2005年10月25日
ドロボーヒゲ
今年のいつごろからだったか、忘れてしまったのだが、タイガー・ウッズが無精ヒゲをたくわえるようになった。口の周りがヒゲだらけ。なんとなく、漫画やお話に登場するコソドロみたいなヒゲなので、仲間うちで彼のヒゲを「ドロボーヒゲ」と命名した。
ところが、その後、米ツアー選手の間で、そのドロボーヒゲが密かに流行り出したから笑ってしまう。だからといって、じゃあ誰がドロボーヒゲなのかと問われてしまうと、誰々だと答えられない。なぜなら、タイガーの真似をしてドロボーヒゲ顔になった選手の大半は無名選手だからだ。
一昨年から昨年にかけて、イアン・ポールターが髪をカラフルな色に染め、マスターズ委員会からお咎めを受けるという出来事があったが、あのときポールターは、「髪は自分のアイデンティティだ」と語り、私はそれなりに共感した。そう、選手というものは、ゴルフスタイルにしろ、ポリシーにしろ、個性にしろ、自分なりのアイデンティティを保つべき。でなければ、125名もいるシード選手、1試合150名前後もいる出場選手の中で自分を目立たせ、引き立たせることは難しい。だが、自己主張がなければ人気も出ない。人気が出なければ、スポンサーも獲得しにくい。だから、選手がPI(パーソナルアイデンティティ)を確立することは、とても重要なことなのだ。
タイガーのドロボーヒゲは、いまさらヒゲでPIを確立しようとするものではないだろう。彼はすでにスーパースターなのだから。タイガーの場合、ドロボーヒゲはちょっとした気分転換に違いない。で、真似し始めた選手たちにとって、ドロボーヒゲは「タイガーにあやかりたい」の一心だろう。なぜって、もしPI確立のためだったら、タイガーとは異なるものにすべきであって、同じヒゲでもドロボーヒゲではなく、王様ヒゲとか、まったく別のシェイプのヒゲを選ぶはずだから。
そんな中、ドロビーヒゲをたくわえ始めた1人、ブレット・クイグリーに声をかけてみた。「なぜ、そのヒゲにしたの?」と尋ねたら、クイグリーいわく、「ん?これはね‥‥このところ嫌なことばかり続いていたし、考えすぎて精神病になっちゃいそうだったし、だから気分転換に伸ばしてみたんだ」とのこと。あれっ?私の想像は的外れだったのだろうか?タイガーにあやかりたいからではなかったのだろうか?
しばらく談笑を続けていたら、クイグリーがこう続けた。「タイガーも気分転換にヒゲ伸ばしているんでしょ?だから僕も、気分転換にヒゲを伸ばしてみた。このヒゲ、結構、タイガーっぽいでしょ?」ビンゴ!やっぱりタイガーの真似だった。タイガーにあやかりたいという気持ちだったのだ。
だが、ちょっと考え込んでしまった。だって、タイガーにあやかりたい、タイガーの真似をしたいと思っている限り、なかなかスターにはなれないんじゃないですか?気持ちはわからなくもないけど、やっぱり自分らしさを主張してほしいと思わずにはいられない。たとえ、ヒゲの1つでも‥‥。

タイガー・ウッズ=賞金の“大ドロボー”とは、少々言いすぎか!?

ブレット・クイグリー=飛距離だけならタイガーにも引けを取らない、隠れた飛ばし屋。
PHOTO/JJ TANABE



