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舩越園子のGOLF JOURNAL

2005年10月04日

試合の準備はどうあるべき?

試合のラウンドにどう備えるか、そのルーティーンは選手によってまちまちだ。たとえば、デービス・ラブは、ティタイムのぎりぎり直前にコースへやってきて、バタバタとスタートしていくのが日常。「あんまり早々とコースに来て備えようとすると、あれこれ考えちゃって、かえって調子がおかしくなる」と彼は言う。パラグアイ出身のカルロス・フランコは、コースにやってくるのは比較的早いのだが、フラフラ歩いたり、顔見知りの選手や関係者とおしゃべりをしながらリラックスする。練習はあまりしないのだが、「ボク、ゴルフ下手だから、練習してもダメネ」なんてことを、いつだったか、ちょっぴりぎこちない日本語で話してくれたことがあった。もちろん、きっちり練習した上でスタートする選手のほうが多いのは当然で、大抵の場合、1時間前にコースに来て、まずチップ&ピッチ練習、次に練習場で一通りの番手を打ち、最後に練習グリーンでパットを調整してから1番ティへ、といった流れが一般的だ。

そんな中、先週のクライスラークラシック・オブ・グリーンズボロに出場していた今田竜二は、爆笑もののスタート準備になってしまった。クラブハウスから練習場へ行くには、報道関係者のためのメディアセンターの前を通っていくのだが、私がメディアセンターの前にたまたま立っていたら、そこを今田がものすごい勢いで走り抜けていったのだ。セキュリティガードたちも、今田の慌てぶりにびっくり仰天。なんせ今田は何かとんでもないことでも起こったのかと思うほどの猛スピードで走っていたのだから。手にはクラブが3本だけ握られている。シューズはちゃんと履いている。なぜ、クラブを数本だけ持って、練習場へ走っていったのか。すぐに、その意味がわかった。はっはあ~、こりゃ、寝坊したに違いない!

今田とクラブ3本.jpg
2日目のラウンド直前のレンジで、クラブ3本だけって、、。
PHOT/JJ TANABE

今田がメディアセンター前を走り抜けていったのは、彼のティタイムのわずか25分前。こんなに直前に練習場へ行くのは今田にしては異例ゆえ、とにかくスタート前にちょっとだけも球を打たなければと慌てていることが想像できた。面白いから‥‥なんて言ったら今田に失礼かもしれないが、一体どれほど慌てた顔で球を打っているのか、見たくなって、練習場まで追いかけた。

今田は練習場の入り口に一番近い打席にいた。1球打つと、球の行方を見ることもなく、次なる球をセットする。どうやら、その打席に残されていたボールをそのまま打ち始めたと見え、バケツはすでに空になりつつある。「ビシーッ!」と球を打つたびに、今田は後方の打席を振り返りながら、そこに落ちているボールをクラブヘッドでたぐり寄せる。おいおい、そんなに急いで打ったら、スウィングのリズムも何もあったもんじゃないよお~と言いたいぐらいの慌てよう。一体どうなることやら。

10分ほど、そうやって球を打ち続けた今田は、地面に放り投げるように置いていたドライバーとミドルアイアンとウエッジをわしづかみにした。「準備完了ですか?」と思わず笑いながら声をかけると、今田は返答する余裕もなく、「えっ?はあ~」と言い残し、練習グリーンの方向へ走り去っていった。

いざ、ラウンドが始まると、今田は出だしから連続バーディ。フロントナインを3アンダーで回り、むしろ好調だった。だが、後半に入ると逆に調子を落とし、結局はドタバタスタートのツケが回った?ラウンド後、「大慌てのスタートでしたけど‥‥」と、またこの話を蒸し返してみた。すると、今田いわく、「いや、寝坊じゃないんですよ。道に迷っちゃって‥‥で、ガソリンが無くなりそうで、スタンドを探してフリーウエイを降りたんだけど、そのたびにスタンドが無かったり閉まっていたり。で、遅くなっちゃって‥‥」。どうして前夜に給油しなかったの?「昨日は自分のゴルフにショックで、精神的にガソリンを入れる余裕がなかったんですよ‥‥」。

今田のキャディのケーシー・ケロッグの証言。「リュウジは年に1回ぐらい、こういうことがあるんだ。ネイションワイドツアーに出ていたときも、なかなかコースに来ないからティタイムの20分ぐらい前に電話したら、寝てたんだ」。

まあ、寝坊だったのか、道に迷ったのか、追及しても意味はない。私が言いたいのは、今田竜二という選手が、こんなふうに、親しみ溢れる素顔の持ち主だということ。同じ米ツアーで戦う田中秀道が、「リュウジは実は、オレたちの間ではウラ番(裏番長)なんです」というほど。いやいや、別に悪いことをしているわけじゃないけれど、アメリカ生活が長い分、今田はアメリカの若者たちの楽しみ方を知っているということ。そのいくつかを教えてあげると、田中には、すごい遊びを教えられたなんて気がするのかもしれない。

ところで、今田は今年がルーキー。6月の全米オープンで15位タイに食い込み、その時点で今季の獲得賞金総額が60万ドルを突破。これならシード獲得は間違いないと本人も周囲も思った。だが、すでに痛めていた腰の状態が悪化し、しばらく欠場。その後、ツアーに復帰したら、先週まで6連続予選落ち。現在の賞金ランクは112位に落ち、本当に125位以内に残ってシード獲得ができるのだろうかと、いささか心配される状況にある。

それでも、今田は持ち前のマイペース顔。苛立ちを見せることもなく、飄々としているところがいい。14歳からのアメリカ生活。英語の能力はほとんどネイティブ並みだが、ここまで来ると、英語力をひけらかすとか、英語に固執するとか、そういう次元を完全に離脱してしまう。それゆえ、キャディのケーシーにも、「おい、帰るぞ!」といきなり日本語。突然、日本語で話しかけれたケーシーは、きょとんとしてしまったので、横から私が、「帰るんだって。帰るの」と日本語で繰り返すと、ボスの言葉をどうにか理解しようとしたケーシーは、「ケ~ル?」。さすが!2回聞いただけで、日本語を聞き取ったケーシー。こんなに忠実なキャディがついているのだから百人力。だから今田くん、朝はもうちょっとだけ早く来ようね!

今田&丸山.jpg
練習日、今田(左)と丸山(右)は練習グリーン上でお互いのパターを交換して打ち比べていた。
Photo/JJ TANABE

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