2008年02月27日
今週の米PGAツアーはフロリダ州で行なわれるホンダクラシック。ホンダクラシックといえば……そう、あのジョン・デーリーが数週間前、訴訟を起こした相手だ。昨年の同大会でバックスイング中にギャラリーがシャッターを切り、その音でスイングを無理矢理止めようとして肋骨を痛めたデーリーは、「あのときの故障が原因で成績が落ちた」という理由でホンダクラシックを訴えたのだ。ここまでの経緯は先日もすてにお伝えしたので、みなさんも覚えていると思う。
で、デーリーがホンダクラシックに対して要求したのは賠償金や慰謝料ではなく、「今年のホンダクラシックにスポンサー推薦でオレを出場させてくれ~!」というものだったのだが、今週の出場者リストを見ると……やっぱりねえ。ジョン・デーリーの名前はリストには載っていないのである。
スポンサー推薦というのは、冠スポンサー企業が「この選手なら呼びたい」ということでオファーするものである。自分たちの会社を訴えた相手をわざわざ呼びたいとは思わないのは当たり前であろう。デーリーの訴訟騒ぎ、もちろんそんな手のこんだ画策をあのデーリーちゃんが自分で考え出すとは思えず、その陰には辣腕弁護士のような策士がいたに違いないのだが、スポンサー企業を訴えてスポンサー推薦をぶんどろうとするのは、何億もの大金をぶんどろうとするよりも難しいことなのかもしれない。そのあたりのゴルフ界の事情を、きっとその策士はあんまりご存知なかったのだろうなあ。
さて、それならばホンダクラシックが「呼びたいなあ」と思ったのは誰だったのかというと、1人はタッド・フジカワ、もう1人はデビッド・デュバルだ。
フジカワは話題性はあるけれど、プロ転向後の成績は散々だ。デュバルはずっとスランプのままで、話題性も成績面での期待も、どちらもないに等しい。そういう意味では、デーリーのほうが話題性もあるし、突然、とんでもない絶好調ぶりを発揮することだってあるし、なんと言っても人気はすごい。それに、訴訟中のデーリーをわざわざ推薦で迎えたとなれば、「いや~、ホンダって、なかなかの度量だなあ」なんて、逆に感心されるかもしれないのだが……ま、そういうわけにはいかないだろう。やっぱり、これは心証の問題なのだろう……。デーリーちゃん、残念。


(フジカワもデュバルも、結果を残さないとアトがないのは同じ状況)
Photo/JJ Tanabe
2008年02月25日
米LPGA第2戦のフィールズオープン最終日。首位を走っていたジョン・ジャン(JJ)が17番でポーラ・クリーマーに追いつかれ、結局、負けてしまった。目前まで迫っていた勝利をさらわれたJJの悔しさは、18番グリーン上でパーパットを沈めた直後の彼女の表情が物語っていた。口をへの字に結び、ニコリともせず……いや、あの顔は溢れ出しそうな悔し涙を必死にこらえていたのだ。
以前、JJが言っていた。「うれし泣きって、私はよくわからないし、したことがない。うれしいときに、どうして泣くのかわからない。全英女子で勝ったとき、お父さんがサングラスで隠しながら泣いていたけど、私は、『お父さん、どうして泣くの?私、勝ったんだよ』って笑いながら言ったのよ」

(父親が運転するカートから笑顔を見せるジョン・ジャン)
Photo=JJ Tanabe
うれし涙を知らないというJJだが、彼女はそのぶん、悔し涙をたくさん知っている。かつて、17歳のアマチュアにして韓国女子オープンを制し、母国のビッグな注目を浴びながら米ツアー参戦。しかし、5年間の未勝利時代を味わい、その間、精神的には大変な苦労を経験した。そのとき流した悔し涙の量があまりにも多かったせいだろうか。6年目の夏に、全英女子オープンで初優勝をメジャー優勝で飾ったときは、涙なんかはもう要らないとばかりに、満面の笑顔でうれしさを噛み締めた。
そんなJJが、今回の敗北で悔し涙を流したかどうか。人前では涙を見せずとも、彼女は間違いなく、一人になった瞬間に泣いたはずだ。しかし、JJは悔し涙をパワーの源にできる選手。失敗を成功への道しるべにできる選手だ。今回、悔し涙を流せば流すほど、彼女は今後再び元気になると信じたい。だから、いっぱい泣いていいよ、JJ!
2008年02月20日
今夜は全米で皆既月食が見られた。NYでは午後10時から10時40分ぐらいまでの間。これを眺めながら思ったことは、先週のSBSオープン2日目に見られた賞金女王対決だ。
日本の賞金女王である上田桃子と韓国の賞金女王であるジアイ・シン(Ji Yai Shin)が同組で回ったのだが、この勝負はさながら皆既月食だった。首位に躍り出てフィニッシュした上田が地球。実力は十分でありながら、それを発揮しきれず、最終組に入れなかったシンは月。完全にシンが上田の陰に入ってしまった格好で、もちろんその場では皆既月食だなんて思いもしなかったが、今夜の月が隠れていく様子を見ていたら、あの日のことが思い出されたのである。

(NYでの皆既月食。日食よりは見た目はめずらしくない。)
シンといえば、17歳だった05年に韓国女子ツアーで史上初のアマチュア優勝を成し遂げたスーパースター。しかも、交通事故で母親を亡くし、妹と弟が重傷を追うという惨事に見舞われた翌年の快挙だというから、その精神力はただ者ではない。05年の末にプロ転向し、06年はアメリカと韓国の両ツアーでプレー。韓国では3勝を挙げたが、米ツアーのシードは取れなかった。しかし、そこから先がすごい。それならば07年は韓国ツアーに専念だということで、シンは母国で大暴れ。なんと10勝を挙げてしまったのだ。さらに、彼女はゴルフのみならず頭脳も明晰な才媛で、「韓国の慶応」と呼ばれる延世大学に通う女子大生プロでもある。
昨年、全英女子オープンに出場した後に韓国へ戻るシンとイギリス内の空港で偶然出くわした。話しかけてみると、まだ英語はおぼつかなかったが、延世大学のロゴをシャツにつけているのは「スポンサー契約はしてなくて、単にあの大学が好きだからです」。しかし、国内10勝もすれば、さすがの名門大学も「シン様」となるらしく、今年からは延世大学がスポンサー契約を結んでくれたのだそうだ。
それほどの実力派であるシンが、上田の陰に隠れてしまい、あたかも皆既月食状態になってしまうなんて……。うーん、ゴルフって、何が起こるかわかりませんねえ。

(月は満ち欠けするもの。“シン”月から満月へ?)
Photo/JJ Tanabe
2008年02月18日
米LPGAの今季開幕戦SBSオープンで元女王アニカ・ソレンスタムを相手に堂々と優勝争いを演じた上田桃子の奮闘ぶりは、見ていて気持ちが良かった。初出場のルーキーが元女王とともに最終組で回り、一時は首位に並んださまを見て、たった6人しか来ていなかった米メディアも「モモコ」の強気なプレーに目を見張っていた。
上田の強気なプレーには、優勝したアニカも驚いていた。「彼女の一番良いところはアグレッシブに攻めるところ」。アニカは結構な日本通であり、日本人選手の性格や特質もよく知っている。そのアニカが、こんなにも手放しで日本人選手を褒めたのは初めてだ。こんなにびびらない日本人選手がいるのか……と、びっくりしたのだろう。
試合が終わってみれば、上田は試合を盛り上げた存在となった。しかし、開幕前は、世界の目から見れば、上田は単なる一人の新人外国人選手に過ぎなかった。その上田が、練習日の段階で会場内で開かれた公式記者会見に呼ばれた。日本のスポーツ新聞では「桃子、VIP待遇」と報道されたと聞いた。
だが、「VIP待遇」というのは、ちょっと違う。通常、ツアー側からVIP待遇を受けるのは、トップとして実績を積んでいる正真正銘の大物選手だけ。男子ならタイガー・ウッズ、女子ならアニカやロレーナ・オチョアのことだ。で、彼らが受けるVIP待遇とは、どんなものかと言えば、「今日はインタビュールームまで行く時間がないから、練習ラウンドの後、18番グリーンの脇あたりで話をすればいいかな?」なんてタイガーが言うと、ツアー側が「OK。じゃあ、そうしますよ」と要望を受け入れる。それが、VIP待遇だ。
それじゃあ、練習日に記者会見に呼ばれるのは、一体どんな選手なのかと言えば、これには一定の規定がある。前週大会の優勝者、前年同大会の優勝者の会見は確実に組まれる。それ以外は、何かしらの理由で「渦中の人」となっている選手。それに、いわゆる有名選手。ここまではツアー側が「誰々の会見は何曜日の何時から」と決めてメディアにアナウンスする。試合中の会見は、その日の首位と2位、あるいはホールアウト時の首位と2位、それに、ラウンド中、珍事に遭遇した選手が稀に会見に呼ばれることもある。

(優勝したアニカ・ソレンスタム。メジャー優勝者の記者会見は1時間以上に及ぶこともある)
さらに、米主要メディアや地元のローカルメディアに「そのほかに誰の会見を開いてほしい?」とツアー側のメディア担当者が聞いて回り、リクエストがあれば、その選手の会見も開くという手順になっている。
上田の会見が組まれた理由は2つある。1つは、日本のメディアが40名前後も来ていたため、会見を開いたほうが大勢の日本メディアのためになるだろうとツアー側が考えたこと。もう1つは、たった6名しか来ていなかった米メディアが「この日本メディアの大群が追いかけるモモコって何者?」と感じていたため、お披露目の意味で会見を開くことになった。
というわけで、桃子会見はVIP待遇ではなく、知られざる存在だからこそ開かれたと言ったほうが正確だ。しかし、2日目のラウンドでホールアウト時は単独首位に立っていた上田が呼ばれた会見は、新人だからでもVIPだからでもなく、「首位に立ったから」。こういう理由で記者会見に呼ばれる回数がどんどん増えれば、いつか上田が本当のVIP待遇を受けるようになるかもしれない。その日が来たとき、「桃子、ついにVIP待遇」と書きたい。

(第2ラウンドで上位に立ち、記者会見に呼ばれた上田桃子)
Photo/JJ Tanabe
2008年02月14日
日本からNYへ戻った途端、常夏のハワイに来た。今週は米LPGA開幕戦、SBSオープン。3年目の宮里藍、ルーキーの上田桃子の奮闘ぶりを取材しようと勇んできたのだが、昨夜到着後、ちょっと体調不良になり、本日は仕方なく、現場に行かずにホテルで静養。
夕方、体調がやや戻ってきたら、ちゃっかりお腹が空いたので、ワイキキのホテル近くの大衆居酒屋へ行った。お店で働いていたアメリカ人女性が「観光ですかあ?」。いやいや、仕事で、ゴルフの大会の取材に来たのだと答えると、彼女の答えが、なかなか興味深かった。

(カラカウア大通り沿いにあるナイキタウンの前で、夜、
ランナーたちのイベントが開かれていた。)
「えー、いいなあ。ああ、でも、もうミッシェル・ウィーはどうでもいいし。去年の始めぐらいまでは、ハワイの人はミッシェル、ミッシェルって言ってたけど、もう彼女のことは誰も口にもしないし、どうでもいいのよ。みんなが期待しているのは、ミッシェルより、タッド(フジカワ)ね。でも、あの子も、イマイチ、パッとしないんでしょう?プロになってもダメなのねえ。あ、そうだ、そうだ。女子の試合には、日本から新しいヤングレディが来たって、みんなが言ってた。なんだっけ、名前?マ・マァ・?」
「違う、違う。モ・モ・コ」
「オー、そうそう。モモーコね。あの子、かわいいよねえ」
一般ゴルフファンは本当に正直なのだと痛感させられた。ウィーのことは、もう誰も口にしない。どうでもいい……残酷だが、これが現実なのだろう。「世界の一流」「逸材」「ビッグスター」と持てはやされたウィーでも、成績低迷が続けば、あっさり、そっぽを向かれてしまう。
そして、やっぱり地元出身プロのことは気になるし、情報もそれなりにあるようで、フジカワがプロ転向後にパッとしないことまで、ちゃんとご存知。
だが、地元でもないのに、上田桃子が知られていたのは、ちょっとした驚きだった。しかし、である。どうしてモモコを知っているのかと尋ねてみたら、「ゴルフの取材って、フィールズのことでしょ?イベント情報に書いてあって、モモコが載っていた」。
なるほど~。今週のSBSオープンはワイキキから車で1時間離れたタートルベイでの開催。で、ワイキキの人々にとっては、はっきり言ってSBSオープンはほとんど眼中になく、興味を示しているのはワイキキで来週開催される第2戦のフィールズオープン。だから、フィールズの宣伝ばかりを目にしており、上田情報まで得ることができたというわけだ。
そう言われて、ふと見ると、ワイキキの通りには「フィールズオープン」のノボリがヒラヒラと風に揺れている。うーん、こんな会話を交わすと、このウエイトレスは、果たして「ゴルフファン」なのか、「ワイキキ命!」なのか、「イベント大好き!」なのか。どのタイプかの判別は難しいのだが、まあ、「地元愛」ということで収めるのが、一番収まりが良さそうだ。

(「Fields Open」ののぼりが見える)
Photo/ Sonoko Funakoshi
2008年02月10日
思いのほか長くなってしまった日本滞在を終え、昨日、やっとアメリカに戻ってきた。がんなんて病気は自分とは無関係だと思い込んでいたのに、いざ自分がかかってみると、いろいろ考えさせられたが、手術を終え、完全回復した今は、これも人生勉強だったのかもしれないと思えるようになっている。
それにしても、3ヶ月の日本滞在からNYへ戻ってみると、アメリカのゴルフ界の活気に驚かされるばかりだ。留守の間、見ることのなかったさまざまな書類や雑誌、特殊な情報網(?)をざっと見て、思わず笑ってしまったのは、こんな話だ。
ザ・バークレーという大会の開催コースが、今年以降は数コースのローテーションになる予定なのだが、その中に伝統あるウエストチェスターCCを残すかどうかで大もめ。結局、残すことで折り合いがつき始めたところ、米PGAツアーのティム・フィンチェム会長が「メディアともめたからね」というようなコメントを吐いた。ところが、これを聞いた米メディアたちは「メディアのせいにするのか?」と激怒。そして、反撃に出たメディアの言い分が面白い。「ドラッグテストを最初に受けるべきなのはフィンチェム会長なんじゃないのか?」。

(ツアーのために、自ら率先してテストを受ける?)
Photo/JJ Tanabe
アメリカという国は議論の国。意見と意見をぶつからせるディベートの練習が小学校のころから行なわれるせいだろう。アメリカ人は、思ったことを率直に、即、表現する傾向がある。フィンチェムvsメディアも、そんなお国柄と国民性の表れと言える。そして、そんな傾向はジャーナリズムの発達にも貢献していると思う。まあ、ドラッグテスト云々の部分は「だからって、これがジャーナリズムなのか?」と言われたら、「うーん、どうかな?」と、ちょっぴり首をかしげてしまうが、なかなか思った通りのことをズバリと記事にしにくい日本に比べたら、アメリカの記事は実にストレートで面白い。
久しぶりのNYで、いきなりアメリカらしいジョーク感覚の記事を読み、あー、やっぱりアメリカだなあと、ニンマリしてしまった。
2008年02月07日
相棒のJJ田辺から、FBRオープンで見かけた面白い写真が送られてきた。昨年のホンダクラシックで4人によるプレーオフを制し、初優勝したマーク・ウイルソンが、パッティンググリーンで練習しているシーンを写したもの。キャディがウイルソンの顔の左側にタオルをかざしている。

(上手くなったもの勝ち!)
Photo/ JJ Tanabe
この練習、インパクトでボールを目で追いすぎたり、ヘッドアップしたりしないための対策だそうだが、いまどき、こんな原始的な練習をしている選手はあまり見かけない。もはやゴルフも科学の時代だし、選手たちの多くは、ハイテクを駆使して開発された練習器具やコンピューターを使って練習しているのだが、ウイルソンはタオル。そのギャップは天と地だ。
だが、ヘッドアップを防ぐためにできることなら、近代的でも原始的でも、効果さえあればそれでいい。凄いなあと感じたのは、むしろそんな原始的な練習を公の場で堂々とやっていたという事実のほうだ。
人目を気にしない、どう思われようと気にしない。この感覚を身につけると、緊張の場面でも精神的に強くなれることは確か。そう考えると、ウイルソンのこの練習方法は、ヘッドアップ対策と緊張対策、両方の効果があると言えるかも?
2008年02月03日
米PGAツアーの今週の大会は、アリゾナ州で開催されているFBRオープン。古くはフェニックスオープンの名で親しまれた大会で、毎年、ギャラリー数の記録を更新し続けている。

(16番パー3は通称スタジアムホール)
Photo/FBR OPEN
ちなみに、私はいまだに日本に滞在中。あれこれ雑事が終わらず、アメリカへ戻る飛行機の便を、すでに3回も変更し、延期しているのだが、相棒カメラマンのJJ田辺は、現地で奮闘中だ。
そのJJからの報告によれば、今年はスーパーボウルが同じ週にフェニックスの街で開催されることもあり、近郊には全米中、いや世界中から訪れた人、人、人の山。また、アメリカのゴルフトーナメントの場合、ゴルファーのみならずゴルフをやらない人たちもお祭りムードにひたりたくて会場を訪れる人も多いため、とにかくFBRオープンの会場は、とんでもない人、人、人となっているのだという。
ちなみに、昨年のFBRオープンの入場者数総数は1週間で延べ507,990人だった。内訳は
月=7,420 火=17,920 水=40,425 木=72,950 金=113,050 土=162,750 日=93,475
今年は昨年より増えており、今のところ
月=4,947 火=29,045 水=57209 木=83,657* 金=120,891* 土=170,802
土曜日の17万人超は新記録だそうだ。
ところで、FBRオープンといえば、かつてタイガー・ウッズが名物ホールの16番パー3のグリーンに来たとき、酔ったギャラリーがオレンジを投げ込んで問題になったことがあった。今年の様子はどうなのかとJJに尋ねたら、「今日の土曜日は、ゴルフボールが投げ込まれたり、スーパーボウルに乗じてオモチャのフットボールが投げ込まれたり。ムチャクチャですわあ。盛り上がってますけどね」
そんなものを投げ込むのがマナーやエチケット上、良くないことは当たり前。だが、とにもかくにも、これだけのギャラリーを毎年必ず集めることができるこの大会は、本物のお祭りと呼んでいい。一過性ではなく、長年、人気を博す大会。大会を主催する人々の熱意と努力の賜物だ。

(土曜日は17万人以上が来場した。まさに“ケタ違い”)
Photo/JJ Tanabe