2005年10月19日
飛ばし屋の悲しい性(さが)
この写真の選手は誰だか、ご存知だろうか。オーストラリア出身のスコット・ヘンド。米ツアーで飛距離ランク1位を誇る飛ばし屋だ。ヘンドが米ツアー参戦を開始したのは昨年のこと。03年秋のQスクールを通過し、出場権を得たのだが、04年シーズンの成績は賞金ランク136位と振るわず、Qスクールへ逆戻り。しかし再び出場権を獲得し、今季、2年目のツアー生活を送っている。
そのヘンドが一番気にしていることは何か。そう尋ねると、彼は必ず「シード権を獲得することだ」と答える。しかし、周囲の選手たちに尋ねると、「いいや、スコットの一番の懸案事項は、自分が飛距離ランク1位の座を守れるかどうかだよ」と口を揃える。
確かに、ヘンドのドライビングディスタンスは軽く300ヤードを超える絶大なる飛距離だ。統計によれば、現在の彼の平均飛距離は319.9ヤードで、ランク1位。あのジョン・デーリーもタイガー・ウッズも舌を巻くパワフルドライビングなのだ。そりゃ、文句なしに凄い!だが、データをよくよく眺めてみると、彼のドライビングアキュラシー(フェアウエイキープ率)は45.4%と低く、ランキングは202位まで落ちてしまう。「飛ぶけど曲がり放題」のドライバーショットが、彼の成績を殺していることは間違いない。
それなのに、彼はドライバーを振り続ける。ドライビングディスタンスは、通常、フロント9とバック9のパー5合計4ホールで計測されるのだが、パー5がドッグレッグなどでドライバーを打つ選手が少ない状況だと、比較的距離が長くまっすぐめのパー4が使用される場合もある。いずれにせよ、選手たちは、必要であれば計測ホールでもフェアウエイウッドやロングアイアンで刻む。飛距離ランクをアップすることより、そのホールでいいスコアを得ることのほうが大切だからである。
だが、ヘンドは違う。計測ホールでは必ずドライバーを振り回す。そして曲げ、ボギーやダブルボギーを叩き、順位を下げる。それでも彼がドライバーを振るわけは、やっぱりドラコン王の座を他の誰かに奪われたくないからなのだろう。
シーズン終盤を迎えた今、ヘンドと言葉を交わした。「相変わらず飛ばしているのね」と言うと、ヘンドは「まあね。でも、今の僕は飛ばすことより正確性を追求しなきゃいけないって、わかっているんだ。なんせ僕は、飛ばしは1位でも賞金ランクは165位の男だからね」
来季のシード権を獲得するためには、賞金ランクで125位以内に入らなければならない。残された試合は、あと3つ。そのうち、ヘンドが出場できるのは今週を含めた2試合しかない。両方の試合でかなり上位に入らない限り、彼は今年もまたQスクール行きだ。今は神にもすがる思いなのだろう。
そういえば、去年の今頃もヘンドと話した。彼は、なんとかしてシード権を獲得したいという思いをヘッドカバーに託していた。すばしっこく枝と枝の隙間に入り込むリスのように、シード選手の残り枠に食い込みたいと考えた彼は、可愛らしいリスのヘッドカバーを飛ばしの武器にかぶせていた。
今年も何か願掛けをしているのだろうかとゴルフバッグを覗いてみたら、ドライバーではなくパターにラスベガスのカジノのロゴマークがデザインされたカバーがかかっているではないか。「これって何の意味があるの?」「見ての通り、ギャンブルだよ。オレ、ギャンブル大好きなんだ」
なるほど。ギャンブル好きのヘンドのゴルフもまたギャンブルゴルフ。だから彼は、一か八かでドライバーを振り回し、うまく真っ直ぐ飛べば、次なるショットはショートアイアンかウエッジでちょこんと寄せるだけ。しかし、ドライバーで失敗すれば、次なるショットはブッシュの中から、あるいは砂の中から。そんなギャンブルゴルフを繰り返しているヘンドは、やっぱり今年もQスクール行きになりそうな気配だ。
PHOTO/JJ TANABE



