2007年07月29日
全英オープンの余韻が今も頭の中に残り、体には時差ボケが残って、今週はちょっぴりダラダラモードだ。素晴らしい戦いだったなあと思い返すとき、まず最初によみがえるのは、もちろん終盤のパドレイグ・ハリントンとセルヒオ・ガルシアの優勝争いシーンなのだが、そのほかにも鮮明によみがえってくるシーンがたくさんある。
ほんの一瞬だが、首位に躍り出たジョン・デーリーのことも思い出す。95年の全英覇者は、以後、ずいぶん荒れた私生活を送りながら苦労してきた。つい最近も妻にフォークで頬を刺さられるなど、仰天ニュースが報道されたばかり。そのデーリーがカーヌスティで優勝したら、これはもうカーヌスティに棲むリンクスランドの神様のいたずらとしか言いようがないなんて思って、デーリーのプレー姿を一目見ようと走った。だが、14番でトリプルボギーを叩き、その後はずるずる後退。「あーあ、せっかく全力疾走したのに、無意味になっちゃった」と、そのときは思った。

取材をしていると、よく「意味なくなっちゃった」という言葉を耳にする。順位を上げてきている選手のことを記事に含めるために、その選手の過去の戦績やプロフィールを調べたり、その選手のラウンドを見に行ったり。しかし、そのあとスコアを落として最終的にその日の順位が下がったりすると、記事には含めなくなるというケースがよくある。そんなとき、記者たちは「せっかく調べたのに、意味なくなった」と嘆き、その選手を撮りに走ったカメラマンたちも「せっかく走ったのに、あの苦労は何だったんだ」と嘆く。私自身もデーリーのために走ったことを「無意味になっちゃった」と、やはり思った。
だが、徒労に終わったと思ったことにも、実はちゃんと意味がある。その場では無意味だと思っても、その後、もしかしたら1年後、2年後、いや10年後になるかもしれないが、意味が出てくることは、ある。思い返してみると、実際、そういう例は過去にもいくつもあった。インタビューなどでも「?年前のあのとき、あの全英で、アナタは○○○でしたよね」なんて言葉がはさめるかはさめないかで、相手が聞きだせる話は十倍にも百倍にもなる。何より、そんなことを見ていてくれたのか、覚えていてくれたのかという具合に、選手は喜んでくれる。私も相手にそう感じてもらえるのはうれしい。そうなったとき、無意味だと思ったことにも大きな意味が出てくる。
今年の全英の3日目に7アンダーで回り、一気に2位へ急浮上したスティーブ・ストリッカー。以前から大好きな選手だ。一時はどうしようもない不調に陥り、Qスクールすら通らず、ドン底だった。そこから再び這い上がり、カンバック・オブ・ザ・イヤーを受賞したストリッカーに勝ってほしいと思っていた。ストリッカーに馴染みのないメディアは、3日目に必死に彼の情報を集めていたが、最終日は74といまひとつ振るわず、8位タイに終わった。8位となれば、ストリッカーのことを細かく記事は誰も必要としない。だから、せっかくストリッカー情報を集めた記者たちは、きっとその努力が無駄になったと感じただろう。

Photo/ JJ Tanabe
だが、ストリッカー本人はこんな言葉を発した。「昔の自分と今の自分を比べて、僕は今の自分を誇りに思う」。優勝できなくても、大勢の世界のメディアが「キミのことを調べたのに無駄になったよ」と思ったとしても、今の自分に誇りを持てるストリッカーは素敵だ。何位に終わろうと、自分自身の努力と前進に自信が持てることは素晴らしい。ストリッカーいわく、「昔の苦労があったから、こうして全英で上位に絡める自分がある」。血を吐くような過去の悪夢も、未来の糧になる。いや、ストリッカーだからこそ、未来の糧とすることができたのだろう。どんな嫌なことにも、こんなものなければいいのにと思うことにも、いつか必ず意味が出てくる。というより、意味をなすようにできるかどうかは自分次第なのだ。
来週は全英女子オープン。ここでもきっと「無駄足?」と思える取材が出てくるはずだが、どんなにヘトヘトのときでも絶対に「無駄足だった」とは思わないように心がけよう。聖地セント・アンドリュースで目にしたことすべてを心にとどめ、メモにとどめ、貴重なウイットネスになったのだと思うことにしよう。
2007年07月25日
前回、ここで書いた「後味の悪い出来事」。たくさんのコメントをいただき、感激した。励ましのお言葉の中にいくつかご指摘があったように、あの場面で単に怒声を上げるのではなく、ユーモアとウィットに富んだ言葉でソフトに反撃することができれば、あの後味の悪さは、もう少し解消されていたかもしれないと思う。私たちメディアのインタビューというものは、形式的に一応コメントを取っている記者もいるだろうけれど、この選手の肉声を一言でもいいから取らないと、絶対に自分の記事は書けないとか、この選手のコメントが取れるかどうかで、あのスペースが埋められないとか、いろんな思惑を持って臨んでいる記者もいる。そういう意味で、私もかなり必死だったため、思わずボルテージが上がってしまったのだが、ともあれ、まだまだ修行が足りないということだと反省させられた。
さて、修行といえば、全英オープンの優勝争いをじっくり眺めながら、まさに勝利は人間修養がもたらすものだと痛感させられた。セルヒオ・ガルシアやファンには怒られてしまうかもしれないが、実を言うと、私は当初からガルシア優勝は起こらないだろうと予想しており、メディアセンターでも「ガルシア優勝は、まずない」と周囲に言っていた。多くの日本人メディアは「いやあ、今回はガルシアがいきますよ」と言っていたが、私はそうは思っていなかった。
なぜなら、ガルシアの感情の起伏の激しさや人間修養の有無を考えると、あの難しいカーヌスティの終盤で最後の最後まで首位を守り抜くプレーができるとは思えなかったからだ。その予想が的中し、ガルシアは最終ホールでボギー。パドレイグ・ハリントンとのプレーオフに持ち込まれ、敗北となった。もっとも、ハリントンも首位で72ホール目に臨み、クリークに2度もはまってダブルボギーを喫したわけだが、プレーオフという一騎打ちになったとき、どちらが強いかと問われたら、その答えは「ハリントン」しかなかったと思う。

面白いことに、ハリントンは大会開幕前から「ナイスガイが優勝する」というユニークな言葉を発していた。優勝して「僕がナイスガイってことだね。なーんて、そんなつもりで言ったわけじゃないけど」と照れ笑いしていたが、彼の言葉は、結構当たっている。今回の優勝がなかったとしても、ハリントンってどんなヤツかと尋ねられたら、誰もが「いいヤツ」と答えるような人柄なのだ。
ナイスガイというのは、単純に性格が温厚という意味ではない。ハリントンは人当たりは温厚だが、内面に秘めた勝利への渇望は人一倍熱く、アスリート魂は温厚というより激しいほうだ。しかし、彼がプロ転向以来、送り続けてきた欧米両ツアー参戦の日々は旅から旅の厳しい道程だったし、そこで勝利を重ねることは並大抵の努力ではなかったはず。欧州ツアーの賞金王に輝くまでに11年を要したのも、欧米両ツアーをかけもつというダブル参戦スタイルが厳しすぎたためだろう。しかし、彼はその苦しさに不平不満を言うことは決してなかったし、いつも我々には穏やかな笑顔を見せていた。そして、彼は試合に出たら好成績を出すという効率的な戦い方を身につけ、少ない試合数で賞金ランク上位へ行く方法も身につけた。だからこそ、今回の全英でも最終日にドーンと追い上げることができ、プレーオフの4ホールで一気に勝利への道を駆け上ることができたのだろう。
ガルシアは、99年のデビュー以来、あっという間にスターと化して、かなり小生意気な小僧となった。しかし、彼もまた、クラブを10回ぐらい握り直すグリップ・イップスになったり、パットのイップスに近い不調になったり、もちろん彼なりの苦労を経験してきた。しかし、年齢的な比較をしても、苦しみの数と苦しみを克服してきた数を比較しても、その度合いはガルシアよりハリントンのほうが数倍上であり、「ナイスガイか?」と質問された人が「イエス」と答える人数もガルシアよりハリントンのほうが百倍ぐらい上であろう。
人間としての修行の度合いが、全英タイトルをハリントンにもたらしたという今回の優勝争い。これは、2日目のあの不愉快だった出来事を忘れさせてくれる素晴らしいドラマだった。そして、ガルシアの敗北ぶりとハリントンの勝ち方を分析しながら、私自身、「修行が足り~ん!」と痛感させられた。人間、なにごとも修行です!

PATIENCE SHALL PAY YOU SOON
Photo/ JJ Tanabe
2007年07月22日
全英オープン真っ最中だが、3日目になっても怒りが収まらないほど失礼な出来事に2日目に遭遇してしまった。メジャー会場には通常、ラウンドを終えた選手を記者たちが囲んで取材をするためのインタビューエリアが設けてある。全英の場合は、たいていは屋根のある小さなテントのようなところがそれに当てられており、真ん中には腰の高さぐらいの低いフェンスがある。フェンスの向こう側に選手が立ち、記者たちはフェンスの手前側で押し合いへし合いしながら選手のコメントを取るというスタイルだ。
第2ラウンドを終え、昨年5位と大活躍しながらも今年は無念の予選落ちとなった谷原秀人を20名前後の日本人記者が囲んでインタビューしていた真っ只中。英国の放送局BBCのロゴマークを付けた英国人とおぼしき男性がつかつかと近寄ってきて、インタビューを完全にさえぎりながら、こう言った。「間もなくタイガーがホールアウトしてここに来るから、キミたちは今すぐ取材をやめろ!」
一瞬、耳を疑った。インタビューエリアはどの選手に対する取材も、どこの国のメディアによる取材も、公平に行なわれて然るべきであろう。それなのにタイガー様が来るからといって、日本人選手と日本人メディアが今すぐに「やめろ」と命令されるいわれはまったくない。なんと言っても、予選落ちした悔しさを噛み締めながら一生懸命に取材に応えている谷原という1人のプレーヤーに対してとんでもなく失礼な話だ。あんまり頭に来たので、私はついつい大声で言い返した。「私たちは間もなく取材を終わりにします。今は途中だから、とにかく終わるまでやらせてよ」。すると、その男性、「いいや。たった今、やめろ!NOW!」

(インタビューエリアでは、数人の選手が並んでインタビューできるスペースがある。*写真は3日目、谷口徹のラウンド後のインタビュー風景)
Photo/JJ Tanabe
「ナ……ウ??????」ふざけるな!「タイガーもミケルソンもタニハラも、みんな1人のプレーヤーであることに変わりはないだろう?」という言葉が口から出かかったとき、ふと見ると、そこにはすでにタイガーが来ており、「とにかく終わるまでやらせてよ」と言った私の怒声を聞いていた。タイガーと目が合った。話の経緯まではわかっていないはずのタイガーは「キミたち、何をもめてるの?」と言いたげな視線。メディアどうしの争いにタイガーを巻き添えにしたのでは、今度はタイガーに対して失礼になると思ったので、それ以上は何も言わず、タイガー&世界のメディアたちは、その横で黙りこくるしかなくなった日本の一団には気をとめることもなく、彼らの質疑応答を始めてしまった。
さて、困ったのはそこから先だ。「どうしよう……」と小声で言うと、谷原が「大丈夫ですよ」。で、結局、内緒話のような小さな声で質問し、谷原も囁くような小さな声で返答。当然、最前列にいた私と両隣の記者ぐらいにしか聞こえない内緒話のようになり、せっかく足を運びながら後方の日本人記者には何も聞こえず何も聞けないという状態に陥った。
タイガーの取材はさっさと終わり、彼らは退陣。日本の一団はそのあとは通常の声が出せるようになったのだが、どうしてこんなに虐げられなきゃいけないのか、考えれば考えるほど納得がいかない。
BBC局は大会の中継局。大金をはたいて放映権を買っているのだから、取材においても大会運営やスタート時間などの決定においても、とにかく優遇されている。が、それはビジネスにおける力関係ゆえ納得できる。さらに言えば、テレビ用のインタビューエリアは我々紙媒体のメディア用とは別にきっちり設置されており、そこを使ってBBCが独自にタイガーの取材を行なえばいいこと。それが終わるまで待たされることに文句を言うメディアはいないはず。それも納得できる。だが、今回の場合は、紙媒体のメディア用に設置されたインタビューエリアで日本人メディアが日本人選手に取材している場所へ、BBCという電波媒体が突然乱入してきて、やりたい放題、言いたい放題、失礼千万な態度を取った。
うーん、許せない。お金の力のせいなのか。それとも、日本という国、日本人メディア、あるいは日本人選手が甘く見られているのか。それとも、差別?
一日経過した3日目になっても、いまだに後味が悪い。せめて明日の最終日、この後味の悪さを忘れさせてくるような素敵なドラマをこの目で味わうことで今年の全英取材を終わらせたい。
2007年07月19日
いよいよ全英オープンウィークになった。私は月曜にNYを発ち、スコットランドの火曜早朝に現地入りしたのだが、エジンバラ空港へ向かう飛行機から、期せずして取材が始まった。というのも、機内に乗り込むときは、昨年の全英でタイガー・ウッズと最後まで優勝争いを展開したクリス・ディマルコと一緒。そして席に着くと、今は亡きペイン・スチュワートのキャディをしていたマイク・ヒッグズが隣にやってきて「ハロー!」。そして、通路を隔てた隣には、先週のジョンディアクラシックで優勝したばかりのジョナサン・バードが座ったではないか。で、よくよく考えてみれば、マイクは現在、バードのバッグを担いでいるわけだから、この2人が一緒でも不思議はない。だが、どうして選手とキャディの合間に私が座っているのかがなんとも不思議。「席、変わりましょうか?」と申し出てみたのだが、「ううん、いいよ、いいよ」と2人ともおっしゃるもんだから、結局、一路7時間、ずっと2人に挟まれたまま座っていた。
バードはジョンディアで優勝するまでは、今回の全英の出場資格がなかった。ジョンディアにはトップ10に入ると全英出場資格が与えられるビッグチャンスがあり、この資格で8名が急遽、カーヌスティに向かうことになったのだが、バードも「とにかくバタバタで、飛行機も昨日必死で予約したんだ。あんまり急だから今回はワイフもベイビーも留守番だよ」。なるほど。でも最後の最後までチャンスを諦めなかった姿勢は見上げたものだ。バードやマイクとの話題は、月曜にカーヌスティで引退発表をしたセベ・バレステロスの話。「やっぱり80を切れなくなったら仕方ないよね」とバード。マイクは「まあ、当然の流れだな」と、もう少しシビアに言っていた。
さて、そんなこんなでカーヌスティに到着。空港からホテル経由でコースへ向かった。予想に反して快晴。私は、今は明かせないが、某選手の単独インタビューの約束があり、その選手を待つためにカーヌスティホテルの前で「張り込み」中だった。すると、そこにはサングラスにTシャツ、短パン姿のサーファーみたいなお兄さんが2人ほど。よくよく見ると、それはスチュワート・アップルビーとロバート・アレンビー。オージー選手は、ちょっと天気がいいと、英国の伝統も何も気に留めず、思い思いのプライベートファッションでそこらへんを歩き回る。

(ロバート・アレンビー)

(スチュアート・アップルビー)
翌日。水曜日は一転して曇天。ときおり強い雨も降り、寒かった。タイガーは練習グリーンでパット練習していたが、フィル・ミケルソンは姿を見せず、おそらくは例年通り、近郊の別のコースで密かに練習していた模様。そんな中、ちょっと目を引いたのは、ジョン・デーリーだ。最近は成績が思わしくないデーリーだが、95年の全英チャンプゆえ、過去の優勝者の資格で65歳になるまで全英オープンに出場できる。だが、注目されているのは、何の資格で出ているかではなく、彼の右の頬っぺた。つい先日、妻にフォークでグサリと頬を刺され、しばらくはフォークの3つ穴の傷が癒えぬまま公けの場所に顔を出していた。その傷が今、どのぐらい治ったかな、というのが、玄人筋では密かに注目だったのだ。今日見たところ、頬の傷はほとんど遠目にはわからなかった。時が経てば傷も癒える--これは何においても何の世界でも共通なのだろう。

(ジョン・デーリー)
Photo/JJ Tanabe
日本人は片山晋呉が欠場したため合計6名の出場。その中で私が期待しているのは昨年大会5位の谷原秀人と日本ツアーで2週連続優勝を達成し、ノリノリの谷口徹。その2人の取材をしたいなあと思いながら歩いていたら、タイミング抜群で、ちょうど2人が順番に目の前にやってきた。2人とも「難しい」と言いながらも「思ったほど難しくない」「思ったより、やりやすい部分がある」と、前向きの話をしてくれた。がんばれ、谷原。がんばれ、谷口。
それにしても、まだ初日が始まってもいないのに、妙に話題が多い。話題が多いというより、期待せずに歩いていると、話題にしたいなあと思っている選手や人、モノが現れる。この現象、何なのだろう?99年のジャン・バンデベルデの悲劇のような、新たなる悲劇の予兆だったら怖いなあ……。
2007年07月11日
今季、苦しみ続けている丸山茂樹だが、このところ15位、そして9位と復活の兆しが見えてきている。そうだ、その調子だ!がんばれ~~というところで、今週のジョンディアクラシック初日のティタイムがまたまたトップスタートになった。
ご存知のように、予選2日間の組み合わせはPGAツアーがコンピューターを使って決めることになっている。その際、いわゆるスタープレーヤー、成績上位選手、優勝者などは、テレビ中継にたくさん映る組、シーズン始めのルーキーや成績下位選手などは早朝や午後遅い組という具合にカテゴリー別に分けられた上で組み合わせを決めるのだが、今年の丸山は、早朝1番ホールからのトップスタートが今回で3回目、いや4回目??
丸山にとっての今季開幕戦ソニーオープンが、まずそうだった。まだ夜が明けたのか明けてないのかわからないぐらいの暗がりの中で会場にやってきて、暗がりの中でウォーミングアップ。さすがに、こういう状況は、そう何度もやりたくないもの。だが、先日のトラベラーズ選手権のときも、またまたトップスタートになったことを知るや否や、「(予選落ちを)2回続けちゃうと、こうなのかな」と、がっかりしていた。

(今年のソニーオープンでは、まだ真っ暗なうちから練習場でウォームアップ)
嫌なトップスタートを回避するためには成績を上げなきゃと思ったかのごとく、その後は前述のような復活の兆しを見せ始めているのだが、そこへ来て、またまた今週、トップスタート。なんとなく、不公平感を感じているのは、私だけではないはず。
しかし、もうこうなったら試練だと思って跳ね返すしかない。苦しいときは、より一層苦しいことが、どうしてだか次々と襲い掛かってくる。もう、いい加減にしてくれ~、やめてくれ~、と叫びたくなるような状況にどうしてだか陥ることがある。だが、それを自力で跳ね返せるかどうか。神様から、それを試されているからこそ試練なのだ……と思うしかない。
がんばれ、マルちゃん!こうなったら優勝して、PGAツアーが否が応でもゴールデンタイムの組み合わせにシゲキ・マルヤマを入れざるを得ない状態を作り出してしまえ~!!!

(2月のFBRオープンでも、早朝スタート。まだ寒い!)
Photo/JJ Tanabe
2007年07月09日
タイガー・ウッズがホストを務めるトーナメント、AT&Tナショナルで崔京周が優勝した。これでツアー通算6勝目。今年のメモリアルで5勝目を挙げたばかりなのに、もう次なる優勝。いやいや、崔はノリノリだ。
ところで、崔が手にしていたパターを見てびっくり。というのも、彼のパターには太い太い極太グリップが装着されていたからだ。実はこの極太グリップ、今年の5月のザ・プレーヤーズのとき、不思議なものがツアー会場に登場したということで、早々に取材し、ゴルフ雑誌で紹介したばかり。取材時は「たくさんの選手がこのグリップを持っていったけど、みんな練習用にしか使っておらず、まだ実戦で使った選手はいないんですよ」と、ツアーレップが言っていた。だが、それから1ヶ月半ぐらいしか経っていない今週、崔が実戦で使用したばかりでなく優勝までしてしまったのだから、私もびっくりしたけれど、あのツアーレップもびっくり仰天しているに違いない。

(ツアーレップが握るのが、スーパーストローク・グリップ。極太だ~!)
極太グリップだと、なぜいいか。ツアーレップによれば、「細いものほど人間はぎゅっと握ってしまいがちだが、太いものだとぎゅっと握ろうとしてもなかなか力が入れられない。だから、適度な力でそっと握れる極太グリップは効果的。力を入れすぎてストロークの際に軌道が狂うこともない」と言っていた。そういえば、パットの名手のブラッド・ファクソンから「適度なグリッププレッシャーとは、幼い子供の手を握るぐらいの強さだよ」と教えてもらったことがある。なるほど、強すぎず弱すぎずの適度な握り加減が極太グリップなら自然に実現できるということなのだろう。
ところで、崔は昨秋のクライスラー選手権で4勝目を挙げたのだが、あのときは前週のディズニークラシックからナイキのSUMO2をツアーで一番に使い始め、翌週、優勝した。そのときの勝因を尋ねたとき、彼は「みんながスクエアヘッドだ、スクエアヘッドだって言いながら僕のドライバーに注目していた。注目されるのはいい気分。だから、いい気分のままクライスラーを迎えられた」と言っていた。もちろん、いい気分だけが勝因ではないが、注目されているという感覚が勝利の一因になったことは確かのようだ。
そして今週、あの極太グリップをやっぱりツアーでいち早く採用し、またまた優勝。どうやら崔は、ツアーでも指折りの新しモノ好きなのかもしれない。そして、失敗を恐れず、思い立ったらすぐさま使う、試すという姿勢が、彼をアジア人最多優勝へと導いたのではないだろうか。うーん、そんな気がしてならない。

(四角いヘッドのドライバーを使い、すぐさま優勝したチェ)
Photo/JJ Tanabe
2007年07月06日
昨年の日本女子オープンで優勝した韓国人選手チャン・チョンをご存知だろうか。彼女から聞いたメチャクチャ面白い話がある。
チャンはコブラの契約。あるとき、コブラから届いたピンク色のゴルフバッグで試合会場に行ったそうだ。すると、つかつかと歩み寄ってきたのは、ピンクパンサーと呼ばれるポーラ・クリーマー。で、クリーマーはいきなりチャンにこう言ったそうだ。「ねえ、ちょっとちょっと、冗談でしょ?そのバッグ、アナタがコブラに注文してその色にしたの?」
もちろん、クリーマーが本当に言いたかったのは、「ちょっとちょっと、ピンクといえば私の色なのに、どうしてアナタがピンクのバッグを持っているわけ???」ということ。

「ピンクは、私の色よ!」
で、チャンに尋ねた。クリーマーは冗談でそう言ったんだよね?するとチャンは、「うーん、半々かな。半分は冗談だけど半分は本気。だって目が本気だったもん」
この話、聞いた途端に大笑いしてしまった。自分のトレードマークを他人に取られちゃ叶わないってところがあるのだろう。でも、クリーマーとチャンは、まるでキャラクターが違うわけだし、仮にチャンが全身ピンクづくめになったところで、クリーマーのピンクピンクに対抗しているようには見えないと思うのだけれど、クリーマーにしてみれば、「ちょっと~、真似するのはやめてくれるう~?」ってなところ。
聞いてる分には面白かったけど、よくよく考えると、ちょっと怖~い話だ。

「色って、みんなのモノじゃなかったんでしたっけ~?」
Photo/JJ Tanabe
2007年07月04日
全米女子オープンはクリスティ・カーの優勝で幕を閉じた。飛距離が出ず、不利と言われていた宮里藍は、しかし最終日に69の立派なラウンドを披露してトップ10入り。米ツアーで1年半、もまれてきただけのことはある。
トップ10といえば、「トップ10に入りたい」と強く願っていた大山志保が最終ラウンドで崩れて22位タイに終わった。18番グリーンで最後のパットを決めた後、キャディのポール・マルティネス大山の耳元で何かを囁き、そのあと大山の背中を優しくさすっていた。私は2人の後姿をグリーン脇から眺めていたのだが、その様子を見ただけで大山が涙していることが伝わってきた。

アテストテントに来た大山の頬は、思ったとおり、すっかり濡れていた。「キャディに、よくがんばったねって言われて……うれしかったのと、ああ自分はホントにがんばったんだなって思ったのと……」。涙で途切れ途切れになりながら、大山はそう答えた。
要するに、キャディのポールの言葉で、大山のこらえていた何かがふっと切れ、こらえきれなくなって涙が溢れたということ。
そのあと、キャディのポールを発見。大山のバッグの横に立ち、やっぱり残念そうな表情をしていた。大山にかけた言葉を正確に聞いてみたいという衝動にかられ、ポールににじり寄った。
「ねえ、ポール。シホにどんな言葉をかけたの?あなたの言葉が涙の引き金になったってシホが言ってたわよ」。すると、ポールは「えっ、そんなあ……僕はシホを泣かせようとしたわけじゃないのに……」。「わかってるわよ、当たり前でしょ!泣かせようとして泣かせられるなら、アナタは魔術師かペテン師か、どっちかでしょ!」「あ、そうか」
ポールは、ちょっぴりとぼけた、でもとてもいいヤツだ。ちょっと安心した後、大山にかけた言葉を、その言葉通りにボソボソと再現し始めた。
I am very proud of you.(僕はキミをとっても誇りに思うよ)
You should be proud of yourself.(キミはキミを誇りに思うべきだよ)
You really did well this week.(今週、キミはホントによくがんばった)
It was a long long week.(ホントに長い1週間だったもんね)
You wake up around 4AM, 4:20AM, almost every day……(毎日毎日、朝4時とか4時20分とかに起きて……)
おいおい、そんなにたくさんしゃべっていたの?てっきり、「よくがんばってね」の一言で涙を誘ったのだと思っていたのに、そんなにツラツラと語り続けていたなんて……。
ポールは、魔術師でもペテン師でもなく、ひょっとして宣教師か、説教師?
ともあれ、ポールはいいヤツ。そして、日本では「なかなか、納得のいくキャディに巡りあえない」という理由で帯同キャディをつけずハウスキャディをつけている大山にとって、ポールのようなツアーキャディと過ごした1週間は、素晴らしい経験になったはず。
だから、シホちゃん、アナタの涙は、決して無駄にはならないよ。

Photo/JJ Tanabe