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舩越園子のGOLF JOURNAL

2005年10月07日

ルール違反の方位磁石?

ゴルフでは、ショットやパットの助けになるモノを使用してはいけないというルールがある。棒状のものをバッグに入れているだけで、「クラブ的なもの」を15本以上所持していることになってしまうし、ショットする地点まで持っていた余分なクラブを地面に置いた場合、その置いたクラブが狙った方向にたまたま向いているだけで、アライメントの助けになるものを使ったとみなされ、やっぱりルール違反に問われてしまう‥‥なんてことは、ゴルフ好きのみなさんなら、もちろんご存知だと思う。

だが、思わぬものが、ルール違反の嫌疑をかけられることがある。先日、丸山茂樹と話していたときのこと。なぜだか話題はタバコだった。丸山が突然、こんなことを言った。「以前、杉ちゃんが持ってた携帯灰皿が方位磁石だって言われて、ルール委員が飛んできたんだよ、試合中に‥‥」。

「杉ちゃん」とは、丸山のキャディの杉澤伸章さん。ラウンド中、彼は丸い携帯灰皿をベルトのあたりから提げていたのだが、それがギャラリーから「方位磁石だ」と指摘されたのだそうだ。

方位磁石を持っていたら、風の方向などを知る上で、ショットの助けになるとみなされる。だから、本当に方位磁石を持っていたら、ルール違反ということになるわけだが、まさかそんなものを杉ちゃんが持っているはずがない。ルール委員から「おい、コンパス持ってるのか?」と尋ねられた杉ちゃんは、「えっ?何のこと?まさか、これ?」という具合に、携帯灰皿を差し出し、ルール委員も灰皿だと知って納得。やれやれ、一件落着となったのだそうだ。

携帯灰皿.jpg
アメリカ人には、携帯灰皿はまだまだ“珍品”。日本が世界に誇るマナー商品だ。
PHOTO/JJ TANABE

それにしても、たびたび日本の一部のマスコミやファンから問題視されてきた丸山の喫煙マナー。だが、丸山本人は、ちゃんと携帯灰皿を杉ちゃんに持ってもらってラウンドしているのだ。それなのに、その携帯灰皿が、よりによって「方位磁石=ルール違反」の嫌疑をかけられてしまうのだから、まったく世の中、うまくいかないものだ。

タバコといえば、米ツアー選手の中にスモーカーは結構いる。タバコではなく、シガーや噛みタバコを好む選手も、それなりにいる。ジョン・デーリーなどは、スモーカープロの代表格で、「食わえタバコのまま300ヤードドライブを放てる唯一のプロゴルファー」と米ゴルフ雑誌で表現されるほどだ。だが、欧米選手の喫煙マナーが問題視されることは、日米どちらのマスコミを観察しても、ほとんどないから不思議だ。なぜ、丸山だけが槍玉に上げられるのか。おそらくは、日本独特のスポーツ理念、道徳観によるものだろう。「真剣なスポーツの最中に、我が日本人がタバコを吸うなんて、もってのほかだ!」という感じ。

「日本独特の‥‥」というフレーズを口にすると、どうしても思い出してしまう出来事がある。それは、もう10数年も前のことだが、日本の試合のテレビ中継で解説を務めていた熟年プロゴルファーが、ジャンボ尾崎と同組で回っていた若手プロが傘(日傘がわりだったと記憶している)をさしながらプレーしていたことに対し、ジャンボに失礼だという意味合いの発言をしていたのだ。

あれを聞いたときは、どうにもこうにもナンセンスな発言だと苦笑してしまった。相手が誰であれ、傘をさして何が悪い?雨をよけたい、強い日差しから身を守りたい、エネルギーとスタミナをキープしたいと思ったら、先輩後輩、老若男女に関わらず、傘をさせばよいのだ。

日本のプロが、大先輩と一緒にラウンドする際、「パットのラインを読むとき、立っている先輩の前を横切れない。わざわざ先輩の後ろを通って、自分のラインを読みにいく」と言っていたことがある。これも、日本独特の感覚だ。欧米のプロたちは、たとえ同伴競技者がタイガーだろうとアーニー・エルスだろうと、自分の仕事を遂行するためなら、前でも後ろでも平気で横切っていく。

日本流に言えば、そうした欧米流は「図太い」「無神経」ということになりそうだが、実はその図太さこそが、ゴルフの大舞台には必要なのだ。たとえば、大事な試合でスロープレーの計測が入ったとき、日本人選手は大抵の場合、ドキドキして慌ててしまい、ペースがすっかり乱れてしまう。しかし、欧米選手は、さほどドキドキすることなく、落ち着いて急ぐ。この「落ち着いて急ぐ」というのが、なんとも難しいのだが、それができるかどうかのカギになるのは、欧米流の図太さだと私は思う。

なぜ、欧米選手は図太くいられるのか。思うに、彼らは個人主義。他人からどう思われようと気にしない。行動を起す理由は常に「自分がそうしたいからそうする」だけのこと。それゆえ、何をするときも、自分の考えと気持ちが最優先であり、他人の見方や意見は、はっきり言って気にならない。

そう考えれば、喫煙の問題も、「自分が吸いたいから吸う」でいいわけだ。無論、アメリカでは日本以上に嫌煙権なるもののステータスが拡大しているが、ちゃんと携帯灰皿を用意して、他人にもコースにも迷惑をかけないよう配慮している丸山が、タバコを吸うことで責められる理由はどこにもないではないか‥‥丸山の方位磁石の話を聞きながら、私の頭の中では、そんなこんなが堂々巡りしてしまった。

しかし、その出来事以来、杉ちゃんは、練習ラウンドのときだけ携帯灰皿をベルトから提げ、本戦中はキャディビブのポケットなどにしまうようにして、あらぬ誤解を受けないよう注意しているそうだ。そう、人間誰しもトラブルは避けたいもの。杉ちゃんのそんな心遣いがあるからこそ、丸山もプレーに集中できる。そして、タバコがメンタル面のリラックスや気持ちの転換に役立っているのだから、彼がタバコを吸うことに私は決して反対しない。何を隠そう、この私もスモーカーなのだから。

丸山とキャディの杉澤.jpg
キャディ杉澤も、丸山同様のスモーカーだ。
PHOTO/JJ TANABE

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