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2007年10月29日

やったね、マルちゃん!

丸山茂樹が、とうとう来季シードをモノにした。フォールシリーズ7戦の最後の2試合に望みをつないでいた丸山は、6戦目に当たるギン・サー・メール・クラシックで優勝争いに絡み、2位タイ。賞金ランクを103位へアップさせ、胸を撫で下ろした。

「今年はどうやって自分の気持ちを盛り上げたらいいのか、わからなかった。何をどうしたらいいのか理解できない1年だった……」。優勝を逃したとはいえ、丸山は饒舌だった。

Shigeki@Ginn.jpg

考えてみれば、丸山とじっくり話ができたのは今年の5月のメモリアル以来のことだ。メモリアルで「ドライバーを打つのが怖い」と言った言葉を最後に、それ以降は話もできない状態が続いてきた。聞いてもしゃべらず、いや、しゃべれず、「お話できることはありません」。今、やっと聞くことができた彼の胸中は、想像以上に苦しいものだったようだ。

そして、勝負師ならではの真剣な表情やガッツポーズ、輝くスマイルを見たのは、いつ以来なのか思い出せないほど久しぶりだった。

「アメリカで10年がんばりたい」--昨年の末、この言葉を丸山の口から聞いたとき、「それじゃあ、一緒に2010年までがんばりましょう」と答えた。私は真剣にそう思って、そう言った。しかし、今年の丸山は、彼のアメリカ生活が今年限りになるかもしれないという状況続き。あの約束を密かに真剣に受け取っていた私にとって、そんな丸山を眺めるのは辛いことだった。

そして、この数週間、私は自分の体調や状況と丸山の未来を、勝手に重ね合わせていた。先日も書いた通り、検査結果が悪く、一度は命の限界を身近に感じてしまった私は、「マルがアメリカを去るとき私もアメリカを去ることになるのかな」と密かに思った。だから、丸山が来季シードを決め、「やっぱりここで10年はやりたかった」と満面の笑顔で語る姿を目の前にしながら、「うん、そうそう、私もここでもっとがんばりたい」と強く思った。

諦めずにがんばっていれば、ちゃんと前を向いていれば、道は開ける--ちょっと哲学めいた言い方だが、そんなことを肌で感じた丸山と私は、こんな記念写真まで撮ってしまいました。どう見ても、選手とメディアには見えないこのツーショット、恥ずかしながら公開します!

Sonoko&Shigeki.jpg
Photo/ JJ Tanabe

2007年10月26日

世の中、捨てたもんじゃない!

故障と不調で散々の1年を過ごしてきたミッシェル・ウィーは、現在、スタンフォード大学に入学し、寮生活を始めている。プロ転向と同時にマネジメント契約したウイリアム・モリス・エージェンシーのマネージャーは、すでに1人目が辞職し、つい最近、引き継いだ2人目も辞職。その2人目のマネージャーの辞職の理由は「私自身の将来を考え、一番いい決断をした」というものだった。つまり、成績が落ちる一方のウィーのマネージャーをこれ以上続けていてもマネージャーとしての自分の将来はないという意味だ。

人間の本性、本質というものは、こういうときにわかるんだということを、おそらくウィーも学び取ったことだと思う。何もかもがいいときは誰だって近寄ってくるけれど、何かが落ちかかったとき、傾きかかったとき、「こいつには、もう用がない」という感じで、そっぽを向く者は世の中には結構多い。

しかし、逆も結構多いから、この世の中は捨てたもんじゃない。

Wie@07USO1.jpg

私ごとで恐縮だが、この数週間、私は生きた心地がしないほどの不安の中にあった。何気なく病院へ行ってちょっとした検査を受けたら思わぬ結果を聞かされ、精密検査になった。
もしかしたら、私はもうそんなに長く生きられないのだろうか……。
生まれて初めて、本気で死を身近に意識した。

精密検査の結果を待つこの1週間は、毎日、一刻一刻がそれはそれは長く、何をやっても手につかず、結局、原稿も書いても全然まとまらずじまい。仕方がなくマンハッタンをふらふらと歩いて気をまぎらわせたり、いろんなことを考えながら、いろんなことをした。自分で選択し、自分の意志でアメリカで一人暮らしをしているのだから、淋しいとか辛いとか、そんなことは言っていられない。こういうことがあっても乗り越えなければと自分に言い聞かせれば言い聞かせるほど、よけいに辛くなった。

そんなときに電話をもらったりすると、ついつい不安が口をつき、涙も溢れた。
すると、大半の人は、本当に心のこもった言葉や気遣いで元気の出る激励をしてくれた。
食事に連れ出してくれた人、おしゃべりに付き合ってくれた人、
何度も何度もメールをくれた人、
途中途中、どうしているかと心配して電話をくれた人、
こういうときほど笑え、歌えと導いてくれた人、
自分の友人知人にはこんな例もあったと言って励ましてくれた人、
こんな本を読むといいよ、こんな自然食品を採るといいよ、
こんなふうに考えれば何も怖くないよ……いろんなものを、いろんな人がくれた。
うれしかった。

昨日、検査結果が出た。
幸い、密かに覚悟していた最悪のシナリオは免れた。
近々に小さな手術を受けさえすれば、元通りの元気な体に戻れるとのこと。
ドクターのその言葉を聞いて、やっと長い長い1週間が終わってくれた。

私自身の話が長くなってしまった。私が言いたかったことは、世の中には苦境に陥った人間を見限る人や見捨てる人がいる反面、どんなときも見守ってくれる人だっているということ。そして、そういう人々の温かさや大切さを知っていれば、苦境から脱することもきっとできるだろうということだ。そして、このことは、ウィーのみならず丸山茂樹にも伝えたいし、実感してもらえたらいいなと思う。

ウィーのゴルフは、今後いつごろ回復するのか、それは彼女自身にもわからないはず。華々しくデビューしたときはチヤホヤしていた人々が、今では彼女から離れていっている。しかし、そんな中でも、激励やサポートを続けていく味方は必ずいるはず。その温かさ、ありがたさを噛み締め、感謝し、謙虚にゴルフに臨めば、「強いウィー」は必ずいつか戻ってくるはずだ。

折りしも、米LPGAのビーベンス会長が来季はQスクールを受けなくてもウィーにシード権を与える可能性
が大だというニュースが報じられたばかり。この話が本格的に表面化したら、またまたウィーに対する世間や他選手からの風当たりが強くなり、あることないこと、あれこれ言われることになるだろう。

だが、それでもウィーの味方をしてくれる人、ウィーの将来性や才能を信じてくれる人、最後まで見放すことなく助け続けてくれる人はいるはずだ。

まだ17歳で常に渦中の人となっているウィーの「心」が心配だが、諦めずにがんばっていれば、信じていれば、きっとどこかから何かしらの「助け」が来る--。

Wie@07USO2.jpg
今年の全米女子オープンで、手首故障のため棄権するウィー。
Photo/JJ Tanabe

2007年10月20日

ゴルフに失礼!

米PGAツアーは、フォールシリーズが終盤戦を迎えつつある。フェデックスカップが終了した後のフォールシリーズは、ビッグネームたちが姿を消し、メディアも激減し、何もかもが小規模で地味になった。しかし、来季シード権をめぐって必死の選手もいれば、今田竜二のようにシードは確定していてもマスターズ出場権など別の目標を達成しようと一生懸命の選手もいる。

だが、どうしてもムードが「だれる」のだろう。プレーの進行が遅れ、ティグラウンドに到着するたびに待たされていたときのこと。ふと見ると、あっちでもこっちでも待ちくたびれた選手たちがバッグの上に座ったり、挙句の果てには寝っ転がったり。

LayDown2.jpg

座るまではよしとしても、さすがに寝っ転がるのはやめたほうがいい。フォールシリーズと言っても、それは出場選手の顔ぶれが下位選手中心になったというだけで、あくまでも米PGAツアーの試合。そして、PGAツアーはあくまでも子供たち、ゴルフファンたちの憧れのツアー、世界一のツアーなのだ。フォールシリーズであっても、地元で開催されるその大会を心待ちにして会場にやってきたギャラリーだって大勢いる。そんな人たちに、これほどだれた姿を見せてはいけないだろう。

素行の悪さで悪評高きジョン・デーリーだけは、みんなが寝そべったりしているときも、一人だけ立って待っていた。デーリーは、酒乱になったり、暴力沙汰を起こしたり、いろいろな問題を起こしたけれど、ゴルフそのものを尊敬する心は忘れていないのだろう。ちゃんと立っているデーリーだけが立派に見えるというのは、なんとも奇妙な感じだが、やっぱりゴロゴロしているより、格段に格好良かった。

LayDown1.jpg
Photo/JJ Tanabe

そんな折り、驚きのニュースを耳にした。エリック・コンプトンという選手をご存知だろうか。15歳のとき心臓移植の手術を受けて奇跡的に回復し、以後、ゴルフだけを生きがいに生きてきた。体を鍛え、腕を磨き、プロにまでなり、PGAツアーの試合にも出たことがあるし、昨今はネイションワイドツアーで戦っていた。かつて、彼に会い、インタビューをしたことがあるが、とても明るく、トッププロになることを夢見ながら球を打っていた。心臓移植を受けたなんて、まったく感じられないほど健康そのものに見えた。

そのコンプトンが27歳の今になって、釣りをしていた最中に突然の心臓発作に見舞われた。呼吸も切れ切れになりながら、必死に車を運転。病院までたどり着いたが、入り口で意識を失った。緊急手術で一命を取り留めてはいるが、危篤に近い状態だそうだ。それでも彼は、ゴルフがしたい、ゴルフを続けたいという一念で命の灯を保とうとしている。

ゴルフがしたい--そのために、生きようとしているプロがいる一方で、PGAツアーの舞台に立てているのにダレた姿をさらすプロたちがいる。それは、ゴルフに対して、あまりにも失礼だと思う。

2007年10月17日

悲しい批判

フォールシリーズ第4戦のフライズドットコムオープンを取材して、悲しくなった。なぜなら、1ドルでも多く稼いで、賞金ランクを1つでも2つでもアップさせなければいけない状況だというのに、丸山茂樹のプレーぶりが、あまりにも投げやりだったからである。それも1つのミスや1日だけというのではなく、4日間、全ホールでその態度が見られたのだ。

タイガー・ウッズだって、あまりにも不本意なラウンドを終えた後は記者たちを振り払い、無言で去ることがある。他選手も同様だ。ラウンド中だって、不本意なショットやパットをしてしまったときは、クラブを叩きつけたりすることはある。激しい優勝争いの最中でそんな姿を見ると、マナー違反とはいえ、むしろそんな態度は見ていて面白いと感じることさえある。

TigerClubThrow.jpg
(タイガーだって、クラブを投げたりすることはいくらでもある。)

だが、今の丸山は、そういう状況下にあるわけではなく、賞金ランク125位以内に食い込んで来季シードを死守しなければいけない立場だ。そして自らのランクは135位。残り4試合でランクを10アップするためには、1打1打が本当に大切になってくるわけで、ふて腐れている場合ではないのだ。

それなのに……気に入らないショットを打つたびにクラブを放り投げたり、叩きつけたり。前の組が詰まっていたパー3のティグラウンドでは、自分のゴルフバッグをすごい勢いで蹴り倒し、その上に座り込んだ。蹴り倒したときの「ガシャン」という大きな音が、ものすごく悲しい響きだった。

丸山の周囲の人間は、そんな彼を止めることができない。心情を知りすぎるがゆえに、やめろと言いたくても言い出せないのだろう。誰も止めないし、誰もとがめないから、丸山本人も、ひっこみもつかないのか、悪態をどこまでも通す。

MaruyamaDown.jpg
(待たされるティグランドで寝そべるのは、米ツアー選手では見慣れた光景なのだが、、。)

最終ラウンド終了後、なぜそこまで悪態をつく必要があるのか、そんなことをしている場合ではないのではなかろうか、といったことを話そうと思った。ひょっとして、好成績がなかなか出ないことや賞金ランクがここまで低迷していることへの苛立ち以外に、何か理由や原因があるのか。あるのなら、それは何かを聞いてみようと思った。しかし、足早に立ち去ろうとするばかり。意を決して走って丸山を追いかけ、声をかけたが、振り向くこともなく、頭の上で手を横に振られてしまった。

もう、ここまで来たら、私ができることは、今の丸山の姿が見るに耐えないものであることを記事で伝える以外にはないと思った。米ツアーで8年間も踏ん張ってきて、3勝も挙げて、世界の丸山と言われたアナタが、そんな態度を取り続けていたら、過去の栄光に自ら泥を塗るだけだということを、ペンによって伝えるのがジャーナリストである私に残された唯一の「できること」だと思った。

8年間、同じアメリカに身を置きながら取材を続けてきた丸山には、他選手とは異なる親近感を感じている。もちろん、「なあなあ」の関係になるのは嫌だったから、取材する側とされる側という距離感は保ったまま、それでもやっぱり応援には力が入った。彼の一面だけを見て書かれた批判記事が出れば、彼の素顔を知る者として擁護する記事も書いてきた。

だが、今回だけは、あえて批判記事を書くしかないと思った。丸山が好きだからこそ、がんばってほしいからこそ、あと残り3試合をしっかり戦ってもらうためにも、書くしかないと心を決めた。

2つの媒体向けに、とうとう書いた。スポーツ新聞とウエブ。新聞の見出しは書き手ではなく社内の見出し専門の担当者がつけるため、私の意志とは異なる見出しがつけられてしまっていたが、ウエブのほうはまったく手を入れられずにアップされるため、一字一句たがわず私の原稿通り。

これらを丸山本人が見てくれるかどうかは、わからない。見たら、とりあえずいい気分はしないだろう。だが、それで激怒しっぱなしになるか、それとも心を入れ替えて残り3試合を必死に戦ってくれるのか、それは丸山次第だ。

長い付き合いの丸山に関して、批判記事を書くのは、正直なところ、悲しいことだった。書かないでおくことは、もちろんできた。現場にいた日本のメディアは、NHKのレポーターと私と私の相棒カメラマンの3人だけ。誰もが何も言わずにいれば、テレビ中継にも映らなかった丸山のプレーぶりが世の知るところとなることはない。「イライラしているんだから仕方ないよ」で済ませることは、もちろんできた。

だが、あえて書いた。自分に気づき、乗り越え、125位に繰り込めるかどうか。たとえ繰り込めなかったとしても、必死にやってダメだったのと、投げやりにやってダメだったのとでは、今後に与える意味合いが全然違う。だから、今こそは丸山が迎えている最大の試練。克服しない限り、丸山はいろんな意味でダメになってしまう。だから、批判を書いたことを私は後悔していない。たとえ、そのことで丸山から嫌われようと疎まれようと、丸山のためになるのでもあれば、それでいい。

絶対に誤解してほしくないのは、「あえて批判を書いた」ということ。辛いなあと思いつつ、「あえて書いた」ということ。批判したいのではなく、態度と姿勢を変えてがんばってほしいから書いたということ。

それは、直接言葉を交わすことを拒んでいる丸山に対して、ペンを握る私が「がんばってほしいのよ、丸山茂樹!」と伝えることができる唯一のエールだったと、丸山自身に気づいてほしい。

MaruyamaUnfinishes.jpg
Photo/JJ Tanabe

2007年10月14日

座右の銘

ラスベガスで開催されているフライズドットコムオープンの会場で、犬が寄ってきた。動物は、目の前の人間が動物好きかどうかを感じ取る能力があると聞いており、私は幼いころ飼い犬に噛まれて痛い思いをした経験があるせいか、普段はあんまり犬や猫が好きではない。別に嫌いなわけではないが、たとえばスターバックスの外のパティオで誰かの飼い犬や飼い猫が近くにいたとしても、ナデナデなんかは、まずしない。実際、先日、ある場所で、ある人の飼い猫をナデナデしてみようと手を伸ばしたら、すごい勢いで逃げられ、やっぱりなあと思ったばかり。だが、この犬は不思議なことに全然私を怖がらず、嫌がらず、じっと良い子のままだった。

なぜって、そりゃあ訓練されつくしているからだろう。この犬はK9(警察犬)。任務は爆発物探知だ。試合会場内に爆弾が仕掛けられていないかどうか、ギャラリーに紛れて爆発物を持ち込んでいる人物がいないかどうかを探知するという任務を背負ってやってきていたのだが、ふと見かけたときは、ちょうどお昼休み中で、芝の上に体を伸ばしながら「あー、疲れた~」と座っていた。

Joe1.jpg

名前は「Joe(ジョー)」。7歳。うわ~、この子は逃げないぞと思いながらナデナデしていたら、変なことに気が付いた。こいつ、生意気にも「オールアクセス」のクレデンシャルを首から下げているではないか!

大会関係者には、選手用、キャディ用、メーカー用、メディア用という具合に、クレデンシャル(入場証)がツアーから発行されており、それぞれ用途に応じて、入れる場所の表記が異なっている。私のクレデンシャルは「パーマネント・メディア」用。写真のオレンジ色っぽいのが、それだ。常にPGAツアーの大会を取材しているメディアに発行される取材証で、クラブハウス、ロッカールーム、練習場、メディアセンターに入ることができるし、取材申し込みをしなくても、すべての試合の取材をすることができるというものだ。だが、いつも羨ましく思っていたのは、ツアー関係者に発行されている「オールアクセス」。このクレデンシャルを持っていると、ほとんどの場所に入ることができ、「入る」ことに関しては一切不自由がないのだ。だから、ジョーが「オールアクセス」を持っていたのが、驚きであり、妬ましい!

「おい、ズルイぞ、ジョー!どうしてオマエがオールアクセスなの?」
「だって、オレには特殊な鼻があるんだぜ。園子、キミにはそんな鼻、ないだろう?」

そうかあ……。特殊なほど優れたゴルフ技能を持っているから選手には選手証が発行され、特殊な鼻を持っているからジョーにはオールアクセスが発行される。なるほど、そりゃ納得できる。

「ところで、ジョー、働かなくていいの?こんなところで油を売っていると、オールアクセスは取り消しになっちゃうよ」と吹っかけると、ジョーは「オレの座右の銘を知ってるか?Work hard and dream big. コースでは鼻を効かせて一生懸命に働き、休み時間は鼻を休めながらビッグな夢を見る。どっちも、人生においては大切なことなんだ」

「で、今はどんなビッグな夢を見ていたの?」
「ん?テロのない平和な世界の到来。そうなったらオレは、お役御免で引退するよ」

……長いフィクションで、すみません。爆発物探知犬、麻薬探知犬といった警察犬は、PGAツアーの試合会場では必ずと言っていいほど働いている。全米オープンなどのメジャーになると、3~5匹ぐらいが会場入りする。行動は担当ポリスと2人(1人&1匹)1組。日本ではゴルフの試合会場にこういう警察犬が入ることはないだろう。もちろん、お国柄とお国事情の違いだ。

警察犬が働いてくれることで人々が安心してゴルフ観戦できるのは、ありがたいこと。選手たちは警察犬がいることに馴れっこになっているのか、最近は警察犬を見ても誰も反応しないけれど、きっと彼らも警察犬に感謝しているはず。だから、キミはみんなから「ありがとう」って思われているんだよ~、ジョー君!

Joe&Sonoko.jpg
Photo/JJ Tanabe

2007年10月11日

ちっちゃなタッド

今週は米PGAツアーのフォールシリーズ第4戦、フライズドットコムオープンに来ている。会場はラスベガス。カジノの街で開催される大会には、必ずと言っていいほどジョン・デーリーが出る。もちろん、この大会にもデーリーは出場するのだが、カジノとは無縁で出場している注目のこの人といえば、16歳のタッド・フジカワだ。

ハワイ出身のフジカワは、今年のソニーオープンで史上2番目の若さで予選通過を果たし、その直後にパールオープンで優勝。そして今年7月にプロ転向した。今週は、プロ入り後、2試合目のPGAツアーの大会になるのだが、そうした記録より何より、話題になっているのは彼の背丈である。

メディアセンターの前で、丸山大輔のバッグを担ぐキャディのリックに出会った。リックは「タッドを見た?」。「うん、たった今、そこでちょっと話をしたけど」と答えると、「どのぐらい小さいの?」。やっぱり興味があるらしい。

TaddFujikawa.jpg

フジカワの身長は153センチ。ちょうど、宮里藍と同じ身長ということになる。私は159センチ。そう、これまで選手と話をするときは必ずと言っていいほど見上げながら話していたが、フジカワは私が初めて見下ろしながら話をしたPGAツアー選手だ。リックに「私より小さいのよ」と伝えると、「オー、マイ、ゴッド!そんなに小さいの?今、レンジで打ってるのかい?」と遠くに目をやった。すると、相棒カメラマンのJJ田辺はすかさず、「ダメダメ、そうやって見てもタッドは見えないよ。みんなの陰に隠れちゃうから」。

フジカワは3ヶ月も早くお母さんのお腹から出てきてしまったため、生まれたときは超未熟児だったそうだ。体重は2キロもないほどだったという。しかし、その後は柔道で鍛え、背は低いけどがっちり体型。

そして、背は低いけれど、ハキハキした素直なかわいい男の子だ。「うん、いいよ。OK!」と笑顔で答えるフジカワは、なんだか弟にしたくなる。将来は高額賞金を稼いできてくれる弟?うーん、こんな弟がいたら、きっと私の誕生日に「お姉ちゃん、この前、優勝したから、好きなものを買ってあげるよ」なんて言うんだろう……あんまりかわいくて、ついついそんな妄想をめぐらしてしまった。

ともあれ、今大会の目標は「もちろん、優勝!」だそうだ。がんばれ、タッド!優勝しても年齢規定があるから、すぐさまツアーメンバーにはなれないが、日本がハニカミ王子なら、アメリカはスモール王子といこうじゃないか。お姉ちゃんが応援してあげるから……と、ここまで書いて、ふと思った。あれれ、もしかすると私の年齢は、フジカワのお姉ちゃんというより、フジカワに付き添っていた彼の母親に近いものがあるのかもしれない。うーん、さしずめ私は、フジカワのおばさんってことだろうか?ちと悲しい。

FujikawaClubs.jpg
(アイアンはONOFF、ドライバーはアダムスのインサイトを使用中。)
Photo/JJ Tanabe

2007年10月06日

選手の呼称

日本の東海クラシックでカミロ・ビジェガスが優勝した。ビジェガスといえば、米PGAツアーにデビューし、あのパットのラインを読むポーズを初めてこの目で見たときの驚きが今でも懐かしく思い出される。そう、あのグリーンに這うような姿と七色に変わるかのごとき派手なファッションをかけて、私は日本の新聞や雑誌に「カメレオンのような男」と表現した。

その後、日本の新聞や雑誌上で「カメレオン男」という呼称が勝手に一人歩きしていて、これまたビックリ。私独自の印象で表現した呼び名がビジェガスという一人の選手の当然の修飾語のようになっていたことを知り、いや~、活字の威力はすごいもんだと今更ながらに痛感していた。

CamiloVillegas.jpg

さて、その後。日本のある雑誌から、ビジェガスの紹介記事をあらためて書いてほしいという依頼が来た。しかし、その依頼は「カエル男ってことで、書いてください」。えっ?カメレオンじゃなくてカエル?うーん、彼のポーズは、どう見ても、ガニマタのカエルちゃんではありませんよと説明したら、結局、「カエル男」は世に出ずじまい。

さてさて、その後。アメリカのどこぞでは、時折り、ビジェガスのことを「スパイダーマン」と表する記事が出たようで、その表現を日本の誰かが拝借し、以後、日本では「ビジェガス=スパイダーマン」となったようだ。今年の優勝の際も、日本の新聞や雑誌には「スパイダーマン」ばかりが踊っていた。しかし、アメリカでは、ビジェガスをスパイダーマンと呼ぶことはほとんどなく、なんか奇妙な感じがしてしまう。

そんな折り、偶然にもビジェガス優勝と同週に日本女子オープンが開催された。優勝は諸見里しのぶだったわけだが、ディフェンディングチャンプで出場した韓国出身の張晶の呼称というかカタカナ表記が去年に続いて今年も変更されていた。

元々、日本では漢字で「張晶」と書くか、あるいはカタカナで「ジョン・ジャン」だった。しかし、昨年大会から、放送局が「チャン・チョン」に突然変更。右へ倣えということで、通信社→新聞→雑誌と、ほぼ全媒体が「チャン・チョン」に変えた。姓と名を日本式に入れ替えるなら「ジャン・ジョン」でいいはずだが、「ジ」を「チ」へ変えてしまった理由は不明。

JeongJang.jpg

そして今年の大会パンフに掲載するディフェンディングチャンプインタビューを行なった際、本人に発音を確かめたら「チではなくジです」。それを大会主催者側にも伝えたところ、主催者が放送局へ伝え、放送局が「だったら元へ戻そう」となり、そこからまた日本のほぼ全媒体が「ジャン・ジョン」へ。こんな経緯で彼女の名前はコロコロと表記が変わる運命を辿った。

それにしても、選手の名前や表記が、あれこれ変わってしまったらファンや読者は混乱するばかりだ。おまけに本人の了解も取らず、確認もせずに、妙な方向へ変更してしまったら目も当てられない。

逆に、選手の修飾語やニックネームというものは、誰かの表現をそのまま受け継ぐのではなく、それぞれの媒体が独自の視点と独自のアイディアで「クリエイトする」「名づける」べきもののではないだろうか。

もちろん、あるニックネームがナショナルレベル、世界レベルまで到達してしまったら、それはもう名前の一部みたいなものと化すが、そうではないレベルで、ただ単に右へ倣えするのでは面白みがないではないか。

そういえば、セルジオ・ガルシアを日本の雑誌で初めて紹介したとき、「ニックネームはエルニーニョ」と書いたのに、なぜか掲載時には「ニックネームは神の子」に変えられていた。そして、あっという間に日本では「神の子」が彼の呼称のように広まってしまった。

ElNino.jpg
Photo/JJ Tanabe

メディアの力は、どうしたって強いし、怖い。だからこそ、表現には細心の注意が必要だし、逆に言えば、だからこそクリエイティビティが求められるわけだし、だからこそメディアに携わる人間は面白みを感じることができるのだと思う。私も、その一人として、醍醐味を感じながらも気を引き締めていこう!

2007年10月03日

言葉のナイフ

フォールシリーズ第2戦が終了。バイキングクラシックには丸山茂樹、丸山大輔が出場していたが、丸山(茂)は2週連続予選落ちで賞金ランクは145位へ後退。丸山大輔は奮闘し、賞金ランク176位へ前進した。この2週間で少しずつ2人の丸山の差が縮まってきている。フォールシリーズを192位からスタートした丸山(大)に、「1試合で平均10位ずつ賞金ランクを上げれば、7試合終了後に122位になるからシードが取れる計算ですよ。目指すは1試合10位ずつアップ!」と声をかけたら、大ちゃんいわく、「そういう作戦がありましたよね」。で、その大ちゃん、現在2試合を終えて16位アップだから、計算より若干遅れ気味。だが、いい感じである。

DaisukeMaruyama.jpg

ところで、第1戦が行なわれたターニングストーンリゾートでの話。選手の大半はターニングストーンのカジノホテルに宿泊しており、毎晩、カジノには選手やキャディ、メディアが現れていた。

大会2日目の夜。私は地味にスロットマシーンをやっていたのだが、私の相棒カメラマンのJJ田辺はルーレットをやりに行った。ちょうどそのとき、予選落ちした今田と香苗夫人、それに決勝進出した丸山(大)と出くわし、同じ台でルーレットをやったのだそうだ。

今田と丸山(大)が選手だと知ったルーレットのディーラーが丸山(大)に「明日は誰と一緒にラウンドするんですか?」と尋ねた。すると、ちょっと口の悪いJJ田辺はすかさず今田に「ところで、リュウちゃん(今田選手)は明日、何時にスタート?」。予選落ちとなり、「明日」がない今田は「あっ、傷ついた。今のは言葉のナイフだ!」と、胸をさすったのだそうだ。

今田にしては、うまいことを言うなあと、ちょっぴり感心。このやり取り、突然聞いたら、びっくりするかもしれないが、もちろんこれは仲良しだからこそできるジョークだ。お互いにそのつもりだから、こんな会話が成立するけれど、これをジョークが通じない相手に言ってしまったら、あるいは、ジョークが通じない状況で言ってしまったら、本当の「言葉のナイフ」になる。

刃物で傷ついた肉体は、程度にもよるけれど、小さな傷なら時間が経てば癒える。しかし、言葉のナイフで傷ついた心は、いつまでも癒えないし、ときにはその傷が肉体や人間性、仕事や社会生活まで脅かすことにもなりかねない。そう、心のナイフは、とんでもなく鋭利だ……なんてことを今田が考えながら口にしたわけではない。今田が考えていたのは、どうやってルーレットで勝とうか、ということだけ。いつも真剣な今田は、どこかカワイイ。

RyujiImada.jpg
(*ちゃんとすぐに「ゴメンねえ~」と謝りました=田辺)

そして、ギャンブルなんか到底やらないだろうと思っていた丸山(大)がカジノにいたのは驚きだったが、もう少しやろうかどうしようか迷っていた丸山(大)に、「ここでもう少し儲けるより、明日のラウンドで1打でもスコアを伸ばして賞金を稼いだほうがいいですよ」とJJ田辺が声をかけたら、大ちゃんは素直に部屋へ帰っていった。大ちゃんは、ホントに素直で憎めないやつだ。

とうとう一度も丸山(茂)の姿をカジノで見ることはなかった。元々、マルちゃんはギャンブルが嫌いだと聞いていた。だから、カジノに来なくても不思議ではないのだが、心配なのは、マルちゃんの心だ。もしかしたら、マルちゃんも、誰かの「言葉のナイフ」で傷ついたなんて出来事があったのではないだろうか。それでなくても彼の心は、実はデリケートなのだ。「言葉のナイフ」じゃなくても、「何かのナイフ」で傷つき、その傷がなかなか癒えないのではないか。そんな気がしてならないのだ。

最近、私は自分自身のゴルフにちょっと精を出し始めた。忙しいことを言い訳にして、しばらくラウンドから遠ざかっていたが、そろそろオフも近づいたことだし、真冬になる前にNY近郊でクラブを振ろうと決心。久々のゴルフは楽しいが、ゴルフは心の生き写しであることを痛感させられる。元気なときはショットも元気だし、スコアもそこそこ。しょげているときは、ショットもしょげるし、スコアもボロボロ。そう、だから、ゴルフはメンタルなスポーツなのだ。

そう思うにつけ、心配なのは、やっぱり丸山(茂)だ。今田と丸山(大)はとりあえず元気だ。だが、笑顔を忘れた丸山(茂)は、元気がないからスコアも順位も悪い。がんばれ、マルちゃん。まずは笑おうよ。苦しくても辛くても、無理にでも笑顔を作れば、1つぐらいはいいことがあるよ。アナタの胸の内、アナタの現在の立場を理解しようとしている人間は少なくとも1人、ここにいるから。

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Photo/ JJ Tanabe

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    緋絽雪 [10/26 09:41]
    ちびごん [10/27 19:28]
    Sonoko [10/28 20:37]
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    緋絽雪 [10/25 17:03]
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