2006年11月02日
マネージャーの大切さ
今回は、取材の際の完全なる裏話を紹介しようと思う。今、発売中のワッグルにミッシェル・ウィーの独占インタビューが掲載されている。あのインタビューを取るのは、正直、大変だった。ウィーが出場した米PGAツアーの84ランバークラシックで、毎日毎日、インタビューさせてくれとアプローチをかけた相手は父親のBJ。しかし彼は毎回、生返事だし、「ミッシェルは個別のインタビューは嫌がっているから」と言われるばかり。ウィーにはプロ転向した昨年10月以来、ウイリアム・モリス・エージェンシーという大手のエージェントがついている。ハリウッドスターなどを数多く抱えるウイリアム・モリスからウィーのマネージャーが来ていれば、その人物にアプローチすることもできるのだが、いくら探しても会場で見当たらない。だから仕方なく父親に頼んでいたのだが、まったく進展しなかった。
「あー、もう全然だめだあ~」とメディアセンターに戻った私はため息交じりに小声で独り言。それを、たまたま横で聞いたザ・ゴルフチャンネルのレポーター、マイク・リッツが「ロスには頼んだの?」。ロスとは、まさに私が探していたウイリアム・モリス所属のウィーのマネージャー、ロス・バーリン氏のことだ。「だって、ロスはこの会場に来てないでしょ?」「いや来てるよ。さっきオレは話をしたから。ついさっき、この辺にいたんだけどな……ほら、あそこ、あそこ」見ると、本当にロスがいた。

右がマイク・リッツ氏。日ごろのネットワークに助けられる。
見つけたからには逃さない。ロスに向かって突進し、「お願いだから、今日、ミッシェル・ウィーに単独でインタビューさせて!」と頼んだ。ロスは、「うーん、難しいと思うなあ。とにかく取材は殺到しているし。まあ、今日のラウンドの後の状況次第ということで、一応、心には留めておくよ」
ああ、出た出た。「心に留めておく」というのは、彼らマネージャー職の面々がよく使う逃げ口上である。スポーツマネジメントの最王手IMGのちょっと済ましたマネージャーたちは、とにかくこの言葉ではぐらかすことが多い。だめだろうなあ。半分、諦めていた。

いつでも、ウィーの周りは記者でいっぱい。(写真は今年のソニーオープン)
その日は予選カットの日。ウィーは、こともあろうに最下位で予選落ちとなった。「状況次第」というロスの言葉が頭に渦巻く。最下位なんて、状況は最悪である。ああ、絶対ダメだ……。
記者会見に現れたウィーは、思ったより明るかった。というより、明るく気丈に振舞っていたのだと思う。会見後、恒例化している米PGAツアーのインサイドロープというビデオ取材がおこなれる。私は無理を承知でその一段の後ろにとぼとぼ着いていき、ビデオ取材、地元テレビの取材などが終わるのを待った。ロスを無視して、直接ウィーに話しかけてしまおうかとも思ったが、それだとすぐに見つかって打ち切られる。それより何より、そんな横暴な取材の仕方はルール違反だし、ウィーだって、いい話はしてくれない。どうしよう……。
そのとき、ロスが登場。「まだ、取材する気はあるの?」どうやら彼は最下位予選落ちとなったウィーなら、もう取材する気はないと思ったようだ。「もちろん、やらせてもらえるのなら絶対やりたい!」「わかったよ」
アメリカ人記者たちのすべての取材が終わろうとしていたとき、ロスが「じゃあ、次に、インタビューやっていいよ!」「えーーーーーっ、ホント?サンキュー、サンキュー、アイ・ラブ・ユー、ロス!!!!」
こんな経緯で、ウィーの単独インタビューに成功した。はっきり言って、大物選手のマネージャーの中で、これほど親切で、気のいいやつはいなかった。たいていの場合は、「また次回」「あらためて日程を組みましょう」とか何とか言って逃げられてしまうのに、ロスはその場でOKを出してくれた。もちろん、時間はきっちり切られ、終わりの3分前には、近寄ってきて「終わり、終わり」とジェスチャーで終了を催促してきたが、そのぐらいは覚悟の上。とにかく、ロスはありがたかった。

無事、単独インタビューに成功(最新号『ワッグル』より)。マネージャーの協力のおかげだ。
Photo・JJ Tanabe
ウィーの取材は、今後は楽になりそうだな。そんなことを考えていた矢先、ロスがウィーのマネージャーをやめ、元々所属していた米PGAツアーに逆戻りするという報道があった。そんな……。あんないいマネージャーが、辞めちゃうなんて……。
まあ、ウイリアム・モリスは大手だから、後釜はいくらでもいるだろう。だが、マネージャーというのは、人気選手になればなるほど重要で、マネージャーの態度があまりにも悪いと、そのマネージャーと接するメディアは、マネージャーへの不快感が選手への不快感にいつしか変わってしまうこともある。マネージャーの横柄な態度が選手に伝染して、選手まで横柄になってしまうなんてこともある。その代表例は、デビュー当時のセルジオ・ガルシア。彼のマネージャーのとんでもない横柄さによって、ガルシアも人が変わったように横柄になり、最終的には、2人の態度が米メディアの反感を買った。
それほどマネージャーは重要な存在。ウィーの次なるマネージャーが、ロスと同じぐらいいい人なら、今回のマネージャー交代劇がウィー人気に悪影響を及ぼすことはないだろう。早く後釜マネージャーと会ってみたいと思う。



