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2008年06月30日

猛スピードでヤング・グローバル化!?

全米女子オープンは韓国のインビー・パークの大会史上最年少優勝(19歳11ヶ月)で幕を閉じた。開幕前は史上最長のコースとの戦いになると言われていたが、蓋を開けてみれば、グリーン上の戦い、そしてめまぐるしく変化した天候や風、自然との戦いに集約された。開幕前にアニカ・ソレンスタムは「ロングヒッターに有利というより、スマートプレーヤーに有利」と語っていたが、最終日はそのスマートプレーができずに苦しんだ末、最終ホールで第3打がそのままカップインし、イーグル。これはスマートプレーではなく、明らかにluckだけれど、彼女にとってキャリア最後の全米女子オープンを飾る素晴らしい思い出になったと思う。


Park.JPG
(最終ホールでは仲間の選手から勝利の美酒を“浴びせられた”)


ところで、アニカとは逆に、キャリア初の全米女子オープンを体験した若い選手も多かった。決勝にアマチュアが7人も残り、コロンビアのマリア・ホセ・ウリベが10位タイに食い込んだのは快挙。そして、15歳のアマチュア、ジェシカ・コーダも最終日に69をマークして19位タイと大健闘だった。


このジェシカ・コーダちゃんはチェコ人。バッグを担いでいたのは父親のPetr Korda。チェコ人の名前の発音が正しくわからないのだが、ペトラ?ペトル?


テニスファンなら、もうお気づきだろう。この父親、98年のテニスの全豪オープン優勝者なのだ。それを知って、どれどれとネット検索してみたら、「ドラッグ使用の疑いでサスペンションを食らった初の有名テニス選手」なんて記載を見つけてしまったのだが、まあ、それはここではさておき、娘の奮闘ぶりは見事だった。


Korda.JPG
(キャディがパパ。いかにも元プロテニスプレーヤーらしいスラリとした体型だ)


娘ジェシカは13歳で欧州女子ツアーの予選通過も果たしているそうだ。これは男子でいえば、セルジオ・ガルシアと同等の実績。そう考えると、ジェシカのプロ転向後の活躍が今から楽しみになる。


それにしても、米女子ゴルフ界は、本当に国際色豊かになった。今回の優勝者は韓国人だったけれど、もはや韓国勢の強さばかりに驚いている場合ではない。コロンビア、チェコ、パラグアイ、メキシコ……ちょっと前まで考えもしなかった国々から多大なる将来性を秘めた若い選手たちが続々とアメリカへやってきている。そのスピードと拡大の仕方は驚異的だ。世界の中の小さな国、ゴルフのイメージが薄い国からやってくる選手ほど、とんでもない強さを持っている――そんな気がしてならない。


Uribe.JPG
(すでに貫禄十分のウリベ。アクションも大きい。今後に大きな期待が持てる)
Photo/JJ Tanabe

2008年06月26日

明日から、女の戦い

全米女子オープンは明日開幕する。今年の舞台、インターラーケンCCは、なかなか手ごわそうなコースだ。様々な選手が、様々な展望を抱いて明日からの4日間を戦うことになるわけだが、やっぱり興味を引かれるのは、女王ロレーナ・オチョアと元女王アニカ・ソレンスタムのプレーぶり……というのも本当。だが、私の個人的な興味は、実は韓国人の申智愛に傾いている。


07年に圧倒的な強さで韓国ツアーの賞金女王に輝いた申。英語表記はJi Yai Shin。彼女とは昨年の全英女子オープンの帰路、英国のエジンバラ空港で偶然遭遇。そこで交わした英会話のつたなさが、妙に印象的だった。


JYShin.jpg
(優勝戦線に加わるか?)


申は17歳でプロ転向。18歳で「韓国の慶応」と呼ばれる延世大学に入学。そして今も大学に通いながらプロツアー参戦を続けており、言うなれば「女子大生プロ」。学校生活とツアー生活の両立となると、立場としては、スタンフォード大学に通うミッシェル・ウィー、高校に通う石川遼とも似ている。だが、そんな多忙なスケジュールの中で、申ほど結果を出している選手はいないだろう。


練習日の今日、申と話をした。驚いたことに、たった1年で英語はかなり上達。しかも、最初の挨拶は日本語で「こんにちわ」。すっかりグローバルになりつつある。


「ホントに強いねえ。その強さの秘密をちょっと教えてよ」ってな具合で話しかけると、「いいえ、いいえ」と首を横に振る姿がなんとも初々しく、謙虚。笑顔がかわいい。しかし、それだけ謙虚に「いいえ、いいえ」と言いながらも、申は「ナンバー1になりたい。ショットはみんな巧いんだから、一番大事なのはメンタリティ。自信がすべてです」と、きっぱり言い切った。肝の据わった20歳だ。


WieOpen.jpg
(昨年の全米オープンでは手首を傷めて棄権したウィー。久々の登場だ)


そして一番驚かされたのは、申のインターラーケンに対する分析が、女王オチョアのそれと、ぴったり合致していること。これには、びっくり。たとえば、注意すべきは「ドッグレッグ」「池がらみ」であること、5つのパー5のうち2オンを狙うべきは2番と18番であること、グリーンの難しさはロングパットにあること等々、目のつけどころと、そこから出てくるアンサーが、本当にそっくりなのだ。


もちろん、申とオチョアは飛距離的にも似たものがあるがゆえに分析や攻略法も似るわけで、藍ちゃんに同じことを求めても無理がある。だが、飛距離差はさておき、コースそのものを見つめる目、分析する能力、判断の仕方において、まだあどけない申とオチョアが似ているというのは、空恐ろしい事実だった。


インターラーケンはパー5が5つ。ロングヒッターに有利との声も上がっている。だが、アニカは「ロングヒッターに有利というより、スマートプレーヤーに有利」と言っていた。だとすると、とっても賢い申は、かなり有利だと思うのだが……明日開幕したら、しばらく申から目が離せない。


InterlachenGC.jpg
(1番ティはクラブハウスの目の前に位置する)
Photo/JJ Tanabe

2008年06月22日

引退?

長い長い全米オープンが終わったと思ったら、すぐさまタイガー・ウッズ再手術のビッグニュースが流れ、なにやらアメリカのゴルフ界は騒然としている。いや、ゴルフ界のみならず、なんだかアメリカ全体が騒がしい。それほどタイガーの存在意義が大きいということの表れだ。


再手術は4月の内視鏡手術より規模の大きなものになるらしい。そもそも4月の内視鏡手術自体がその場しのぎのものだったそうで、実は昨年末から靭帯を痛め、全米オープン前には2箇所の疲労骨折まで伴っていたというのだから、何が驚きかって、そうした詳細を隠し通して91ホールを戦い抜いたタイガーの強い意志と負けん気に驚かされた。


そう、彼はすべてを左膝のせいにしたくなかったのだ。全米オープンでダボ発進しようとも、ウソのようなミスショットを連発しようとも、絶対に左膝のせいにせず、「単なるバッドスイングの結果」と答え続けたところが、彼らしい負けん気であり、王者としてのプライドだったのだろう。


USOpenTiger1.JPG
(ここまでのハンディを背負っても勝てるタイガーって、何者?)


そして今、アメリカのゴルフ界で浮上しているのは、タイガー引退説だ。元々、4月の手術のときから、今回の術後の経過が思わしくなかったら、タイガーは引退を考えざるを得ないと囁かれていた。だが、それは、靭帯断裂などの重い症状が公表されていなかった時点での話。今回の全米オープン後の発表で、そこまで症状が悪化していたとわかったわけだから、元々存在していた引退説が大きく浮上したのは、いわば当然の成り行きだ。


タイガーの医師たちは「長い目で見て後遺症や影響が残るものではない」と言っているそうだ。だが、それでも引退説が出る理由は、まあ、いろいろある。


たとえば、こんな説。体の左サイドはインパクトからフォローにかけて、体全体を支える重要な役割を担っている。そこにぐらつきが出るとしたら、少なくとも今より弱くなるとしたら、今のようなヘッドスピードで豪快なショットを打つことは、きっとできなくなる。


すると、こんな反論も出る。元来、トッププロというものは100%の力で振るなんて無謀なことはしていない。正確性を保つために8割ぐらいの力で振っているのだから、タイガーの体の左サイドが若干弱くなったとしても、どうせ8割なんだから変わりはない、と。


しかし、今が100のうちの80だとしたら、今後は80のうちの80、つまり今の100に対して6割ちょっとぐらいでしか振れなくなる計算が成立する。今のタイガーを6割ぐらいにした縮小版タイガーのゴルフしか披露できなくなるとしたら、今のように抜きん出た状態で王座に君臨し続けることはできなくなる。それでもメジャーに勝てるだけの力は残るかもしれない。だが、それはミケルソンなど他選手たちと横並びぐらいの力にしかならないかもしれない。王者タイガーは、そんな姿をファンに見せたくないと考えるのではなかろうか。となれば、今回の全米オープンが彼にとって最後のメジャーとなったのではないか。


一番気になるのは、どうしてタイガーは今回の全米オープンで、あそこまで無理を押して戦い続けたのかという点だ。タイガー自身は自分の膝がどの程度悪いかがわかっていたはず。あんなに無理を続けたことで、さらに悪化し、とり返しがつかないところまで行ってしまうかもしれないという危惧はすでにあったはず。それでもなお棄権もせず、戦い続けたそのわけは……これが最後のメジャー、これが最後の試合と考えていたからなのかもしれない。引退の2文字がすでに頭の中にあったとすれば、引退への花道をメジャー勝利とトリプルスラムで飾りたいと願うのは当然だろう。だから、どんなに痛くても、どんなに辛くても、何がなんでも戦い通して、そして勝ってやる。そう考えていたと思えて仕方がない。


さらに気になるのは、タイガーが今回の全米オープンを「The greatest.」と表現したことだ。これまでは常に「great」だったのに、今回は「greatest」だったのだ。これが何を意味していたのか。そう考えると、どうしても「引退」の2文字が浮上してきてしまう。


USOpenTiger2.JPG
Photo/JJ Tanabe

しかし、タイガーが本当に引退してしまったら、アメリカのゴルフ界とゴルフビジネス界はどうなってしまうのだろう……。久しぶりに戻ったNYで相棒カメラマンのJJ田辺と食事をした後、コーヒーを飲みながら、そんなことを考えていたら、JJが実に面白いことを言い出した。
「これまでのアメリカのゴルフ界は、タイガーという名のドーピングをしていたようなもんですよ。ドーピングしていたアスリートがドーピングをやめたら、その肉体は一時的にはボロボロになる。だからタイガーという名のドーピングができなくなったら、アメリカのゴルフ界もボロボロになるんちゃいますかあ?」


JJは結構、口が悪い。だが、この例えには「うまい!」と拍手を贈ってしまった。うーん、その通り。アメリカのゴルフ界はボロボロになるだろう。複数年で契約しているスポンサーは、契約満了まではお金を払うだろうけれど、問題はその先だ。今でさえ小さな試合はスポンサー不足で喘いでいるのだ。タイガーなきツアーに今後もお金を出してくれる奇特な企業は、それほど多くはないだろう。高騰し続けてきた賞金額も、いずれは頭打ちとなり、いずれは縮小傾向へ……確かにボロボロだ。


ひょっとして、アメリカまでもが現在の日本のように「女子ツアー>男子ツアー」なんて図式へ様変わりしたりして?多くの人々が「アメリカの男子はスター選手がいなくて面白くないねえ」「男子選手は何やってるんだろうねえ?」なんて言う日が来たりして?
JJ「そんなん、嫌やな~」
私「そうなったら、もう引退だね」


我々の進退をも左右しかねないタイガーの行く末。いや~、気になって仕方がない……。
もちろん、タイガーが本当に引退すると決まったわけではない。全米オープンであれだけのミラクルが起こったように、手術にだってミラクルは起こりうるだろうし、術後の経過やリハビリ段階でもミラクルは起こるかもしれない。そう言うと、「現代医学にミラクルはない」なんて反論も出るのかもしれないが、今は心底、タイガーの奇跡的復活を祈る以外にできることがなさそうだ。

2008年06月18日

毒舌にも限度!?

全米オープンは19ホールに及ぶプレーオフの末、栄冠をつかんだのは結局、タイガー・ウッズだった。今回はウッズ勝利とはならない気が最後までしていた私の予想は外れてしまったけれど、左膝の痛みをこらえながら91ホールを戦い抜いたタイガーの健闘には、もちろん大拍手!一体、どれほどの痛さだったのか。それはタイガー本人にしかわからないし、4日間のうち3日間もダボ発進となりながら、度重なるミスショットを決して膝のせいにしなかったところに、何より王者のプライドと意地が感じられた。


素晴らしい大会だったと思う。そして、ロッコ・メディエイトの健闘も、本当に素晴らしかった。


正直に言ってしまうと、私はタイガーが優勝しないだろうと予想していたというよりも、今回はタイガーではなくメディエイトに優勝してほしいと密かに願っていたと言ったほうが正確なのかもしれない。


メディエイトとは、以前、フロリダに住んでいた時代に近所のスターバックスで小1時間ほど、ご一緒したことがある。もちろん、待ち合わせをしたわけでもなく、取材だったわけでもない。たまたま外のパティオでコーヒーを飲んでいたら、目の前の車の中に座っていたのがメディエイト。車内で電話をしていたのだが、話し終わると出てきて、一緒にパティオでコーヒーを飲んだ。


そのとき何を話したかは、実は全然覚えていない。たわいもない話をしたような気がする。メディエイトはカメラの前やギャラリーの前では陽気な態度がとても目立つし、実際、明るい性格。しかし、そんなふうに少人数で話をするときは、それほどテンションは高くない。むしろ、笑顔をたたえながら、じっくりゆっくり話をする。そんなタイプだ。


Mediate.JPG
(表彰式でのメディエートのスピーチはユーモアに溢れていた)


スタバでの会話は覚えてないが、ものすごく覚えているのは2年前のマスターズ最終日。首位を走っていたメディエイトが後半に崩れて80を叩き、悲痛な表情で去っていったあの日の出来事だ。持病の腰痛が最終日の朝に悪化し、ドクターの処置を受けた上で最終ラウンドに臨んだのだが、9番ホールで激痛に襲われ、そこから先はどうにもならないゴルフと化した。


あのときメディエイトが感じたであろう屈辱感と情けなさを彼の表情から伺い知った私としては、だからこそ今回は彼にメジャー勝利の味を噛み締めてほしいと、そう思ったわけだが、勝利の女神もタイガー贔屓のようで、メディエイトに微笑んではくれなかった。


そんなメディエイトの過去の経緯を知ってか知らずか、今回の米NBC局のテレビ中継アナリスト、ジョニー・ミラーはメディエイトのことを、こんなふうに評していたとニューヨークタイムズが報じていた。

「メディエイトはキクユー(ラフに含まれていた芝の種類)を食べ過ぎて消化不良なのかい?」
「メディエイトは、まるでタイガーのスイミングプールの掃除係みたいなもんだな」。


どちらも、タイガーを褒め上げるためにメディエイトをこき下ろして引き立て役に仕立て上げた発言だ。このアナリストの毒舌は以前から有名だが、これはさすがにひどい。


そういえば、つい最近、ある選手がこんなことを言っていたのを聞いた。「マスコミって陰湿だよね。持ち上げるだけ持ち上げておいて、あとで一気に足蹴にするんだからね」


メディエイトの場合、そこそこ陽の当たる時代はあったものの、持ち上げるだけ持ち上げられたというほど持ち上げられた時代はない。けれど、キャリアにおいて、おそらく最大の注目を浴びながら、タイガーとの一騎打ちを堂々と戦っていたそのときに、これほどこき下ろされたいたなんてことを本人が聞いたらどう感じるか。想像するだけでも可愛そうになる。まあ、ミラーも今回は、ミラクル続きのタイガーの神がかり的なプレーに興奮していたのかもしれないし、メディエイトに対して敵意があったわけではないのだろう。けれど、やっぱり彼の発言は行き過ぎだったと私は思う。


そもそも人に対して、その人の心を刺すような言葉を口にする人間は、世の中には必ずいるものだ。私自身、ウイットに富んだ毒舌は好きだし、ゴルフ解説者がプロゴルファーのゴルフそのものを酷評するなら、それは頷ける。だが、そういう毒舌と侮辱はまったく別ものだ。「相手の気持ちを想像したら、とてもじゃないが、こんな言葉を口にすることはできない」という判断は、良識ある人間ならできるだろうけれど、冷酷な人間にはできない。いや、冷酷な人間は、そんな配慮をしないし、する気がない。自分の意志を通すため、自分の立場を守るためなら、どんな言葉でも吐き、平然とできちゃう輩もいる。


ま、しかし、そんなことは、とっとと忘れたほうが良さそうだ。今年の全米オープンが素晴らしい大会で、タイガーもメディエイトも素晴らしい健闘ぶりを披露してくれたのだから、どうせなら、気持ちいい部分だけを記憶にとどめたい。しかし、素晴らしいことが起こる裏側で嫌なことも起こる。それが世の中なのだろうかと、そう思うと、ちょっぴりやるせない。


KneeTiger.JPG
Photo/JJ Tanabe

2008年06月15日

大ゲンカ!

全米オープンは3日目を終え、左膝の手術からわずか2ヶ月しか経っていないタイガー・ウッズがミラクルのようなイーグルを2つも決め、ミラクルのようなチップインバーディまで決めて単独首位に立った。最終日最終組といえば、タイガーにとっては勝利へのポールポジションのようなものだが、どうも今回は、タイガーの勝利伝説が打ち砕かれそうな気がしてならない。


なぜなら、左膝があまりにも痛そうだからだ。初日から「4日間、持ちこたえられるのかな」と思いながら眺めていたが、首位に立った今日は、一層痛そうにしていた。ミラクルも今日で使い果たし、最終日はひょっとしたらスタート前に棄権、あるいは9番を終えたあたりで途中棄権もありうるように思えてならない。もちろん、傷を負いながらも全米オープン覇者となってくれたら、そりゃもちろんストーリーにはなるけれど、なんとなく今回はそうはならないような気がするのだ。


USOTiger.jpg
(一生に一度、見ることができるかどうかと思えるようなミラクルプレーだった)


それはそうと、2日目に、またまた悲しい事件が起こった。それは国籍の絡む野次事件で、先日のメモリアルでセルジオ・ガルシアに向けられたあの野次事件と同じ臭いがするものだった。


2日目、タイガー、ミケルソン、アダム・スコットの3人が最終ホールの9番のティショットを打ち終わり、歩き始めた矢先。男性ギャラリーがスコットに向かって、オーストラリア人は出ていけ、というニュアンスの野次を大声で飛ばした。スコットは黙っていたが、代わりに彼のキャディのトニーが激怒した。トニーはアメリカ人だが、ボスのスコットのために激怒したのだ。そして、セルジオのときと同じようにミケルソンのキャディのボーンが、またまた激怒。どちらのキャディも野次男に怒声を浴びせた。


その騒ぎを隣の18番ティで聞いていたのが、やはりオーストラリア人のスチュワート・アップルビー。そして彼のキャディのジョーも野次男に駆け寄って怒声を浴びせた。


話は、まだまだ続く。野次男性の態度に怒りを露にした別のギャラリー男性が何かを叫んだ。その直後、この2人のギャラリーどうしが、つかみ合いの大ゲンカになってしまったのだ。結局、ポリスが駆けつけ、2人とも、その場で逮捕。とんでもないことになった。


USOFight.jpg
(ケンカする人、仲裁する人、入り乱れての大乱闘に発展した)
Photo/JJ Tanabe


全米オープンはアメリカのナショナチャンピオンを決する大会だ。アメリカ人ギャラリーがアメリカ人選手を応援するのは頷ける。しかし、だからと言って外国人選手を中傷するのはお門違い。こんなところで国籍を持ち出して野次を飛ばすとは情けない。


プレーに集中すべき選手の代わりにキャディが怒るというのは、まあ当然というか、頷けるというか。しかし今回はアメリカ人の野次男にアメリカ人のギャラリーが怒ったというのは、ある意味、救いだった。その2人が逮捕されるほどの大ゲンカを繰り広げちゃったのは「余計」だが、もしも他のギャラリーが野次男に同調したりしたら、もはやアメリカのゴルフはおしまいだ。


ともあれ、応援したり支援したりカタを持ったりしたいがために、他の人間を悪者に仕立て上げるのは許しがたい行為だ。誰かが誰かをかばったり応援したりするあまり、何も悪くない人間がまるで悪者のように仕立て上げられてしまうことは、通常の社会でも結構ある。たとえば、たった3人の勢力図だって、2人が結託して1人を攻撃したら、それはもう「2対1」だ。「2人=善人」「1人=悪人」という図式が作られてしまい、少数派の「1人」は何を言っても、あがいても、いつまでたっても悪役だ。アメリカのゴルフ界においては、アメリカ人が大勢で外国人が少数派ゆえ、ガルシアやスコットに野次が向いてしまったのだが、そんな理不尽なことが起こるのは、あまりにも悲しい。


ん?ちょっと話が脱線気味?


とにかく、外国人を攻撃するアメリカ人の野次は、聞くに耐えない。見るに耐えない。こんな事件が起こること自体、アメリカ社会の恥だ。

2008年06月12日

勝負!?

全米オープンの練習ラウンドが行われた。世界の注目は、どうしたって左膝の手術からの復帰戦を迎えているタイガー・ウッズに集まっているけれど、私自身の注目は、初優勝を遂げたばかりの今田竜二がどんなプレーを見せてくれるかということに傾いている。


とはいえ、今田の場合は、初優勝したからゴルフがどうなるこうなるというものではなく、考え方や攻め方も別段これまでと変わりはしない。実際、クラブ1本も変えていないし、今大会に来ているのは奥さんだけで普段と何一つ変わりはない。ただ、彼を取り巻く環境は確実に変わりつつあるわけで、ギャラリーからサインや握手を求められたり、日米あるいは世界のメディアから質問を受けたり、スポンサーなどの広告用の仕事も増えた。ゴルフ以外の様々なモノゴトに煩わされる機会はどんどん増えている。まあ、それもまたスター選手になるために踏まなければならないステップなのだろうけれど、そんなことで今田が疲弊してしまわないよう見守らなければと、つくづく思ってしまう。


さて、その今田と谷口徹が、火曜日と水曜日、2日連続で練習ラウンドをともに回り、「勝負」していた。億単位の賞金を賭けて戦うトッププロの2人のガチンコ勝負だ。一体、どんなレートなのだろうかと興味が沸いた。2人とも、ときに笑いもするけれど、その表情は結構真剣。なんか本気だなあと思いながら眺め、フィニッシュした途端に近寄っていった。


Bet1.JPG
(勝負の結果はそれぞれの表情から分かる?)


すると、谷口が悔しそうな顔をしながら今田に負け分を渡していた。すかさず覗き込むと……渡されたのは、1ドル紙幣が1枚だけ。「えっ?たったそれだけなの?」と思わず聞いてしまった。すると今田は「いやいや、勝てば1ドルで十分」。そして負けた谷口は「コイツ、むかつく~!どこからでもバーディ取りやがる~!」 たったの1ドルだけど、負けは負けという事実が谷口にとっては、よっぽど悔しかったらしい。「アイツのゴルフを見てると、自分がフェアウエイにいるのがバカらしくなる」。ラフに入れても、グリーンを外しても、どこからでもパーを拾い、バーディまで取ってしまう今田のゴルフに谷口は驚嘆していた。


その谷口、もしタイガーが手術後間もない左膝を抱えながら優勝したら「もう(タイガーから)ハンディもらわんと、やれんわ」。今田とは当然ながらスクラッチ勝負で負けた。タイガーからはハンディもらわなきゃ勝負にもならない?うーん、谷口選手、もう少しがんばらないと、日本ツアー代表選手の名が泣くぞ!「明日は気力を振り絞ってがんばります。打倒、今田竜二!」


あれあれ?試合が始まる明日からも、谷口の勝負相手は相変らず竜二?好敵手が現れ、発奮するのはいいことだ。が、できることなら、今田にも谷口にも、タイガーと最終日にガチンコ勝負を披露してほしいのだが……。もちろん、最終組で。

Bet2.JPG
(本戦ではやっつける!?)
Photo/JJ Tanabe

2008年06月08日

日本人は、なぜ焦る?

全米女子プロの2日目。上田桃子がスロープレーの計測にかけられ、30センチのパーパットを「お先に」とやって外してしまった。計測されていると思うと、どうしたって気がせいてしまう。ああ、早くプレーしなきゃと先走る気持ちから、ついつい「お先に」とやり、ボギーになってしまったわけだ。


「だって、日本人って気になるじゃないですかあ?でも、こっちの人はマイペース。こっちの選手と日本人は、そこらへんに差があると思いました」


そう、計測が入ったとき、日本人選手は必要以上に焦ってしまう。その傾向は、上田に始まったことではなく、男女を問わず、過去にも大勢の日本人選手が同様の言葉を口にしていた。


MomokoTimed1.jpg
(もうひとつ、伸ばせていたかも?)


かと言って、欧米人選手がまったく計測を気にも留めないのかといえば、そんなこともない。故ペイン・スチュワートが98年の全米オープンの優勝争いの真っ只中で計測をかけられ、USGAのルールオフィシャルから耳元で「計測するぞ」と囁かれた話は有名だ。それで調子が狂い、勝利をリー・ジャンセンに持っていかれた。


メジャーの優勝争いという緊迫した場面なら、マイペースの欧米人でも調子が狂うのは、わかる。だが、日本人選手の場合は、どんな状況であっても、計測が入ったというだけで、本当に必要以上に焦ってしまうようなのだ。


この傾向、プロゴルファーだけのせいにするのは、あまりにも酷だ。この傾向は、おそらく日本人全体に共通するもの。良く言えば、協調性を重んじる日本人ならではの周囲への気遣いが裏目に出る現象。悪く言えば、他人の目を気にしすぎる日本人ならではの現象なのだと思う。


で、ゴルフの場合、どっちがいいのか悪いのかという話になると、日本の道徳や倫理には申し訳ないけれど、同組の選手がどう思うかとか、後続組の選手たちがどう思うかとか、ギャラリーがどう思うかとか、そんなことを気にしていたら、プロゴルファーは勝てないように思う。


つまり、日本人の感覚では「図々しい」「マイペースすぎる」と感じるぐらいの考え方と態度のほうが、ツアーで戦っていくためには有利だということ。もし、桃子ちゃんが、もう少し図々しかったら、あのボギーは叩かずに済んだだろう。


日本人が欧米化していくと「なんとなく嫌なヤツ」と化していくこともあるのだが、まあ、2日目の計測によるボギーでまた一つ学んだ桃子ちゃんが、今後、コース上で「ちょっぴり図々しい子」と化したとしても、それは勝つため、強くなるための努力だと思ってあげてほしい。試合を離れたときは、いつものサッパリ桃子であり続けてくれるだろうから。


MomokoTimed2.jpg
(17番のバーディパットはしっかりと決めました)
Photo/JJ Tanabe

2008年06月04日

表紙は格別?

練習中のイアン・ポールターにそっと近づいていった。こちらをチラッと見たポールター、「ヘイ!元気?」と言っただけで、球を打つ手を止めはしなかった。しかし、「これ、持ってきたよ」と言いながら「これ」を見せた途端、「あー、すげー!えっ、何、何?ちょっと、見せて見せて!」と、興奮しながら近寄ってきた。

「これ」とは、現在発行中の「ゴーゴル」だ。3月末ごろ、彼にじっくりインタビューして、5月に発行された今号のゴーゴルは、そう、このポールターが表紙なのだ。


PoulterMag1.jpg
(表紙から飛び出してきた“本物”?)


ポールターといえば、ファッショナブルな装いが目立つため、世界各国の雑誌などに登場することしばしば。自らのファッションライン「イアン・ポールター・デザイン」を有しているせいもあって、そのパンフレットや広告の撮影だってモデル並にこなしている。だから、自分の写真が印刷物に載っているのは、結構、慣れっこのはずなのだ。しかし、このゴーゴルを見たときの喜び方は普通ではなかった。やっぱり表紙に出るのがうれしいのだろうし、自分のブランドを売り込む有力マーケットである日本の雑誌に大きく載ったのもうれしいのだろう。


欧米人選手はたいていの場合、初めて日本の雑誌を見ると、綴じ方と進み方が逆であることに驚く。ポールターも「えっ?こっち向きに進むの?」という具合だった。ぺらぺらとページをくりながら、「ああ、このウエアは全米オープン。これは……全英。で、これは……」と、どこの大会で撮られた写真かを、一つ一つ思い出しながら、見入っていた。


こんな姿を見ると、スター選手でも人気選手でも、自分にとってちょっと風変わりなものに登場するのは特別な意味があるんだなあと、あらためて思う。そして、喜ぶ様子は、結構、普通の人チックだから笑ってしまう。


ポールターの次なる「目立ちどころ」は、もちろん来週の全米オープン。どんな装いで現れるのか、今から楽しみだ。


PoulterMag2.jpg
(こんなに興味を持ってもらえると、こちらもうれしいです)
Photo/JJ Tanabe

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