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2007年08月31日

問題児が生きる場所

まだ日本に滞在中。毎日、テレビのニュースでは相撲の朝青龍問題が報道されている。角界の問題児扱いで、引退勧告云々とも言われているが、このニュースを見るにつけ、私の頭に浮かぶのは米ゴルフ界の問題児ジョン・デーリーだ。

かつて、デーリーはアルコール依存症、暴力沙汰、ギャンブルによる借金、女性遍歴と問題を繰り返した。そのとき、米PGAツアーはどう対応したのかと言えば、一度はツアーに出られないという処分、つまり謹慎処分を下した。それに対し、デーリーは、アルコール依存症から立ち直るための施設に入り、借金の肩代わりを申し出たキャロウエイと契約し、当分の間はキャロウエイの指示で、禁酒したり素行を良くしようと努力したり。そうやってツアー復帰も許された。つまり、本人に改心の意志が見られたため、ツアーに戻ることができたのだ。

朝青龍の場合、相撲協会の対応は、米PGAツアーの対応と同様、2場所出場停止という「謹慎処分」。それに対し、本人の改心の意思がいまだに見られないところが、朝青龍とデーリーの違いだ。

で、問題なのは、今後であろう。デーリーに救いの手を差し伸べたキャロウエイのように、今後、誰かが朝青龍の救世主になりえるのだろうか?そんなことができる立場の人や団体というものが存在しえるのだろうか?相撲の世界にうとい私には、そのあたりの詳しい事情がよくわからないのだが、ここまで問題が大きくなってこじれてしまったとなると、もはや朝青龍と部屋、相撲協会という3者の間を取り持つ然るべき存在なくして解決は難しいと思う。

しかし、そういう救世主が現れたとしても、それが朝青龍にとって幸せなことなのかどうか。というのも、デーリーは禁酒して、好きなギャンブルも辞めさせられて、良い子を演じているうちに精神面が辛くなり、成績はガタ落ちになった。その後、キャロウエイもついに見放し、デーリーは自分流の生活スタイルに戻ったのだが、好きなお酒を好きに飲み、カジノへ堂々と通うようになってからのほうが、デーリーらしいゴルフができるようになった。そして、そんなデーリーを結局はツアーも受け入れ、ファンも「荒くれジョンだからこそ好き」と言っている。ゴルフ界きっての問題児は、最終的には問題児だからこそ面白いという話で落ち着いたのだ。

JohnDaly@PGA.jpg
Photo/ JJ Tanabe

仮に朝青龍が救世主の導きで良い子になり、相撲界に戻ってきたとしよう。しばらくは良い子を演じていても、そのうちに素に戻ることは目に見えている。そのとき、周囲はどうするだろう。米PGAツアーのように、「それでも人気があるから」「それでも強いから」ということで受け入れるだろうか。ファンはどうだろうか。

デーリーは米ゴルフ界でデーリーらしく生きていくことができるようになったけれど、日米の土壌の違い、あるいはゴルフ界と相撲界という土壌の違いを考えると、朝青龍が朝青龍らしく生きるためには母国モンゴルで生きるほうが幸せなのかもしれないなあ……そんなことを考えながらニュースを見ていると、朝青龍がジョン・デーリーに見えてきてしまうから不思議だ。

2007年08月29日

ラジオは楽しい!

急遽、一時帰国した。今回は家族の体調がちょっと優れないので、そのための帰国。だが、それでも仕事は休みなく動いているのは、大変だけど、ありがたいことだ。

その一つ、ここ最近、名古屋のFMラジオ局、ZIP-FMに隔週月曜にレギュラー出演させてもらっているのだが、ちょうどその出番の日が帰国と重なったため、せっかくだからということで名古屋まで行き、スタジオで生出演という体験をした。

TOYOTAが提供しているTOTOTA WORLD WIDERSというコーナー。パーソナリティの落合健太郎さんと向かい合い、マイクの前でお話するのは、楽しい体験だった。普段は国際電話でつないで出演しているのだが、スタジオ生となると、やっぱりちょっと勝手が違う。だが、実を言えば私は大学時代、アナウンス研究会というサークルにも籍を置いていたせいか、人前でしゃべることは苦にならないどころか好きなようだ。あらかじめ、しゃべろうと思っていたことをメモ書きしたりもしておいたけれど、いざ会話が始まると、メモとはまるで異なる方向へ行ってしまい、それでも話したいことが不思議と頭に浮かんできて、ペラペラとよくしゃべってしまう。いつも書くばかりの私にとって、しゃべるということは、新鮮なんだと思う。

落合さんはじめラジオ局の方々は、ゴルフの専門ではもちろんないわけだが、事前準備は手を抜かないし、とりわけ落合さんはゴルフをするのが大好きということで、話は弾む。

そんな中で、ふと思った。私はゴルフジャーナリストという肩書きを世の中からいただいており、専門的な視点から専門的なことを書いたりしゃべったりしてナンボというつもりで仕事をしているが、私がやるべき仕事のベースは、ただただゴルフが好きだという人々に「へーっ!」「ふーん!」「ほーっ!」と言ってもらえる情報を提供することなのだ。小難しいデータやら分析やらも時には必要だが、一番大事なのは、とにかく頷いたりびっくりしたり、何かしら心を動かしてもらうこと。心に留めてもらうこと。で、そのために重要なのは、やっぱりユニークな視点なのだと思う。

落合さんに「これからのゴルフの見どころ」を尋ねられたとき、私は「人に注目したい」と答えた。「人」とは「人柄」「性格」「個性」。つまりはゴルファーの人となりだ。「我々がゴルフをするときも、一緒に回ると相手の人柄や人間性ってわかりますよね。人間性がゴルフに反映されるのは、アマもプロも同じ。全英チャンプのハリントンは、開幕前に『ナイスガイが優勝する』と言っていて自分が勝っちゃったわけですが、ナイスガイが勝つというのは、かなり当たっている。途中で試合を投げちゃう、諦めちゃう、自暴自棄になる、なんていうのも性格の表われで、そういうゴルファーはやっぱり勝てない。だから、いい人が勝つ、いい人が強い、というのは当たっているんです。タイガー、オチョアの強さだって、彼らの人間性の表れでしょうね。だから、人に注目すると、誰がなぜ強いかが自ずとわかってきます」。

落合さんが「オー、なるほど。面白いなあ」と唸った。そのリアクションが私にはうれしかった。

ラジオという媒体は、近年、ウエブに押されているとか、時代遅れだとか、そういう説もあるが、米PGAツアーに一昨年あたりから登場したXMラジオは、むしろ今、上り調子だ。ハンディなラジオにはインターネット機能の一部が搭載されているため、コース上でも全米中のどこにいても、スコアや順位はすぐにわかる。そこに、オンサイトからの実況中継を音声で加えるという手法で展開しており、利用者はどんどん増えているそうだ。そのXMラジオも登場した当初は片隅でひっそりとやっていたが、今年あたりからはきっちり実況ブースも設営されるようになり、以前は許可されなかったカートの利用も許され、実況役の解説者の人数も増えている。人々から指示を得れば、時代や流行とは無関係に、その媒体は立派な人気媒体となりえるという証拠だ。

ラジオは速報性という面ではテレビと同じ効力があるわけだし、テレビよりハンディだし、読むという作業を要する紙媒体とは違う利便性がある。いや~、ラジオって、なかなかの媒体だ。

Funakoshi@radio.jpg
(写真提供:ZIP-FMさま https://zip-fm.co.jp/program/morning_jack/)

2007年08月25日

余りモノ?

チャーリー・ホフマンという選手をご存知だろうか?ちょっと長髪のユニークな選手。今、プレーオフシリーズ第1戦にも出場している。

そのホフマンが緑色の変なグローブをしている。どうして緑??「チャーリーのために契約会社がマスターズ仕様の緑色のグローブを大量に用意したんだけど、結局、今年のマスターズに出られず、余っちゃったから、今になって使っているんだよ」という“余りモノ説”が耳に入った。

えーっ??米PGAツアー選手ともあろうものが、よりによって大切なグローブが余りモノ??

怪訝に思って本人を直撃。すると、こんな答え。
「いやいや、余りモノじゃないよ。これは、リサイクル会社が緑や環境を大切にしようということで、そのスローガンをアピールするために作ったんだ。だから、緑色なんだ」

やっぱりねえ。いくらなんでも余りモノはないですよね~。それにしても、噂っていい加減だ。それも、余りモノを今頃使っているんだ、なんて……。
真相というものは、確かめるまでわからないものだと、つくづく思った。

Hoffman Glove 1.jpg

Hoffman Glove 2.jpg
Phpto/JJ Tanabe

2007年08月22日

ちょっぴり複雑。丸山との再会。

今週から米PGAツアーのプレーオフが始まる。第1戦となるバークレーズクラシックは私の自宅があるNYのマンハッタンから車で小1時間のウエストチェスターCCが会場だ。

今日、火曜日は練習日。朝から大雨だったため、コースに出て練習している選手はほとんどいないだろうと思ったが、ゴルフ雑誌用の取材で、あるオーストラリア人選手の単独インタビューを行なうアポが入っていたため、とにもかくにも朝から会場へ出かけていった。ところが、その選手探しが難航。天気が良くてみんなが練習ラウンドをしていれば、特定の選手を探し出すのはそんなに難しくないのだが、雨となると、ラウンドせずに選手登録だけを済ませてホテルへ帰ってしまう選手も多いし、他の選手やキャディから目撃情報を集めることも難しくなる。クラブハウスの中にこもってしまう場合もある。

うーん、どこへ行ったんだろう……クラブハウスの中でロッカールーム近辺や選手用のダイニングエリア近辺を、うろうろしながら1時間ぐらい探していたときのこと。そのクラブハウスへ入ってきたのは、丸山茂樹だった。

今季の丸山は春先から腰や膝の故障で調子が出ず、つい最近までは来年のシード獲得がほとんど見えない状態だった。「プレーオフまでにシードが決まらなかったら、もう日本へ帰るらしい」という情報も耳に入っていた。しかし、なかなか丸山に会ってその意志を確かめる機会がなかった。というのも、今季の丸山はメジャーなどのビッグ大会への出場資格もなかったため、私が取材に行った試合に丸山が出ていないという状況が続いていたのだ。

だが、丸山は先週のウインダム選手権で7位タイに食い込み、ポイントランクを一気に140位まで上げて、プレーオフ進出資格(144位まで)をぎりぎりで獲得。だから今週、会場へやってきたのである。私はアポのある選手の捜索をしばしやめ、丸山一行の近くへ行ってみた。そのとき丸山本人はたまたまいなかったのだが、奥さんと息子、そして元キャディの杉ちゃんと現キャディのカツキくん。

杉ちゃんが「元キャディ」という過去形になり、その杉ちゃんから「現キャディ」のカツキくんを紹介されたり。丸山の成績が落ち込んだり伸びなかったり急浮上したりした背景には、それ以上にいろんな出来事もあったようだ。そんなこんなをひっくるめ、久々に顔を合わせたからだろう。どこかから戻ってきた丸山は私とカメラマンのJJ田辺の顔を見るなり、一瞬、ためらったような複雑な表情になった。「どうも。こんちわ」と小声で言ってくれたと思うが、複雑な表情は複雑な心境をそのまま映し出したものだったと思う。

MeruyamaAug.jpg
Photo/ JJ Tanabe

で、そうなるとこちらも何て声をかけたらいいのか、かなり複雑だ。どうでもいい相手なら、お構いなしに取材顔で何だって聞けるものだが、長年、アメリカツアーでずっと顔を合わせ、いいときも悪いときも、少なからず一緒に時を過ごしてきた間柄だ。選手とメディアという関係以上に、思うものがある。だから、相手の複雑な心境が伝わってくると、こちらも複雑な心境になってしまって、いわゆる「取材」ができない。

そんなときは、やっぱりそっとしておいてあげるほうがいいと思い、「じゃ、また」とだけ言って、再びアポのある選手の捜索活動を再開した。丸山もそのときは、こっちを見ながら「また」と返答してくれた。

丸山は今、ポイントランクも賞金ランクも140位。ちょっとがんばれば、来季シードは取れるはず。プレーオフ4試合を最後まで戦うのは、現実的には難しいと思うが、プレーオフ後のフォールシリーズでがんばればシードはきっと取れるというところまで、這い上がってきたのだ。日本ツアーはすでに丸山受け入れ態勢を整え始めているというう話も海の向こうから聞こえてきているが、丸山にはなんとか来年もアメリカツアーに留まってがんばってほしい。なぜなら、彼には「アメリカで10年がんばる」という目標があるから。その目標達成を待たずして日本に戻ってしまったら、それはあまりにも残念だ。「僕は00年からアメリカだから厳密に言えば10年は09年で達成できるけど、まあ、ざっくり2010年までがんばるってことかな」と丸山が言ったとき、私は「そうですよねえ。じゃあ、2010年まで一緒にアメリカでがんばりましょう」と私も言った。だから、そのお互いの言葉を達成できるようお互いにがんばりたいと思うのだ。

だから、マルちゃん、がんばれ!一生懸命にがんばっている姿は必ず誰かが見ているから!その姿に励まされ、勇気づけられる人もいるのだから!そして、アナタ自身の目標と私の目標、達成しようじゃありませんか、ご一緒に!

2007年08月18日

もう1つの珍事

全米プロで起こったもう1つの珍事がある。珍事というより、世の中の皮肉というか、やっぱりなあとでもいうか……。

コトが起こったのは3日目。74で回り、通算9オーバーとなったはずのセルヒオ・ガルシアが「DQした(失格になった)」という一報がメディアセンターに流れた。周囲の米メディアから、まず聞こえてきたのは、こんな声。「やっぱりなあ。全英で優勝争いしたのに、今回このスコアじゃあ、暑い中、4日間プレーする気が失せたんだろうなあ」。これは明らかにガルシアがわざと失格になったことを意味している。さすがに、それはないだろうと思ったが、米メディアの一部には、ガルシアならやりかねないという見方があった。

Garcia3.jpg

さて、コトの真相はというと、そうではなかった。この日、ガルシアはブー・ウィークリーと同組で回っており、ガルシアのマーカーはウィークリーだった。そして、ウィークリーはこの日のベストスコアである65をマークする快進撃で一気に6位タイへ浮上。一方のガルシアは17番、18番をどちらもボギーとして、フラストレーションのたまるフィニッシュだった。

アテストテントの中。ウィークリーはガルシアの17番のスコアを「5」と書くべきなのに間違えて「4」と書いてしまった。そのスコアカードを渡されたガルシアはチェックもせずにサインし、提出。そそくさとクラブハウスへ消えてしまった。残ったウィークリーがもう1度チェックしたとき、自分が書いた間違いに気づき、走ってガルシアを追いかけた。やっと見つけてガルシアをアテストテントへ呼び戻したのだが、時すでに遅し。一旦、提出したものは提出したものということになり、ガルシアは過少申告で失格となった。

ウィークリーは「間違って書いてしまったのは僕の責任。申し訳ないことをしてしまった。でも、チェックせずにサインして提出したのはセルヒオの責任だ」。

そしてガルシアは「メジャーでは4日間プレーしたいよ。でも僕は数週間前(全英)のときのようなポジションにいるのが好きなんだ。そうじゃないなら、これは大した問題じゃない」

うーん。どう受け取ったらいいのだろうか。わざと失格になったわけじゃないのに、一部のメディアからわざとだと見なされたガルシアは気の毒だ。しかし、そう見なされるだけの言動が過去にあったのは事実。そして、ウィークリーの言葉は、すべてなるほどと頷ける。しかし、ガルシアの立場に立ってみれば、65の好スコアを出して有頂天だったウィークリーのスコア誤記は本来なら「冗談じゃないぜ」と言いたくなるような出来事ではある。しかし、ガルシアは怒ることもなく、どうせ優勝争いするようなポジションじゃないんだから大した問題じゃないぜと片付けてしまった……こんな結論を出されると、すべてがどうでもいいやって話になるではないか。

結局、この出来事は、取材する以前から先入観を持ったメディア、スコアを誤記したウィークリー、チェックしなかったガルシア、いずれにも非がある。しかし、一番の渦中の人であるガルシアが「大した問題じゃない」と片付けてしまったことで、最終的には、誰にとっても「騒いだだけ無駄だった」という話になってしまった気がする。

Boo.jpg
ブー・ウィークリー
Photo/ JJ Tanabe

2007年08月13日

珍事が起こった!

タイガー・ウッズがメジャー13勝目を挙げて幕を閉じた全米プロ。しかし、その陰では、ルールにまつわる珍事も起こっていた。珍事に巻き込まれたのはタイガーではなく、コーリー・ペイビンとティム・ヘロンだ。

6番パー3。ペイビンのティショットはグリーン左のバンカーへ。ペイビンが打ったバンカーショットはグリーンに乗りかけたが、斜面を登りきらずコロコロと転がり戻った。ああ、このまま転がっていったらバンカーの横に置いてあるバンカーレイキに当たってしまう……そのとき、ペイビンのキャディがレイキを拾い上げ、ボールはそのまま転がって池へ落ちた。

Creek@6H.jpg
(サザンヒルズCC、6番ホールのクリーク)
Photo/JJ Tanabe

その直後、第1打を池ポチャしたヘロンがドロップエリアから第3打を打ち、グリーン奥へ。そこからの第4打がグリーンを越えて転がり、ペイビンのキャディが拾い上げてから再び地面に置いたバンカーレイキに当たって止まった。

私は片山晋呉の取材を終え、メディアセンターに戻ってこの様子をモニターで見ていた。「あれっ?ペイビンのキャディはなぜレイキを拾い上げたのだろう?そのまま置いておけばレイキでボールが止まって池に落ちずにすんだのに……」と思い、同時に「あの場面でレイキを動かしたらルール違反じゃないのかな」とも思った。周囲のアメリカ人記者たちも口々に同じようなことを言っていたが、誰一人定かではない。

結局、ルール委員会が作成した書面で、すべてが明らかになった。アテンドしているピンフラッグとプレーヤーの用具以外は、ボールが動いている最中にボールの動きに影響を与える可能性のあるものを動かしてはならないというルールがあり、ペイビンのキャディがレイキを拾い上げたことは、ボールを池に落とすという悪い結果を生んだにも関わらずルール違反と判明。おかげでペイビンは2打罰を食らい、池ポチャでさらに1打罰。このパー3で「8」を叩いた。

ヘロンのほうは、ルールにのっとり、レイキをそっと取り除いた。するとボールは結局転がって池に落ちたのだが、この場合、元の場所にリプレイスできる。ヘロンはリプレイスしたが、それでもボールはどうしても転がってしまったため、一番近い場所(ニアレストポイント)にリプレイスし、そこから第5打のチップでグリーンに乗せて2パット。スコアは「7」となった。

それにしても、ペイビンのキャディはなぜレイキを拾い上げたのだろう。おそらくは「ボールがレイキに当たったらペナルティだ」と勘違いし、咄嗟にレイキを拾い上げたのだと思う。ペイビンのためを思っての行動だったには違いないが、結果的にはボスに大損害を与えることになった。ペイビンはルールを正しく知っていたのかもしれないが、瞬時の出来事ゆえ、キャディを制止できなかったのだろう。残念ながら、そのあたりのことは今日はタイガーやエルスらの動きを追うのに精一杯で取材できなかった。今度会ったら聞いてみようと思う。

いやいや、ルールは複雑だし、適用の仕方も結構難しい。だが、選手とキャディは、やっぱりルールを正しく理解していないと大変な不幸を招く。そして、私を含めた我々メディアも、もう少しルールに精通していないと情けない……。いい勉強になりました。

2007年08月11日

「流れ」は凄いぞ!

たとえば、あんまり乗り気ではない何かの集まりに出席して、みんなが二次会に行くから「流れ」でそのまま自分も出席しちゃった……なんてことがある。その場合の「流れ」は、言い換えれば「惰性」に過ぎないわけだが、ゴルフにおける「流れ」は惰性では起こりえないし、ものすごい力を持っている。全米プロ2日目のラウンドを眺めながら、そんなことを痛感させられた。

2日目のタイガーチャージは猛烈だった。バーディ発進し、次々にバーディを重ねて、7アンダー63。あと1つバーディを奪って62をマークできていたら、メジャー史上におけるベストスコア記録の更新だった。それでも63はメジャー史上24人目のタイ記録。タイガー自身は97年全英オープンの64がメジャーにおける自己ベストだったが、その記録は1打更新できたわけだ。

Woods@07PGA.jpg

そんな猛チャージのターニングポイントは12番で沈めた10メートルの長いパーセーブパットだったとタイガーは言う。「あれが大きかった」。その言葉通り、直後の13番から3連続バーディ。16番からの上がり3ホールも、すべてバーディチャンスを逃してのパーゆえ、とにかく絶好調の「流れ」は12番のロングパットを沈めた時点から作られたのである。

ひとたび流れに乗ると、難しいものも難しくなくなり、自ずと数字も良くなる。それは、2日目の片山晋呉のチャージにも当てはまった。8番でやはり10メートルのロングパットを沈め、バーディ。それが片山のターニングポイントとなり、その後は前日とは打って変わってショットも安定。デコボコのグリーンもものともせず、パットを沈めまくって、終盤も3つバーディを重ねた。終わってみれば、前日の103位から一気に30位へ浮上して楽々予選通過となった。

Katayama@07PGA.jpg
Photo/JJ Tanabe

惰性ではない「流れ」の力は凄い。勢いよく流れる水が決して逆方向へは流れないように、流れに乗ったゴルフはいい方ばかりへ流れていく。「流される」のではなく自力で「いい流れ」を作る。そこには必ずターニングポイントがある。これは、人生にも当てはまるような気がする。

悪いことばかりが起こるときは次々と悪いことが起こるけれど、ターニングポイントを越えると、あとはいい方へいい方へ。そんなことは、長い人生の中でときどきある。

問題は、いつどうやってターニングポイントを作ることができるかどうかだが、それはおそらく努力と気持ちの持ちよう以外に方法はないのだろう。タイガーも片山も努力を重ねてきたからこそ、ターニングポイントを得ることができた。そして、タイガーは「優勝圏内に戻そう」と前を向き、片山は「ダメならダメで帰るだけの話」といい意味で開き直ったことで、ターニングポイントを得た。人生においても、きっと同じなのだろう。いやいや、ゴルフを見ていると、本当に人生勉強になる。いい流れというものは、惰性的な流れからは生まれないのである。

2007年08月09日

ガルシアvsオチョア

全英リコー女子オープンからNYへ戻る飛行機の中で、英国の新聞『Daily Mail』を読んだ。英国メディアのオチョア優勝に対する見方を確かめたかったからなのだが、これが実に興味深い内容で、思わず引き込まれた。

見出しは「Role model. Ochoa sets an example to Sergio」。

どういう内容かというと、全英オープンではセルヒオ・ガルシアが3日間首位を守り通したのに最終日に敗れた。一方、全英女子オープンではロレーナ・オチョアが3日間首位を守り通した上で最終日も逃げ切り、勝利した。2人とも同年代で、2人ともラテンの血を引く。2人ともツアーにおける最高のショットメーカーであり、もっと早くにメジャー優勝をしていてもおかしくない存在だ。その2人に、なぜ一方は敗北し、一方は勝利するという大きな差が出たのかといえば、オチョアは常にファンにもメディアにもきちんとした態度で接っし、選手たちのロールモデルとなっている。だが、ガルシアはといえば、悪態ばかりつき、まるでいまだに15歳の子供のようだ。それを思えば、オチョアが勝ってガルシアが負けたことは、驚きには値しない……といった内容。

Garcia.jpg

この記事の内容そのものには驚かないが、スペイン人のガルシアは欧州メディアからは応援されている存在なのかと思っていたので、英国メディアがこれほどガルシアを酷評していることに驚いた。それにしても、ガルシアとオチョア、どちらも首位を守り通しての最終日という同じパターンの末に運命が分かれたところが、彼らの運命。そうでなければ、ガルシアだって、これほどオチョアと比較された上で酷評されずにすんだはずなのに……。

私自身、米メディア、この英国メディアらと同じ意見で、ガルシアは根本的に考え方や性格、態度を変えない限り、いや少なくとも変えようと努力しない限り、プロゴルファーとしてのビッグサクセスは難しいと感じている。だが、ここまで世界的に酷評され、しかも自分ではなく女子のオチョアの優勝報道に際してまで酷評されているガルシアが、少しばかりかわいそうになってきた。

Ochoa.jpg
Photo/ JJ Tanabe

今週は全米プロ。今年のメジャーは男女とも、すべて優勝者がメジャー初優勝者という流れのため、今回の全米プロ優勝候補は、初優勝者となる若手のアダム・スコット、ルーク・ドナルド、そしてガルシアらが注目されている。さらに、雪辱戦という意味では、手首の故障で全米オープンで振るわず、全英では予選落ちを喫したフィル・ミケルソン、そして全英雪辱を狙うガルシア。つまり、ガルシアは二重の意味合いで優勝候補にその名が挙がっている。

さてさて、どうなるか。とりあえずは、ガルシアの態度や考え方に注目が集まりそうだ。

2007年08月06日

オチョア優勝は神様のご褒美

全英リコー女子オープンが終わった。今、最終日の夜。セントアンドリュースのメディアセンターの中で、まだ原稿を書いているのは、わずか3人。急ぎの原稿をなんとか仕上げ、これを書いている。

ロレーナ・オチョアが悲願のメジャータイトル獲得。優勝会見が終わり、メディアセンター内でウロウロしていたオチョアに「おめでとう!」と声をかけた。当然、「ありがとう!やっと勝てて、うれしい!」といったリアクションがあると思っていたが、オチョアは意外にも「Oh! How are you? Everything is OK?」と、まるで日ごろの挨拶のように普通の顔と普通の言葉で返してきた。

これが、オチョアだ。メジャーチャンプに輝いても、決して奢ることはない。偉そうになることはない。いつも通りの親しみやすいオチョア。さすがだ。

Ochoa1.jpg

そんなオチョアは母国メキシコの人々の生きる望みでもある。国境を越えてアメリカにやってきて貧しい生活を強いられているラテン系の人々を彼女はいつも励ましている。だからこそ、熱狂的な人気を得ている。そしてオチョア自身は、常に謙虚で優しい。さらに彼女は努力家だ。この全英へ向けて3ヶ月も4ヶ月も前から数種類の特殊ショットを練習し、備えてきた。ノースピンで球を高く上げ上から落として止めるショットはその代表例。あんなに高い球でセントアンドリュースを攻めたのはオチョアだけだ。

そんな努力が報われた。そんなオチョアだからこそ、セントアンドリュースの神様がご褒美をくれた。オチョアの優勝を振り返りながら、神様はやっぱり公平な判断を下すのだなと、つくづく思う。

Ochoa2.jpg
Photo/JJ Tanabe

2007年08月03日

セントアンドリュースは難しいの?

全英リコー女子オープン開幕前から、ずっと抱いていた疑問がある。果たして、セントアンドリュースは難しいコースなのか、それとも易しいのか、という疑問である。

何言ってんの?と思う方もいるだろうけど、男子の全英オープンがこの地で開催されると、必ずスコアは伸びるし、男子選手たちは口をそろえて「コース自体は簡単」だと言う。気まぐれな海風が強まれば、そりゃ難しくなるが、強風で難しくなるのはセントアンドリュースに限らずどのコースでもいえること。となると、やっぱりセントアンドリュースは簡単なコースなのではないか、少なくとも男子プロにとっては難しくはないのだろうと、そう思えてならないのだ。だが、そこで女子選手たちがプレーするとなると、肉体差による飛距離の差、腕力や体力の差によって、難しいものになるのかどうか。その答えがわからないのである。

悩んでいても仕方がないので、いろんな人に聞いてみた。今回出場している佐伯三貴のコーチ、坂詰和久氏は、かつて片山晋呉のキャディを務めていた人物ゆえ、男子の全英もよく知っている。で、その坂詰氏いわく、「セントアンドリュースは簡単ですよね。広いし、特に今回はラフもないし、池ポチャだってないし。絶対簡単ですよ」。それでは、そこで女子選手がプレーすると、どうなるか。「うーん。やっぱり女子は男子ほど、いろんなことができないんです。ボールにスピンをかけてどうこうするとか、こういう状況ならこういう球筋で攻めるとか、そういうことがあれこれできない。そうなってくると、やっぱりスコアはそんなに伸びないのかなあ」

Potbunker2.jpg

今度は、思い切って宮里藍選手に聞いてみた。「男子は簡単というけど、宮里さんにとっては、ここは難しいですか?易しいですか?」「うーん、たぶん男子選手はかなり距離の短いコースでやっている感じなんだと思います。でも女子は、他の試合のコースに比べればここは短いけど、やっぱりこれだけアンジュレーションがあって、バンカーがあって風。やっぱり難しいです」

現在、第1ラウンドが進行中。すでにホールアウトしたロレーナ・オチョアは6バーディ、ノーボギーの6アンダーで首位。宮里は3アンダーで現在3位。2日目以降の天候次第、風次第ではあるが、このペースなら優勝スコアは10アンダー以上まで伸びるだろう。スコアの伸びを見る限り、女子のメジャー開催コースとしても、セントアンドリュースはやっぱり易しいという結論になる。

もちろん、易しいというのはコースの形状やデザインそのもののことで、風やピン位置、メンタル面といった要素は別扱いだ。ゴルフの聖地で挑むメジャーというプレッシャー、メジャータイトルを取りたいというプレッシャー、初優勝したいというプレッシャー。そういうものが、易しいはずのコースを難しくする可能性はきわめて高い。そんな「いたずら」をするからこそ、ゴルフの聖地であり、ゴルフの神様が宿っているのかもしれないけれど……。ともあれ、セントアンドリュースで初開催の全英女子。勝利の行方が楽しみだ。

Potbunker1.jpg
(絶対に入れてはいけない!ポットバンカー)
Photo/JJ Tanabe

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