2006年11月15日
充電が必要で……
今週は宮里藍が出場するADT選手権に来ている。米女子ツアーの試合は、メジャーなどのビッグ大会、あるいは、よほどの注目ポイントでもない限り、ビッグな米メディアは来ないことが多いのだが、このADT選手権は優勝賞金がなんと100万ドル!ロレーナ・オチョア、カーリー・ウエブ、アニカ・ソレンスタム、クリスティー・カーの4人が、ここで優勝すれば賞金女王になる可能性を秘めているだけに、それなりの米メディアが顔を揃え始めている。
その一人、ニューヨークタイムズのゴルフ担当記者デーモン・ハックは、米男子ツアーの取材でよく一緒になる仲良しだ。デーモンは顔を合わせた途端、「園子、ツアーチャンピオンシップに、いなかったね?どうしたの?」。そう私は実は今年のツアーチャンピオンシップに行くことができなかった。ちょっとしたスケジュール上の都合なのだが、何年間も欠かさず取材してシーズン締め括りの大会に足を運ばなかったのは、私としてはちょっとした珍現象。で、デーモンも、いつもいた私がいないのは妙だなと思ったらしい。

デーモン・ハック記者
質問された私は、スケジュール云々とは言わず、こう答えた。「ああ、ちょっとね、07年に向けてバッテリーの充電が必要だったのよ」。この答え、デーモンには馬鹿ウケで、彼は大きな目をくりくりさせながら大笑い。
何がそんなにおかしいか?おわかりの方もいると思うが、プロ入り以来初めてツアーチャンピオンシップを欠場したタイガー・ウッズの欠場理由の言葉が、「07年に向けてバッテリーの充電が必要だから」だったのである。それゆえ、私の答えは、タイガーのこのコメントを知っていなければ面白くも何ともないわけだが、デーモンはタイガー番と言えるほどタイガーにひっついている記者なので、知らないわけはないと確信した上で、ジョークのつもりで言ったのである。
大笑いのあと、デーモンいわく、「でもさあ、来年に向けて充電が必要だからツアーチャンピオンシップを休んだのに、すぐさま中国へ行き、そのあとは日本、そのあとはカリフォルニアでテレビマッチ。変だよね?」。まさに変。充電と言ったら、しばらく試合や周囲の喧騒から離れて、のんびりリラックスするってことだろう。ところが、タイガーはツアーチャンピオンシップだけ休んで、そのあとは世界を飛び回っているわけだから、「充電」が聞いて呆れちゃう話なのである。
タイガーを間近に見る機会が少ない中国や日本のタイガーファンにとっては、タイガーがやってくることはビッグニュースに違いないが、本家本元のアメリカ人にしてみれば、アピアレンスフィー(出場料)の高い海外には行くけど肝心のアメリカツアーの最終戦には出ないなんて、勘弁してくれよと思っても仕方がない。タイガーが出るかどうかは、アメリカ人にとっても、アメリカ人メディアにとっても大問題なのだ。

急速充電は、無理な相談?
Photo・JJ Tanabe
で、デーモンとの会話は来季の開幕戦の話へ発展。「フィル・ミケルソンは来年も開幕戦は出ないよね?」と私が言うと、デーモンは「ああ、出ない出ない。タイガーが出るかどうかも怪しいところだ」。「えっ?せっかく充電したのにタイガーも出ないかもしれないの?」「うん、まだわからないけど出ない可能性も結構高そうだ。もしタイガーが出ないなら、会社は僕をハワイへ派遣しないだろうね」。
うーん、この話を聞くと、藍ちゃんが出るかどうかで、記者やカメラマンを日本から派遣するかどうかを決める日本のメディアとそっくりの事情だなと、つくづく思った。メディアの動きを左右する重要人物。タイガーも藍ちゃんも、やっぱりナショナルスターなんだなと、いまさらながらに痛感してしまった。



