットになった。

そして翌朝、第2打は右方向にしか出せなかったのだが、フックもかからず、ボールはグリーン右手前の池の淵へ。寄せはピンを2メートルほどオーバーし、返しのパーパットも入らず、何やら情けないボギー。この時点で予選落ちは、ほぼ決まってしまったのだ。

最終ホールがイーグルなら‥‥そんな期待を抱いていたファンもいただろう。しかし結果は、当たり前のパー。悔しがるでもなく、落ち込むでもなく、タイガーは予選落ちした。

ところで、今週のタイガーには、ちょっと謎が多かった。フナイクラシックの会場は、タイガーの自宅があるオーランドのすぐそば。スタンフォード大学ゴルフ部時代の旧友ノタ・ビゲイを自宅に招き、一緒に滞在しながら試合会場へ来ていた。噂では、毎晩、パーティもどきの大騒ぎをしているとかいないとか。タイガーの妻エリンは、とうとうコースに姿を現さず、やっぱり夜のパーティのための準備でもしているのだろうかと、噂の信憑性は高まっていった。

おまけに、予選ラウンドはタイガーとビゲイが同組。予選通過なるかどうかの瀬戸際でさえ、タイガーはビゲイのグッドショットに笑顔で拍手を送っており、見ているこっちのほうが、タイガーは真剣なんだろうかと、ちょっぴり首をかしげたくなった。

米メディアも、やっぱり同じような疑問を抱いたのかもしれない。予選落ちしたタイガーを囲み、彼らが口にした質問は、「アンタ、本気で予選通過を狙ったの?」と言いたげ。朝、練習場にも行かず、いきなり17番ホールのセカンド地点へ行ったタイガーに、こんな質問。
記者「ウォーミングアップは家でやってきたの?」
タイガー「そう、自宅でやってきた」。

どうも信じられない。なぜって、家を出たころは、まだ7時。練習したのなら、それより前の6時台。まだ夜明け前で真っ暗だったはずだ。
記者「暗闇の中でウォーミングアップしたの?」
タイガー「そう、その通り」
どうも疑わしい--記者たちはみな、そんな顔のままだった。

ノタ・ビゲイ&タイガー.jpg
2人は大学ゴルフチームのチームメイト。
PHOTO/JJ TANABE

もう1つ、「なぜ?」という疑問が残るのは、タイガーが使ったドライバーに関することだ。初日、タイガーが手にしていたのは、ナイキの新しいドライバー、「サスクワッチ」の460CC。しかも、タイガーはプロ仕様ではなく市販モデルを使っていた。そして2日目は、以前から使っていた「イグナイト」の460CCへ戻した。このチェンジは何だったのか。「新しいドライバーは、いいドライバーなんだ。でも僕の調子もスウィングも悪すぎて、新しいドライバーの性能を活かせなかった。それで、メジャー優勝したときに使っていたドライバーへ戻し、自信を取り戻そうとしたんだ」。タイガーのこのコメントを聞いて、ナイキ関係者はほっと胸を撫で下ろしていることだろう。いや、これは予選落ちしてもスポンサーに気を遣うタイガーの「余裕」だったのだろうか。

タイガー&SQドライバー.jpg
Drive for show...ドライバーは見世物!?
PHOTO/JJ TANABE

ともあれ、タイガーの予選落ちは大会にとってもギャラリーにとっても残念な出来事だった。しかし、ビジェイ・シンまでもが予選落ちしたことで、今年の賞金王争いは、ほぼタイガーで決定した。予選落ちした直後に、そのことを米メディアがタイガーに伝えたのだが、アテストテントから出てきたタイガーに向かって、予選落ちしたにも関わらず、「コングラチュレーション、タイガー!」と始める米メディアには驚いた。もちろん、「おめでとう!賞金王がキミに決まったようなものだよ」と続いたのだが、さすがのタイガーも、いきなり浴びせられた「おめでとう!」には、数秒間、戸惑いの表情。

で、最大の疑問。タイガーは予選落ちして悔しいのかどうか。賞金王のことを聞かされても、「いろんなタイトルや賞が欲しければ、僕はもっと試合に出ていたよ。僕が一番欲しいのは優勝だからね」と答えたタイガー。そう、彼にとって意味があるのは勝利だけ。だから、この予選落ちは、そりゃうれしくはないだろうけれど、予選に落ちたから悔しいというわけではないのでは?どうですかねえ、タイガー?

タイガーの予選落ち

米PGAツアーのフナイクラシックは、ハリケーン「ウィルマ」の接近に伴い、第2ラウンドの残りホールが土曜日の早朝へ持ち越されたりと、スケジュールも狂い気味。そんな中、大きな番狂わせも起こった。あのタイガー・ウッズが予選落ちの憂き目を見たのである。

タイガーの予選落ちは、今年のEDSバイロン・ネルソン選手権に続く2回目。カットラインが6アンダーという中で、タイガーは4アンダーで17番ホールを迎えた。最終2ホールをバーディ、バーディで上がらなければ予選通過できないという苦境下、17番のティショットをややひっかけてフェアウエイ左側に持っていったところで、プレーはサスペンデットになった。

そして翌朝、第2打は右方向にしか出せなかったのだが、フックもかからず、ボールはグリーン右手前の池の淵へ。寄せはピンを2メートルほどオーバーし、返しのパーパットも入らず、何やら情けないボギー。この時点で予選落ちは、ほぼ決まってしまったのだ。

最終ホールがイーグルなら‥‥そんな期待を抱いていたファンもいただろう。しかし結果は、当たり前のパー。悔しがるでもなく、落ち込むでもなく、タイガーは予選落ちした。

ところで、今週のタイガーには、ちょっと謎が多かった。フナイクラシックの会場は、タイガーの自宅があるオーランドのすぐそば。スタンフォード大学ゴルフ部時代の旧友ノタ・ビゲイを自宅に招き、一緒に滞在しながら試合会場へ来ていた。噂では、毎晩、パーティもどきの大騒ぎをしているとかいないとか。タイガーの妻エリンは、とうとうコースに姿を現さず、やっぱり夜のパーティのための準備でもしているのだろうかと、噂の信憑性は高まっていった。

おまけに、予選ラウンドはタイガーとビゲイが同組。予選通過なるかどうかの瀬戸際でさえ、タイガーはビゲイのグッドショットに笑顔で拍手を送っており、見ているこっちのほうが、タイガーは真剣なんだろうかと、ちょっぴり首をかしげたくなった。

米メディアも、やっぱり同じような疑問を抱いたのかもしれない。予選落ちしたタイガーを囲み、彼らが口にした質問は、「アンタ、本気で予選通過を狙ったの?」と言いたげ。朝、練習場にも行かず、いきなり17番ホールのセカンド地点へ行ったタイガーに、こんな質問。
記者「ウォーミングアップは家でやってきたの?」
タイガー「そう、自宅でやってきた」。

どうも信じられない。なぜって、家を出たころは、まだ7時。練習したのなら、それより前の6時台。まだ夜明け前で真っ暗だったはずだ。
記者「暗闇の中でウォーミングアップしたの?」
タイガー「そう、その通り」
どうも疑わしい--記者たちはみな、そんな顔のままだった。

ノタ・ビゲイ&タイガー.jpg
2人は大学ゴルフチームのチームメイト。
PHOTO/JJ TANABE

もう1つ、「なぜ?」という疑問が残るのは、タイガーが使ったドライバーに関することだ。初日、タイガーが手にしていたのは、ナイキの新しいドライバー、「サスクワッチ」の460CC。しかも、タイガーはプロ仕様ではなく市販モデルを使っていた。そして2日目は、以前から使っていた「イグナイト」の460CCへ戻した。このチェンジは何だったのか。「新しいドライバーは、いいドライバーなんだ。でも僕の調子もスウィングも悪すぎて、新しいドライバーの性能を活かせなかった。それで、メジャー優勝したときに使っていたドライバーへ戻し、自信を取り戻そうとしたんだ」。タイガーのこのコメントを聞いて、ナイキ関係者はほっと胸を撫で下ろしていることだろう。いや、これは予選落ちしてもスポンサーに気を遣うタイガーの「余裕」だったのだろうか。

タイガー&SQドライバー.jpg
Drive for show...ドライバーは見世物!?
PHOTO/JJ TANABE

ともあれ、タイガーの予選落ちは大会にとってもギャラリーにとっても残念な出来事だった。しかし、ビジェイ・シンまでもが予選落ちしたことで、今年の賞金王争いは、ほぼタイガーで決定した。予選落ちした直後に、そのことを米メディアがタイガーに伝えたのだが、アテストテントから出てきたタイガーに向かって、予選落ちしたにも関わらず、「コングラチュレーション、タイガー!」と始める米メディアには驚いた。もちろん、「おめでとう!賞金王がキミに決まったようなものだよ」と続いたのだが、さすがのタイガーも、いきなり浴びせられた「おめでとう!」には、数秒間、戸惑いの表情。

で、最大の疑問。タイガーは予選落ちして悔しいのかどうか。賞金王のことを聞かされても、「いろんなタイトルや賞が欲しければ、僕はもっと試合に出ていたよ。僕が一番欲しいのは優勝だからね」と答えたタイガー。そう、彼にとって意味があるのは勝利だけ。だから、この予選落ちは、そりゃうれしくはないだろうけれど、予選に落ちたから悔しいというわけではないのでは?どうですかねえ、タイガー?

2005年10月20日

新刊本のお知らせ

舩越園子の翻訳本が発売されましたので、お知らせします。

「タイガー・ウッズの不可能を可能に変える
5ステップ・ドリル」(講談社)
ルディ・デュラン+リック・リプシー 著
舩越園子 訳

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2005年10月19日

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飛ばし屋の悲しい性(さが)

この写真の選手は誰だか、ご存知だろうか。オーストラリア出身のスコット・ヘンド。米ツアーで飛距離ランク1位を誇る飛ばし屋だ。ヘンドが米ツアー参戦を開始したのは昨年のこと。03年秋のQスクールを通過し、出場権を得たのだが、04年シーズンの成績は賞金ランク136位と振るわず、Qスクールへ逆戻り。しかし再び出場権を獲得し、今季、2年目のツアー生活を送っている。
スコット・ヘンド.jpg 
そのヘンドが一番気にしていることは何か。そう尋ねると、彼は必ず「シード権を獲得することだ」と答える。しかし、周囲の選手たちに尋ねると、「いいや、スコットの一番の懸案事項は、自分が飛距離ランク1位の座を守れるかどうかだよ」と口を揃える。

確かに、ヘンドのドライビングディスタンスは軽く300ヤードを超える絶大なる飛距離だ。統計によれば、現在の彼の平均飛距離は319.9ヤードで、ランク1位。あのジョン・デーリーもタイガー・ウッズも舌を巻くパワフルドライビングなのだ。そりゃ、文句なしに凄い!だが、データをよくよく眺めてみると、彼のドライビングアキュラシー(フェアウエイキープ率)は45.4%と低く、ランキングは202位まで落ちてしまう。「飛ぶけど曲がり放題」のドライバーショットが、彼の成績を殺していることは間違いない。

それなのに、彼はドライバーを振り続ける。ドライビングディスタンスは、通常、フロント9とバック9のパー5合計4ホールで計測されるのだが、パー5がドッグレッグなどでドライバーを打つ選手が少ない状況だと、比較的距離が長くまっすぐめのパー4が使用される場合もある。いずれにせよ、選手たちは、必要であれば計測ホールでもフェアウエイウッドやロングアイアンで刻む。飛距離ランクをアップすることより、そのホールでいいスコアを得ることのほうが大切だからである。

だが、ヘンドは違う。計測ホールでは必ずドライバーを振り回す。そして曲げ、ボギーやダブルボギーを叩き、順位を下げる。それでも彼がドライバーを振るわけは、やっぱりドラコン王の座を他の誰かに奪われたくないからなのだろう。

シーズン終盤を迎えた今、ヘンドと言葉を交わした。「相変わらず飛ばしているのね」と言うと、ヘンドは「まあね。でも、今の僕は飛ばすことより正確性を追求しなきゃいけないって、わかっているんだ。なんせ僕は、飛ばしは1位でも賞金ランクは165位の男だからね」

来季のシード権を獲得するためには、賞金ランクで125位以内に入らなければならない。残された試合は、あと3つ。そのうち、ヘンドが出場できるのは今週を含めた2試合しかない。両方の試合でかなり上位に入らない限り、彼は今年もまたQスクール行きだ。今は神にもすがる思いなのだろう。

そういえば、去年の今頃もヘンドと話した。彼は、なんとかしてシード権を獲得したいという思いをヘッドカバーに託していた。すばしっこく枝と枝の隙間に入り込むリスのように、シード選手の残り枠に食い込みたいと考えた彼は、可愛らしいリスのヘッドカバーを飛ばしの武器にかぶせていた。

今年も何か願掛けをしているのだろうかとゴルフバッグを覗いてみたら、ドライバーではなくパターにラスベガスのカジノのロゴマークがデザインされたカバーがかかっているではないか。「これって何の意味があるの?」「見ての通り、ギャンブルだよ。オレ、ギャンブル大好きなんだ」

なるほど。ギャンブル好きのヘンドのゴルフもまたギャンブルゴルフ。だから彼は、一か八かでドライバーを振り回し、うまく真っ直ぐ飛べば、次なるショットはショートアイアンかウエッジでちょこんと寄せるだけ。しかし、ドライバーで失敗すれば、次なるショットはブッシュの中から、あるいは砂の中から。そんなギャンブルゴルフを繰り返しているヘンドは、やっぱり今年もQスクール行きになりそうな気配だ。

PHOTO/JJ TANABE

飛ばし屋の悲しい性(さが)

この写真の選手は誰だか、ご存知だろうか。オーストラリア出身のスコット・ヘンド。米ツアーで飛距離ランク1位を誇る飛ばし屋だ。ヘンドが米ツアー参戦を開始したのは昨年のこと。03年秋のQスクールを通過し、出場権を得たのだが、04年シーズンの成績は賞金ランク136位と振るわず、Qスクールへ逆戻り。しかし再び出場権を獲得し、今季、2年目のツアー生活を送っている。
スコット・ヘンド.jpg 
そのヘンドが一番気にしていることは何か。そう尋ねると、彼は必ず「シード権を獲得することだ」と答える。しかし、周囲の選手たちに尋ねると、「いいや、スコットの一番の懸案事項は、自分が飛距離ランク1位の座を守れるかどうかだよ」と口を揃える。

確かに、ヘンドのドライビングディスタンスは軽く300ヤードを超える絶大なる飛距離だ。統計によれば、現在の彼の平均飛距離は319.9ヤードで、ランク1位。あのジョン・デーリーもタイガー・ウッズも舌を巻くパワフルドライビングなのだ。そりゃ、文句なしに凄い!だが、データをよくよく眺めてみると、彼のドライビングアキュラシー(フェアウエイキープ率)は45.4%と低く、ランキングは202位まで落ちてしまう。「飛ぶけど曲がり放題」のドライバーショットが、彼の成績を殺していることは間違いない。

それなのに、彼はドライバーを振り続ける。ドライビングディスタンスは、通常、フロント9とバック9のパー5合計4ホールで計測されるのだが、パー5がドッグレッグなどでドライバーを打つ選手が少ない状況だと、比較的距離が長くまっすぐめのパー4が使用される場合もある。いずれにせよ、選手たちは、必要であれば計測ホールでもフェアウエイウッドやロングアイアンで刻む。飛距離ランクをアップすることより、そのホールでいいスコアを得ることのほうが大切だからである。

だが、ヘンドは違う。計測ホールでは必ずドライバーを振り回す。そして曲げ、ボギーやダブルボギーを叩き、順位を下げる。それでも彼がドライバーを振るわけは、やっぱりドラコン王の座を他の誰かに奪われたくないからなのだろう。

シーズン終盤を迎えた今、ヘンドと言葉を交わした。「相変わらず飛ばしているのね」と言うと、ヘンドは「まあね。でも、今の僕は飛ばすことより正確性を追求しなきゃいけないって、わかっているんだ。なんせ僕は、飛ばしは1位でも賞金ランクは165位の男だからね」

来季のシード権を獲得するためには、賞金ランクで125位以内に入らなければならない。残された試合は、あと3つ。そのうち、ヘンドが出場できるのは今週を含めた2試合しかない。両方の試合でかなり上位に入らない限り、彼は今年もまたQスクール行きだ。今は神にもすがる思いなのだろう。

そういえば、去年の今頃もヘンドと話した。彼は、なんとかしてシード権を獲得したいという思いをヘッドカバーに託していた。すばしっこく枝と枝の隙間に入り込むリスのように、シード選手の残り枠に食い込みたいと考えた彼は、可愛らしいリスのヘッドカバーを飛ばしの武器にかぶせていた。

今年も何か願掛けをしているのだろうかとゴルフバッグを覗いてみたら、ドライバーではなくパターにラスベガスのカジノのロゴマークがデザインされたカバーがかかっているではないか。「これって何の意味があるの?」「見ての通り、ギャンブルだよ。オレ、ギャンブル大好きなんだ」

なるほど。ギャンブル好きのヘンドのゴルフもまたギャンブルゴルフ。だから彼は、一か八かでドライバーを振り回し、うまく真っ直ぐ飛べば、次なるショットはショートアイアンかウエッジでちょこんと寄せるだけ。しかし、ドライバーで失敗すれば、次なるショットはブッシュの中から、あるいは砂の中から。そんなギャンブルゴルフを繰り返しているヘンドは、やっぱり今年もQスクール行きになりそうな気配だ。

PHOTO/JJ TANABE

飛ばし屋の悲しい性(さが)

この写真の選手は誰だか、ご存知だろうか。オーストラリア出身のスコット・ヘンド。米ツアーで飛距離ランク1位を誇る飛ばし屋だ。ヘンドが米ツアー参戦を開始したのは昨年のこと。03年秋のQスクールを通過し、出場権を得たのだが、04年シーズンの成績は賞金ランク136位と振るわず、Qスクールへ逆戻り。しかし再び出場権を獲得し、今季、2年目のツアー生活を送っている。
スコット・ヘンド.jpg 
そのヘンドが一番気にしていることは何か。そう尋ねると、彼は必ず「シード権を獲得することだ」と答える。しかし、周囲の選手たちに尋ねると、「いいや、スコットの一番の懸案事項は、自分が飛距離ランク1位の座を守れるかどうかだよ」と口を揃える。

確かに、ヘンドのドライビングディスタンスは軽く300ヤードを超える絶大なる飛距離だ。統計によれば、現在の彼の平均飛距離は319.9ヤードで、ランク1位。あのジョン・デーリーもタイガー・ウッズも舌を巻くパワフルドライビングなのだ。そりゃ、文句なしに凄い!だが、データをよくよく眺めてみると、彼のドライビングアキュラシー(フェアウエイキープ率)は45.4%と低く、ランキングは202位まで落ちてしまう。「飛ぶけど曲がり放題」のドライバーショットが、彼の成績を殺していることは間違いない。

それなのに、彼はドライバーを振り続ける。ドライビングディスタンスは、通常、フロント9とバック9のパー5合計4ホールで計測されるのだが、パー5がドッグレッグなどでドライバーを打つ選手が少ない状況だと、比較的距離が長くまっすぐめのパー4が使用される場合もある。いずれにせよ、選手たちは、必要であれば計測ホールでもフェアウエイウッドやロングアイアンで刻む。飛距離ランクをアップすることより、そのホールでいいスコアを得ることのほうが大切だからである。

だが、ヘンドは違う。計測ホールでは必ずドライバーを振り回す。そして曲げ、ボギーやダブルボギーを叩き、順位を下げる。それでも彼がドライバーを振るわけは、やっぱりドラコン王の座を他の誰かに奪われたくないからなのだろう。

シーズン終盤を迎えた今、ヘンドと言葉を交わした。「相変わらず飛ばしているのね」と言うと、ヘンドは「まあね。でも、今の僕は飛ばすことより正確性を追求しなきゃいけないって、わかっているんだ。なんせ僕は、飛ばしは1位でも賞金ランクは165位の男だからね」

来季のシード権を獲得するためには、賞金ランクで125位以内に入らなければならない。残された試合は、あと3つ。そのうち、ヘンドが出場できるのは今週を含めた2試合しかない。両方の試合でかなり上位に入らない限り、彼は今年もまたQスクール行きだ。今は神にもすがる思いなのだろう。

そういえば、去年の今頃もヘンドと話した。彼は、なんとかしてシード権を獲得したいという思いをヘッドカバーに託していた。すばしっこく枝と枝の隙間に入り込むリスのように、シード選手の残り枠に食い込みたいと考えた彼は、可愛らしいリスのヘッドカバーを飛ばしの武器にかぶせていた。

今年も何か願掛けをしているのだろうかとゴルフバッグを覗いてみたら、ドライバーではなくパターにラスベガスのカジノのロゴマークがデザインされたカバーがかかっているではないか。「これって何の意味があるの?」「見ての通り、ギャンブルだよ。オレ、ギャンブル大好きなんだ」

なるほど。ギャンブル好きのヘンドのゴルフもまたギャンブルゴルフ。だから彼は、一か八かでドライバーを振り回し、うまく真っ直ぐ飛べば、次なるショットはショートアイアンかウエッジでちょこんと寄せるだけ。しかし、ドライバーで失敗すれば、次なるショットはブッシュの中から、あるいは砂の中から。そんなギャンブルゴルフを繰り返しているヘンドは、やっぱり今年もQスクール行きになりそうな気配だ。

PHOTO/JJ TANABE

2005年10月16日

NY&ゴルフ

今日から私のNY生活がスタートした。フロリダからニューヨークまでは約1000マイルの距離。引越しは、私の相棒であるカメラマンのJJ(田辺安啓)がトラックで荷物を運び、私は飛行機でNY入りという具合に楽をさせてもらった。しかし、アメリカ生活13年、フロリダには8年、暮らしていたわけで、その間に増えた荷物は膨大。7割方は捨て去ったが、それでも残りの3割を運ぶのは大変な作業だった。

ところで、NYというと、世界の中心地、トレンドやファッションの中心地というイメージが強く、ゴルフとはかけ離れた感がある。新しい住所や連絡先を一通りの知人友人にメールで知らせたら、私の仕事とは無関係の友人たちから、「ニューヨーク?えっ、ゴルフの仕事、辞めたの?」などというメールが返ってきて、笑ってしまった。

確かに、フロリダとゴルフは直結イメージでも、NYとゴルフは、すぐには結びつかないかもしれない。実際、マンハッタンのような街中にゴルフ場があるはずはなく、米ツアー選手でも、NY暮らしはほとんどいない。なぜ、いないか?理由は簡単。NYは冬が寒くて、ゴルフの練習ができないからだ。

プロゴルファーの多くは、冬でも温暖なフロリダ、アリゾナ、カリフォルニア暮らしが多い。NY出身者でも、プロになったら温かい気候の土地へ引っ越すことが多い。また、高額賞金を得ることから、所得税がかからないフロリダを選ぶことも多い。マルチミリオネアのタイガー・ウッズは、その代表例だ。

米ツアー選手の中でNY州内に居を構えているのは誰だろうと考えても、ジョイ・シンデラーぐらいしか思いつかない。NY近郊暮らしは、ブラッド・ファクソン。ニュージャージー州生まれのファクソンの自宅はNYから車で2時間ぐらい離れたロードアイランドだ。生粋のニューヨーカーのジェフ・スルーマンは、結婚相手が元々シカゴで開業医をしていたため、それに合わせてシカゴへ引越し、ずっとシカゴ暮らし。それ以外に、住まいとNYが結びつく選手は思い当たらない。

ファクソン.jpg
パットの名手で知られるファクソン。パッティングなら、冬場でも家の中で練習できる。そんなテレビCMがありました。
PHOTO/JJ TANABE

だが、NYとゴルフは無関係では決してないのだ。と言うのも、ゴルフのメジャーがNY近郊で開催されるケースは案外、多いからだ。

今年の全米プロは、NYから一歩だけニュージャージー州側へ入ったバルタスロールで開催された。去年の全米オープンは、NY州ロングアイランドにあるシネコックヒルズで開催された。02年の全米オープン開催コース、ベスページもNY。そして、これらに共通する不思議な特徴が1つある。それは、NYが舞台のメジャーでは、とにかく、フィル・ミケルソン人気が爆発するということだ。

大歓迎を受けるミケルソン自身も、「NYは最高だ。私が一番好きな土地だ」と頬をゆるっめっぱなし。なぜ、ニューヨーカーゴルファーがミケルソンに熱狂するのか、そのワケは不明なのだが、1つだけ想像できることがある。ミケルソンは元来、アメリカの国民的ヒーロー。世界ナンバー1のタイガーを上回る人気を誇っていた。そこへきて、勃発したのが、あの同時爆破テロ。苦難を味わったニューヨーカーたちは、街の再建と合衆国の安全、発展を目指し、心を1つにしようとしていた。そんなとき、NYやその近郊で開かれたメジャーで、心を1つにするための象徴を求めた。それが、ミケルソンだったというわけだ。

ミケ&タイガー.jpg
来年の全米オープンもNY近郊で開催。ベスページ(2002年)で優勝を争った2人のバトルの再現もありうる。
PHOTO/JJ TANABE

メジャーに限らず、米ツアーのレギュラートーナメントでも、3試合ぐらいはNYとその近郊で開催される。そのたびに選手やその家族は、マンハッタンを楽しむ。丸山茂樹や田中秀道らも、少なからずNYを好んでいるようで、「ウチにも、いらっしゃいましたよ」なんて言葉を、マンハッタンのいくつかの飲食店で聞かされたことがある。

だが、私がNYへ引っ越そうか、どうしようかと思案に暮れていたとき、丸山はこんなことを言った。「えっ、NY?やめたほうがいいよ。ビルばっかりで空が見えないんだよ。星だって見えないんだよ」。丸山は、なかなかのロマンチスト。そして、空が見えない街で暮らすのはよくないと、アドバイスをくれたのだけれど、私はそれでもNY生活を選んでしまった。なぜって、楽しそうだから。いやいや、それはそれとして、ゴルフしか見えていなかった自分の目に、もう少し栄養を与えなければ、視野や見聞が広がらないと思ったからだ。だからこそ、NY生活。でも、せっかくのアドバイスを聞き入れなくて、丸山プロ、ごめんなさい。

NY&ゴルフ

今日から私のNY生活がスタートした。フロリダからニューヨークまでは約1000マイルの距離。引越しは、私の相棒であるカメラマンのJJ(田辺安啓)がトラックで荷物を運び、私は飛行機でNY入りという具合に楽をさせてもらった。しかし、アメリカ生活13年、フロリダには8年、暮らしていたわけで、その間に増えた荷物は膨大。7割方は捨て去ったが、それでも残りの3割を運ぶのは大変な作業だった。

ところで、NYというと、世界の中心地、トレンドやファッションの中心地というイメージが強く、ゴルフとはかけ離れた感がある。新しい住所や連絡先を一通りの知人友人にメールで知らせたら、私の仕事とは無関係の友人たちから、「ニューヨーク?えっ、ゴルフの仕事、辞めたの?」などというメールが返ってきて、笑ってしまった。

確かに、フロリダとゴルフは直結イメージでも、NYとゴルフは、すぐには結びつかないかもしれない。実際、マンハッタンのような街中にゴルフ場があるはずはなく、米ツアー選手でも、NY暮らしはほとんどいない。なぜ、いないか?理由は簡単。NYは冬が寒くて、ゴルフの練習ができないからだ。

プロゴルファーの多くは、冬でも温暖なフロリダ、アリゾナ、カリフォルニア暮らしが多い。NY出身者でも、プロになったら温かい気候の土地へ引っ越すことが多い。また、高額賞金を得ることから、所得税がかからないフロリダを選ぶことも多い。マルチミリオネアのタイガー・ウッズは、その代表例だ。

米ツアー選手の中でNY州内に居を構えているのは誰だろうと考えても、ジョイ・シンデラーぐらいしか思いつかない。NY近郊暮らしは、ブラッド・ファクソン。ニュージャージー州生まれのファクソンの自宅はNYから車で2時間ぐらい離れたロードアイランドだ。生粋のニューヨーカーのジェフ・スルーマンは、結婚相手が元々シカゴで開業医をしていたため、それに合わせてシカゴへ引越し、ずっとシカゴ暮らし。それ以外に、住まいとNYが結びつく選手は思い当たらない。

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パットの名手で知られるファクソン。パッティングなら、冬場でも家の中で練習できる。そんなテレビCMがありました。
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だが、NYとゴルフは無関係では決してないのだ。と言うのも、ゴルフのメジャーがNY近郊で開催されるケースは案外、多いからだ。

今年の全米プロは、NYから一歩だけニュージャージー州側へ入ったバルタスロールで開催された。去年の全米オープンは、NY州ロングアイランドにあるシネコックヒルズで開催された。02年の全米オープン開催コース、ベスページもNY。そして、これらに共通する不思議な特徴が1つある。それは、NYが舞台のメジャーでは、とにかく、フィル・ミケルソン人気が爆発するということだ。

大歓迎を受けるミケルソン自身も、「NYは最高だ。私が一番好きな土地だ」と頬をゆるっめっぱなし。なぜ、ニューヨーカーゴルファーがミケルソンに熱狂するのか、そのワケは不明なのだが、1つだけ想像できることがある。ミケルソンは元来、アメリカの国民的ヒーロー。世界ナンバー1のタイガーを上回る人気を誇っていた。そこへきて、勃発したのが、あの同時爆破テロ。苦難を味わったニューヨーカーたちは、街の再建と合衆国の安全、発展を目指し、心を1つにしようとしていた。そんなとき、NYやその近郊で開かれたメジャーで、心を1つにするための象徴を求めた。それが、ミケルソンだったというわけだ。

ミケ&タイガー.jpg
来年の全米オープンもNY近郊で開催。ベスページ(2002年)で優勝を争った2人のバトルの再現もありうる。
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メジャーに限らず、米ツアーのレギュラートーナメントでも、3試合ぐらいはNYとその近郊で開催される。そのたびに選手やその家族は、マンハッタンを楽しむ。丸山茂樹や田中秀道らも、少なからずNYを好んでいるようで、「ウチにも、いらっしゃいましたよ」なんて言葉を、マンハッタンのいくつかの飲食店で聞かされたことがある。

だが、私がNYへ引っ越そうか、どうしようかと思案に暮れていたとき、丸山はこんなことを言った。「えっ、NY?やめたほうがいいよ。ビルばっかりで空が見えないんだよ。星だって見えないんだよ」。丸山は、なかなかのロマンチスト。そして、空が見えない街で暮らすのはよくないと、アドバイスをくれたのだけれど、私はそれでもNY生活を選んでしまった。なぜって、楽しそうだから。いやいや、それはそれとして、ゴルフしか見えていなかった自分の目に、もう少し栄養を与えなければ、視野や見聞が広がらないと思ったからだ。だからこそ、NY生活。でも、せっかくのアドバイスを聞き入れなくて、丸山プロ、ごめんなさい。

NY&ゴルフ

今日から私のNY生活がスタートした。フロリダからニューヨークまでは約1000マイルの距離。引越しは、私の相棒であるカメラマンのJJ(田辺安啓)がトラックで荷物を運び、私は飛行機でNY入りという具合に楽をさせてもらった。しかし、アメリカ生活13年、フロリダには8年、暮らしていたわけで、その間に増えた荷物は膨大。7割方は捨て去ったが、それでも残りの3割を運ぶのは大変な作業だった。

ところで、NYというと、世界の中心地、トレンドやファッションの中心地というイメージが強く、ゴルフとはかけ離れた感がある。新しい住所や連絡先を一通りの知人友人にメールで知らせたら、私の仕事とは無関係の友人たちから、「ニューヨーク?えっ、ゴルフの仕事、辞めたの?」などというメールが返ってきて、笑ってしまった。

確かに、フロリダとゴルフは直結イメージでも、NYとゴルフは、すぐには結びつかないかもしれない。実際、マンハッタンのような街中にゴルフ場があるはずはなく、米ツアー選手でも、NY暮らしはほとんどいない。なぜ、いないか?理由は簡単。NYは冬が寒くて、ゴルフの練習ができないからだ。

プロゴルファーの多くは、冬でも温暖なフロリダ、アリゾナ、カリフォルニア暮らしが多い。NY出身者でも、プロになったら温かい気候の土地へ引っ越すことが多い。また、高額賞金を得ることから、所得税がかからないフロリダを選ぶことも多い。マルチミリオネアのタイガー・ウッズは、その代表例だ。

米ツアー選手の中でNY州内に居を構えているのは誰だろうと考えても、ジョイ・シンデラーぐらいしか思いつかない。NY近郊暮らしは、ブラッド・ファクソン。ニュージャージー州生まれのファクソンの自宅はNYから車で2時間ぐらい離れたロードアイランドだ。生粋のニューヨーカーのジェフ・スルーマンは、結婚相手が元々シカゴで開業医をしていたため、それに合わせてシカゴへ引越し、ずっとシカゴ暮らし。それ以外に、住まいとNYが結びつく選手は思い当たらない。

ファクソン.jpg
パットの名手で知られるファクソン。パッティングなら、冬場でも家の中で練習できる。そんなテレビCMがありました。
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だが、NYとゴルフは無関係では決してないのだ。と言うのも、ゴルフのメジャーがNY近郊で開催されるケースは案外、多いからだ。

今年の全米プロは、NYから一歩だけニュージャージー州側へ入ったバルタスロールで開催された。去年の全米オープンは、NY州ロングアイランドにあるシネコックヒルズで開催された。02年の全米オープン開催コース、ベスページもNY。そして、これらに共通する不思議な特徴が1つある。それは、NYが舞台のメジャーでは、とにかく、フィル・ミケルソン人気が爆発するということだ。

大歓迎を受けるミケルソン自身も、「NYは最高だ。私が一番好きな土地だ」と頬をゆるっめっぱなし。なぜ、ニューヨーカーゴルファーがミケルソンに熱狂するのか、そのワケは不明なのだが、1つだけ想像できることがある。ミケルソンは元来、アメリカの国民的ヒーロー。世界ナンバー1のタイガーを上回る人気を誇っていた。そこへきて、勃発したのが、あの同時爆破テロ。苦難を味わったニューヨーカーたちは、街の再建と合衆国の安全、発展を目指し、心を1つにしようとしていた。そんなとき、NYやその近郊で開かれたメジャーで、心を1つにするための象徴を求めた。それが、ミケルソンだったというわけだ。

ミケ&タイガー.jpg
来年の全米オープンもNY近郊で開催。ベスページ(2002年)で優勝を争った2人のバトルの再現もありうる。
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メジャーに限らず、米ツアーのレギュラートーナメントでも、3試合ぐらいはNYとその近郊で開催される。そのたびに選手やその家族は、マンハッタンを楽しむ。丸山茂樹や田中秀道らも、少なからずNYを好んでいるようで、「ウチにも、いらっしゃいましたよ」なんて言葉を、マンハッタンのいくつかの飲食店で聞かされたことがある。

だが、私がNYへ引っ越そうか、どうしようかと思案に暮れていたとき、丸山はこんなことを言った。「えっ、NY?やめたほうがいいよ。ビルばっかりで空が見えないんだよ。星だって見えないんだよ」。丸山は、なかなかのロマンチスト。そして、空が見えない街で暮らすのはよくないと、アドバイスをくれたのだけれど、私はそれでもNY生活を選んでしまった。なぜって、楽しそうだから。いやいや、それはそれとして、ゴルフしか見えていなかった自分の目に、もう少し栄養を与えなければ、視野や見聞が広がらないと思ったからだ。だからこそ、NY生活。でも、せっかくのアドバイスを聞き入れなくて、丸山プロ、ごめんなさい。

2005年10月12日

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2005年10月11日

放っておけない人

米ツアーはシーズン終盤戦。この時期になると、気になるのはシード権争いだ。ボーダーラインの賞金ランク125位近辺でさまよっている選手たちは、まさに1ドル単位でしのぎを削る思いだが、私が個人的に放っておけない選手は2人いる。1人は日本の田中秀道。そしてもう1人は、ケビン・スタドラーだ。米ツアー参戦4年目の田中は現在167位と苦戦しており、ケビンも田中とほぼ同じ163位にいる。

ケビンは、その名でおわかりの通り、あのクレッグ・スタドラーの息子だ。父親クレッグはマスターズ1勝を含む米ツアー13勝のメジャーチャンプ。だが、あのぼってり太った体型、ズボンに一生懸命しまってもしまっても出てくるシャツの裾、ヒゲの合間から覗かせるかわいい笑顔。そんな風貌はツワモノとは思えぬ愛らしさだ。ニックネームはセイウチ。数年前、その父親と息子がファザー&サン(父子)トーナメントに出ていたとき、2人揃ってティグラウンドに立つ様は、まさに2頭のセイウチのショータイムそのものだったことを昨日のことのように覚えている。

2年前、シニア入りした父クレッグが、若者に混じって米ツアーに出場し、史上5番目の長老優勝を達成した。あれは自分が出れば息子もスポンサー推薦で出られると知り、「それならば」と出場して優勝してしまったという珍事だった。「優勝する予定はなかったけど勝っちゃった。オレには計画性ってものがないからなあ」

あのころは父親同伴でやっと試合に出ることができた息子ケビン。だが、昨年、二軍のネイションワイドツアーで賞金ランク13位になり、今年の米ツアー出場権を自力で獲得した。ネイション2勝ゆえ、底力はある。しかし、米ツアーでは、なかなか好成績が出せずにいる。それでも、あの大人気のセイウチの息子ということで、ギャラリーからの人気はやっぱり高く、「お父さんにそっくりだねえ!」と声援が飛ぶ。すると、ケビンは、「そんな不思議なことを言われたのは初めてだ」なんてジョークで返す。体型のみならず、ユーモラスな一面も父親譲りのようだ。

ケビン・スタドラー1.jpg
ケビン・スタドラー2.jpg
ケビン・スタドラー3.jpg
人気は上々。いつも話題の的。あとは成績だけなのだが、、、。
PHOTO/JJ TANABE

いつだったか、父親クレッグがこう言っていた。「オレは計画性がないけど、物事はすべて成り行きだから、計画性はなくてもいいのさ」。しかし、この表現は、クレッグの照れ隠しだ。ただ指をくわえて無計画に待っていたらメジャータイトルが転がり込んだはずはないのだから。そんな父親の背中を、息子ケビンはちゃんと見ながら育ったのだろう。「今年はずっと苦戦しているけど、僕はじっくりがんばります。今年、シード権が取れなかったら、またネイションワイドに戻って一から出直し、何度でも挑戦します」。

多くは望まず。地道な努力は欠かさず。セイウチ親子の流儀だ。

舩越園子

放っておけない人

米ツアーはシーズン終盤戦。この時期になると、気になるのはシード権争いだ。ボーダーラインの賞金ランク125位近辺でさまよっている選手たちは、まさに1ドル単位でしのぎを削る思いだが、私が個人的に放っておけない選手は2人いる。1人は日本の田中秀道。そしてもう1人は、ケビン・スタドラーだ。米ツアー参戦4年目の田中は現在167位と苦戦しており、ケビンも田中とほぼ同じ163位にいる。

ケビンは、その名でおわかりの通り、あのクレッグ・スタドラーの息子だ。父親クレッグはマスターズ1勝を含む米ツアー13勝のメジャーチャンプ。だが、あのぼってり太った体型、ズボンに一生懸命しまってもしまっても出てくるシャツの裾、ヒゲの合間から覗かせるかわいい笑顔。そんな風貌はツワモノとは思えぬ愛らしさだ。ニックネームはセイウチ。数年前、その父親と息子がファザー&サン(父子)トーナメントに出ていたとき、2人揃ってティグラウンドに立つ様は、まさに2頭のセイウチのショータイムそのものだったことを昨日のことのように覚えている。

2年前、シニア入りした父クレッグが、若者に混じって米ツアーに出場し、史上5番目の長老優勝を達成した。あれは自分が出れば息子もスポンサー推薦で出られると知り、「それならば」と出場して優勝してしまったという珍事だった。「優勝する予定はなかったけど勝っちゃった。オレには計画性ってものがないからなあ」

あのころは父親同伴でやっと試合に出ることができた息子ケビン。だが、昨年、二軍のネイションワイドツアーで賞金ランク13位になり、今年の米ツアー出場権を自力で獲得した。ネイション2勝ゆえ、底力はある。しかし、米ツアーでは、なかなか好成績が出せずにいる。それでも、あの大人気のセイウチの息子ということで、ギャラリーからの人気はやっぱり高く、「お父さんにそっくりだねえ!」と声援が飛ぶ。すると、ケビンは、「そんな不思議なことを言われたのは初めてだ」なんてジョークで返す。体型のみならず、ユーモラスな一面も父親譲りのようだ。

ケビン・スタドラー1.jpg
ケビン・スタドラー2.jpg
ケビン・スタドラー3.jpg
人気は上々。いつも話題の的。あとは成績だけなのだが、、、。
PHOTO/JJ TANABE

いつだったか、父親クレッグがこう言っていた。「オレは計画性がないけど、物事はすべて成り行きだから、計画性はなくてもいいのさ」。しかし、この表現は、クレッグの照れ隠しだ。ただ指をくわえて無計画に待っていたらメジャータイトルが転がり込んだはずはないのだから。そんな父親の背中を、息子ケビンはちゃんと見ながら育ったのだろう。「今年はずっと苦戦しているけど、僕はじっくりがんばります。今年、シード権が取れなかったら、またネイションワイドに戻って一から出直し、何度でも挑戦します」。

多くは望まず。地道な努力は欠かさず。セイウチ親子の流儀だ。

舩越園子

放っておけない人

米ツアーはシーズン終盤戦。この時期になると、気になるのはシード権争いだ。ボーダーラインの賞金ランク125位近辺でさまよっている選手たちは、まさに1ドル単位でしのぎを削る思いだが、私が個人的に放っておけない選手は2人いる。1人は日本の田中秀道。そしてもう1人は、ケビン・スタドラーだ。米ツアー参戦4年目の田中は現在167位と苦戦しており、ケビンも田中とほぼ同じ163位にいる。

ケビンは、その名でおわかりの通り、あのクレッグ・スタドラーの息子だ。父親クレッグはマスターズ1勝を含む米ツアー13勝のメジャーチャンプ。だが、あのぼってり太った体型、ズボンに一生懸命しまってもしまっても出てくるシャツの裾、ヒゲの合間から覗かせるかわいい笑顔。そんな風貌はツワモノとは思えぬ愛らしさだ。ニックネームはセイウチ。数年前、その父親と息子がファザー&サン(父子)トーナメントに出ていたとき、2人揃ってティグラウンドに立つ様は、まさに2頭のセイウチのショータイムそのものだったことを昨日のことのように覚えている。

2年前、シニア入りした父クレッグが、若者に混じって米ツアーに出場し、史上5番目の長老優勝を達成した。あれは自分が出れば息子もスポンサー推薦で出られると知り、「それならば」と出場して優勝してしまったという珍事だった。「優勝する予定はなかったけど勝っちゃった。オレには計画性ってものがないからなあ」

あのころは父親同伴でやっと試合に出ることができた息子ケビン。だが、昨年、二軍のネイションワイドツアーで賞金ランク13位になり、今年の米ツアー出場権を自力で獲得した。ネイション2勝ゆえ、底力はある。しかし、米ツアーでは、なかなか好成績が出せずにいる。それでも、あの大人気のセイウチの息子ということで、ギャラリーからの人気はやっぱり高く、「お父さんにそっくりだねえ!」と声援が飛ぶ。すると、ケビンは、「そんな不思議なことを言われたのは初めてだ」なんてジョークで返す。体型のみならず、ユーモラスな一面も父親譲りのようだ。

ケビン・スタドラー1.jpg
ケビン・スタドラー2.jpg
ケビン・スタドラー3.jpg
人気は上々。いつも話題の的。あとは成績だけなのだが、、、。
PHOTO/JJ TANABE

いつだったか、父親クレッグがこう言っていた。「オレは計画性がないけど、物事はすべて成り行きだから、計画性はなくてもいいのさ」。しかし、この表現は、クレッグの照れ隠しだ。ただ指をくわえて無計画に待っていたらメジャータイトルが転がり込んだはずはないのだから。そんな父親の背中を、息子ケビンはちゃんと見ながら育ったのだろう。「今年はずっと苦戦しているけど、僕はじっくりがんばります。今年、シード権が取れなかったら、またネイションワイドに戻って一から出直し、何度でも挑戦します」。

多くは望まず。地道な努力は欠かさず。セイウチ親子の流儀だ。

舩越園子

2005年10月07日

ルール違反の方位磁石?

ゴルフでは、ショットやパットの助けになるモノを使用してはいけないというルールがある。棒状のものをバッグに入れているだけで、「クラブ的なもの」を15本以上所持していることになってしまうし、ショットする地点まで持っていた余分なクラブを地面に置いた場合、その置いたクラブが狙った方向にたまたま向いているだけで、アライメントの助けになるものを使ったとみなされ、やっぱりルール違反に問われてしまう‥‥なんてことは、ゴルフ好きのみなさんなら、もちろんご存知だと思う。

だが、思わぬものが、ルール違反の嫌疑をかけられることがある。先日、丸山茂樹と話していたときのこと。なぜだか話題はタバコだった。丸山が突然、こんなことを言った。「以前、杉ちゃんが持ってた携帯灰皿が方位磁石だって言われて、ルール委員が飛んできたんだよ、試合中に‥‥」。

「杉ちゃん」とは、丸山のキャディの杉澤伸章さん。ラウンド中、彼は丸い携帯灰皿をベルトのあたりから提げていたのだが、それがギャラリーから「方位磁石だ」と指摘されたのだそうだ。

方位磁石を持っていたら、風の方向などを知る上で、ショットの助けになるとみなされる。だから、本当に方位磁石を持っていたら、ルール違反ということになるわけだが、まさかそんなものを杉ちゃんが持っているはずがない。ルール委員から「おい、コンパス持ってるのか?」と尋ねられた杉ちゃんは、「えっ?何のこと?まさか、これ?」という具合に、携帯灰皿を差し出し、ルール委員も灰皿だと知って納得。やれやれ、一件落着となったのだそうだ。

携帯灰皿.jpg
アメリカ人には、携帯灰皿はまだまだ“珍品”。日本が世界に誇るマナー商品だ。
PHOTO/JJ TANABE

それにしても、たびたび日本の一部のマスコミやファンから問題視されてきた丸山の喫煙マナー。だが、丸山本人は、ちゃんと携帯灰皿を杉ちゃんに持ってもらってラウンドしているのだ。それなのに、その携帯灰皿が、よりによって「方位磁石=ルール違反」の嫌疑をかけられてしまうのだから、まったく世の中、うまくいかないものだ。

タバコといえば、米ツアー選手の中にスモーカーは結構いる。タバコではなく、シガーや噛みタバコを好む選手も、それなりにいる。ジョン・デーリーなどは、スモーカープロの代表格で、「食わえタバコのまま300ヤードドライブを放てる唯一のプロゴルファー」と米ゴルフ雑誌で表現されるほどだ。だが、欧米選手の喫煙マナーが問題視されることは、日米どちらのマスコミを観察しても、ほとんどないから不思議だ。なぜ、丸山だけが槍玉に上げられるのか。おそらくは、日本独特のスポーツ理念、道徳観によるものだろう。「真剣なスポーツの最中に、我が日本人がタバコを吸うなんて、もってのほかだ!」という感じ。

「日本独特の‥‥」というフレーズを口にすると、どうしても思い出してしまう出来事がある。それは、もう10数年も前のことだが、日本の試合のテレビ中継で解説を務めていた熟年プロゴルファーが、ジャンボ尾崎と同組で回っていた若手プロが傘(日傘がわりだったと記憶している)をさしながらプレーしていたことに対し、ジャンボに失礼だという意味合いの発言をしていたのだ。

あれを聞いたときは、どうにもこうにもナンセンスな発言だと苦笑してしまった。相手が誰であれ、傘をさして何が悪い?雨をよけたい、強い日差しから身を守りたい、エネルギーとスタミナをキープしたいと思ったら、先輩後輩、老若男女に関わらず、傘をさせばよいのだ。

日本のプロが、大先輩と一緒にラウンドする際、「パットのラインを読むとき、立っている先輩の前を横切れない。わざわざ先輩の後ろを通って、自分のラインを読みにいく」と言っていたことがある。これも、日本独特の感覚だ。欧米のプロたちは、たとえ同伴競技者がタイガーだろうとアーニー・エルスだろうと、自分の仕事を遂行するためなら、前でも後ろでも平気で横切っていく。

日本流に言えば、そうした欧米流は「図太い」「無神経」ということになりそうだが、実はその図太さこそが、ゴルフの大舞台には必要なのだ。たとえば、大事な試合でスロープレーの計測が入ったとき、日本人選手は大抵の場合、ドキドキして慌ててしまい、ペースがすっかり乱れてしまう。しかし、欧米選手は、さほどドキドキすることなく、落ち着いて急ぐ。この「落ち着いて急ぐ」というのが、なんとも難しいのだが、それができるかどうかのカギになるのは、欧米流の図太さだと私は思う。

なぜ、欧米選手は図太くいられるのか。思うに、彼らは個人主義。他人からどう思われようと気にしない。行動を起す理由は常に「自分がそうしたいからそうする」だけのこと。それゆえ、何をするときも、自分の考えと気持ちが最優先であり、他人の見方や意見は、はっきり言って気にならない。

そう考えれば、喫煙の問題も、「自分が吸いたいから吸う」でいいわけだ。無論、アメリカでは日本以上に嫌煙権なるもののステータスが拡大しているが、ちゃんと携帯灰皿を用意して、他人にもコースにも迷惑をかけないよう配慮している丸山が、タバコを吸うことで責められる理由はどこにもないではないか‥‥丸山の方位磁石の話を聞きながら、私の頭の中では、そんなこんなが堂々巡りしてしまった。

しかし、その出来事以来、杉ちゃんは、練習ラウンドのときだけ携帯灰皿をベルトから提げ、本戦中はキャディビブのポケットなどにしまうようにして、あらぬ誤解を受けないよう注意しているそうだ。そう、人間誰しもトラブルは避けたいもの。杉ちゃんのそんな心遣いがあるからこそ、丸山もプレーに集中できる。そして、タバコがメンタル面のリラックスや気持ちの転換に役立っているのだから、彼がタバコを吸うことに私は決して反対しない。何を隠そう、この私もスモーカーなのだから。

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キャディ杉澤も、丸山同様のスモーカーだ。
PHOTO/JJ TANABE

ルール違反の方位磁石?

ゴルフでは、ショットやパットの助けになるモノを使用してはいけないというルールがある。棒状のものをバッグに入れているだけで、「クラブ的なもの」を15本以上所持していることになってしまうし、ショットする地点まで持っていた余分なクラブを地面に置いた場合、その置いたクラブが狙った方向にたまたま向いているだけで、アライメントの助けになるものを使ったとみなされ、やっぱりルール違反に問われてしまう‥‥なんてことは、ゴルフ好きのみなさんなら、もちろんご存知だと思う。

だが、思わぬものが、ルール違反の嫌疑をかけられることがある。先日、丸山茂樹と話していたときのこと。なぜだか話題はタバコだった。丸山が突然、こんなことを言った。「以前、杉ちゃんが持ってた携帯灰皿が方位磁石だって言われて、ルール委員が飛んできたんだよ、試合中に‥‥」。

「杉ちゃん」とは、丸山のキャディの杉澤伸章さん。ラウンド中、彼は丸い携帯灰皿をベルトのあたりから提げていたのだが、それがギャラリーから「方位磁石だ」と指摘されたのだそうだ。

方位磁石を持っていたら、風の方向などを知る上で、ショットの助けになるとみなされる。だから、本当に方位磁石を持っていたら、ルール違反ということになるわけだが、まさかそんなものを杉ちゃんが持っているはずがない。ルール委員から「おい、コンパス持ってるのか?」と尋ねられた杉ちゃんは、「えっ?何のこと?まさか、これ?」という具合に、携帯灰皿を差し出し、ルール委員も灰皿だと知って納得。やれやれ、一件落着となったのだそうだ。

携帯灰皿.jpg
アメリカ人には、携帯灰皿はまだまだ“珍品”。日本が世界に誇るマナー商品だ。
PHOTO/JJ TANABE

それにしても、たびたび日本の一部のマスコミやファンから問題視されてきた丸山の喫煙マナー。だが、丸山本人は、ちゃんと携帯灰皿を杉ちゃんに持ってもらってラウンドしているのだ。それなのに、その携帯灰皿が、よりによって「方位磁石=ルール違反」の嫌疑をかけられてしまうのだから、まったく世の中、うまくいかないものだ。

タバコといえば、米ツアー選手の中にスモーカーは結構いる。タバコではなく、シガーや噛みタバコを好む選手も、それなりにいる。ジョン・デーリーなどは、スモーカープロの代表格で、「食わえタバコのまま300ヤードドライブを放てる唯一のプロゴルファー」と米ゴルフ雑誌で表現されるほどだ。だが、欧米選手の喫煙マナーが問題視されることは、日米どちらのマスコミを観察しても、ほとんどないから不思議だ。なぜ、丸山だけが槍玉に上げられるのか。おそらくは、日本独特のスポーツ理念、道徳観によるものだろう。「真剣なスポーツの最中に、我が日本人がタバコを吸うなんて、もってのほかだ!」という感じ。

「日本独特の‥‥」というフレーズを口にすると、どうしても思い出してしまう出来事がある。それは、もう10数年も前のことだが、日本の試合のテレビ中継で解説を務めていた熟年プロゴルファーが、ジャンボ尾崎と同組で回っていた若手プロが傘(日傘がわりだったと記憶している)をさしながらプレーしていたことに対し、ジャンボに失礼だという意味合いの発言をしていたのだ。

あれを聞いたときは、どうにもこうにもナンセンスな発言だと苦笑してしまった。相手が誰であれ、傘をさして何が悪い?雨をよけたい、強い日差しから身を守りたい、エネルギーとスタミナをキープしたいと思ったら、先輩後輩、老若男女に関わらず、傘をさせばよいのだ。

日本のプロが、大先輩と一緒にラウンドする際、「パットのラインを読むとき、立っている先輩の前を横切れない。わざわざ先輩の後ろを通って、自分のラインを読みにいく」と言っていたことがある。これも、日本独特の感覚だ。欧米のプロたちは、たとえ同伴競技者がタイガーだろうとアーニー・エルスだろうと、自分の仕事を遂行するためなら、前でも後ろでも平気で横切っていく。

日本流に言えば、そうした欧米流は「図太い」「無神経」ということになりそうだが、実はその図太さこそが、ゴルフの大舞台には必要なのだ。たとえば、大事な試合でスロープレーの計測が入ったとき、日本人選手は大抵の場合、ドキドキして慌ててしまい、ペースがすっかり乱れてしまう。しかし、欧米選手は、さほどドキドキすることなく、落ち着いて急ぐ。この「落ち着いて急ぐ」というのが、なんとも難しいのだが、それができるかどうかのカギになるのは、欧米流の図太さだと私は思う。

なぜ、欧米選手は図太くいられるのか。思うに、彼らは個人主義。他人からどう思われようと気にしない。行動を起す理由は常に「自分がそうしたいからそうする」だけのこと。それゆえ、何をするときも、自分の考えと気持ちが最優先であり、他人の見方や意見は、はっきり言って気にならない。

そう考えれば、喫煙の問題も、「自分が吸いたいから吸う」でいいわけだ。無論、アメリカでは日本以上に嫌煙権なるもののステータスが拡大しているが、ちゃんと携帯灰皿を用意して、他人にもコースにも迷惑をかけないよう配慮している丸山が、タバコを吸うことで責められる理由はどこにもないではないか‥‥丸山の方位磁石の話を聞きながら、私の頭の中では、そんなこんなが堂々巡りしてしまった。

しかし、その出来事以来、杉ちゃんは、練習ラウンドのときだけ携帯灰皿をベルトから提げ、本戦中はキャディビブのポケットなどにしまうようにして、あらぬ誤解を受けないよう注意しているそうだ。そう、人間誰しもトラブルは避けたいもの。杉ちゃんのそんな心遣いがあるからこそ、丸山もプレーに集中できる。そして、タバコがメンタル面のリラックスや気持ちの転換に役立っているのだから、彼がタバコを吸うことに私は決して反対しない。何を隠そう、この私もスモーカーなのだから。

丸山とキャディの杉澤.jpg
キャディ杉澤も、丸山同様のスモーカーだ。
PHOTO/JJ TANABE

ルール違反の方位磁石?

ゴルフでは、ショットやパットの助けになるモノを使用してはいけないというルールがある。棒状のものをバッグに入れているだけで、「クラブ的なもの」を15本以上所持していることになってしまうし、ショットする地点まで持っていた余分なクラブを地面に置いた場合、その置いたクラブが狙った方向にたまたま向いているだけで、アライメントの助けになるものを使ったとみなされ、やっぱりルール違反に問われてしまう‥‥なんてことは、ゴルフ好きのみなさんなら、もちろんご存知だと思う。

だが、思わぬものが、ルール違反の嫌疑をかけられることがある。先日、丸山茂樹と話していたときのこと。なぜだか話題はタバコだった。丸山が突然、こんなことを言った。「以前、杉ちゃんが持ってた携帯灰皿が方位磁石だって言われて、ルール委員が飛んできたんだよ、試合中に‥‥」。

「杉ちゃん」とは、丸山のキャディの杉澤伸章さん。ラウンド中、彼は丸い携帯灰皿をベルトのあたりから提げていたのだが、それがギャラリーから「方位磁石だ」と指摘されたのだそうだ。

方位磁石を持っていたら、風の方向などを知る上で、ショットの助けになるとみなされる。だから、本当に方位磁石を持っていたら、ルール違反ということになるわけだが、まさかそんなものを杉ちゃんが持っているはずがない。ルール委員から「おい、コンパス持ってるのか?」と尋ねられた杉ちゃんは、「えっ?何のこと?まさか、これ?」という具合に、携帯灰皿を差し出し、ルール委員も灰皿だと知って納得。やれやれ、一件落着となったのだそうだ。

携帯灰皿.jpg
アメリカ人には、携帯灰皿はまだまだ“珍品”。日本が世界に誇るマナー商品だ。
PHOTO/JJ TANABE

それにしても、たびたび日本の一部のマスコミやファンから問題視されてきた丸山の喫煙マナー。だが、丸山本人は、ちゃんと携帯灰皿を杉ちゃんに持ってもらってラウンドしているのだ。それなのに、その携帯灰皿が、よりによって「方位磁石=ルール違反」の嫌疑をかけられてしまうのだから、まったく世の中、うまくいかないものだ。

タバコといえば、米ツアー選手の中にスモーカーは結構いる。タバコではなく、シガーや噛みタバコを好む選手も、それなりにいる。ジョン・デーリーなどは、スモーカープロの代表格で、「食わえタバコのまま300ヤードドライブを放てる唯一のプロゴルファー」と米ゴルフ雑誌で表現されるほどだ。だが、欧米選手の喫煙マナーが問題視されることは、日米どちらのマスコミを観察しても、ほとんどないから不思議だ。なぜ、丸山だけが槍玉に上げられるのか。おそらくは、日本独特のスポーツ理念、道徳観によるものだろう。「真剣なスポーツの最中に、我が日本人がタバコを吸うなんて、もってのほかだ!」という感じ。

「日本独特の‥‥」というフレーズを口にすると、どうしても思い出してしまう出来事がある。それは、もう10数年も前のことだが、日本の試合のテレビ中継で解説を務めていた熟年プロゴルファーが、ジャンボ尾崎と同組で回っていた若手プロが傘(日傘がわりだったと記憶している)をさしながらプレーしていたことに対し、ジャンボに失礼だという意味合いの発言をしていたのだ。

あれを聞いたときは、どうにもこうにもナンセンスな発言だと苦笑してしまった。相手が誰であれ、傘をさして何が悪い?雨をよけたい、強い日差しから身を守りたい、エネルギーとスタミナをキープしたいと思ったら、先輩後輩、老若男女に関わらず、傘をさせばよいのだ。

日本のプロが、大先輩と一緒にラウンドする際、「パットのラインを読むとき、立っている先輩の前を横切れない。わざわざ先輩の後ろを通って、自分のラインを読みにいく」と言っていたことがある。これも、日本独特の感覚だ。欧米のプロたちは、たとえ同伴競技者がタイガーだろうとアーニー・エルスだろうと、自分の仕事を遂行するためなら、前でも後ろでも平気で横切っていく。

日本流に言えば、そうした欧米流は「図太い」「無神経」ということになりそうだが、実はその図太さこそが、ゴルフの大舞台には必要なのだ。たとえば、大事な試合でスロープレーの計測が入ったとき、日本人選手は大抵の場合、ドキドキして慌ててしまい、ペースがすっかり乱れてしまう。しかし、欧米選手は、さほどドキドキすることなく、落ち着いて急ぐ。この「落ち着いて急ぐ」というのが、なんとも難しいのだが、それができるかどうかのカギになるのは、欧米流の図太さだと私は思う。

なぜ、欧米選手は図太くいられるのか。思うに、彼らは個人主義。他人からどう思われようと気にしない。行動を起す理由は常に「自分がそうしたいからそうする」だけのこと。それゆえ、何をするときも、自分の考えと気持ちが最優先であり、他人の見方や意見は、はっきり言って気にならない。

そう考えれば、喫煙の問題も、「自分が吸いたいから吸う」でいいわけだ。無論、アメリカでは日本以上に嫌煙権なるもののステータスが拡大しているが、ちゃんと携帯灰皿を用意して、他人にもコースにも迷惑をかけないよう配慮している丸山が、タバコを吸うことで責められる理由はどこにもないではないか‥‥丸山の方位磁石の話を聞きながら、私の頭の中では、そんなこんなが堂々巡りしてしまった。

しかし、その出来事以来、杉ちゃんは、練習ラウンドのときだけ携帯灰皿をベルトから提げ、本戦中はキャディビブのポケットなどにしまうようにして、あらぬ誤解を受けないよう注意しているそうだ。そう、人間誰しもトラブルは避けたいもの。杉ちゃんのそんな心遣いがあるからこそ、丸山もプレーに集中できる。そして、タバコがメンタル面のリラックスや気持ちの転換に役立っているのだから、彼がタバコを吸うことに私は決して反対しない。何を隠そう、この私もスモーカーなのだから。

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キャディ杉澤も、丸山同様のスモーカーだ。
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2005年10月06日

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http://www.asahi.com/sports/golf/TKY200510060110.html

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2005年10月05日

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2005年10月04日

試合の準備はどうあるべき?

試合のラウンドにどう備えるか、そのルーティーンは選手によってまちまちだ。たとえば、デービス・ラブは、ティタイムのぎりぎり直前にコースへやってきて、バタバタとスタートしていくのが日常。「あんまり早々とコースに来て備えようとすると、あれこれ考えちゃって、かえって調子がおかしくなる」と彼は言う。パラグアイ出身のカルロス・フランコは、コースにやってくるのは比較的早いのだが、フラフラ歩いたり、顔見知りの選手や関係者とおしゃべりをしながらリラックスする。練習はあまりしないのだが、「ボク、ゴルフ下手だから、練習してもダメネ」なんてことを、いつだったか、ちょっぴりぎこちない日本語で話してくれたことがあった。もちろん、きっちり練習した上でスタートする選手のほうが多いのは当然で、大抵の場合、1時間前にコースに来て、まずチップ&ピッチ練習、次に練習場で一通りの番手を打ち、最後に練習グリーンでパットを調整してから1番ティへ、といった流れが一般的だ。

そんな中、先週のクライスラークラシック・オブ・グリーンズボロに出場していた今田竜二は、爆笑もののスタート準備になってしまった。クラブハウスから練習場へ行くには、報道関係者のためのメディアセンターの前を通っていくのだが、私がメディアセンターの前にたまたま立っていたら、そこを今田がものすごい勢いで走り抜けていったのだ。セキュリティガードたちも、今田の慌てぶりにびっくり仰天。なんせ今田は何かとんでもないことでも起こったのかと思うほどの猛スピードで走っていたのだから。手にはクラブが3本だけ握られている。シューズはちゃんと履いている。なぜ、クラブを数本だけ持って、練習場へ走っていったのか。すぐに、その意味がわかった。はっはあ~、こりゃ、寝坊したに違いない!

今田とクラブ3本.jpg
2日目のラウンド直前のレンジで、クラブ3本だけって、、。
PHOT/JJ TANABE

今田がメディアセンター前を走り抜けていったのは、彼のティタイムのわずか25分前。こんなに直前に練習場へ行くのは今田にしては異例ゆえ、とにかくスタート前にちょっとだけも球を打たなければと慌てていることが想像できた。面白いから‥‥なんて言ったら今田に失礼かもしれないが、一体どれほど慌てた顔で球を打っているのか、見たくなって、練習場まで追いかけた。

今田は練習場の入り口に一番近い打席にいた。1球打つと、球の行方を見ることもなく、次なる球をセットする。どうやら、その打席に残されていたボールをそのまま打ち始めたと見え、バケツはすでに空になりつつある。「ビシーッ!」と球を打つたびに、今田は後方の打席を振り返りながら、そこに落ちているボールをクラブヘッドでたぐり寄せる。おいおい、そんなに急いで打ったら、スウィングのリズムも何もあったもんじゃないよお~と言いたいぐらいの慌てよう。一体どうなることやら。

10分ほど、そうやって球を打ち続けた今田は、地面に放り投げるように置いていたドライバーとミドルアイアンとウエッジをわしづかみにした。「準備完了ですか?」と思わず笑いながら声をかけると、今田は返答する余裕もなく、「えっ?はあ~」と言い残し、練習グリーンの方向へ走り去っていった。

いざ、ラウンドが始まると、今田は出だしから連続バーディ。フロントナインを3アンダーで回り、むしろ好調だった。だが、後半に入ると逆に調子を落とし、結局はドタバタスタートのツケが回った?ラウンド後、「大慌てのスタートでしたけど‥‥」と、またこの話を蒸し返してみた。すると、今田いわく、「いや、寝坊じゃないんですよ。道に迷っちゃって‥‥で、ガソリンが無くなりそうで、スタンドを探してフリーウエイを降りたんだけど、そのたびにスタンドが無かったり閉まっていたり。で、遅くなっちゃって‥‥」。どうして前夜に給油しなかったの?「昨日は自分のゴルフにショックで、精神的にガソリンを入れる余裕がなかったんですよ‥‥」。

今田のキャディのケーシー・ケロッグの証言。「リュウジは年に1回ぐらい、こういうことがあるんだ。ネイションワイドツアーに出ていたときも、なかなかコースに来ないからティタイムの20分ぐらい前に電話したら、寝てたんだ」。

まあ、寝坊だったのか、道に迷ったのか、追及しても意味はない。私が言いたいのは、今田竜二という選手が、こんなふうに、親しみ溢れる素顔の持ち主だということ。同じ米ツアーで戦う田中秀道が、「リュウジは実は、オレたちの間ではウラ番(裏番長)なんです」というほど。いやいや、別に悪いことをしているわけじゃないけれど、アメリカ生活が長い分、今田はアメリカの若者たちの楽しみ方を知っているということ。そのいくつかを教えてあげると、田中には、すごい遊びを教えられたなんて気がするのかもしれない。

ところで、今田は今年がルーキー。6月の全米オープンで15位タイに食い込み、その時点で今季の獲得賞金総額が60万ドルを突破。これならシード獲得は間違いないと本人も周囲も思った。だが、すでに痛めていた腰の状態が悪化し、しばらく欠場。その後、ツアーに復帰したら、先週まで6連続予選落ち。現在の賞金ランクは112位に落ち、本当に125位以内に残ってシード獲得ができるのだろうかと、いささか心配される状況にある。

それでも、今田は持ち前のマイペース顔。苛立ちを見せることもなく、飄々としているところがいい。14歳からのアメリカ生活。英語の能力はほとんどネイティブ並みだが、ここまで来ると、英語力をひけらかすとか、英語に固執するとか、そういう次元を完全に離脱してしまう。それゆえ、キャディのケーシーにも、「おい、帰るぞ!」といきなり日本語。突然、日本語で話しかけれたケーシーは、きょとんとしてしまったので、横から私が、「帰るんだって。帰るの」と日本語で繰り返すと、ボスの言葉をどうにか理解しようとしたケーシーは、「ケ~ル?」。さすが!2回聞いただけで、日本語を聞き取ったケーシー。こんなに忠実なキャディがついているのだから百人力。だから今田くん、朝はもうちょっとだけ早く来ようね!

今田&丸山.jpg
練習日、今田(左)と丸山(右)は練習グリーン上でお互いのパターを交換して打ち比べていた。
Photo/JJ TANABE

試合の準備はどうあるべき?

試合のラウンドにどう備えるか、そのルーティーンは選手によってまちまちだ。たとえば、デービス・ラブは、ティタイムのぎりぎり直前にコースへやってきて、バタバタとスタートしていくのが日常。「あんまり早々とコースに来て備えようとすると、あれこれ考えちゃって、かえって調子がおかしくなる」と彼は言う。パラグアイ出身のカルロス・フランコは、コースにやってくるのは比較的早いのだが、フラフラ歩いたり、顔見知りの選手や関係者とおしゃべりをしながらリラックスする。練習はあまりしないのだが、「ボク、ゴルフ下手だから、練習してもダメネ」なんてことを、いつだったか、ちょっぴりぎこちない日本語で話してくれたことがあった。もちろん、きっちり練習した上でスタートする選手のほうが多いのは当然で、大抵の場合、1時間前にコースに来て、まずチップ&ピッチ練習、次に練習場で一通りの番手を打ち、最後に練習グリーンでパットを調整してから1番ティへ、といった流れが一般的だ。

そんな中、先週のクライスラークラシック・オブ・グリーンズボロに出場していた今田竜二は、爆笑もののスタート準備になってしまった。クラブハウスから練習場へ行くには、報道関係者のためのメディアセンターの前を通っていくのだが、私がメディアセンターの前にたまたま立っていたら、そこを今田がものすごい勢いで走り抜けていったのだ。セキュリティガードたちも、今田の慌てぶりにびっくり仰天。なんせ今田は何かとんでもないことでも起こったのかと思うほどの猛スピードで走っていたのだから。手にはクラブが3本だけ握られている。シューズはちゃんと履いている。なぜ、クラブを数本だけ持って、練習場へ走っていったのか。すぐに、その意味がわかった。はっはあ~、こりゃ、寝坊したに違いない!

今田とクラブ3本.jpg
2日目のラウンド直前のレンジで、クラブ3本だけって、、。
PHOT/JJ TANABE

今田がメディアセンター前を走り抜けていったのは、彼のティタイムのわずか25分前。こんなに直前に練習場へ行くのは今田にしては異例ゆえ、とにかくスタート前にちょっとだけも球を打たなければと慌てていることが想像できた。面白いから‥‥なんて言ったら今田に失礼かもしれないが、一体どれほど慌てた顔で球を打っているのか、見たくなって、練習場まで追いかけた。

今田は練習場の入り口に一番近い打席にいた。1球打つと、球の行方を見ることもなく、次なる球をセットする。どうやら、その打席に残されていたボールをそのまま打ち始めたと見え、バケツはすでに空になりつつある。「ビシーッ!」と球を打つたびに、今田は後方の打席を振り返りながら、そこに落ちているボールをクラブヘッドでたぐり寄せる。おいおい、そんなに急いで打ったら、スウィングのリズムも何もあったもんじゃないよお~と言いたいぐらいの慌てよう。一体どうなることやら。

10分ほど、そうやって球を打ち続けた今田は、地面に放り投げるように置いていたドライバーとミドルアイアンとウエッジをわしづかみにした。「準備完了ですか?」と思わず笑いながら声をかけると、今田は返答する余裕もなく、「えっ?はあ~」と言い残し、練習グリーンの方向へ走り去っていった。

いざ、ラウンドが始まると、今田は出だしから連続バーディ。フロントナインを3アンダーで回り、むしろ好調だった。だが、後半に入ると逆に調子を落とし、結局はドタバタスタートのツケが回った?ラウンド後、「大慌てのスタートでしたけど‥‥」と、またこの話を蒸し返してみた。すると、今田いわく、「いや、寝坊じゃないんですよ。道に迷っちゃって‥‥で、ガソリンが無くなりそうで、スタンドを探してフリーウエイを降りたんだけど、そのたびにスタンドが無かったり閉まっていたり。で、遅くなっちゃって‥‥」。どうして前夜に給油しなかったの?「昨日は自分のゴルフにショックで、精神的にガソリンを入れる余裕がなかったんですよ‥‥」。

今田のキャディのケーシー・ケロッグの証言。「リュウジは年に1回ぐらい、こういうことがあるんだ。ネイションワイドツアーに出ていたときも、なかなかコースに来ないからティタイムの20分ぐらい前に電話したら、寝てたんだ」。

まあ、寝坊だったのか、道に迷ったのか、追及しても意味はない。私が言いたいのは、今田竜二という選手が、こんなふうに、親しみ溢れる素顔の持ち主だということ。同じ米ツアーで戦う田中秀道が、「リュウジは実は、オレたちの間ではウラ番(裏番長)なんです」というほど。いやいや、別に悪いことをしているわけじゃないけれど、アメリカ生活が長い分、今田はアメリカの若者たちの楽しみ方を知っているということ。そのいくつかを教えてあげると、田中には、すごい遊びを教えられたなんて気がするのかもしれない。

ところで、今田は今年がルーキー。6月の全米オープンで15位タイに食い込み、その時点で今季の獲得賞金総額が60万ドルを突破。これならシード獲得は間違いないと本人も周囲も思った。だが、すでに痛めていた腰の状態が悪化し、しばらく欠場。その後、ツアーに復帰したら、先週まで6連続予選落ち。現在の賞金ランクは112位に落ち、本当に125位以内に残ってシード獲得ができるのだろうかと、いささか心配される状況にある。

それでも、今田は持ち前のマイペース顔。苛立ちを見せることもなく、飄々としているところがいい。14歳からのアメリカ生活。英語の能力はほとんどネイティブ並みだが、ここまで来ると、英語力をひけらかすとか、英語に固執するとか、そういう次元を完全に離脱してしまう。それゆえ、キャディのケーシーにも、「おい、帰るぞ!」といきなり日本語。突然、日本語で話しかけれたケーシーは、きょとんとしてしまったので、横から私が、「帰るんだって。帰るの」と日本語で繰り返すと、ボスの言葉をどうにか理解しようとしたケーシーは、「ケ~ル?」。さすが!2回聞いただけで、日本語を聞き取ったケーシー。こんなに忠実なキャディがついているのだから百人力。だから今田くん、朝はもうちょっとだけ早く来ようね!

今田&丸山.jpg
練習日、今田(左)と丸山(右)は練習グリーン上でお互いのパターを交換して打ち比べていた。
Photo/JJ TANABE

試合の準備はどうあるべき?

試合のラウンドにどう備えるか、そのルーティーンは選手によってまちまちだ。たとえば、デービス・ラブは、ティタイムのぎりぎり直前にコースへやってきて、バタバタとスタートしていくのが日常。「あんまり早々とコースに来て備えようとすると、あれこれ考えちゃって、かえって調子がおかしくなる」と彼は言う。パラグアイ出身のカルロス・フランコは、コースにやってくるのは比較的早いのだが、フラフラ歩いたり、顔見知りの選手や関係者とおしゃべりをしながらリラックスする。練習はあまりしないのだが、「ボク、ゴルフ下手だから、練習してもダメネ」なんてことを、いつだったか、ちょっぴりぎこちない日本語で話してくれたことがあった。もちろん、きっちり練習した上でスタートする選手のほうが多いのは当然で、大抵の場合、1時間前にコースに来て、まずチップ&ピッチ練習、次に練習場で一通りの番手を打ち、最後に練習グリーンでパットを調整してから1番ティへ、といった流れが一般的だ。

そんな中、先週のクライスラークラシック・オブ・グリーンズボロに出場していた今田竜二は、爆笑もののスタート準備になってしまった。クラブハウスから練習場へ行くには、報道関係者のためのメディアセンターの前を通っていくのだが、私がメディアセンターの前にたまたま立っていたら、そこを今田がものすごい勢いで走り抜けていったのだ。セキュリティガードたちも、今田の慌てぶりにびっくり仰天。なんせ今田は何かとんでもないことでも起こったのかと思うほどの猛スピードで走っていたのだから。手にはクラブが3本だけ握られている。シューズはちゃんと履いている。なぜ、クラブを数本だけ持って、練習場へ走っていったのか。すぐに、その意味がわかった。はっはあ~、こりゃ、寝坊したに違いない!

今田とクラブ3本.jpg
2日目のラウンド直前のレンジで、クラブ3本だけって、、。
PHOT/JJ TANABE

今田がメディアセンター前を走り抜けていったのは、彼のティタイムのわずか25分前。こんなに直前に練習場へ行くのは今田にしては異例ゆえ、とにかくスタート前にちょっとだけも球を打たなければと慌てていることが想像できた。面白いから‥‥なんて言ったら今田に失礼かもしれないが、一体どれほど慌てた顔で球を打っているのか、見たくなって、練習場まで追いかけた。

今田は練習場の入り口に一番近い打席にいた。1球打つと、球の行方を見ることもなく、次なる球をセットする。どうやら、その打席に残されていたボールをそのまま打ち始めたと見え、バケツはすでに空になりつつある。「ビシーッ!」と球を打つたびに、今田は後方の打席を振り返りながら、そこに落ちているボールをクラブヘッドでたぐり寄せる。おいおい、そんなに急いで打ったら、スウィングのリズムも何もあったもんじゃないよお~と言いたいぐらいの慌てよう。一体どうなることやら。

10分ほど、そうやって球を打ち続けた今田は、地面に放り投げるように置いていたドライバーとミドルアイアンとウエッジをわしづかみにした。「準備完了ですか?」と思わず笑いながら声をかけると、今田は返答する余裕もなく、「えっ?はあ~」と言い残し、練習グリーンの方向へ走り去っていった。

いざ、ラウンドが始まると、今田は出だしから連続バーディ。フロントナインを3アンダーで回り、むしろ好調だった。だが、後半に入ると逆に調子を落とし、結局はドタバタスタートのツケが回った?ラウンド後、「大慌てのスタートでしたけど‥‥」と、またこの話を蒸し返してみた。すると、今田いわく、「いや、寝坊じゃないんですよ。道に迷っちゃって‥‥で、ガソリンが無くなりそうで、スタンドを探してフリーウエイを降りたんだけど、そのたびにスタンドが無かったり閉まっていたり。で、遅くなっちゃって‥‥」。どうして前夜に給油しなかったの?「昨日は自分のゴルフにショックで、精神的にガソリンを入れる余裕がなかったんですよ‥‥」。

今田のキャディのケーシー・ケロッグの証言。「リュウジは年に1回ぐらい、こういうことがあるんだ。ネイションワイドツアーに出ていたときも、なかなかコースに来ないからティタイムの20分ぐらい前に電話したら、寝てたんだ」。

まあ、寝坊だったのか、道に迷ったのか、追及しても意味はない。私が言いたいのは、今田竜二という選手が、こんなふうに、親しみ溢れる素顔の持ち主だということ。同じ米ツアーで戦う田中秀道が、「リュウジは実は、オレたちの間ではウラ番(裏番長)なんです」というほど。いやいや、別に悪いことをしているわけじゃないけれど、アメリカ生活が長い分、今田はアメリカの若者たちの楽しみ方を知っているということ。そのいくつかを教えてあげると、田中には、すごい遊びを教えられたなんて気がするのかもしれない。

ところで、今田は今年がルーキー。6月の全米オープンで15位タイに食い込み、その時点で今季の獲得賞金総額が60万ドルを突破。これならシード獲得は間違いないと本人も周囲も思った。だが、すでに痛めていた腰の状態が悪化し、しばらく欠場。その後、ツアーに復帰したら、先週まで6連続予選落ち。現在の賞金ランクは112位に落ち、本当に125位以内に残ってシード獲得ができるのだろうかと、いささか心配される状況にある。

それでも、今田は持ち前のマイペース顔。苛立ちを見せることもなく、飄々としているところがいい。14歳からのアメリカ生活。英語の能力はほとんどネイティブ並みだが、ここまで来ると、英語力をひけらかすとか、英語に固執するとか、そういう次元を完全に離脱してしまう。それゆえ、キャディのケーシーにも、「おい、帰るぞ!」といきなり日本語。突然、日本語で話しかけれたケーシーは、きょとんとしてしまったので、横から私が、「帰るんだって。帰るの」と日本語で繰り返すと、ボスの言葉をどうにか理解しようとしたケーシーは、「ケ~ル?」。さすが!2回聞いただけで、日本語を聞き取ったケーシー。こんなに忠実なキャディがついているのだから百人力。だから今田くん、朝はもうちょっとだけ早く来ようね!

今田&丸山.jpg
練習日、今田(左)と丸山(右)は練習グリーン上でお互いのパターを交換して打ち比べていた。
Photo/JJ TANABE

2005年10月03日

最新掲載記事(週刊東洋経済)

舩越園子の最新掲載記事は、10月3日発売の週刊東洋経済で
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http://www.toyokeizai.co.jp/mag/toyo/golf/

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2005年10月01日

爆笑の陰に何があった?

第6回プレジデンツカップは感動のドラマだった。一昨年の第5回大会が引き分けに終わっていただけに、米国チームも国際チームも決着をつけようと燃えていた。だが、どちらかといえば、その「燃え方」は米国チームのほうが熱かったと思う。なぜなら、彼らは尊敬してやまないジャック・ニクラスにキャプテンとしての勝利の美酒を味わわせてあげたいと心底願っていたからだ。今年の全英オープンを最後にすべての競技ゴルフから引退したニクラス。そんな帝王のために戦いたい‥‥。普段なら個人主義、合理主義でバラバラのアメリカ人たちが、この大会では一致団結して燃えていたのだ。

取材するメディアも大半はアメリカ人。それゆえ、メディアセンター内では米国チームがポイントをゲットするたびに拍手が沸き起こった。

だが、それほどシリアスになっていたアメリカ人メディアたちを爆笑の渦に落とし入れた人物がいた。それは、フィル・ミケルソンだ。

最終日の個人マッチ。米国チーム対国際チームが17対15になり、あと1ポイント取れば米国チームの優勝が決まるという緊迫した状況。1ダウンで18番を迎えたミケルソンは、そのホールを取り、オールスクエアに戻した。一昨年までのルールならマッチの引き分けは0.5ポイントと数えられたため、この時点で米国チームが過半数を超える17.5ポイントを得て、優勝が決まっていた。しかし、今年から個人マッチは勝敗がつくまで続行するという新ルールに変わったため、ミケルソンはエクストラホールの1番へ行かなければいけなかった。

ミケルソン@プレジデンツカップ.jpg
PHOTO/JJ TANABE

だが、「新ルールを読んでいなかった」という彼は、そこで自分自身のマッチ勝利と米国チーム優勝が決まったものと思い込み、周囲の人々に握手を求め始めた。「サンキュー!」と言いながらルールオフィシャルにも握手を求めたそのとき、ルールオフィシャルから「まだ終わってないよ!」と言われ、ミケルソンは「What????」と、びっくり仰天。その瞬間のきょとんとした顔がメディアセンターの大画面モニターに大写しになっていたため、メディアセンター内は爆笑の渦に包まれたのだ。

ミケルソンはアメリカの国民的スター選手。タイガー・ウッズよりも人気は高い。ファンへのサービス精神も旺盛。そんな姿勢がミケルソン人気をさらに押し上げる。だが、その優等生ぶりが選手たちの反感を買うこともあり、ファンにはサービスするけど取材は拒否するなんてことがときどきあるせいか、アメリカ人メディアからのウケは今ひとつなのだ。

だからであろう。プレジデンツカップという栄えある大会の大事な場面でミケルソンが見せた「おとぼけ劇」は、必要以上にアメリカ人メディアを喜ばせてしまったようだ。

そもそも、ミケルソンがアメリカ人メディアからの取材をときどき拒否する理由は、かつて、なかなかメジャーに勝てなかったころ、「メジャー勝利のないグッドプレーヤー」なんて残酷な呼称を彼にかぶせたこと、そして、ことあるごとにメジャー勝利に関して彼を質問攻めにしたこと、そんなこんなに対するミケルソンなりの反撃でもあるわけだ。

そして、今回のプレジデンツカップでの「おとぼけ劇」は、普段、取材において苦い思いを味わわされているアメリカ人メディアが、このときとばかりにミケルソンに「反撃」の意を込めて彼を笑い飛ばした‥‥という感じ。

なにやらレベルの低い攻防戦だが、さもありなんという話ではある。外国人メディアの私は、そんな攻防戦を傍で眺めながら、「漁夫の利」を得ることが多いから実はラッキーな立場なのだ。だから、ミケルソンもアメリカ人メディアも「どんどんやってくれえ~!」なんて、ちょっぴり思ってしまう。

ミケルソン夫婦.jpg
PHOTO/JJ TANABE

爆笑の陰に何があった?

第6回プレジデンツカップは感動のドラマだった。一昨年の第5回大会が引き分けに終わっていただけに、米国チームも国際チームも決着をつけようと燃えていた。だが、どちらかといえば、その「燃え方」は米国チームのほうが熱かったと思う。なぜなら、彼らは尊敬してやまないジャック・ニクラスにキャプテンとしての勝利の美酒を味わわせてあげたいと心底願っていたからだ。今年の全英オープンを最後にすべての競技ゴルフから引退したニクラス。そんな帝王のために戦いたい‥‥。普段なら個人主義、合理主義でバラバラのアメリカ人たちが、この大会では一致団結して燃えていたのだ。

取材するメディアも大半はアメリカ人。それゆえ、メディアセンター内では米国チームがポイントをゲットするたびに拍手が沸き起こった。

だが、それほどシリアスになっていたアメリカ人メディアたちを爆笑の渦に落とし入れた人物がいた。それは、フィル・ミケルソンだ。

最終日の個人マッチ。米国チーム対国際チームが17対15になり、あと1ポイント取れば米国チームの優勝が決まるという緊迫した状況。1ダウンで18番を迎えたミケルソンは、そのホールを取り、オールスクエアに戻した。一昨年までのルールならマッチの引き分けは0.5ポイントと数えられたため、この時点で米国チームが過半数を超える17.5ポイントを得て、優勝が決まっていた。しかし、今年から個人マッチは勝敗がつくまで続行するという新ルールに変わったため、ミケルソンはエクストラホールの1番へ行かなければいけなかった。

ミケルソン@プレジデンツカップ.jpg
PHOTO/JJ TANABE

だが、「新ルールを読んでいなかった」という彼は、そこで自分自身のマッチ勝利と米国チーム優勝が決まったものと思い込み、周囲の人々に握手を求め始めた。「サンキュー!」と言いながらルールオフィシャルにも握手を求めたそのとき、ルールオフィシャルから「まだ終わってないよ!」と言われ、ミケルソンは「What????」と、びっくり仰天。その瞬間のきょとんとした顔がメディアセンターの大画面モニターに大写しになっていたため、メディアセンター内は爆笑の渦に包まれたのだ。

ミケルソンはアメリカの国民的スター選手。タイガー・ウッズよりも人気は高い。ファンへのサービス精神も旺盛。そんな姿勢がミケルソン人気をさらに押し上げる。だが、その優等生ぶりが選手たちの反感を買うこともあり、ファンにはサービスするけど取材は拒否するなんてことがときどきあるせいか、アメリカ人メディアからのウケは今ひとつなのだ。

だからであろう。プレジデンツカップという栄えある大会の大事な場面でミケルソンが見せた「おとぼけ劇」は、必要以上にアメリカ人メディアを喜ばせてしまったようだ。

そもそも、ミケルソンがアメリカ人メディアからの取材をときどき拒否する理由は、かつて、なかなかメジャーに勝てなかったころ、「メジャー勝利のないグッドプレーヤー」なんて残酷な呼称を彼にかぶせたこと、そして、ことあるごとにメジャー勝利に関して彼を質問攻めにしたこと、そんなこんなに対するミケルソンなりの反撃でもあるわけだ。

そして、今回のプレジデンツカップでの「おとぼけ劇」は、普段、取材において苦い思いを味わわされているアメリカ人メディアが、このときとばかりにミケルソンに「反撃」の意を込めて彼を笑い飛ばした‥‥という感じ。

なにやらレベルの低い攻防戦だが、さもありなんという話ではある。外国人メディアの私は、そんな攻防戦を傍で眺めながら、「漁夫の利」を得ることが多いから実はラッキーな立場なのだ。だから、ミケルソンもアメリカ人メディアも「どんどんやってくれえ~!」なんて、ちょっぴり思ってしまう。

ミケルソン夫婦.jpg
PHOTO/JJ TANABE

爆笑の陰に何があった?

第6回プレジデンツカップは感動のドラマだった。一昨年の第5回大会が引き分けに終わっていただけに、米国チームも国際チームも決着をつけようと燃えていた。だが、どちらかといえば、その「燃え方」は米国チームのほうが熱かったと思う。なぜなら、彼らは尊敬してやまないジャック・ニクラスにキャプテンとしての勝利の美酒を味わわせてあげたいと心底願っていたからだ。今年の全英オープンを最後にすべての競技ゴルフから引退したニクラス。そんな帝王のために戦いたい‥‥。普段なら個人主義、合理主義でバラバラのアメリカ人たちが、この大会では一致団結して燃えていたのだ。

取材するメディアも大半はアメリカ人。それゆえ、メディアセンター内では米国チームがポイントをゲットするたびに拍手が沸き起こった。

だが、それほどシリアスになっていたアメリカ人メディアたちを爆笑の渦に落とし入れた人物がいた。それは、フィル・ミケルソンだ。

最終日の個人マッチ。米国チーム対国際チームが17対15になり、あと1ポイント取れば米国チームの優勝が決まるという緊迫した状況。1ダウンで18番を迎えたミケルソンは、そのホールを取り、オールスクエアに戻した。一昨年までのルールならマッチの引き分けは0.5ポイントと数えられたため、この時点で米国チームが過半数を超える17.5ポイントを得て、優勝が決まっていた。しかし、今年から個人マッチは勝敗がつくまで続行するという新ルールに変わったため、ミケルソンはエクストラホールの1番へ行かなければいけなかった。

ミケルソン@プレジデンツカップ.jpg
PHOTO/JJ TANABE

だが、「新ルールを読んでいなかった」という彼は、そこで自分自身のマッチ勝利と米国チーム優勝が決まったものと思い込み、周囲の人々に握手を求め始めた。「サンキュー!」と言いながらルールオフィシャルにも握手を求めたそのとき、ルールオフィシャルから「まだ終わってないよ!」と言われ、ミケルソンは「What????」と、びっくり仰天。その瞬間のきょとんとした顔がメディアセンターの大画面モニターに大写しになっていたため、メディアセンター内は爆笑の渦に包まれたのだ。

ミケルソンはアメリカの国民的スター選手。タイガー・ウッズよりも人気は高い。ファンへのサービス精神も旺盛。そんな姿勢がミケルソン人気をさらに押し上げる。だが、その優等生ぶりが選手たちの反感を買うこともあり、ファンにはサービスするけど取材は拒否するなんてことがときどきあるせいか、アメリカ人メディアからのウケは今ひとつなのだ。

だからであろう。プレジデンツカップという栄えある大会の大事な場面でミケルソンが見せた「おとぼけ劇」は、必要以上にアメリカ人メディアを喜ばせてしまったようだ。

そもそも、ミケルソンがアメリカ人メディアからの取材をときどき拒否する理由は、かつて、なかなかメジャーに勝てなかったころ、「メジャー勝利のないグッドプレーヤー」なんて残酷な呼称を彼にかぶせたこと、そして、ことあるごとにメジャー勝利に関して彼を質問攻めにしたこと、そんなこんなに対するミケルソンなりの反撃でもあるわけだ。

そして、今回のプレジデンツカップでの「おとぼけ劇」は、普段、取材において苦い思いを味わわされているアメリカ人メディアが、このときとばかりにミケルソンに「反撃」の意を込めて彼を笑い飛ばした‥‥という感じ。

なにやらレベルの低い攻防戦だが、さもありなんという話ではある。外国人メディアの私は、そんな攻防戦を傍で眺めながら、「漁夫の利」を得ることが多いから実はラッキーな立場なのだ。だから、ミケルソンもアメリカ人メディアも「どんどんやってくれえ~!」なんて、ちょっぴり思ってしまう。

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