2006年05月31日
メモリアルトーナメントの練習日、丸山茂樹がラウンド終了後、いきなり靴下を脱いで足の裏を披露。何してるのかと思ったら、先週のフェデックス・セントジュードクラシックの際、足の裏にひどいマメができてしまい、我慢してプレーを続けていたら、どんどん悪化してしまったのだそうだ。
「最終日には杖ついて歩いてたんだもん」と丸山。あまりにも痛むマメをかばって歩いたせいで、今度は足や腰の別の場所まで痛くなり、最終日は杖なしでは歩けない痛さに発展しまったそうだ。
で、驚いたのはここから先だ。「本物の杖を使っていいかってPGAツアーに聞いたら、ダメだって言われて、で、練習のときなんかに使っていた変な棒みたいなものはどうかって聞いたら、それはOKだった。でもさあ、それって、ビヨーンって5~6メートルぐらいまで伸びる棒なんだよねえ。それに、クラブを振るみたいにその棒を振ったら、クラブ風のものを14本以上持っていたってことになるから失格になっちゃうでしょ?」
なるほど。足が痛くて杖をつくにも、いろいろ気をつけるべきことがあるということだ。それにしても、その足の裏にできたマメは痛々しいものだった。もう、見た目には普通に歩けるようになっているが、まだ痛いのは痛いらしい。せっかくゴルフの調子が上昇気流に乗ってきたのだから、マメに負けて成績不振になってほしくない。
そう言えば、5月に復帰した際、NHKのインタビューで「このままウナギ昇りといきたいですね」と言われたら、丸山は「えっ、ウナギは嫌だな。せめて鯉のぼりにしてくれる?あっ、でも、鯉のぼりは5月5日で降ろされちゃうから、やっぱりダメだ」なんて冗談を言っていた。その丸山流ジョークでいけば、「マメは節分の豆まきで終わってるのだから、初夏の今、マメマメしてるのは季節はずれ。さっさと終わりにしょう」ってことになる?
ともあれ、早く回復して、メモリアルでもう1つ好成績を出してほしい。来季シード確定まで、あと一歩なのだから。がんばれ、マルちゃん!

メモリアルトーナメント、今日(火曜)の練習ラウンドは9ホールで終了。カートに乗ってクラブハウスに引き上げる丸山。

ウェ~ッ!痛そ~ッ!!丸山の足の裏のマメ、つぶれてる!
Photo・JJ Tanabe
2006年05月29日
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2006年05月27日
いつだったか、タイガー・ウッズがこんなことを言っていたとお伝えした。「ジムに行ったら、ランピーに出くわして驚いた。時代は変わるんだね」
ランピーとは、太っちょのティム・ヘロンのこと。タバコは大好きだけどトレーニングは大嫌いなはずのヘロンが、絶対に行かなかったジムにいたのは驚き。プロゴルファーもアスリートの時代だから、さすがのヘロンもトレーニングをする気になったなんて、やっぱり時代の変化の表れだね……という意味だった。
確かに、昨今の米ツアープロたちは、とんでもない量のトレーニングをこなしているし、専属のトレーナーをつけ、専用のメニューにしたがって、日々、球を打つのと同等かそれ以上の時間をフィットネストレーラーやジムで過ごしているのだ。
しかし……タイガーの驚きは、実は早とちり、というか、勘違い、というか。先日、今田竜二選手とその話をしていたら、彼がこんなことを教えてくれた。「ティム・ヘロンには、たまにジムで会うことは会うけど、アイツ、ジムに入ってきたと思ったら、1分ぐらい自転車こいで、それですぐ出て行っちゃうんですよ」。
なーんだ、ジム通いは形だけ?なるほど、考えてみれば、ちゃんとトレーニングをしていたら、ヘロンのあの体、もう少しスリムになってもいいはずだなあ、と納得させられた。だが、ヘロンはなぜ、何のために、「ジムに通ってます」というポーズを取っているのだろう。うーん、これは謎だ。今度、解明してみようと思う。

ティム・ヘロン(左)と、フィットネスに熱心なことでも有名なチャールズ・ハウエル(右)。
Photo・JJ Tanabe
2006年05月25日
宮里藍の取材中、日本の報道陣が数人で輪になって何かの話をしていた。そこに入っていった私の顔を見て、2人の記者がこんなことを言った。「舩越さんにも聞いてみようよ」「えー、舩越さんは絶対知っているよ」何の話だろうと思ったら、1人がこう聞いてきた。「タイトリストって、英語で書けますか?」そりゃ書けるでしょうということで、持っていたメモ帳に英語のつづりを書こうとした私は、はたと考え込んでしまった。確か、発音とは違って、どこかに「e」が入っていたはずだ……そして書いたのは「Titelist」。
それを見た1人が、「なーんだ、舩越さんだって書けないじゃん!」「えー、ちょっとちょっと、ふ・な・こ・し・さーん!」
あれっ?違うの?もう1度考えて、すぐにわかった。正しくは「Titleist」。いやー、知っているようで意外に知らないことはあるもんだと、つくづく反省させられた。考えてみれば、原稿を書くときは日本語だから、いつも何の気なしに「タイトリスト」と書く。英語で書く必要があるときは、資料を見ながら書くから間違わない。読むときは、別段、英語のつづりを確認するまでもなく「ああ、タイトリストか」という感じで読む。だから、いざ英語のつづりを尋ねられると、案外わからないもののようだ。
だが……タイトリストの英語のつづりをきっちり覚えていないのは、日本人の我々ばかりではなく、英語のネイティブスピーカーも同じなのかもしれない。オーストラリア生まれのアダム・スコットが書き記したものを目にする機会を得た。読んでいくうちに、発見してしまったのだ。彼は「Titlist」と書いてるではないか!しかも、彼はタイトリストと契約を結んでいるスタッフプレーヤーだというのに、このザマだ。肝心の「e」をどこにも入れていない彼の間違いぶりは、私の間違いぶりよりひどい!?
いや、どちらも間違いは間違い。意外と知らないことは、結構あるものなのだ。「灯台、元暗し」とは、こういうことを言うのだろう。いやいや、反省させられました。

スペリングコンテスト:問題「タイトリスト」のスペルは?
アダム:「T・I・T・L・I・S・T=タイトリスト!」
スペリングコンテスト: ………
Photo・JJ Tanabe
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2006年05月23日
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2006年05月21日
雨で順延になったサイベースクラシックの第2ラウンド。早朝のスタートだった宮里藍が、冷たい空気から手を守るため、ハンドウォーマーに手を包んで1番ティへ向かっていた。そのハンドウォーマーは、両サイドが開いたミトン型。素材が何だったかはわからなかったが、一目見てびっくり。なぜって、それは、NYに住む私の友人でゴルフ狂のすみちゃんが自ら考案したニットのハンドウォーマーとそっくりだったからだ。
すみちゃんのことは、ゴルフトゥデイ誌上で「NY在住シングルマザーのゴルフ狂日記」という連載で紹介済みなのだが、彼女は編み物が得意で、「これなら両手が温められるし、ひょいっとどちらかの腕のほうへ持ち上げれば、はめたままでもショットできる」と言いながら、そのハンドウォーマーを考え出した。両手を入れていると、ちょっと謎の中国人みたいな姿になるが、確かに機能的。私にも取材用に編んでくれると言ってくれている。
ちなみに、手や指が冷えやすい丸山茂樹にもすみちゃんはこのハンドウォーマーを編み、私から丸山選手に手渡したのだが、彼が試合会場で使うかどうかは定かではない(笑)。だが、そんなすみちゃん製のハンドウォーマーとそっくりのものを、まさか藍ちゃんが使っているとは知らなかった。これは、今日一番驚いた出来事だった。

藍ちゃんのハンドウォーマーは、自家製ではなく、れっきとした“PARADISOブランドモノ”でした。
Photo/JJ Tanabe
2006年05月19日
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2006年05月16日
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2006年05月15日
EDSバイロン・ネルソン選手権で、丸山茂樹が6位タイになった。トップ10入りは、なんと去年の10月以来。今季はずっと成績が振るわなかったため、6位は今季の自己最高。先週からエンジンがかかった様子の丸山は、その勢いをさらに強め、今週一気にトップ10入りとなった。
もちろん、フィニッシュ後の丸山は満面の笑顔。「久々にいい集中力だった」とうれしそうだったが、彼のやる気の象徴は、17番で見せたガッツポーズだった。17番はパー3。右手前のピン位置に対し、12メートルほど左に乗せた丸山は、ファーストパットを強めに打って3メートルもオーバーさせてしまったが、返しのパットを見事に決めた。そう、ガッツポーズは、バーディではなくパーセーブして見せたもの。バーディより意味が大きいパーセーブに、丸山は思わずガッツポーズを取ったのだ。「ガッツポーズが出るのは、自分が乗ってきてる証拠。このところ、ガッツポーズはなかったですからね」本当に久しぶりに見た丸山のガッツポーズ。力強くて、見ていた私も、「よーし!」という気になった。
しかし……カメラマンのJJ田辺に言わせると、このガッツポーズには不満(?)があるらしい。「ダメなんですよ。下向いちゃうから顔が見えない」。カメラマンからすれば、せっかくのうれしいガッツポーズのときは、お願いだから上を向いて顔を見せてほしいということらしい。そう言えば、藍ちゃんのガッツポーズも下向きだし、なんとなく日本人選手のガッツポーズは、みんな下向きのような気がする。欧米人選手は、これでもかと言わんばかりに顔を上げ、ギャラリーに何かを訴えかけるような顔をしたりする。あのタイガーがコブシを突き上げるフィストパンプなんぞは、「見たか~!」と叫んでいるかのようなポーズだ。そう、タイガーはすごい顔をする。というか、すごい顔を見せつける。一方、丸山のガッツポーズは、下を向いて噛み締めるような動作。
見ていてどっちがいいか?うーん、それは嗜好(志向?)の問題だ。丸山のガッツポーズはカメラマン泣かせなのかもしれないが、私には強い何かが伝わってきた。



17番、ナイスパーセーブ!

18番では最高のバーディ!無理なお願いだとはわかってるんですけど、、。ダメですか??
Photo/JJ Tanabe
2006年05月13日
先週のワコビア選手権に出場予定だった今田竜二が、姿を現すことなく棄権した。ある人が電話してみたところ、「心の病です」と答えたそうだ。その今田が今週のバイロンネルソンで現在14位タイと健闘中。「先週はどうしたのですか?」と尋ねてみたら、「精神的に、いいスコアが出る感じがなかったし、僕の場合、そういうときは休まないとダメ。そのまま出ても、1つのミスショットが悪いほうへ悪いほうへつながっていってしまうんです」とのこと。だから、今田は1週間の休養を取った。リフレッシュしてツアーに戻ってきたら、今週はなかなかの好調。やっぱり休みは必要なのだ。

Photo/JJ Tanabe
休みといえば、丸山茂樹も、マスターズ後に帰国して休みを取り、リフレッシュして戻ってきたら、先週のワコビアでは、ひょっとしたら優勝もできると思えるほどの回復ぶりを見せた。丸山も、「精神的にリフレッシュできた」と明るい笑顔を見せ、それにつれてゴルフも良くなった。いやいや、やっぱり休みは大切なのだ。

Photo/JJ Tanabe
そして今週、田中秀道が出るはずだったのに休んでいる。彼もこのところ試合に出っぱなしで、パターが入らず、それにつれてショットも悪くなり、スコアも順位も悪くなることの繰り返し。今田の言葉を借りれば、田中も「心の病」にかかっている様子。誰かに言われたわけではなく、ついに休みを取った田中だが、この休みが、今田や丸山と同様、「いいリフレッシュ」になってくれたら、次に試合に戻ってきたときの田中は、ちょっぴり明るい田中になっているかもしれない。そして、ゴルフの調子もいい方向へ向いてくれるかもしれない。
ともあれ、人間には休みが必要。プレーし続け、働き続けでは、できることもできなくなる。根を詰めすぎると、心の病にかかってしまう。もちろん、これは私にも当てはまること。だからこそ……昨日は取材を早めに切り上げ、ダラスの面白そうなコースで薄暮プレーを楽しんだ。たまには、こんな時間を持つべきだと、つくづく思った。
2006年05月11日
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http://www.asahi.com/sports/golf/TKY200605110191.html
2006年05月10日
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2006年05月09日
今季、成績が振るわなかった丸山茂樹が久しぶりに元気なゴルフを披露してくれた。ワコビア選手権で3日目終了後は8位タイ。ひょっとして優勝?さすがにそれは厳しいとしてもトップ3は狙える?そんな期待さえ抱かせるプレーぶりだったが、雨と寒さにたたられた最終日は78と崩れ、26位タイ。
だが、3日目が終わったときから、丸山は「明日は辛い1日になる」と覚悟していた。すでに天気予報を見て日曜が悪天候になることを知っていた丸山は、過酷なサンデーを予想していたのだ。
雨と寒さは丸山には特別な意味を持つ。そもそも、丸山の手や指は、ものすごく冷えやすい。我々が平気なときでも、「手が冷たい」「かじかんじゃう」「指先の感覚がなくなっちゃう」と丸山は言う。そして、彼の指先を触ると、本当にヒヤーって冷えてしまっているのだ。だから、丸山は寒さがとにかく苦手。
だが、実は雨も苦手。今回も、最終ラウンド終了後、こんな一言。「オレってさあ、乾燥手なのよ」。えっ?乾燥手?初めて聞いた言葉だ。「ほら、雨が降ってても、手のひらだけ、つるつるに乾いちゃう。途中でグリップがスルスル滑っちゃって……もっと、ジトーッと湿気の多い雨なら、むしろいいんだけどさ」。またもや、丸山の手のひらを触ってみた。すると……本当にツルツル~というか、カラカラ~というか、乾燥しきっていたのだ。油症、汗かき症でベタベタする手というのは聞いたことがあったけど、乾燥手というのは珍しいかもしれません。

Photo/JJ Tanabe
ここからは、丸山ならではの楽しいジョーク。「昔からさあ、手がベタベタしている女の子と手をつなぐの好きだったもん!」。
丸山は自分が崩れたことに対して言い訳していたわけじゃない。なぜって、この日の悪天候の中で崩れたのは、丸山だけじゃないからだ。それぐらい厳しい状況だったということ。ちょっと例を挙げれば、ビジェイ・シンは81を叩いていたし、ジャスティン・ローズもスチュワート・アップルビーも80を叩いた。81は他にも3人いたし、80はあと2人もいた。優勝目前まで迫っていたレティーフ・グーセンは最終ホールでクリークに3度もつかまり、パー4で9を叩き、急降下したのだ。もちろん、崩れることなくプレーした選手もいるし、だからこそジム・フューリックは優勝できたわけだが、そういうゴルフができるかどうかは、その日そのとき次第。だから、丸山は言い訳する必要もないし、落ち込む必要もない。
それより何より、元気を失っていた丸山に、あのスマイルが戻ったこと、3日間いいゴルフができたことのほうが、ずっと大切。丸山ならではのジョークは、彼の元気のバロメーターゆえ、彼のちょっとした毒舌(饒舌?)ぶりが聞けてほっとした。
2006年05月08日
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2006年05月05日
思い出し笑いが止まらないことがある。先週の米LPGAで宮里藍が初優勝に夢を馳せ、無残に散った最終日のラウンド後の出来事だ。泣いてしまって、日本メディアの取材に応えられなかった宮里のコメントがマネージャー氏を通じて日本の記者の代表に電話で伝えられた。電話を受けた1人の記者が、メディアセンターの出入り口近くで、「じゃあ、やりま~す!」と一声。もちろん、電話で聞いた宮里のコメントをみんなに伝えるので、集まってくださいという意味だ。
メディアセンターには、日本のメディア以外に、当然ながらアメリカ人メディアたちがいて仕事をしている。彼らの邪魔になってはいけないということで、日本人の記者たちは一斉に外へ出て行った。そのとき、である。宮里が泣いたことも、コメントがあとで伝えられることも、日本人記者の「やりま~す」の一声も、何一つ理解していないアメリカ人記者の1人が、どやどやと勢いよく外へ出て行った日本人メディアの動きに、ただならぬ何かを感じ、突如、焦った。「What's going on?」(何事だ?)彼は、メディアセンターの中に残った私の相棒カメラマンのJJ田辺に慌てて尋ねたそうだ。その形相が、非常におかしかったらしい。私も外へ出て行った組なので、驚いたアメリカ人記者の顔は見逃してしまった。だが、普段からよく知る人物なので、彼がどんな顔でどんな勢いで尋ねたのかが容易に想像できる。それを思い出すたびに、思い出し笑いが止まらない。
だいたい、アメリカツアーの会場内のメディアセンターで起こったことなのに、本家本物のアメリカ人記者が、まるで外国に来て心細い思いをしている記者のように、「何?何?」とおろおろしたという事実がおかしくてたまらない。彼には気の毒だけど、当分、同じようなことが起こりそうな気がする。

毎ラウンド後、必ず記者会見を受けていた藍ちゃん。先週の最終日だけは、いつもと様子が異なった。(写真は3日目のラウンド後)
Photo/JJ Tanabe
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2006年05月02日
宮里藍が最終日に崩れて、勝ちそこない、アテストテントで悔しさをこらえ切れず泣いた。その現場に日本人カメラマンが3人ほど居合わせた。1人は涙にくれる藍ちゃんをどアップでバシャバシャと撮った。もう1人はすでに帰り仕度を始めていた関係上、完全に撮り損ねたそうだ。そしてもう1人は、私の相棒カメラマンのJJ田辺。彼は一度は撮ろうとしたが、悔しさに泣く藍ちゃんにカメラを向けることをためらった。バシャバシャと撮ったカメラマンのシャッター音が聞こえたからだろうか。藍ちゃんは反射的にその場を動き、JJ田辺の真横あたりに立った。真横にいれば撮られないと思ったのかどうかは、わからないけれど、とにかく「藍ちゃんが僕のフトコロのあたりに来て、思わずヨシヨシって頭をなでてあげようかと思ったぐらい。それでも撮ろうと思えば撮れたけど、僕はカメラマンである以前に人間で、人間捨ててまで撮れなかった」と、彼は言った。
しかし……報道するための写真を撮りに現場に来ているわけだし、撮るのは仕事。私情をはさむ前にとにかくシャッターを切るべきだったのだろうかと、彼はその直後から、ひどく悩み始めた。日本の報道陣はみな昼食も食べずに取材を続けていたため、誰もが残りもののランチにがっついていたが、JJ田辺は食欲ゼロで悩み続けた。いつもなら大食漢の彼が食べない姿を見ると、悩みは深いのだろうと想像できた。帰り仕度をしていて撮り損ねたカメラマンも、その横で落ち込んでいた。報道の現場では、こんなことがよくある。
JJ田辺いわく、「藍ちゃんの泣き顔を撮ったカメラマンは決して悪いことをしたとは思わない。むしろ、よく撮ったなあって羨ましく思うぐらいです。やっぱり僕も撮るべきやったんかなあ……」。悩みが続くJJ田辺は、昨夜もインターネットの検索で「報道と倫理」の歴史を調べ、ピューリッツアー賞を受賞したカメラマンの話を見つけたそうだ。「アフリカで飢餓に苦しむ少女を背後から狙うハゲタカ。その写真が受賞作なんだけど、そのカメラマンは、そのあと自殺したんですよ……」
撮るべきか、撮らざるべきか。難しい問題だ。私とJJ田辺は、米ツアー参戦の藍ちゃんの記事と写真を今年からスポーツ新聞のデイリースポーツに送っている。「撮っていれば、デイリーにドカーンと飾れて、こんなに悩むことはなかったんですよね……」。
仕方がないと思う。というより、選手も人間だし、報道関係者も人間なのだ。その「人間」というラインを越えて「仕事」をするかしないか、できるかどうか。それは、すべて本人の意志次第だ。藍ちゃんにとって、取材に応えるのは仕事の1つ。でも、彼女はそれができなかったし、しなかった。JJ田辺にとって、たとえ泣いていようと藍ちゃんを撮るのは仕事。でも、彼はそれができなかったし、しなかった。この私も、泣きながらクラブハウスへ消えようとしている藍ちゃんのすぐ背後から追いかけながら、無理矢理声をかけることができなかったし、しなかった。
それが、選手として、カメラマンとして、記者として、失格なのかどうか。「ダメ」の烙印を押されることなのかどうか。その判断基準は、それぞれの「倫理」だ。

プレー中にも、背負ったリュックからパソコンを取り出して写真を送るカメラマンたち。
Photo/JJ Tanabe