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2008年05月31日

許しがたい一言

メモリアルトーナメント2日目に“事件”が起こった。フィル・ミケルソン、セルジオ・ガルシア、マイク・ウィアのスリーサムが15番ホールのセカンド地点にさしかかったとき、30歳前後の男性ギャラリーが大声で叫んだ。


「America hates you, Sergio!(セルジオ、アメリカはオマエが嫌いなんだよ)」


セルジオは何も言い返さず黙っていた。セルジオの代わりにミケルソンの長年のキャディ、ジム・“ボーン”・マッケイが、その男性ギャラリーににじり寄り、怒声を浴びせた。続いてミケルソンもにじり寄り、何かを言っていた。一瞬、その場は静まり返り、緊張が走った。ちなみに、ウィアは逆側のラフにいたため、何をすることもできなかった。


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(罵声に怒り、ギャラリーの男に詰め寄るボーンこと、ジム・マッケイ。)
Photo/JJ Tanabe


ホールアウト後。ボーンに尋ねた。
舩越「あんな言葉を聞いて、何を思った?悲しい出来事だよね?」
ボーン「悲しいというより、恥だよ、恥。こんなことが試合会場で起こるのは、キミにとっても僕にとっても、いやいやゴルフというゲームにとっても恥ずべきこと。起こってはならない出来事だ」
舩越「あの男性に何て言っていたの?」
ボーン「誰に対しても尊敬の念を持て、と言ってやった」
舩越「セルジオにも、あの一言は聞こえていたよね?」
ボーン「絶対に聞こえていた」
舩越「でも、セルジオは何も言い返さなかったよね」
ボーン「彼は言い返せないよ。あんなことを言われたら誰だって言葉を失う」


みなさんにも想像していただきたい。もし自分がアメリカツアーを主戦場として戦っている外国人プロゴルファーだったとして、試合中にギャラリーから「アメリカはオマエが嫌いなんだよ」なんて言われたら、どれほど傷つくか。そりゃあ、セルジオは日ごろから態度が悪い面はある。悪態をついたり、暴言を吐いたり、小生意気なことを言ってみたり、鼻につくところは確かにある。だが、外国人であるセルジオに、アメリカという国全体がオマエを嫌っているという言葉をぶつけたら、彼には行き場がなくなってしまうではないか。戦う権利は彼にもある。いや、戦う権利を彼は実力で得ているのだ。それなのに……。


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(完全に聞こえたガルシアだが、平静を保ちショットに臨んだ。このホール、見事バーディを奪取。)


どんな場合においても、大人であれば、絶対に言ってはいけない一言というものがあると思う。それは、たとえ喧嘩や言い争いの場面であっても、言ってはいけないと私は思う。「それだけは言ってはいけない」「それを言っちゃあ、おしまいよ」って言葉は絶対にある。ましてや今日の場合、セルジオが何かを言ったり行ったりしたわけではない。ただ一生懸命にプレーしていたら、いきなり、ひどい言葉を投げつけられたのだ。彼の心がどれほど傷ついただろうかと想像すると、たまらない気持ちになる。


やっぱり、こんな言葉を口にするギャラリーがゴルフの試合会場にいたことは、ボーンが指摘した通り、アメリカの恥、アメリカツアーの恥、そして社会の恥だ。


そして、同じ質問をされたミケルソンの答え方は、一枚上手だった。
「でもさ、たった1人のギャラリーが、たった1回だけ暴言を吐いたという出来事であって、ここに来てくれているギャラリーは(その男性ギャラリーを除けば)みんな素晴らしい人々だ。そんな出来事のために、この素晴らしいギャラリーとトーナメントを台無しにしたくはない。だから、僕はこれ以上、この出来事をとやかく言いたくはない」


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(ラウンド後のミケルソンのコメントは実に的を射たものだった。)


さすが、ゴルフ大使を自認するミケルソンだけのことはある。もちろん、セルジオを気遣って怒ってみせたボーンの行為にも拍手!それにしても、後味の悪い“事件”だった。


余談だが、今日は私にとって、あと2つ“事件”があった。


まず1つ。メディアセンターのダイニングで昼食を取ろうとしたら、NHKの中継クルーの方々が「ねえ、園子さん、聞いた?知ってる?」「えっ?何?」「あっ、ほら、まだ知らないよ。今朝、NYの園子さんのアパートの近くで工事現場の大型クレーンが倒れて、高層ビルが倒壊したんだよ」「えーーーーっ?」


すぐさまテレビを見たら、ニュースでガンガン放送していた。確かに、私のアパートのビルのすぐそば。わずか2ブロック先のビルにクレーンが倒れ掛かって食い込み、地面は瓦礫の山になっていた。思えば、2年前はNYで最初に入居したアパートのビルの真向かいに小型飛行機が突っ込んだ。その後、引っ越したら、つい先日も1ブロック先で大火事があった。そして今度はクレーン倒壊。私には早くも「災いを呼ぶ女」という、ありがたくない呼称が与えられつつある。


そして、もう1つの“事件”。「あーーっ、携帯がない!」。ポケットに入れていた携帯が、ふと気が付いたら消えていた。どこで落としたんだろう?試合会場だからマナーモードにしてある。かけても音はならないし、芝生の上だったら、まずわからない。あー、今日の夕方はラジオの生出演もあるのに、どうしよう……と、慌てて30分ほど走り回った。が、なんとなんと、車の中にちゃーんと落ちておりました。


やれやれ。事件が続いた今日は、くたくたになった……。


2008年05月28日

チャンピオン、竜二くん登場!

初優勝後の今田竜二にメモリアルトーナメント会場で会った。「おめでとう!」と声をかけると、ちょっぴり照れ笑いしながらも、さすがにうれしそう。「ありがとうございます」。固い握手を交わしたら、私がうれし泣きしてしまいそうになったが、今田本人は「結局、うれし泣きはしなかったですねえ」。


米ツアーでは優勝後に初めて試合に出る際、練習日に記者会見に呼ばれるのが慣わしだ。今田は今日、水曜日にインタビュールームに呼ばれ、アメリカ人の記者たちから、あれやこれやと質問を受けた。いつも思うのだが、今田は英語での質疑応答のときは、ものすごく毅然とした態度に見えるのに、日本語で我々と話すときは「うーん……」と考えながら、ちょっぴりのそのそ話すから面白い。まあ、やっぱり日本人どうしとなると、なんとも言えない安心感のようなものがお互いにあるのかなと思う。

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ともあれ、記者会見以外にも、今田は大忙しだ。オフだった先週も日本とアメリカ、双方のメディアからさまざまな取材が殺到したそうだ。英語がネイティブ並にうまい今田の場合、日本人選手といえどもアメリカのメディアから取材が入り、それがこなせるところが、すごい。今日も会見の直後、アメリカのラジオに電話で出演していた。そんなことをそつなくこなす姿に、チャンピオンの貫禄さえ漂っていた。


そんな今田がやっと一息ついた後、練習場へ向かった。球を打つ今田のそばでバッグを覗くと、優勝したときに使っていたタイトリスト905Rが目についた。今年、ワコビア選手権あたりでは905Sを使っていたが、プレーヤーズ選手権からは905Rに変え、AT&Tクラシックも905Rで臨み、優勝した。

舩越「ねえ、竜二くん。これって何CCだったっけ?430?435?あれっ?」
今田「えー、そんなこと僕が知るわけないでしょ?」

Ryuji905R.jpg
(さらに古いモデルを使い始めました。)


そうだよねえ。日本ツアーの選手たちは、クラブのことにやけに詳しいのだが、アメリカの選手たちは本当にそういうことを知らないのだ。自分のドライバーが何インチかも知らないことが多く、シャフトのフレックスやバランスなんかは、まずもって知らない。ヘッドが何CCかだって、やっぱり知らないのである。ツアーレップから渡されたものを打って、感触が良ければ使う。彼らのクラブ選びは、それだけなのだから。

今田が突然、「ああ、あいつなら知ってますよ、たぶん」と言って、練習場のすぐ横の打席にいたニック・ワトニーに大声で聞いた。

今田「へい、ニック。この905って、ヘッドは何CCだ?」
ワトニー「あー、それは、確か485CCじゃないの?」(きわめて真面目な顔でした!)
今田「えー、そんなわけないだろう?だって460CCがMAXだぞ!それぐらいはオレだって知ってる!」
ワトニー「えっ、そうなの?????」

周囲にいた選手やキャディは大笑い。日本の方々が聞くと「ホントかよ?」と思うかもしれないが、これは米ツアー会場なら、いかにも起こりうる1シーンだ。


間もなく、プレーオフを戦った相手、ケニー・ペリーが練習場に登場。今田は自ら歩み寄り、ペリーと固い握手を交わした。「もっと、どんどん勝てよ」と、ペリーはベテラン選手らしい言葉を今田に贈った。


今田は、こういうアメリカの選手たちと肩を並べながら、17年間、ゴルフの腕を磨いてきたのだなあと、つくづく感じた。アメリカツアーにおいて、アメリカ人選手たちの中にいても、まったく違和感を感じさせないアメリカ人のような日本人。しかし、日本人に親しみを感じ、日本人との会話に安堵感さえ見せる日本人。それが、今田竜二だ。いやー、竜二くん、あらためて、優勝おめでとう!

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(練習場。プレーオフで破ったケニー・ペリーから握手で優勝を称られる今田。ケニーのスポーツマンシップもすばらしい。)
Photo/JJ Tanabe

2008年05月24日

ヨーロッパツアー?

初優勝を遂げた今田竜二は今週はオフ。とはいえ、優勝したから疲れて休んでいるわけではなく、今週のコロニアルには元々エントリーしていなかった。本当なら、このオフウィークはのんびりするはずだったのだろうが、優勝直後の彼は大忙しの様子。なんせ携帯電話の留守電は満杯でメッセージが入らない状態。今田のマネージャーは「とにかくテンヤワンヤで大変だよ~」と、うれしい悲鳴を上げている。


そして、今田が休んでいる今週のコロニアル。2日目を終えて首位に立っているのは、フィル・ミケルソンだ。


ミケルソンといえば、最近、ちょっと気になる動きを見せている。というのも、主戦場を欧州ツアーに移そうという構想を抱いているらしいのだ。マネージャーのTRラインマンいわく、「別に今すぐってわけじゃない。近い将来のオプションだよ」。ゴルフ大使を自認するミケルソンは、アメリカ以外でも自分がプレーする姿を見せることでゴルフがグローバルに発展してくれたらうれしいという考えから、欧州ツアーに行く構想を抱いているとのこと。だが、そこにはもちろん、スポンサーなんぞの絡みもある。

BarclaysPhil.jpg
(右の胸に“BARCLAYS”のロゴが光る)
Photo/JJ Tanabe


ミケルソンの契約先であるバークレー銀行は、欧州ツアーのスコティッシュオープンとアジアツアーのシンガポールオープンをスポンサードしている。そしてシンガポールオープンはひょっとしたら欧州ツアーとアジアツアーの共同開催になるやもしれず、そうなれば、バークレー銀行としては是非ともミケルソンに出場してほしい……というわけだ。


実際、ミケルソンは去年もこの2試合に出場しており、今年も出場予定。さらに今年は中国で開かれるHSBCチャンピオンズにも出る予定。もし、さらにもう1試合、出場すれば、ミケルソンは欧州ツアーの出場義務試合数「11」をクリアすることになるそうで(4大メジャーも含まれる)、うーん、ミケちゃんの欧州行きは思いのほか近いのかも?


それにしても、アメリカ国民のヒーロー的存在であり、絶大なる人気を誇るミケルソンが欧州やアジアを転戦するとしたら、これはホントのゴルフのグローバル化である。そんなことを考えると、先日の北京オープンも、もっともっと日本人選手に出場してほしかったなあと、つくづく残念に思う。


プロゴルフの世界に国境はない……もはや、そんな時代になりつあるようだ。

2008年05月19日

やったー、竜二くん優勝!

今田竜二がついに初優勝!うれしいニュースだが、私にとっては「えーっ!」という事態だった。


というのも、私はちょうど一時帰国からNYへ戻る途上。なぜか今回は直行便が取れず、アトランタ乗り継ぎ便だったのだが、その乗り継ぎ中のアトランタで今田優勝のニュースが飛び込んだ。


TPCシュガーローフまではアトランタ空港からタクシーで40分ぐらいで到着できる。「よし、すぐにタクシーに乗ろう」と思ったのだが、問題は飛行機だった。航空会社に事情を話し、「アトランタからNYへの便には乗らない。今夜の最終便か、間に合わなければ明朝の便に変更する」と告げて空港の外に出ようとした。しかし、航空会社いわく、「アナタの荷物がすでにNY行きの便に積み込まれているのだから、荷物だけ載せて人間が乗らないのは、テロリストが爆弾入りの荷物を積んで自分は乗らないというのと同じ扱いとなり、飛行機に積まれたすべての荷物を飛行機から引っ張り出してアナタの荷物を探し出して降ろすという大変な作業になる。だから、絶対に許可できない」と主張された。どうやらアメリカの航空法に違反する行為らしく、かなり粘って交渉したが、最終的には、やっぱりNYへ飛ぶ飛行機に乗らざるを得なくなってしまった。それが、残念で悔しくて、たまらない……。


だが、電話で今田の肉声を聞くことができた。今田は開口一番、「いやー、久しぶりに勝ちました~!」。初優勝なのに「久しぶり」って、どういうことだと首を傾げる方々。忘れてはいけません。今田はネイションワイドツアー時代に優勝しており、今回の優勝はPGAツアーでは初優勝でも「勝利」としては04年のBMWプロアマ優勝以来、4年ぶり。だから彼は「久しぶりに勝った」と言ったのだ。


昨年暮れのインタビューでは「勝ちたいけど、勝つぞとは言えない」と語っていた今田。米ツアーで優勝するぞと言い切れる選手なんて、タイガーやミケルソンみたいなほんの数人しかいないのだと今田は言っていた。けれど今週は、昨年の惜敗を指して、「このコースには借りがある」と何度も心の中で繰り返し、借りを返してやろう、絶対に「勝つぞ」と思っていたそうだ。


「勝ちたい」から「勝つぞ」へ。勝利への意欲を強め、高めたことで、勝利の女神が微笑んでくれたのだろう。


この優勝で、今季の残る3つのメジャーも来年のマスターズも出場できることになった。「今はまだ先のことが何も考えられない。でも、夢だったマスターズに出られるのは、何よりうれしい」。


マスターズに出ることを夢見て14才で単身渡米して以来、すでに17年の歳月が流れた。長い長い戦いの末、彼が勝利し、夢を叶えたことは、ジュニア時代から今田を応援してきた「母親」のような私にとっても「息子」の快挙のように思えて、ものすごくうれしい。だからこそ、彼の勝利の瞬間をこの目で見られなかったことが、ものすごく悔しい--。

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(去年の借りを「倍返し」で優勝だ!!
*ボクも駆けつけられず、悔しいです。
でも、ホントにおめでとう!)
Photo/JJ Tanabe

2008年05月17日

やっと、アメリカ!

ちょいと長めの日本滞在は、あっという間に終わってしまった。術後検診は異常なし!とりあえず体調に不安はなく、明日にはすっきりした気分でアメリカへ戻ることになる。


今回の日本滞在において肌で感じたのは、日本の人々のゴルフへの関心が確実に高まりつつあることだ。かつて、ゴルフの話といえば、ゴルフ雑誌しか扱わないという雰囲気だったが、今は総合的なメディアがどこもゴルフのネタ探しで必死だ。もちろん、そんなムードは私にとって、とってもうれしいことだが、それより何より、プロゴルファーやさまざまなゴルフビジネス関係者にとって喜ばしいことだ。


日本の昨今のゴルフ熱を高めた功労者は、やっぱり宮里藍だろう。そこに横峯さくらが続き、上田桃子、そして石川遼と続くのは確かなのだが、日本のゴルフファンの中には日本国内のみならず海外のゴルフへ目を向けている人も結構多く、そんな海外ゴルフ好きの方々が海外ゴルフへ目を向けるきっかけを作ったのは、アニカ・ソレンスタムやタイガー・ウッズなのだろう。

Ai.JPG
宮里藍
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横峯さくら
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上田桃子
Photo/JJ Tanabe


そう考えたとき、アニカ引退のニュースがこれほど大きく日本で扱われたワケが素直に頷ける。そして、いつか宮里や石川が引退する日が来たとき、それがどのぐらい大きなニュースとして扱われるだろうかと考えてしまう。


できることなら、功労者である彼らが引退するときに、現在と同等か、それ以上の注目を注いであげたいし、注いでもらいたいと心底思う。アスリートの好調時にだけチヤホヤして、やめるときには知らんぷりという事態だけは、見たくないと思う。ファンが選手をいつ、どう応援するかは、もちろんファンの勝手だが、骨身を削りながら戦った戦士たちが戦場を去るときには、温かい拍手と労いの言葉を贈ってあげるべきだと思う。


だから、アニカ引退に注目が集まったことは、そういう意味で喜ばしいこと。現在の宮里ファン、桃子ファン、遼くんファンの方々には、是非とも、長い長い目で彼らを見守り、彼らがツアーを去るときまで、ずっと応援し続けてあげてほしいと願う。


アニカ引退のニュースを反芻すればするほど、不思議なほどセンチメンタルな気分になり、ついつい、しんみりしてしまいました……。でも、しんみりばかりもしていられない。さあ、アメリカへ戻って、がんばるぞ!

2008年05月14日

アニカの引退宣言に思う

私自身の健康管理上の都合で日本滞在中、アメリカからビッグニュースが飛び込んだ。そう、アニカ・ソレンスタムが今シーズンいっぱいでツアーから引退すると宣言した話だ。


アニカとは、ほんの2ヶ月前、NHKのインタビュー番組収録のため直に話しをしたばかり。そのときのことを、しみじみと思い出し、思い出せば思い出すほど、「うーん?」と首をかしげずにはいられない。


インタビューをしたときのアニカは、もう1度、女王に返り咲きたいという思いに溢れていた。少なくとも私には、そう感じられた。番組では放送されなかった会話もところどころで交わしたのだが、そのやり取りを振り返っても、彼女があの時点で今季いっぱいの引退を考えていたとは、どうしても思えないのだ。


RetireAnnika1.jpg
(ほんとうに引退?と疑わざる得ないほど、今季は絶好調)


たとえば、収録した週は、ちょうどアニカの地元オーランドで男子のアーノルド・パーマー招待が開催されていた。アニカとタイガー・ウッズは以前からの仲良しだし、アニカ自身はオフだったわけで、そういうときは彼女が絶好調タイガーのプレーぶりを見にいくなんてことも、かつてはあった話。「今週はベイヒルへ行くの?」と尋ねたら、「いいえ、行かないわ。私は今、必死に練習しなきゃいけないの。時間が惜しい。とにかく練習するのに忙しいもん」と真剣な目つきで答えた。だから、あの時点では、彼女の必死さばかりが感じられたわけだ。


もしかしたら、彼女の胸の中には、もう1度、女王に返り咲きができそうな状況を作れたら、そのときに引退を宣言しようと考えていたのかもしれない。負けが続いて、落ちて落ちて去っていくよりも、元女王としての最後の意地とプライドを見せてから去りたいと、そう考えていたのかもしれない。だからこそ、さらなる向上心を燃やしていたのだとすれば、あのインタビュー時に必死だったことも頷ける。


さらなら推察もできる。もしインタビュー時点で引退を考えておらず、あれから2ヶ月のうちに引退を決心したのだとすれば、クラフトナビスコ選手権で体調を崩しながらプレーし続けたあの経験が体力的な限界を彼女につきつけたのかもしれない。どんどん推測するならば、実は深刻な病気や怪我を告知されたのかもしれないし、婚約者との間に子供ができた(妊娠した)のかもしれない。


いろいろなことが考えられる。が、推察するばかりでは真相はもちろんわからない。いずれにしても、アニカがどの時点から引退の二文字を真剣に考え始めたのかは、もう1度、彼女自身に確かめてみない限り、わからない。それを知りたい、聞いて確かめたいと思う。だが、そこまで追究することが彼女に対してどういう意味をもつか、それも慎重に考えなければいけないと思う。


これからは新たなる人生を行きながら、ゴルフ界に恩返しがしたい--確かなことは、この言葉が今のアニカの本心であるということだけ。私の今の心境を語らせてもらえば、アニカの一大決心を尊重し、今季を精一杯、悔いが残らないようにプレーし切ってほしいと願うばかりだ。


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Photo/JJ Tanabe

2008年05月10日

えっ?パットを刻んじゃった?

現在、私は術後検診のため、一時帰国中。毎年、欠かさず取材していたザ・プレーヤーズ選手権に今年は出向けないのだが、海の向こうでがんばる今田竜二を心の中で応援していた。


2日目、カットラインぎりぎりで踏ん張っていたのに、結局、予選落ち。うーん、何があったのか。彼の言葉を思い出しながら、残念な結果だったなあと肩を落とした。


今田の言葉--「上位に行けるかどうかは、たった1ホール、たった1日の差ですよね」。そして、明暗を分けるわずかな差は、往々にしてメンタル面に起因するようだ。


先日のワコビア選手権2日目、今田は8番で下りの3メートルのパットを強気で沈めた。「外していれば、2メートルはオーバーしていた」というラインだったが、彼は思い切りよくガツンと決めた。

LayupPutt1.jpg

だが、続く9番では、第3打を7メートルにつけ、続くパーパットも強気で打ってくるかと思いきや、80センチもショートさせたのだ。「5番で外した60センチのパットの嫌なイメージが突然、蘇ってきて、ここ(9番)はオーバーだけはさせなくないと思ったら、大ショートしてしまった。いやー、久々にパットを刻んでしまいました~!」


そのワコビアでは、それでも予選を通過した。しかし、今回は予選落ち。彼の頭の中に、また何かの嫌なイメージが浮上しちゃったのだろうか?アメリカに戻ったら、聞いてみようと思う。

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(パットを刻む!?これも立派な戦略…。)
Photo/JJ Tanabe

2008年05月09日

古き良きもの?

今田竜二がベライゾンヘリテージから新しいドライバーを使い始め、好感触を得ている。


が、新しいドライバーと言っても、ニューモデルというわけではない。むしろ、逆で、5年前の旧モデル、タイトリストPRO TITANIUM 905Sをバッグに入れ始めた。


このモデルは、もちろん460CCの大型ヘッドを擁する最新ドライバーと比べると、なにやらヘッドがずいぶん小さく見える。一体どうして、今田は今ごろになって、小さなヘッドのドライバーを握り始めたのだろうか。

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(クラブに詳しい方なら、驚きの“古さ”ですよね)

聞けば、このドライバー、5年前のモデルだが、5年前に使っていたものではないそうだ。その意味では旧モデルだが「新品」だ。当時、ヘッドもシャフトも同じモデルを5本ぐらいもらっており、このドライバーは当時は使わずじまいだったものを「復活」させた形だそうだ。


今田のバッグを見た他の選手やキャディたちは一様に驚き、「何、これ?」という表情。だが、今田自身は「久しぶりに古いモデルのこのドライバーで打ってみたら、フィーリングもいいし、まっすぐ行くから、だからこれ!」。


日常生活でも、忘れかけていた古い道具を久しぶりに取り出して使ってみたら、案外、最新の道具より使いやすかった、良かったなんて経験、ありますよね?ゴルフにおいて、古い道具が必ずしも新しい道具よりいいとは言い切れないし、まあ、時を遡るとしても、パーシモンまで遡るのは、さすがに行き過ぎだろう。しかし、「フィーリング」と「まっすぐ感」を重視して選ぶというのは、道具選びにおいては一つの手だ。


この選択が本当に功を奏するのかどうかは、もう少し様子を見なければわからない。が、いいと感じたら見た目は古臭くても使うあたりは、なんとも今田らしい。

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Photo/JJ Tanabe

2008年05月03日

日米、ルールは、ちと違う!?

日本では石川遼が予選落ち。初日にはルールの裁定を巡って、ちょっとした騒ぎがあったことを日本のスポーツ新聞の報道で知った。


その記事によれば、石川が木の近くで素振りをしようとした際、クラブが木に当たったそうだ。ガサガサという音がして、石川もハッとした表情を見せたが、同伴競技者や近くにいた関係者、ギャラリーらの証言は「何も落ちていない」。ルール委員も「葉っぱも何も落ちていないから無罰」としたが、石川のホールアウト後、現場を撮影したカメラマンたちが画像をチェックしたところ、何かがパラパラと落ちている様子が写真から確認され、日本ツアー(大会)側は緊急会見を開き、「パラパラ落ちているのは、(生きている)葉っぱの上に乗っていた枯葉。枯葉はルースインペディメントだから落ちてもペナルティには当たらない」だから、やっぱり無罰であると発表した--と書かれていた。


この記事を読んで、ふと首をかしげてしまった。アメリカで、こういう話が物議を醸した記憶がないなあ、と。もちろん、素振りで木の枝を折ってしまったなんてことになれば、明らかなライの改善でペナルティとなるわけで、要するに物議を醸すまでもないこと。でも、落ちてのが生きた葉っぱか枯葉かなんてことがゴタゴタの対象になった出来事そのものが、私の記憶にはないのだ。


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(カエデ、ヤシの木、サボテン、マングローブなど、さまざまな木があるアメリカ)
Photo/JJ Tanabe


そこで、アメリカのPGAツアーのルール委員に、すぐさま問い合わせてみたところ、「ああ、なるほど」という答えをもらった。ルール委員いわく、「素振りでクラブが木や枝に触れ、仮に生きている小さな葉っぱが1枚や2枚落ちたとしても、小さな葉っぱぐらいならスイングに影響は及ぼさず、ライの改善には当たらない。だから、小さな葉っぱぐらいなら、生きていようが枯葉だろうが無罰」なのだそうだ。


つまり、アメリカツアーの裁定から見れば、今回の石川のあわや失格騒ぎは、「どうして、そこまで大騒ぎ?」という観点をつつきあったことになるわけだ。


もっとも、アメリカツアーのルール委員いわく、「ただし、こういう裁定は、かなりグレーゾーンと言わざるを得ない」とのこと。そのときの状況次第で、あるいは裁定するルール委員の判断次第で、ときに裁定結果が変わることもありえる。白と黒の間のグレー。


そりゃそうだ。「小さな葉っぱぐらいなら」と言っても、どのぐらい小さければOKで、どのぐらい大きければダメか、その基準は曖昧なグレーだ。「1枚2枚なら」と言っても、何枚ぐらいからはダメなのか、その基準もグレーだ。


そういう意味では、落ちたのは何か、生きた葉っぱなのか、枯葉なのか、と物議を醸した日本での出来事も、グレーな部分に白黒をはっきりつけるための作業だったと言えるのかもしれない。が、いずれにしても、これが大注目の石川ではなかったら、そんなふうに騒がれなかっただろう。少なくとも緊急会見は開かれなかったに違いない。注目選手は、タイガーにしろ、ミッシェル・ウィーにしろ、石川にしろ、そうやって一挙手一投足がすべて見られているわけで、そのぶん、ルール違反に問われたりする機会も増える。スターはいろんな面で大変だということだ。

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