2005年10月11日
放っておけない人
米ツアーはシーズン終盤戦。この時期になると、気になるのはシード権争いだ。ボーダーラインの賞金ランク125位近辺でさまよっている選手たちは、まさに1ドル単位でしのぎを削る思いだが、私が個人的に放っておけない選手は2人いる。1人は日本の田中秀道。そしてもう1人は、ケビン・スタドラーだ。米ツアー参戦4年目の田中は現在167位と苦戦しており、ケビンも田中とほぼ同じ163位にいる。
ケビンは、その名でおわかりの通り、あのクレッグ・スタドラーの息子だ。父親クレッグはマスターズ1勝を含む米ツアー13勝のメジャーチャンプ。だが、あのぼってり太った体型、ズボンに一生懸命しまってもしまっても出てくるシャツの裾、ヒゲの合間から覗かせるかわいい笑顔。そんな風貌はツワモノとは思えぬ愛らしさだ。ニックネームはセイウチ。数年前、その父親と息子がファザー&サン(父子)トーナメントに出ていたとき、2人揃ってティグラウンドに立つ様は、まさに2頭のセイウチのショータイムそのものだったことを昨日のことのように覚えている。
2年前、シニア入りした父クレッグが、若者に混じって米ツアーに出場し、史上5番目の長老優勝を達成した。あれは自分が出れば息子もスポンサー推薦で出られると知り、「それならば」と出場して優勝してしまったという珍事だった。「優勝する予定はなかったけど勝っちゃった。オレには計画性ってものがないからなあ」
あのころは父親同伴でやっと試合に出ることができた息子ケビン。だが、昨年、二軍のネイションワイドツアーで賞金ランク13位になり、今年の米ツアー出場権を自力で獲得した。ネイション2勝ゆえ、底力はある。しかし、米ツアーでは、なかなか好成績が出せずにいる。それでも、あの大人気のセイウチの息子ということで、ギャラリーからの人気はやっぱり高く、「お父さんにそっくりだねえ!」と声援が飛ぶ。すると、ケビンは、「そんな不思議なことを言われたのは初めてだ」なんてジョークで返す。体型のみならず、ユーモラスな一面も父親譲りのようだ。



人気は上々。いつも話題の的。あとは成績だけなのだが、、、。
PHOTO/JJ TANABE
いつだったか、父親クレッグがこう言っていた。「オレは計画性がないけど、物事はすべて成り行きだから、計画性はなくてもいいのさ」。しかし、この表現は、クレッグの照れ隠しだ。ただ指をくわえて無計画に待っていたらメジャータイトルが転がり込んだはずはないのだから。そんな父親の背中を、息子ケビンはちゃんと見ながら育ったのだろう。「今年はずっと苦戦しているけど、僕はじっくりがんばります。今年、シード権が取れなかったら、またネイションワイドに戻って一から出直し、何度でも挑戦します」。
多くは望まず。地道な努力は欠かさず。セイウチ親子の流儀だ。
舩越園子



