2008年12月27日
前回のこのコーナーに私が書いたことに対して、次々にコメントが寄せられ、それで確信したことがある。日本の報道の画一性のようなことを書いたのだけれど、もう1つ、気づいたというか、あらためてなるほどと思ったのは、読者のほうは決して画一ではないということ。なんとなく、メディアは全体的に「読者はこういうもの」「読者はみんなこれを期待しているはずだ」という決め付けをして、つまり読者のニーズを画一的な一方向に決めつけて、その一方向にだけ応える報道を良しとしている傾向が強いのだなあ、と、つくづく感じた。本当は、読者のほうがずっと深く、いろんなことを考えたり感じたりしているのに、そんな読者の多方向のニーズをいろんな形で満たすべきバリエーションが報道する側には不足している。だから私は、その多方向のほんの一部にしかすぎないにせよ、画一性に埋もれないようなモノの見方、捉え方を心がけたいと思う。
ということで……石川遼ブーム一色の日本の最近のゴルフ報道の中では、もはやほとんど触れられることがない米ゴルフ界の今年を振り返り、08年スポーツ大賞を、私が独断と偏見で、勝手に設定し、選んでみた。
まずは、ビックリ大賞。今年、世界のゴルフファンを一番びっくりさせた驚きの出来事を起こした選手。これは是非とも、グレッグ・ノーマンに授けたい。ご老体(失礼!)に鞭打ち、いやいや、年齢を感じさせない新婚ほやほや幸せムードを漂わせながら、年齢を感じさせない大奮闘を披露した全英オープンは、ノーマン優勝を願った同年代のファンに大きな夢を見せてくれた。ノーマンが優勝争いに絡んだことは、とにかくビックリだったわけで、うーん、ビックリ大賞は、やっぱり、この人しかいない。
お次は、名言大賞。これも、ノーマン。来年のマスターズ出場資格を得たノーマンに対し、世界のメディアが「優勝を狙うか?」と問いかけたとき、ノーマンが口にした一言は、めちゃくちゃ格好良かった。「それは、タイムアップだ」。全英で活躍できたからと言って、マスターズでも活躍し、優勝も狙うなんて、そんなことは考えてない、オレの年齢を考えれば、もうマスターズの優勝狙いなんてものはタイムアップだよ。そういう意味である。なんか、己を知っている往年のスターという貫録が、「優勝なんて狙えないさ」という意味のこの言葉で逆に膨らむところがミソ。スターとは、こういうものだなあと、感動させられた一言だった。

P=JJ
3つ目は、偉業大賞。こりゃ、やっぱりパドレイグ・ハリントンだろう。全英オープン、全米プロとメジャーを2連勝したのは、間違いなく偉業。それなのに、最終戦のツアー選手権に出られないというハプニング付きでシーズンを終えたのは、ちょっと残念だったが、PGAツアーにフェデックスカップやプレーオフの在り方を見直すための好機を与えたと考えれば、ハリントンはツアー改革貢献大賞も受賞できるはず。

Photo=Yasuhiro JJ Tanabe
そして4つ目、スポ根大賞。最大最高の根性を見せた人。言わずと知れたタイガー・ウッズ。左ひざの痛みや状況を可能な限り隠しながら、全米オープンの死闘を制したウッズの悲痛な表情が、今でも脳裏に焼き付いている。あれほど激しい戦いぶりをゴルフの世界で見たことは、過去にもないし、おそらく今後もないだろうと思う。もちろん、タイガー本人だって、すごいドラマを演じようとして演じたわけではないのだが、勝利を目指して戦う姿がすごいドラマになっちゃうところが、正真正銘のスターである証拠なのだろう。
5つ目。主催者(=私)特別賞。日本人の私は、当然ながら日本人贔屓なので、まったくの独断で、これは今田竜二。もちろん、米ツアー初優勝を果たし、ドリームカムトゥルーをやってのけた大活躍、そして米ツアートップ30に堂々と入った大奮闘を讃えての賞だ。これにより、彼が渡米するときからの夢であり目標だったマスターズ出場が来年大会で、やっと叶う。09年のマスターズを取材する1週間が、私は今から楽しみで仕方がない。今田が長いことかかって自力で夢をかなえるその瞬間を、オーガスタでしっかりと見届けたいと思う。
以上、5つの賞でした。こうして見ると、やっぱり08年のゴルフ界には、たくさんの話題があった。いろんな立役者がいた。そして、米国の新聞や雑誌には、こうしたたくさんの話題、たくさんの選手たちが満載されている。決してタイガー一色になることなく、がんばった人はがんばった人として、ちゃんと讃えている。それが、スポーツジャーナリズムと呼ぶべきものなのだろうなあ……。違います?
2008年12月25日
年末ということで、帰国した。日本にいると、当たり前の話だが、ちょっとしたことのすべてが「ああ、やっぱり日本だなあ」と感じることだらけだ。
何が「やっぱり日本」なのかというと、お正月のお鏡モチが売られていたり、なんていうのも、もちろん日本らしさ、日本ならではなのだが、もっと日本っぽさを感じさせられるのは「画一性」だ。
たとえば、新聞のテレビ欄なんぞを見ると、ほとんどすべてが年末の特番一色で、●●スペシャルばかり。他がみんな●●スペシャルなのだから、どこか1つぐらい、年末っぽさを感じさせない通常通りの番組を流せば、そのほうが目立つし、特番が嫌いな人からは喜ばれそうな気がしてならないのだが、そういう考え方は日本のテレビ界では通用しないのだろうか。

(シーズン後半をすべて休んでも、やはり今年もWR1位はタイガーだった)
何かで一色といえば、日本のゴルフ界、いやスポーツ界は、想像以上に石川遼一色になっている。何々スポーツ大賞の類は、ほとんど石川が総なめ状態。そりゃあ、高校生でプロになってルーキーで優勝も果たし、世界ランクもウナギ登りの活躍をしたのだから、すごいなあと、もちろん思う。思うのだが、他のスポーツ界でも石川と同等ぐらいのがんばりを見せた選手は他にいないのだろうか、本当はいるのだけれど、石川ブームのあまりのすごさで、他フィールドの選手の活躍や奮闘は埋もれてしまったのではないだろうかと、ちょっと心配にもなる。
埋もれてしまうのは、大した活躍ではないと思うかもしれない。だが、選手の活躍やがんばりは、どうしてもメディアの力を借りなければ人々の知るところとなりにくいわけで、メディアがみな石川ばかりを追いかけ、他にあまり目を向けなかったら、どうしたって、石川の話は小さなことまでニュースになるのに、他の話は結構な話なのにニュースにならないことになる。
ゴルフのことを書いている私が、他スポーツのことを心配しているというのも変な話だが、日ごろ、アメリカにいて日本に突然戻ってくると、「一時期に1つのことに集中しすぎる傾向が日本は特に強いなあ」とどうしても感じてしまい、そう感じてしまうと、石川報道や石川ブームが、どうしても心配になってしまうのだ。
かつて、アメリカツアーで長年プレーしたある日本人選手は、「アメリカでは」という言葉を吐きすぎると日本の人々から「ではの神(デワのカミ)って呼ばれてしまう」とこぼしていた。だとすれば、私なんぞは、とっくの昔から「超デワのカミ」なんだろううけれど、石川の件に限らず、日本における大ブームがアメリカや世界ではどんなふうに見られているのか、どんな位置づけなのか、といった「世界から眺めた日本」の像を、ちゃんと知るべきだろうし、メディアはちゃんと伝えるべきだとつくづく思う。

(今年大ブレークし、全米オープンで激戦を繰り広げたロッコはWR71位)
しかし、日本はディベイト(討論、議論)が成り立ちにくいと言われるように、反対意見や反論を書いたり言ったりすると、その時点で相手を敵にしたと受け取られてしまう。先日も、石川の世界ランクがウナギ登りで上昇した仕掛けを探った話を某所で書いたら、あくまでも事実を書いて説明しただけなのに、石川の活躍を私が忌み嫌っているかのように受け取られたコメントが寄せられた。
どうして、そういうふうに受け取られてしまうんだろう。石川の頑張りや奮闘を否定したわけじゃない。ただし、世界ランクの計算上、出場試合数が40に満たない選手は「ディバイダー40」だから有利だという事実を書いただけなのだ。もちろん、それを石川や関係者が読んでくれたとしたら、その部分を参考にして今後のスケジュールを考えてほしいという願いだってこめている。しかし、まるで石川の悪口を書いたかのように受け取られてしまうのは、どうしてなんだろう。
しかし、誰かが言わなきゃと感じるものをつかんだときは、私は反論を気にせず書くことにしている。今までもそうだし、これからもそうだ。だって、事実を伝えるために書いているわけで、反論者から何と反論されようと、私は悪口を書いてるわけじゃないのだから。
なーんてことを書いているうちに、間もなく今年もあと1週間で終わりになる。早い1年だったなあ。来年の今頃、日本はどんなブームで湧いているのだろう。

(12月22日現在、今田のWRは66位。低い?妥当?)
Photo=Yasuhiro JJ Tanabe
2008年12月19日
世界的な不景気。聞こえてくるのは暗い話ばかり……という今日このごろだが、米PGAツアーの来季の賞額は、それでも「増」になるというのは明るい話だ。
とはいえ、「増」は「増」でも「微増」だ。開幕戦からツアー選手権までのフェデックスカップシーズンの賞金総額は、08年の214.4ミリオンから、09年は222.9ミリオンへ。
タイガー・ウッズがツアーデビューした96年以来、賞金総額は毎年、ウナギ登りの増額を実現してきた。それゆえ、09年の「増」の度合は、96年以来、過去最低の伸び率だが、米LPGAも日本のLPGAも来季の試合数が3試合減という状況下、たとえわずかでも増額できるのだから、米PGAツアーは大したもんだ。

P=JJ
おまけに、試合スケジュール(試合数)にも今のところ変更はない。タイガーの契約がGMから打ち切られてしまう中、どうしてツアーのほうは安泰なのかと言えば、それはひとえにティム・フィンチェム会長の手腕。
手腕と言っても、別にあちらこちらへ金策に走り回ったわけではなく、これまで景気が良かった間にコツコツと貯めてきた「備蓄金」がモノを言っている。いやいや、現状では、まだ備蓄金に手をつけてはおらず、従来のスポンサー企業からの資金で来季はまかなえる予定だそうで、備蓄金の出番は、万が一、突然、スポンサーが1つ2つと降板してしまった場合に「だったら、この金を使ってくれ!」という具合にドーンと登場するのが備蓄金ということらしい。
備えあれば憂いなしとは、こういうことを言うのだろう。非常事態に備えてきた日頃の姿勢、素晴らしい。この話を聞いたとき、私は思った。備蓄金も必要だけど、まずは非常災害時に持ち出す「非常袋」というものを、私も用意しなければいけないなあ、と。みなさんは、用意してますか?

(ツアー選手権の取りフィーからクラブが落ちた。それを丁寧に直すフィンチェム)
Photo=Yasuhiro JJ Tanabe
2008年12月17日
左膝の手術後のリハビリ中で、タイガー・ウッズの姿はない。しかし、たとえ試合会場に姿を見せずとも、王者タイガーの株は下がらない。それなのに、バッグを担ぐキャディ、スティーブ・ウイリアムスは、下らない発言で自らの株を下げたという話が耳に入ってきた。
スティーブは母国の地元紙に、なんとフィル・ミケルソンの悪口を語り、それが掲載されてしまったのだ。もちろん、ミケルソンのマネジメント会社は怒りの声明をすぐさま発表。スティーブにしてみれば、その場だけのちょっとしたギャグか、いわゆる「ここだけの話だけど」というつもりだったのだろう。まさか、これほど大騒ぎに発展するとは思っていなかったのだろうけど、王者のキャディという立場なのだから、やっぱり発言にも細心の注意を払うべきだった。

P=JJ
スティーブはミケルソンに対して「彼がすごいやつだとは思わない。だいたい、彼はライダーカップというものを軽く見てやがる。オレはあいつが嫌いだ、あいつは●●●●(書けない言葉。放送できない言葉)だ!」と言ったのだとか。
これを聞いたあとの反応が気になる。まず、スティーブの雇用主であるタイガーは「とても残念。スティーブはそういうコメントを公の場ですべきではなかった。プライベートの範囲内にとどめておくべきだった。すばらしいプレーヤーであるミケルソンのことを、あんなふうに言ってしまったのは遺憾だ」。
そして、ミケルソン。「スティーブの発言を聞いて(見て)、すぐに思ったこと。僕にはボーンというすばらしいキャディがいてくれて、本当に幸せだと、そう思ったよ」
どちらも立派。まあ、タイガーのほうは、どちらかというと当たり前の内容だが、ミケルソンのほうは、やわらかい言葉を使いながらもスティーブとタイガーに対する痛烈な皮肉をこめている。僕にはボーンという名キャディがいて、ボーンは決してタイガーやスティーブの悪口なんか言いはしない。そんなキャディを持っている僕は幸せものだ。そういう意味だが、これ、裏を返せば、下らない悪口なんかをペラペラしゃべってしまう迷キャディのスティーブは哀れだし、そんなキャディを持ったタイガーも哀れだなあ、と言っているわけで、思わず、ミケルソンに拍手!
しかし、世界ナンバー1プレーヤーのキャディが、他人の悪口なんかを言って回るのは、どうにも格好悪い。だいだい、「ここだけの話」というのは、絶対にここだけにとどまるものじゃない。中には、広がることを期待しながら「ここだけの話」をする輩もいるけれど、どっちにしても、悪口を言っている人ほど格好悪いものはない。
ただ、面白いのは、悪口を聞かされた人のその後の言動だ。スティーブの場合も、彼がミケルソンに対する悪口を得意げに言っていた間、新聞記者は笑顔でうなずきながら、ときには相槌なんかも打ちながら、いかにも同意するかのように聞いていたのだろう。けれど、その記者が「スティーブがミケルソンの悪口を言った」と書いたわけだから、結局、誰かの悪口を平気でぺらぺらしゃべるような人は、誰からも信用されず、それどころか、すぐさま裏切られ、しっぺ返しを受けるということ。
みなさんの周囲でも、似たような例、あるのでは?だから、もしも悪口を言われたり、それが耳に入ってきたりしても、気にしてはいけません。悪口を言った人が必ず天から罰を受けるはず。そうだよね、スティーブ?

(今年の全米オープンでは予選ラウンドを同組でプレーした)
Photo=Yasuhiro JJ Tanabe
2008年12月13日
あの荒くれ男のジョン・デーリーが、またまたやってしまった。今回はオーストラリアでの出来事。予選落ちしそうな勢いで叩いていたデーリーが、林の中からショットしようとしていた矢先。1人のギャラリー男性がデーリーの顔の近くまでカメラを近づけ、写真を撮ろうとした。それに激怒したデーリーは、男性のカメラを取り上げ、近くの木に叩きつけて破壊してしまった。叩きつけながらデーリーが叫んだ言葉。「カメラが欲しけりゃ、オレが新しいのを買ってやるよ!」
デーリーがそこまで激怒したわけは、いくつかある。まず1つ。デーリーいわく、その男性は、林の中まで来るまでの間、デーリーの写真をたくさん撮り続けていたそうだ。で、ついに林の中まで追いかけてきて、しかも「オレの顔から20センチぐらいのところまでカメラを近づけて撮ろうとしたんだ。失礼すぎるだろう?」

(「カメラもってるやつは、いね~かぁ?」)
P=JJ
確かに、これはあまりにも失礼。誰だって、見ず知らずの人から突然カメラを顔の近くまでくっつけられて写真を撮られそうになったら、びっくりするし、怒りもするだろう。しかも、デーリーは試合中だったのだ。ドロップしてリカバリーショットを打とうと必死の状況だったのだ。そこで、ギャラリーからそんな行動に出られたら、デーリーじゃなくても怒りたくなる。
オーストラリアツアー側は、この出来事にどう対応したかというと、ギャラリー男性に対しては、週末の入場チケットを進呈することにしたそうだが、男性は拒否したのだそうだ。
しかし、それもちょっと変ではないか?そもそもギャラリーのカメラの持ち込みは禁止されているのだから、その男性がカメラを隠し持っていたことも、勝手に選手の撮影をしていたことも、デーリーのプレーを邪魔したことも、すべてはその男性に非があるはず。それなのに、わざわざ無料入場券を進呈するというのは、おかしいではないか。
で、デーリーに対する処分はというと、とりあえずは調査中ということで、罰金も出場停止も何もないとのこと。少なくとも、デーリーだけが処分されるということにならなかったのは不幸中の幸いだ。
さてさて、デーリーが激怒したもう1つのワケ。それは、07年のホンダクラシックで、ギャラリー女性がやはり隠し持っていたカメラでデーリーのバックスイング中にシャッターを切り、スイングをやめようとしてケガをしたという苦い経験がデーリーにはあるからだ。先日もこの場で書いたとおり、その苦い経験こそが、すべての不調の原因だと言ってしまうぐらい、デーリーにとっては大きな出来事だったのだ。それでも、戦う場を求めてヨーロッパやオーストラリア等々、飛行機嫌いのデーリーが飛行機に乗って出向いているときに再び遭遇してしまった「カメラ事件」だったのだ。デーリーが激怒したくなる気持ち、よくわかる。

(どこからでも打ち抜いてくるアグレッシブなプレースタイルに魅了されるファンは多い)
Photo=Yasuhiro JJ Tanabe
だからと言って、いきなりギャラリーのカメラを破壊するという行為は決してほめられたものではないけれど、かつてタイガーのキャディだって、プレー中にシャッター音を出してしまったカメラマンのカメラを池に放り込んだなんてことがあった。
シャッター音やカメラの動きというものは、プレーヤーにとっては、想像以上に気になるものなのだ。そのあたり、観戦する側は、あらかじめわかってあげるべき。それは、思いやりや気遣いという以前の問題。当然の、そして最低限のマナーだ。
そう考えると、「またデーリーが騒動を起こした」と避難するのではなく、心ないギャラリーがマナー違反をおかし、デーリーを窮地に陥れたと表現するほうが正しいだろう。そのギャラリー男性に無料チケットをプレゼントしようとしたオーストラリアのツアー側の頭の中が、私にはまったく理解できない。
2008年12月09日
男女ともQスクールが終了した。女子のほうは大山志保と宮里美香が見事、来季の出場権を獲得し、あのミッシェル・ウィーも合格。来シーズンは賑やかになりそうだ。アメリカは未曾有の金融恐慌に見舞われ、スポンサーをつけるのが大変な状況。そんな中、ウィーがツアーカードを獲得したことは、キャロリン・ビーベンス会長にとって何よりもうれしいニュース。アニカ・ソレンスタムの引退で、ビッグスターを一人失うことになるため、ただでさえスポンサー獲得に支障が出るところだったが、19歳という若さを誇るウィーがフル参戦してくれれば、これは何よりの「売り」になる。だからだろう。最終日、ビーベンス会長は終始、満面の笑顔だったそうだ。
ところで私は男子のQスクールのほうへ行った。日本の岩田寛が通ってくれればと期待していたのだが、残念ながらPGAツアーはおろかネイションワイドツアーの出場権にも手が届かずじまい。

(PHOTO/ SONOKO リーダーボードは手書きです)
しかし、やっぱりなんだかんだ言っても男子のQスクールは、いろんな意味で厳しい。男女のQスクールを単純比較することはできないけれど、女子のほうは1次予選に「敗者復活戦」となる2段階構造があるだけでも挑戦者にとっては気が楽。そして最終予選は5日間。一方、男子のほうは、3年前から「プレ・クォリファイ」という予選の予選が設けられたため、プレ(4日間)、1次(4日間)、2次(4日間)、最終(6日間)の長丁場。全部回ったら、合計18ラウンドにもなってしまうわけで、これは気が遠くなる。
もっとも、プレから最終予選までたどり着いたのは、たった6名しかおらず、その中から来季のPGAツアーカードを獲得した人はゼロ。ネイションワイドツアーのツアーカード獲得は2名。そうだろうなあ……18ラウンドもの間、ずっと好成績を保ち続けるなんていうのは、まさに神業に近い集中力が求められるのだから。
それにしても、Qスクールは独特の雰囲気が漂っていて面白い。ギャラリーは想像以上に多く、大半は挑戦者の家族や友人。だから、ごひいきの選手がグリーンにきたときなどは、ほとんど腫れものに触るような感じで息をひそめながら眺めている。その緊張感は、通常の試合とはちょっと異なるものだ。

(PHOTO/SONOKO さすがに、うれしさも露わになります)
逆に取材するメディアはというと、普段の試合では顔や姿を遠くから見ただけで、「あっ、誰々選手が来たぞ」と判断できるのだが、Qスクールとなると、顔がまるでわからない選手が多いため、目の前の組が一体誰なのか、全然わからず一苦労。記者もカメラマンも「今、来たのは……この組かあ?」という具合に、首をかしげながらの取材となる。
もちろん私もそんな具合で、目当ての選手を見つけるのが一苦労だった。目当ての選手は誰だったか?それは……今はわけがあって言えません(ごめんなさい)。某雑誌で書くまでは言えないのだが、彼は見事に合格!しかし、米メディアの誰からも取材をされることなく、駐車場のほうへ歩き始めてしまったところで、私がキャッチ!しっかり話をさせてもらいました。乞う、ご期待!
2008年12月05日
今週はアメリカの男女両ツアーでQスクール(予選会)が行われている。男子はカリフォルニア、女子はフロリダ。アメリカ大陸の東西両端に分かれて、来季出場権獲得を目指す男女が必死の戦いを繰り広げているわけだ。
男女どちらを見るか。これは、かなり悩みどころである。日本人選手というアングルから見れば、男子は岩田寛、女子は大山志保、アマの宮里美香、そして佐伯三貴が出ており、顔ぶれからすると、女子のほうへ行きたくなる。今のところの成績から見れば、2日目を終えて首位タイに大山がいる女子のほうが、やっぱり魅力。おまけに、女子のほうには、あのミッシェル・ウィーも挑戦しており、しかもウィーと大山が首位に並んでいるのだから、これはものすごくそそられる。

(LPGA・Qスクール3日目は、大山志保とミシェル・ウィーが最終組でプレーした)
Photo=JJ
しかし、私の個人的興味と都合から言えば、せっかく東海岸から西海岸へ引っ越してきたばかりだし、実際に荷物を積んだトラックがNYからLAへ到着するのは、なんと明日で、身動きができない状況。それゆえ、たぶん最後の2ラウンドか、あるいは最終ラウンドは、おそらく男子のほうへ行くことになるのかなあ……という見通しだ。
そんな話はさておき、男女双方のQスクール、いろいろ比較してみると、結構、面白い。男子は6日間108ホールの戦い、女子は5日間90ホールの戦い。ファイナルステージ挑戦者の人数は、男子が163人、女子が140人。そのうち、来季の出場権が獲得できるのは、男子が25人(25位タイ以内)、女子が20人。
一番興味深いのは「お金」の面だ。実を言うと「Qスクール」というのは俗称で、正しくは「クォリファイング・トーナメント」という名前。トーナメントと呼ばれる以上、賞金も出るのだが、これがなかなか興味深い。男女どちらのQスクールもエントリーには5000ドル前後のお金がかかる。そして、この「元手」が賞金によってどのぐらい取り戻せるのかというと、女子のほうは皆無に近い。というのも、女子のQスクールで1位(優勝)したとしても、賞金は6000ドル(07年の例)。つまり、1位になっても、ホテル代などの経費を含めたら、元手を取り戻すどころか、赤字になってしまう。
一方、男子のほうは、1位(優勝)の賞金はなんと5万ドル。来季出場権がもらえるトップ25に入れば、最低でも2万5000ドルの賞金が約束されており、エントリーフィーを含めた経費分は十分に賄える。トップ25にもれてしまった場合、そこから以下50名は二軍のネイションワイドツアーの出場権を得るのだが、そうなった選手への賞金が、ちょうどエントリーフィー分を取り戻せる5000ドルに設定されている。
うーん、こうして見ると、男子のほうは、PGAツアーにせよ、ネイションワイドツアーにせよ、「ツアープロ」と認められる成績を出した選手には、それなりの「見返り」がしっかり用意されている。が、女子のほうは、たとえメダリストになっても赤字。
いくらLPGAのキャロリン・ビーベンス会長が辣腕を振るって頑張っても、PGAツアーのティム・フィンチェム会長には、まだまだかなわないという事実が、こんなところで明らかになっている?
とはいえ、未曾有の金融恐慌に見舞われているアメリカでは、この先、何が起こっても不思議ではないわけで、来年あたりのQスクールは賞金が用意できず、「トーナメントとは呼べない」ということで名称変更なんてことも、もしかしたらあるかも?そうなったら、Qスクールの正式名称は何になるのだろうか。
クォリファイング・ラウンド?クォリファイング・レース?クォリファイング・ボランタリー・ゴルフ?将来、こんなことに頭を悩まさなければならない事態にだけは陥ってほしくない。

(ギャラリーは入場無料。ウィーを見にたくさんのファンが詰め掛けている。優勝賞金は今年は5000ドルだそうです From JJ @ Daytona Beach)
Photo=Yasuhiro JJ Tanabe
2008年12月02日
何やら、ナゾナゾか、ダジャレみたいなタイトルをつけてしまったが、このところずっと考えていたことなのだ。進化ばっかりしている世の中だけど、なんでもかんでも進化すればいいのか?進化した状態だけが「真」の良さなのか?そんなことをグルグル回しながら考え続けていたら、タイトルのようなフレーズが浮かんでしまったのだ。
ゴルフ界は、この10数年、著しい進化を遂げてきた。ゴルフ用具が進化し、選手たちの肉体も進化し、飛距離が格段に伸び、その対策で試合のコースが年々伸びてきた。そうなってくると、プロたちに求められるゲームそのものも進化し、往年のプロたちは「ゴルフがすっかり変わってしまった」と嘆いている。

(ジャック・二クラス)P=JJ
たくさんの「進化」を見たことで、ゴルフがよりエキサイティングになったのは間違いない。タイガーのゴルフは、もしタイガーが20年前にゴルフ界に登場していたら、まったく違うゲームだったに違いない。ダイナミックに飛ばすタイガーではなく、右へ左へと球筋を自在に変え、ショートゲームとパットでスコアを作る、そんな「職人技のタイガー」だっただろう。少なくとも、軽々と300ヤードを超えるドライバーショットを打つタイガーは、そのころには存在しなかった。
だが、どっちのタイガーのほうが面白いのか、味があるのかと問われたら、即答はしにくい。なぜなら、どっちも面白そうだから。

(タイガー・ウッズ)
Photo=Yasuhiro JJ Tanabe
ま、そんな仮の話はさておき、コースの伸長がいいのか悪いのか、それもまた即答はしにくいなあと思う中、あのオーガスタナショナルが来年のマスターズでは、ちょっぴり短くなった姿を披露することになった。
短くなるのは、本当に「ちょっぴり」。決まっているのは、1番ホールが10ヤード短縮されるということ。他は、7番と15番のティが前方に伸ばされ、天候などの状況に合わせてティの位置を決めるのだそうだ。しかし、ティの位置がこぞって一番前まで出されたら、コース全長は、ともすると数10ヤード短縮されることになる。
そんな微妙な短縮が、選手たちのプレーにどこまで影響を与えるのかは、これまた何とも言えず、蓋をあけてみなければわからない。
注目すべきは、伸びてばかりだった試合のコース、とりわけメジャーの開催コースが、「短くなる」という点だ。もちろん、「伸長=進化、短縮=退化」というわけではないが、これまで続いていた伸長傾向が、とりあえず止まったことだけは事実。
マスターズはこの2年間、まるで全米オープンのような様相を呈してきた。オーバーパーが続出し、選手たちは苦しむばかり。かつて「マスターズはfun、全米オープンはwork」という具合に、きっちり色分けされていた2つの大会が、まるで「どっちもtoo hard work」と化してしまっていた。オーガスタのパトロンたちからも、「マスターズらしさが失われている」といった批判の声が上がり、その対策として、短縮計画が打ち出されたようだ。
となれば、やっぱり進化だけが「真」の前進ではないということになる。ときには、立ち止まったり、一歩振り返ったり、そんなことをしながら、ゆっくり進んでいくほうがいいなんてこともあるわけで、みなさんも、あんまり過激に進もう進もうと思わないほうがいいことだってあるかもしれませんよ~。