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2009年06月27日

ネバー……

世の中、びっくりすることが起こるものだ。昨日、「そうだ、今日は歯医者の予約があったんだ」と思い出した私は、慌てて車で外出。しかし、家の目の前のWilshire Blvd.(ウイルシャー・ブールバード)は、どうしたわけだか大渋滞。ポリスマンまで出て交通整理をしているではないか。今日は何かイベントでもあるのかな、デモでも繰り出すのかな。そう思いながら、フリーウエイの入り口へ向かったが、普段は5分で乗れるはずのフリーウエイになかなか乗れず、結局、5分のはずが30分以上。そして、歯医者までは20分で行けるはずのところが、フリーウエイも大渋滞で結局1時間半。おかげで予約時間にはすっかり遅刻してしまったが、歯医者さんのご厚意により、なんとか入れていただいた。


座った途端、歯科衛生士の女性が「ニュース聞いた?」「えっ、何の?」「マイケルよ!」「マイケル,
Who?」「オー、ノー!マイケル・ジャクソン!」「マイケル・ジャクソンがどうしたの?」「死んだのよ」「えーーーーーっ?ウソ!」


その後、わかったのは、マイケル・ジャクソンが最初に運び込まれたUCLAメディカルセンターなる病院が、私の住むアパートのすぐ裏にあるということ。そこで、ハッとした。そうか、あの大渋滞は急報を聞きつけて病院へ殺到する報道陣やハリウッド関係者、ファンらによる大渋滞、大混乱だったんだ……。


いやいや、びっくり。そんなことがあった後、日本の某新聞社の方とやり取りをしていて、私の現地体験談は、結局、その新聞に掲載されてしまった。で、ひょっとして続報も必要なのかなと思いつつ、今日は地元のスタバのお兄ちゃんなんかにも、「マイケル・ジャクソン、今でも好きだった?」なんて取材をしてみたら、「うーん、彼が好きとか嫌いとかより、彼は優れたアーチストだった。彼の作品、彼のパフォーマンスが素晴らしかったことに違いはない。ネバーランドがどうとか、そういうことはさておき、天才アーチストが1人、この世からいなくなってしまったことが悲しいし、淋しい」。


ふーん、なるほど。ネバーランドか……。


そんな話を聞きながら、私が「ネバー」という言葉から連想したのは、ネバー・ギブアップという言葉。まだ疲労が残る全米オープン取材を思い出しつつ、あの大会でネバー・ギブアップの精神を最も発揮したのは誰だったかなあと振り返ると、結構、たくさんの名前が思い出される。終盤の終盤に首位に立ったフィル・ミケルソンやデビッド・デュバルはもちろんなのだが、あの文句タラタラだったタイガー・ウッズはどうかなと思ったとき、タイガーもまたネバー・ギブアップ精神を強く抱いていたことは確かだという結論に到達。なぜか?その理由は、彼の赤シャツだ。


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(最終ラウンドは日曜日も月曜日も赤シャツでした)
Photo / Jun Hiraoka 平岡純



首位と7打差になっても、最終ラウンドを迎えたタイガーは日曜日も月曜日もちゃんと勝利を目指す赤シャツを着てベスページにやってきた。あの赤シャツ姿を見たとき、まだ諦めちゃあいないなあと感じさせられた。雨の中、悲痛な表情も見せていたし、途中、木の真下からショットして、手やグリップが葉っぱの中にガサッと入ってしまうなんてシーンもあった。が、それでもタイガーはタイガーなりに必死だった。ラウンド後の不平不満は余計だったけれど、彼は決してギブアップしてはいなかった。

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Photo / Jun Hiraoka 平岡純



ネバー・ギブアップ。もちろん、優勝したルーカス・グローバーだって、この精神を強く抱いていた。去年は、もうゴルフを辞めようと思ったこともあったという。あのとき辞めていたら、今回の優勝はなかったわけで、彼もまた「世の中、びっくりすることが起こるもんだ」と思ったに違いない。


もっとも、私の「びっくり」は、たまたま遭遇した「びっくり」。グローバーの「びっくり」は努力と忍耐の末に彼が勝ち取った「びっくり」。ずいぶん違いはあるけれど、とにかく人間、ネバー・ギブアップだ!ネバーランドではなく、ネバー・ギブアップ!


2009年06月24日

神様が好きな人

長い長い全米オープンが終わった。降雨や雷雨によるサスペンデットも翌日持ち越しも、アメリカでは頻繁に起こることゆえ、慣れてはいるけれど、メジャーでここまで進行が遅れたのは私の経験の中では初めてのことだった。全米オープンがプレーオフにならずして月曜まで持ち越されたのは、実に1983年大会以来の珍事なのだそうだ。


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(優勝したルーカス・グローバー。トロフィーにキスする顔は、自然といい顔になるもんです)
Photo / Nozomu Nakajima 中島望



それにしても、毎日毎日、日暮れまでコースで取材し、深夜までメディアセンターで原稿書き。シャトルバスに乗るにも殺到する大量のメディア陣ですぐに満杯になり、次のバスにやっと乗って満員状態の中で30分以上も揺られてホテルに戻る。さらに部屋で原稿を書き、「ああ、あと2時間寝られるかどうか……」という状態になった。朝も連日、明け方に起きて早朝のバスに乗り、午前7時半の再開に備えることの連続。これを5日間も続けたわけだから、私の体力はほぼ限界。頭が朦朧としてしまった。


取材する側がそれほど大変だったのだから、賞金をかけて真剣にプレーする選手たちの大変さは計り知れなかった。コースはすっかり水びたし。もちろん整備されてからの再開だから、一見、コースは見事に復旧されたかに見える。しかし実際にプレーすると、フェアウエイを捉えてもボールに泥がつき、せっかくグッドショットを打ったつもりでも泥のせいでボールが妙な方向へ飛んでしまうことの連続。グリーンも柔らかくて足跡がつき、デコボコでラインもタッチもありゃしない……というぐらい、ひどい状態だった。


そういえば、土曜日までずれ込んだ予選ラウンドのプレーが進行していたとき、上位陣の名を示すリーダーボードがまったく動いていないことに気がついた。なぜ動かない?その答えは、そのときプレーしていた選手たちはタイガー・ウッズや今田竜二を含む「木曜午前スタート組」。彼らは最も雨が激しいときにほぼハーフを回り、あまりの降雨にスコアを伸ばすことができなかった。逆に、そのときリーダーボードの上段を占めていた選手たちは、木曜にはまったくプレーせず、晴天に恵まれた金曜に一気に1.5ラウンドぐらいをプレーすることができた。そこでスコアを伸ばせたからこそ、予選ラウンドで上位につけることができたわけで、彼らは天候に恵まれた幸運な得組。逆を行ったタイガーや今田は、いわば損組。その差ははっきり順位に表れていた。


とはいえ、文句を言ったところで、どうしようもない。今田は「それは言ってもしょーがない。それよりも、これだけ雨が降って荒れたコースを、ここまで整備した(USGAが)すごい」と、予選落ちした直後でも、ちゃんと褒めて去っていった。どんなに悔しかったことか……。


だが、今田とは対照的に、文句を連発したのがタイガー。「泥がついたボールに4回も遭遇した」とか、「グリーンがでこぼこだからカップをオーバーさせると返しが難しくなる。でも、スピードが遅いから強く打たざるを得ない(だから強く打つとオーバーしちゃって返しが難しくなって入らない)」などと、不平不満ばかり。最後には「いつもの全米オープンとは違う」と言い放ち、「今年の全米オープンは通常のツアーの大会に近い」なんてことも言ってしまった。


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Photo / Nozomu Nakajima 中島望



確かに、予選ラウンドの段階で首位のスコアが2ケタアンダーまで伸びた今年の大会は、「イーブンパーとの戦い」と言われるいつもの全米オープンとは異なるものだった。タフな設定であるはずなのに、雨への対策としてスコアが伸びる易しい設定を選択したUSGAの判断が「過剰にスコアが伸びる」状態へつながってしまった。すべての予定が天候のせいで狂ってしまったのだ。


だからこそ……と言ったら、優勝したルーカス・グローバーにも失礼かもしれないけれど、グローバーが優勝でき、無名の若手が上位にひしめき、矢野東が一時は4位に立ったのも、そんな「狂った予定」の恩恵が大きかった。


だが、そうではない部分ももちろんあった。優勝争いの最後の最後に、フィル・ミケルソンやデビッド・デュバルらが浮上し、一瞬ながら首位に並んだとき、ベスページで感じたものは彼らの勝利への執念と悲願。あるいは、彼らに勝ってほしいと願うベスページのギャラリーたちの念力だったように思う。


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Photo / Nozomu Nakajima 中島望



それならば、どうしてタイガー優勝を願う人々の念力は天に届かなかったのか。その理由は、きっと、タイガーが文句を言いすぎてしまったせいだろう。神様は黙々とがんばる人に味方するものだ。いくら王者であっても、いくらスーパースターであっても、いくら2連覇を狙うディフェンディングチャンピオンであっても、たとえ天候との巡り合わせが悪い損組に入ってしまったとしても、あれほど文句ばかりを並べてしまったら、神様はタイガーには味方したくなくなるだろう。そういう意味で、今回のタイガーは自滅したようなものだ。


そう、グローバーは、もちろん得組に入っていたことが勝因の1つではあるけれど、彼は黙々とがんばっていた。タイガーやミケルソン、デュバルといった人気選手の優勝を願うニューヨーカーたちは、時おり、グローバーに野次を飛ばしていた。グローバー自身、最終ラウンドの前日あたりは「こんなオレが、リーダーボードの最上段あたりに位置していていいのだろうか?この位置にふさわしい人間なのだろうか?」とまで思ったそうだ。しかし、思い悩んだ末に思い直し、「自分の実力を証明するチャンスなんだ。そうだ、実力を証明しよう!」と心に決めた。そんなグローバーをキャディのクープは必死に支えた。そんなグローバーとクープの2人に、神様は惚れた。だから勝利を授けたのだ。


最低最悪の展開だったとか、無名選手の優勝で興ざめだとか、そんな声もずいぶん聞かれた。タイガーも振るわず、ミケルソンやデュバルも2位に終わり、つまらない結果になったなんて言う人もいた。けれど私は、取材は大変だったけれど面白い大会だったと思っている。しかし……帰路の飛行機、熟睡ぶりはすごかった。熟睡というより、爆睡……。やっと自宅に戻れました。

2009年06月17日

長い!

全米オープンの舞台、ベスページにやってきた。コースの印象。02年の開催時と比べると、ラフが若干短くなっているものの、とにかく、長い!「長い」というのは、7426ヤードというコース全長もさることながら、1ホール1ホールで格段に長いホールが多々あるという意味だ。たとえば、500ヤードを超えるパー4が3つもある。7番パー4は525ヤードもあり、全米オープン史上最長のパー4となっている。


もっとも、全米オープンのコースが年々長くなるのは、別に今に始まったことではないし、このベスページは2002年大会のときも長かったわけだから、いまさら「長い」に驚くことは、ないと言えばない。とはいえ、そんな近年の経緯や過去の話はさておき、とりあえず練習ラウンドをした選手たちに印象を尋ねてみると、やっぱり彼らの感想は「長い!」がまず口を突く。


タイガー・ウッズでさえ、「長い!」と言った。タイガーいわく、「僕が子供のころは420ヤードなんていえば、長いパー4だなあって感じだった。すごいよね。それぐらいゴルフというものが変化したってことだ」。そしてタイガーは、ベスページの18ホールの中でどのホールがキーホールになるかと問われると、「特別にキーとなるホールはない。全米オープンコースともなれば、どのホールも難しいからね」。


しかし、タイガーが言う「難しい」は他選手とはちょっと違う。「バーディを取るのは難しいってことだよ」。つまり、ちゃんとフェアウエイを捉え、ボールをインプレーにキープしてグリーンを捉え、ちゃんとパットできれば、パーを取ることはさほど難しくはないよという意味なのだ。だが、大半の選手は「難しい」と言うとき、パーを拾うことすら難しいということを意味しているわけで、このあたりが普通の選手と王者との、そもそもの考え方の違いなのだろう。


ところで、片山晋呉が欠場となった今、日本人選手の期待は今田竜二に集中している。その今田は、夢のマスターズ出場後、ちょっぴり気が抜けたような脱力感に襲われていたのだが、今日の今田に「気持ちの上では、乗ってきた?さあ、メジャーだぞ、全米オープンだぞって気になってきた?」と聞いてみると、「ええ、そういう気持ちはありますよ。あるんだけど……でも気負ってもしょうがないし……コースコンディションもいつも(通常のPGAツアーの試合)とは違うわけだから、辛抱強くパーを重ねていきたい」。なんとなく、お手本チックな返答。やっぱり興奮状態だった今年のマスターズのときと比べると、今週の今田は、きわめてフツー。でも、まあ、よく言えば、平常心が保てているとも言えるわけだから、逆にこのぐらいのほうが期待できるかもしれない。


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(食べていたホットドッグを足元にポイッ!……って捨てたわけじゃない。ランチの時間も惜しんで練習ラウンド中、ショットとショットの間にホットドッグをパクパク。だから、これ、ショットの後に再び拾い上げて、全部食べました!メジャーは練習日から多忙です!)
Photo / Nozomu Nakajima 中島望



その今田のベスページの印象は、やっぱり「長い!」。ただし、タイガー同様、今田も、お手上げだとはまったく感じていないところが心強い。特に頼もしく感じられたのは、長い長い距離との戦いにばかり気を取られてはおらず、一番の難敵はどこに潜んでいるかを、すでに探り出していたところだ。「グリーンは柔らかい。でも、一番難しいのはアプローチ。ソフトに出すとドスッと止まっちゃったり、妙に転がったり。ランの計算が読めないんですよね」。


そして今田もまたタイガー同様、イーブンパーとの戦いと言われる全米オープンではあるけれど、どうやってパーを拾えるかではなく、どうしたらバーディが狙えるかをしっかり考えている。「フェアウエイを捉えてさえいれば、グリーンは柔らかいから、ナイスショットさえ打てればバーディも狙える。ナイスショットさえ打てれば、ですよ」


こんなふうにタイガーと今田のコメントだけを分析してしまうと、あたかも今年のベスページでは「バーディ続出?」なんて思えてくるかもしれない。だが、タイガーも今田も目指すべき理想形の話をしているわけだから、それが彼らにも誰にでも絶対にできるという話ではない。だから、やっぱり蓋をあけてみれば、全米オープンはきっとイーブンパーとの戦いになるのだろう。天候などの条件次第では予選ラウンドで結構、レッドナンバーが並ぶ可能性は高いような気もするが、4日間72ホールが終わるころには、リーダーボード全体が赤から黒へ、どんどん変わっていくのだろうなあ。


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(フェスキュー群の深さは圧巻!キャディのケーシー、コーチのリチャードと歩いている今田の足が……見えないほど深い!)
Photo / Nozomu Nakajima 中島望



それにしても、ラフの外側やバンカーの周囲、ティグラウンドのすぐ先などに生息するフェスキュー群の深いこと深いこと。今田の足が見えないぐらい深い!なんだかんだ言っても、このフェスキューの中にだけは打ちこみたくないよね、タイガー?ね、竜二くん?

2009年06月15日

ダジャレですよねえ

いよいよ全米オープンウィークがやってくる。今年の舞台は02年以来のベスページ・ブラック。あそこは本当に難コースだから、イーブンパーとの戦いは、ひょっとしたら最終的にはかなりのオーバーパーになるかもしれない。


ところで、すでに発表された予選ラウンドの組み合わせを見て大笑いしてしまった。まるでダジャレの連発なのだ。


たとえば、ビジェイ・シンとジーブ・ミルカ・シンが同組だったり、エデュアルド・ロメロとアンドレス・ロメロが同組だったり、そうかと思えば、ソーレン・ケルドセン、ソーレン・ハンセン、ピーター・ハンソンが同組だったり。これじゃあ、ギャラリーたちの間では、「あれは誰だ?」「あれはソーレンだよ」「えっ?ソーレンwho?」「だからハンセンだよ」「えっ、ハンセン?ハンソン?どっちだよ?」という具合に混乱するのは目に見えている。


そうかと思えば、メジャーに何度も勝ちかけて結局一度もメジャータイトルを獲得していない「負け組」まで作りだしている。今年のマスターズでプレーオフに敗れたばかりのケニー・ペリー、それに去年の全米オープンでタイガー・ウッズとのプレーオフに敗れたロッコ・メディエイト、そして幾度も涙を飲んだトム・レーマン。なんか、これは……嫌らしいペアリングというか、涙を誘われるペアリングというか……。


もっともUSGAは、そんな混乱や嫌らしさによってでも何とか人々の興味を喚起し、少しでも話題性と注目を得たいがために、こんなペアリングを考えだしたわけで、そのあたりはUSGAの苦労のほどが見て取れる。


どうして苦労する必要があるのかといえば、ご承知の通り、現在は未曾有の不況下にある。リーマンショックによって、一早くドン底に落ちていったマンハッタンの人々は暗い暗いムードに包まれているわけで、そんなマンハッタンからわずか30マイルに位置するベスページでは、少しでも明るいムードを醸し出し、ニューヨーカーを元気づけながらゴルフ人気を喚起しようという苦労の表れなのだ。


まあ、でも、さすがにトップのペアリングには気を遣ったようで、タイガーと同組で回るのは、昨年の全英オープンと全米プロを制したパドレイグ・ハリントン、そして今年のマスターズ覇者アンヘル・カブレラだ。


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(タイガーと同組は、カブレラとハリントン。なかなか濃い~ペアリング)
Photo / Nozomu Nakajima 中島望



ハリントンといえば、今季は今のところ成績が振るわず、スランプ説がささやかれている。しかし、スランプ説というのは、きわめて当てにならないようで、タイガーだって、つい先日までスランプだと言われていたのだ。だが、メモリアルで大逆転優勝した途端、スランプ説は消えたわけで、結局、ゴルフの調子というものは、アップダウンが伴うものゆえ、ちょっとぐらい成績が悪いからと言ってスランプだと決め込むのは安易すぎるというお話である。


5月のプレーヤーズ選手権ではドライバーショットが曲がりまくり、苦しい表情を見せていたタイガー。しかし6月のメモリアルでは最終日のフェアウエイキープ率100%で堂々優勝。それを思えば、ハリントンだってベスページで突然火を噴くかもしれない。


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(5月はこんな苦しげな表情だった)
Photo / Nozomu Nakajima 中島望

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(6月はこんな明るい笑顔になった)
Photo / Jun Hiraoka 平岡純


02年に比べると今年のベスページは全長がまたまた伸ばされている。しかし、02年に「ドライバーで打ってもフェアウエイに届かず、フェスキュー群に球が沈んでしまう。不公平すぎる!」と大批判が出た10番などは、フェアウエイの始まりが40ヤードぐらいティに近づけられ、ある程度の選手は第1打でフェアウエイに届くようセッティングが改善されているようだ。それでも500ヤードを超えるパー4続出なのだから、本当にショートヒッターには辛い戦いになるだろう。


さてさて、今年の全米オープンチャンプは誰になるのか。タイガーの笑顔はさらに輝くのか。あー、楽しみだなあ。


2009年06月10日

「念」ですか?

メモリアルトーナメント最終日はタイガー・ウッズの大逆転優勝で狂喜に包まれた。首位から4打差の7位タイから発進し、あれよあれよという間にリーダーボードを駆け上がり、2位に1打差で優勝したタイガー。いやいや、蔓延していたスランプ説を自らぶっ飛ばすような猛チャージぶりに、ミュアフィールドビレッジに詰め寄せたファンたちは酔いしれていた。


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(今季2勝目、ツアー通算67勝目、同大会4勝目、最終日の逆転優勝20回目……まだあるかな?)
Photo / Jun Hiraoka 平岡純



考えてみれば、今季2月にツアー復帰し、わずか3戦目で優勝したのは“キング”アーノルド・パーマーの大会。そして今回、7戦目で優勝したのは“帝王”ジャック・ニクラスの大会。ゴルフ界の偉人たちの大会で勝ちたいというタイガーの執念の表れのような気がしてならなかった。


タイガーチャージは2番ホールから早々に始まったのだが、大逆転の一番の決め手になったのは、やっぱり11番パー5でのチップインイーグル。2オン狙いの第2打がグリーン右奥にこぼれ、ボールは結構深いラフの中に沈んだ。ウエッジをドンと鋭角に入れたら、おそらくボールは芝中から弾き出されるだろうけど、勢いがつきすぎてしまうから、グリーン上でどこまで転がるか計算が立ちにくい状況。ソフトに出すとしたら、これだけ沈んでいてもイチかバチかでロブに挑むしかないかな……そんなことを考えながら眺めていたら、やっぱりタイガーはロブショットに挑んだ。


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(グリーン右奥のラフからの第3打。この状況でビッグスイングするには、すごい勇気が必要なんだけど……)
Photo / Jun Hiraoka 平岡純



……と思ったのだが、それは厳密に言えばロブではなく、ロブ風スイングなんだけどボールの足(ラン)も使う、つまりロブ&チップの折衷型ショットだった。スイングはきわめて大きかったし、クラブのセットの仕方や振り抜き方は「できるだけフェースを開いてロフトを付け、できるだけ早くボールの下をくぐらせながら振り抜いた」とタイガー本人が言っていたから、やっぱり基本の打ち方はロブだったのだ。


しかし、ボールを捉える瞬間、タイガーは右手を離し、左手だけでクラブを振り抜いた。「とにかくロフトをつけておくことだけを考えていた」。右手でフェースが返らないように、あるいは芝に負けてフェースが返らないように、なんてことを考えていたら右手が自然と離れたのだそうだ。「意図的に離したのか?」と問われると、「いや、勝手にそうなっただけ」。


ロブ風に大きなスイングをしたのは「とにかくボールをキャリーさせてグリーンに届かせるため」。そこから先は「カップに向かって、とにかく転がってくれれば、あとはパットで(拾ってバーディを取る)」というつもりだった。だから「カップインしてくれたのは、ものすごいボーナスだったよ」


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(キャディのスティーブにとっては、このチップインが文字通りの“ボーナス”につながる!?)
Photo / Jun Hiraoka 平岡純



いくら王者でも、あそこでチップインイーグルを「狙った」わけでは決してない。タイガーなら「あそこから入れる気で打っていた」なんて思う人もいるかもしれないが、百戦錬磨の選手になればなるほど、それほどのバクチは打たない。けれど、1フィートでも1インチでもカップに近づけようという気持ちで挑んだのは間違いなく、タイガー本人が言った通り、カップに入ってくれたのはビッグなオマケだったというわけだ。


それにしても、あの第3打、「近づけたい」「逆転したい」「勝ちたい」というタイガーの執念の集大成のようなショットだったと、つくづく思う。その執念が、すぐ目の前のグリーンに向かってあれほど大きくスイングする勇気をもたらし、その執念が彼の右手を自然とクラブから離した。そして、その執念が結果的にボールをカップインさせた。


「念」というのは、こんなふうに体にもクラブにもボールにも伝わるものなんだなあと、あらためて知らされた。そう、タイガーの大逆転優勝は、もちろん乱れていたドライバーがすっかり安定して最終日はフェアウエイキープ率100%になったり、手術後にあまりできなかった練習がやっと思い通りできるようになった環境のおかげだったりもするのだけれど、私の感想はこれに尽きる。タイガーの大逆転優勝は、彼の「念」による優勝だった。

2009年06月07日

えっ、2試合だけ?

今、メモリアルトーナメント最終日の朝だ。2日目に5位タイまで浮上した今田竜二が昨日の3日目は調子を落とし、順位も14位タイまで後退してしまった。しかし、ここは竜二流の粘りを見せてほしい。どんなにフェアウエイを外しても、執拗にパーを拾ってくる今田のゴルフは、見ていて本当に面白い。


とはいえ、最近の今田のゴルフは少しばかり様子が変わっている。今年のマスターズ出場前、夢のオーガスタでいいプレーをしたい一心で必死の練習を重ねた今田は、とにかく曲がっていたドライバーショットをなんとか曲がらないように調整した。そして、オーガスタでは安定したドライバーショットを披露することができた。その効果はマスターズ後の現在も続いており、彼のドライバーショットは1ラウンドで14回中10~12回ぐらい、フェアウエイを捉えるほど良い。こんなにフェアウエイキープする今田を見るのは、ひょっとしてこの15~16年で、初めてかも?


だから、現在の今田のゴルフのカギは、以前のような果敢なリカバリーというより、むしろパットになりつつある。そのパットが、メモリアルの予選2日間はよく入ってくれていたのだが、3日目は短いパットを外すことが多く、それがスコア悪化と順位後退につながってしまったのだ。


ところで、そんな今田が、「これ、知ってます?見たことあります?」と、右腕を見せてくれた。「えっ、何々?」 見ると、彼の右袖に見慣れないロゴマークが付いているではないか。


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(言われるまで気づかなかったんだけど……右袖に確かにニューロゴがある!)
Photo / Sonoko Funakoshi



小さな文字で「World Golf Tour」と書いてある。新設のミニツアーか、あるいはプロたち数人が組織して作った新しいツアーか、そういう団体組織のロゴなのかなと思ったのだが、今田いわく、「ビデオゲームみたいなやつらしいんですよ」。よくよく聞いてみれば、それはウエブ上で行なうゴルフのビデオゲームを展開している会社。プレーに参加して優勝や上位に入ると、ちゃんと賞金も出る仕掛けのようだ。


で、それって新しいスポンサーで、新規に契約したのかと尋ねると、今田いわく、「いや、なんか、2試合だけのスポンサーらしいんですよ」。契約関連のことは選手よりマネージャーが主体で話が進むため、今田の答えも「らしい」という言葉がくっついてしまうのだが、このメモリアルと次に出場予定の全米オープンの2試合だけ、右袖にこのロゴマークがついたウエアを着ることになっているという。


2試合だけのスポンサー? そんな契約形態、あまり聞いたことがない。しかし、よくよく考えると、あるメジャー1試合だけとか、何かの特殊な大会時だけとか、そういう契約の話は過去に聞いたことがあることはある。が、いずれにしても2試合限定スポンサーというものが珍しいケースであることは確かだ。


けれど……さらによくよく考えると、テレビカメラのアングルからして右袖というのは左袖より露出が少ない。だから、袖のロゴ契約は、まず左袖が売れ、さらに話が来れば、次は右袖の契約となる。となると、左袖より安い右袖で、しかも2試合限定の契約を結んだこのワールドゴルフツアーという会社は、今田に一体いくらぐらいの契約金を払ったのだろう?もちろん選手本人は金額を明かすことはないし、今田は実際、いくらなのかを知らない様子。キャディのケイシー・ケロッグに尋ねたら、彼はボスの右袖に突然登場したロゴマークの意味さえ知らず、「あれって、何なの?」。


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Photo / Sonoko Funakoshi



この右袖ロゴ、結構、謎めいている。おまけに、たったの2試合でしか見ることができない。残るは、全米オープンだけ。なかなかのレアものってこと?ある意味、幻のロゴマーク? とりあえず、ここで眺めてください。

2009年06月05日

ご機嫌、斜め!

ご機嫌、斜めだった。いや、「斜め」と言うより「悪かった」。誰が?あのダニー・リーだ。


石川遼が米ツアー3試合に挑戦し、マスターズにも出場したころは、「ティーンエイジャートリオ」ということで、石川、ローリー・マキロイとともに、このリーの名も少しは日本に届いていたと思うが、その後のリーの話は、おそらくほとんど伝わっていないだろう。


マスターズで予選落ちしたリーは、その直後にプロ転向し、米ツアーのチューリッヒクラシックからはプロとして米ツアーに参戦している。とはいえ、ジョニー・ウォーカー・クラシックですでにアマチュアのまま優勝している彼は、欧州ツアーメンバーの資格を得ているのだが、米ツアーにおいては、まだノンメンバー。それゆえ、今は大半の試合がスポンサー推薦による出場。今週のメモリアルには08年全米アマ優勝による特別招待によって出場している。


で、気になるのは、リーが今年の残る3つのメジャーに出られるのかどうかだ。先のマスターズのときは、08年全米アマ優勝資格で出たのだが、その後、プロ転向したことで全米オープンや全英オープンへの全米アマ優勝による出場資格は失ってしまった。だが、それはもちろん覚悟の上でプロ転向したのだ。現在は「絶対に自力で全米オープン、全英オープンに出てやる!」ということで、つい10日ほど前にも米国内で行われた全英オープン予選に挑戦。しかし、出場資格は得られなかった。それでも、まだチャンスはある。全米オープンの地区予選を通ればベスページへ行ける。今後の米ツアーで好成績を挙げ、ジョンディア、AT&Tナショナルあたりで頑張れば、ターンベリーへの道は開ける!


しかし、プロ転向したばかりの18歳が気になるのは、メジャー出場よりも目の前の試合のようだ。メモリアル初日の今日、2番でいきなりダブルボギー。6番、9番でもボギーを叩き、とうとうクラブを放り投げちゃった!


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Photo / Jun Hiraoka 平岡純



ホールアウト後、「ミュアフィールドビレッジは難しいコースだよね」と声をかけると、「7オーバーだよ、7オーバー!ひどすぎる!ケッ!」という具合で、ご機嫌、超斜め。それでも、ちゃんとギャラリーの列に向き合い、丁寧にサインをしていたところは、プロらしくて立派だった。「アマとプロの一番の違いは、コースにくるときの姿勢。アマチュアだったときは、ただコースに来て楽しくプレーすればよかったけど、プロになると、ちゃんと練習して、ちゃんとプレーして、ちゃんと……ちゃんと……やらなければならないことがたくさんある」。だから「ちゃんとサインした」んだよね、ダニー?うん、立派、立派。


リーのマネージャーのケビン・リンチ氏に「ダニーは、ちょっぴり短気なところがあるみたいですね?」と尋ねてみたら、いきなり苦笑。「まあ、そうなんだけど……18歳で若いからね。いいときはいいんだよ。ジョークもたくさん言うしね。でも悪いときは……。ま、少しずつ体も心も大人になっていくと思うんだ。まだテレビでアニメを見るのが楽しい年ごろだから」


日本のアニメも大好きだそうだ。そうそう、日本のコカコーラ東海クラシックにも出場予定だそうだ。みなさんがリーのプレーを間近に眺められるチャンスは、秋風が吹くころです!


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(やっぱり、プロは辛い……って顔?)
Photo / Jun Hiraoka 平岡純

2009年06月03日

不景気なのに……だからこそ?

世の中、景気の悪い話がいっぱいだ。とうとう、あの自動車会社も倒産だねえなんて言いながら、メモリアルの取材のためオハイオにやってきて、レンタカーを借りた。コロンバス空港からホテルへ向かっていたら、運転していたカメラマンが「なんか、ブレーキがすごい音ですよ」。えっ、ブレーキ?そう言えば、さっきからギーギー音がときどき聞こえていたけど、それってブレーキなの?こわっ!1週間も乗り続ける車なのに、ブレーキが壊れそうなんて恐ろしすぎる……ということで、結局、空港まで引き返し、車をチェンジ。そんなことをやっていたら、ものすごいタイムロスになり、ヘトヘトになってしまった。


ちゃんとした、それなりに名の通ったレンタカー会社が、ブレーキが壊れかけた車を出すなんて、ひどすぎる。これも不景気の影響なのだろうか。


そう言えば、ロサンゼルス近郊のパームスプリングスやティメキュラ、サンディエゴあたりのゴルフ場が7月からセスナ機のチャーターを始めるというニュースを耳にした。車で行くにはちょっと遠いなあというゴルファーに向けて、だったらセスナでひとっ飛びはいかがですかという新サービスなんだそうだ。


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(こんなチャーター機でゴルフ場に飛んでいきたい!)



しかし、不況でリストラやら給与カットやらが続出しているというご時世に「チャーター機でゴルフなんて優雅なことを言ってる場合じゃないでしょう?」と思うのだが、実はこれ、そうでもないらしい。不景気だからこそのサービスなんだとか。


えっ?どういうこと?聞けば、このセスナ機は8人まで乗れて、ゴルフバッグも8つ積載可能。しかし料金は、たとえばロサンゼルスのそばのホーソーン空港からパームスプリングスあたりまでで260ドル前後。ラスベガスまで飛んでも300ドルちょい。これを8人で割れば、1人あたりの交通費はほんの数千円ぐらいで済む。つまり、ガソリン代より安いというわけで、「早い」「安い」、そして「うまい」ではなく「気持ちイイ」ってところ?


そう、チャーター機でゴルフというところが、なんともエグゼクティブっぽくて気持ちイイではないか。この金額なら庶民でも手が出せるから、なるほど、暗くなりがちな気分を明るくするにはもってこいの「不景気対策」というわけ。私も乗ってみようかな。


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(自家用車で乗り付け、隣のチャーター機へ。まさにエグゼクティブ気分です!)


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