2005年10月16日
NY&ゴルフ
今日から私のNY生活がスタートした。フロリダからニューヨークまでは約1000マイルの距離。引越しは、私の相棒であるカメラマンのJJ(田辺安啓)がトラックで荷物を運び、私は飛行機でNY入りという具合に楽をさせてもらった。しかし、アメリカ生活13年、フロリダには8年、暮らしていたわけで、その間に増えた荷物は膨大。7割方は捨て去ったが、それでも残りの3割を運ぶのは大変な作業だった。
ところで、NYというと、世界の中心地、トレンドやファッションの中心地というイメージが強く、ゴルフとはかけ離れた感がある。新しい住所や連絡先を一通りの知人友人にメールで知らせたら、私の仕事とは無関係の友人たちから、「ニューヨーク?えっ、ゴルフの仕事、辞めたの?」などというメールが返ってきて、笑ってしまった。
確かに、フロリダとゴルフは直結イメージでも、NYとゴルフは、すぐには結びつかないかもしれない。実際、マンハッタンのような街中にゴルフ場があるはずはなく、米ツアー選手でも、NY暮らしはほとんどいない。なぜ、いないか?理由は簡単。NYは冬が寒くて、ゴルフの練習ができないからだ。
プロゴルファーの多くは、冬でも温暖なフロリダ、アリゾナ、カリフォルニア暮らしが多い。NY出身者でも、プロになったら温かい気候の土地へ引っ越すことが多い。また、高額賞金を得ることから、所得税がかからないフロリダを選ぶことも多い。マルチミリオネアのタイガー・ウッズは、その代表例だ。
米ツアー選手の中でNY州内に居を構えているのは誰だろうと考えても、ジョイ・シンデラーぐらいしか思いつかない。NY近郊暮らしは、ブラッド・ファクソン。ニュージャージー州生まれのファクソンの自宅はNYから車で2時間ぐらい離れたロードアイランドだ。生粋のニューヨーカーのジェフ・スルーマンは、結婚相手が元々シカゴで開業医をしていたため、それに合わせてシカゴへ引越し、ずっとシカゴ暮らし。それ以外に、住まいとNYが結びつく選手は思い当たらない。

パットの名手で知られるファクソン。パッティングなら、冬場でも家の中で練習できる。そんなテレビCMがありました。
PHOTO/JJ TANABE
だが、NYとゴルフは無関係では決してないのだ。と言うのも、ゴルフのメジャーがNY近郊で開催されるケースは案外、多いからだ。
今年の全米プロは、NYから一歩だけニュージャージー州側へ入ったバルタスロールで開催された。去年の全米オープンは、NY州ロングアイランドにあるシネコックヒルズで開催された。02年の全米オープン開催コース、ベスページもNY。そして、これらに共通する不思議な特徴が1つある。それは、NYが舞台のメジャーでは、とにかく、フィル・ミケルソン人気が爆発するということだ。
大歓迎を受けるミケルソン自身も、「NYは最高だ。私が一番好きな土地だ」と頬をゆるっめっぱなし。なぜ、ニューヨーカーゴルファーがミケルソンに熱狂するのか、そのワケは不明なのだが、1つだけ想像できることがある。ミケルソンは元来、アメリカの国民的ヒーロー。世界ナンバー1のタイガーを上回る人気を誇っていた。そこへきて、勃発したのが、あの同時爆破テロ。苦難を味わったニューヨーカーたちは、街の再建と合衆国の安全、発展を目指し、心を1つにしようとしていた。そんなとき、NYやその近郊で開かれたメジャーで、心を1つにするための象徴を求めた。それが、ミケルソンだったというわけだ。

来年の全米オープンもNY近郊で開催。ベスページ(2002年)で優勝を争った2人のバトルの再現もありうる。
PHOTO/JJ TANABE
メジャーに限らず、米ツアーのレギュラートーナメントでも、3試合ぐらいはNYとその近郊で開催される。そのたびに選手やその家族は、マンハッタンを楽しむ。丸山茂樹や田中秀道らも、少なからずNYを好んでいるようで、「ウチにも、いらっしゃいましたよ」なんて言葉を、マンハッタンのいくつかの飲食店で聞かされたことがある。
だが、私がNYへ引っ越そうか、どうしようかと思案に暮れていたとき、丸山はこんなことを言った。「えっ、NY?やめたほうがいいよ。ビルばっかりで空が見えないんだよ。星だって見えないんだよ」。丸山は、なかなかのロマンチスト。そして、空が見えない街で暮らすのはよくないと、アドバイスをくれたのだけれど、私はそれでもNY生活を選んでしまった。なぜって、楽しそうだから。いやいや、それはそれとして、ゴルフしか見えていなかった自分の目に、もう少し栄養を与えなければ、視野や見聞が広がらないと思ったからだ。だからこそ、NY生活。でも、せっかくのアドバイスを聞き入れなくて、丸山プロ、ごめんなさい。



