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2009年08月29日

早くも対策?

米PGAツアーは今週からフェデックスカップのプレーオフが始まっている。第1戦のザ・バークレーズは、出られるかどうかが怪しかったほど今季低迷のセルジオ・ガルシアが前週4位の奮闘でフィールドイン。そして初日は首位タイと好発進を切ったのだが、2日目は、えっ、76???


調子はやっぱり悪いのだろうなあ。調子が悪いときの選手は、道具を変えることが結構多い。ドライバーを変え、アイアンを変え、ウエッジを変え……パットが不調となると、パターを何十本も用意して練習したりする。道具のせいで悪い、道具を変えれば好調に戻る。そう思いたくもなるだろうし、実際、そういうこともあるから面白い。


さて、ガルシアはどうかというと、先の全米プロで突然、新しいボールを使ったそうだ。なんでもテーラーメイドが開発した「ペンタTP」という5ピースのボールで、発表前だったというのに、全米プロ開幕前夜に使いたいと言い出し、実際に使ったのだそうだ。


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Photo / 中島望 Nozomu Nakajima


このボール、来年1月から米ツアーで実施されるアイアンの溝規制を見越して開発されたもので、ガルシアも「今までのボールよりソフトな感触」。


そういえば、溝規制に合わせてすでに新しいウエッジも登場し始めているようで、アメリカのゴルフ雑誌には、ちょこちょことそういったものが紹介され始めている。


今年のプレジデンツカップで国際チームのキャプテンを務めるグレッグ・ノーマンは、先日、「今季の残り試合は、新しいアイアンとボールでプレーして、来季に備えたほうがいいぞ」と若い選手たちに向かってアドバイスを発していた。それほど、新しい道具、新しい規制下となる来季のゴルフは大きく変わるのだ、と。


どうなってしまうのだろう。ラフからのスピンがかかりにくくなったら、スコアリングはめちゃめちゃになるのだろうか。やわらかいボールに変えて飛距離が落ちたら、今年までのゴルフとはどのぐらい様変わりすることになるのだろうか。こればっかりは蓋をあけてみるまで、わからない。


だが、飛距離が落ち、技の競い合いという本質が戻ってくるのだとすれば、それはそれでうれしい限りだ。少なくとも、道具でスピンをかけていた選手たちが、道具ではなく技でスピンをかけられるのかどうか。それは大きな見どころとなるはずだから。


ともあれ、ガルシアの新ボールは彼の来季への対策なのか。それとも、不調を好調に一転させたいがゆえの対策なのか。今季のはじめごろ、確かガルシアは世界ランク2位に浮上し、タイガーをおびやかすかもなんて言われていた。そのガルシアが、世界ランクこそ7位にとどまっているものの、フェデックスカップランクでは先週が115位、今週が89位。ここまで低迷しているのは驚きだ。


やっぱり、ノーマンの娘との失恋が尾を引いているのかな。かつて、デビッド・デュバルがスランプに陥った引き金も失恋だったなあ。ああ、男心って、繊細……?

2009年08月26日

内輪の話で……

メジャー終了後は、いつも私の部屋の中が散らかりっぱなしになる。大会のレポートや出来事の原稿を書くとき、どうしても大会中のさまざまな書類をひっくり返しながらの作業になるため、あらかじめ、練習日、初日、2日目、3日目、最終日という具合に、書類をそれぞれの山に分け、机の周りに広げてしまうのだ。で、原稿を書きながら、「あれっ?あそこでタイガーはどうなったんだっけ?」などと疑問を抱くと、その山を崩しながら必要な書類を見つけだしたりするもんだから、最初は5つか6つぐらいに分けたきれいな山が、だんだんぐちゃぐちゃの山になり、最後は全部広がってしまう。


全米プロが終了した今でも、まだヘーゼルティンの山が広がった状態。ああ、私の全米プロがなかなか終わらないよう……とまあ、そんな具合の生活なのだ。


状況はカメラマンにとっても同じだ。原稿に合わせ、「〇〇の写真、ある?送って!」と私が頼み、カメラマンは慌てて写真探し、そして電送。こんな作業がメジャー終了後は毎回、2週間ぐらい続く。


さて、そんな中、カメラマンの平岡純が、こんな写真を送ってきた。


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(決定的瞬間!?)
Photo / 平岡純 Jun Hiraoka



最終日、石川遼とともに回ったフィル・ミケルソンが16番でティショットを左ラフへ外し、そこからの第2打に、とっておきの武器を握ったのだが、あえなく目の前のクリークへ。そのときの決定的瞬間を捉えたのが、この写真だ。


武器というのは、ミケルソンが全米オープンからバッグに入れている特注のハイブリッド。名づけて「PMハイブリッド」。って、別に「名づけて」というほどの命名ではない。名前の頭文字をくっつけただけの何てことはない命名。ロフトは18度。なんでも、ソールの後方半分を削り落し、ラフからの振り抜きを良くしたそうで、ミケルソンは開幕前から「これが武器になる」と言っていたのだ。


最終日、さてどこで武器が効果を発揮するんだろうと眺めていたら、ちょうど目の前のこの場面で手にし、そしてあえなくポチャリとやってしまって、びっくり。


だが、この写真を見てからびっくりしたのは、たまたま写り込んでいた日本人記者たちの表情だ。それぞれが、それぞれの想いを抱きながら見ていたことがよくわかる。本名を出すと問題もあるかもしれないので、こちらも頭文字だけで表現すると……たぶん、こんな感じ?


A新聞のF記者さん 
「いやあ、僕はゴルフチャンネルフリークで、全米プロ取材は自分がゴルフチャンネルの画面に入り込んじゃったような気がしてたんですけど、ミケルソンのこんなミスの場面まで間近に見ちゃって、いやあ、もう、ゴルフ取材、やめられないっす」


DスポーツのK記者さん
「えっ?ミケルソンでも、こんなミスするんですか?ねえ、舩越さん。いやあ、びっくりやなあ。えっ?何?舩越さん、そんなん、笑いすぎですよ。ホンマにもう」


SスポーツのS記者さん
「なにやってんねん、ミケルソン。下手やなあ」


M新聞のW記者さん
「えっ?なんでそんなところで、そんな凡ミスしてるの?ちょっとオレにそのクラブ貸してよ。オレが手本見せてあげるから」


ってなところ。まあ、W記者さんのゴルフの腕前が凄いことは認めます。が、私だって負けないぞ……?って、どうでもいい内輪の話ですみません。日ごろからゴルフを取材する記者たちでも、やっぱりメジャーの場でスター選手の「うそ!」って思うようなミスを目の前で見たりすると、結構、びっくりするもので、その表情があまりにもよくわかる写真が出てきたものだから、ついつい内輪話を書いてしまった。


ところで、この場面、私もいたはずなのに、なぜ写真の中に居ないのだろう。カメラマンに尋ねると、「園子さんは内輪の人間なのでカットしました」とのことで、ガクッ。向かって一番右端に私は確かに居たはずなのに……まあ、いいか。写っていたら、たぶん一番、間抜け顔していたかもしれないので(笑)。

2009年08月22日

海を渡るもの

全米プロでの出来事をあれこれ思い出してみると、そりゃあ一番印象的だったのはY.E.ヤンの優勝とタイガー・ウッズの敗北なんだけれど、もう1つ、どうしても忘れられない出来事がある。いや、忘れてはいけない出来事だと思う。


あれは大会初日だった。在米のオーストラリア人記者が近寄ってきて、こう言った。「おい、ソノコ、日本では、とんでもない事件があったんだって?」えっ、とんでもない事件?聞けば、その記者はサン・クロレラクラシックで石川遼の優勝を望んだファンがブレンダン・ジョーンズがパットを外したときに拍手した事件のことを言っていたのだ。なぜ、知ってるの?そう思って聞き返してみると、どうやらオーストラリア人選手のジョーンズとアダム・スコットを通じて、その拍手事件のことを知ったらしい。


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Photo / 平岡純 Jun Hiraoka


さらに、オーストラリア人記者は続けた。「それでさあ、この会場で昨日、日本ツアーが正式にジョーンズに謝罪したんだって。知ってたかい?それほど大変な事件だったってことだろう?日本のメディアは、そのことを日本へは報じないのかい?」


うーん。日本人メディアとしては、コトの真相とジョーンズの気持ちを確かめて報じるべきだろう。そう思って、私と私の考えに同意してくれたM新聞のW記者はジョーンズに突撃取材した。ジョーンズいわく、「確かに丁寧な謝罪を受けたよ。それもあって、もうあの事件のことは忘れることにしたよ。それに、あの事件のあと、僕のウエブサイトに100通以上の激励メールももらえたし、だいたい日本人はマナーが良くて、今までだってあんなことに遭遇したことはなかったし。それに、あのとき何が悲しかったって、パットを外して拍手されたことより、僕自身がパットをミスったことのほうが悲しかったし、悔しかったんだ。だから、もういいんだよ。気にしてないよ、ホントに」。


ジョーンズの対応は「大人」だった。爽やかな笑顔だった。そして翌日、ジョーンズはスコアを伸ばし、もう少しで3日目はタイガーと同組で回ることになるぐらいの好プレーを見せた。ジョーンズの胸の中は、すっかり晴れていたのかな。そうだったら、いいのだけれど……。


しかし、オーストラリア人記者いわく、「ソノコは日本人だから、ブレンダンだってキミに向かって本当の本当の本音は言えないだろう。日本人はマナーがいいからって言ったのも、やっぱり無理して言ったんじゃないのかな」。うーん、そうなんだろうか……。本当はまだ気にしているのだろうか……。


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Photo / 平岡純 Jun Hiraoka



ジョーンズへのJGTOによる謝罪というのは、ルール委員として来場していたJGTO専務理事の山中氏によるものだった。「正式に謝罪というより、遺憾の意を表明したってところです」。


私は日ごろから原稿を書いているDスポーツ紙、そしてW記者はM新聞に、ジョーンズへの謝罪という出来事を記事化し、掲載された。オーストラリア人記者は、この謝罪事件が日本へ報じられたのかどうかが気になっていたらしく、「あれは、どうした?」と再度尋ねてきた。「私とW記者の2人が報じましたよ」と答えると、オーストラリア人記者は「日本の2紙が報じた」と母国へ報じたようだ。


で、私が何を言いたいか――あの拍手事件は心ない一部の人々による行為だった。石川を応援する気持ちはわかるけれど、戦っている相手のミスに拍手するなどもってのほか。そういう恥ずべき出来事は、その場限りの出来事では済まず、そういう恥ずべき出来事こそが海を渡って世界へ伝わり、事後の経緯まで含めて報じられるのだ。


一部の人間による出来事が、海を渡って伝わったときには「日本の出来事」になる。そして「日本のメディアは外国人選手の気持ちなど無視するのか?」という具合に海外メディアから見られてしまう。だから、私とW記者は絶対にこの事件を記事化して、ジョーンズに対する敬意と謝意を表したかった。オーストラリア人記者は「日本の2紙が報じた」と書いたことで、ずいぶんほっとした様子だった。


オーストラリア人記者ばかりではない。伝え聞いたアメリカ人記者たちも、あきれ返っていた。せっかく石川遼が海外で奮闘しても、その石川ファンがマナーが悪すぎるなんてことが世界に発信されてしまったら、ファンが石川の評判を落とし、日本の評判を落とすようなものだ。せっかく日本でゴルフが盛り上がりつつあるときに、マナーの悪さで水をさすなんてことがないよう、みんなで気をつけようではないか。

2009年08月19日

肉声はすごい!

全米プロは優勝へのポールポジションからタイガー・ウッズが破れるという驚きの結末。勝利を手に入れたのは韓国のY.E.ヤンだった。


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Photo / 中島望 Nozomu Nakajima


ヤンは韓国で生まれ育った後、日本ツアーにも3年間参戦。そして米ツアーには08年から本格参戦。今年はアメリカ2年目だ。米ツアーにはアンソニー・キムやケビン・ナといった韓国系アメリカ人がいるが、彼らはアメリカで生まれたり育ったりしているから、子供のころから英語をしゃべっている。しかし、ヤンはそうではないから、英語は依然として外国語。つまり、優勝会見でも自分の英語で答えることができず、終始、通訳が入ってのやり取りとなった。


この形式の会見は、なかなか時間がかかる。英語の質問を通訳が韓国語に訳してヤンに伝え、ヤンが韓国語で答え、それを通訳が英語にしながら返答するというプロセスになる。当然ながら、ヤンと通訳が韓国語で言葉を交わしている間、会見場に座っているほぼ全記者がぼーっと眺めているしかない。これは、本当に歯がゆいものなのだ。


とうとう1人のアメリカ人記者が手を挙げ、こんなことを言った。「Y.E.、キミは英語が本当に一言も話せないんですか?もし少しでも言葉になるのであれば、18番グリーンでウイニングパットを沈めた瞬間の気持ちなりを何か英語にしてはくれないか?」


ヤンはしばし戸惑っていた。質問の意味を取り違えたのか、じっと考えたあと、こんな英語を口にした。フレーズにはなっていなかった。思いつく英語、単語をそのまま並べたものだった。
「Tiger chipping, miss the chipping and thinking just please.」
会見場は笑いに包まれた。


18番。ヤンは第2打をピン3メートルに付けていた。対するタイガーは第2打をグリーン左のラフに入れた。第3打のチップショットがもしもチップインしてバーディになったら、そしてもしも自分が3メートルから3パットでもしたら、いやまさかの4パットでもしたら……プレーオフの可能性、もっと言えば敗北の可能性もまだあった。だからヤンは、タイガーが第3打のチップに臨むとき、「お願いだからチップインだけはしないでほしい……」と、心の中で祈ってしまったのだ。


ヤンが口にした英語は、文法的に見れば「?」というものだが、アメリカ人記者たちは聞いた瞬間に大笑いした。誰にも、ヤンの意図したことがよく理解できた。タイガーのミラクルチップインが出ないよう、ひやひやしながら見守っていたヤンの心情が手に取るようにわかった。やっぱり選手の肉声というものは、たとえどんな英語であろうとも、通訳の英語を上回る。選手自身の言葉には、それほど価値がある。


ヘーゼルティンでは石川遼も自分の言葉で答えようとがんばっていた。今大会では石川の公式会見が組まれなかったため、数人のアメリカ人記者がそれぞれ突撃取材にやってきた。石川は時折り、言葉に詰まったり、質問を少し取り違えたりしたが、現時点で通訳なしであれだけ答えられるのは立派だ。というより、自力で答えようとする遼くんの姿勢が見上げたものだと思う。発音が違っていようと、文法的に間違っていようと、そんなことは誰も気にしない。選手が自分の気持ちを自分の言葉で伝えようとすることに意義があり、その言葉は通訳などの第3者によって作られる美しい英語より、ずっとずっと美しい。


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Photo / 中島望 Nozomu Nakajima


優勝したヤン、初めてメジャーで予選通過を果たした石川。アジア人2人の英語を耳にしながら、肉声が持つパワーはやっぱり凄いなあなんてことをつくづく感じていた。

2009年08月13日

テレビの影響

いよいよ明日、全米プロが開幕する。最後の練習日となった今日の水曜日。新聞風に表現すれば、「選手たちが最終調整を行った」となるわけだが、その最終調整ののち、日本人選手たちの声を取材した。


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(今日は3人で練習ラウンド)
Photo / 平岡純 Jun Hiraoka


そんな中、ちょっぴり驚いたのは、石川遼の全米プロに対する元々のイメージの話。石川はマスターズで優勝することに夢を抱き、全米オープンや全英オープンの過去のチャンプや逸話などを、まあ、よくそんな古いことまで知っているなあと思うほど知っている。それは、今年、海外試合に出場したとき、取材をしていて驚かされていたのだが、今回の驚きは、その逆。たとえば私などは「全米プロといえば?」と問われたら、先日もこのコーナーで書いたように「ジョン・デーリーのシンデレラボーイデビュー」とか、過去の話がいくつか浮かんでくる。しかし、遼くんには、それが「ないんです。来る前は、全米プロと全米オープンがどう違うのかもわかってなくて……」。


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(全米プロに関する予備知識を手に入れようがなかった……なるほどねえ)
Photo / 平岡純 Jun Hiraoka


全米プロはメジャーなのに、なぜそれほど遼くんが知らなかったかといえば、それはテレビ中継の影響なのだ。正確にいえば、日本でテレビ中継がなさすぎたせいなのだ。


確かに、ここ数年、メジャーの中で全米プロだけは、日本での放送があまりにも少なかった。いや、テレビのみならず、新聞や雑誌などの紙媒体だって、全米プロの報道が手薄だったことは否めない。かつて、ゴルフ雑誌などは、ちょうどお盆に重なるから、印刷会社などもお盆休みになるし、自分たちもお盆休みだから、全米プロのレポートは要らないよなんて言っていた。


そんな中で育ってきた遼くんにしてみれば、報道がないもの、少ないものは、知りようがなかったということだ。「ジュニアのとき、僕らジュニアの間では、片山さんが全米プロで4位になったと聞いて、すごいなあと思ったんですけど、でも、どんなプレーをしていたのかとか、その映像は知らないんです」


しかし、今年の全米プロは、その石川遼効果によって、日本への報道が花盛り。もちろん映像も日本のテレビ局2社からお茶の間へ送られるし、ラジオ局もがんばっている。紙媒体も大会ウィーク前から詳細報道を続けている。だから、現在のジュニアたちは「ああ、すごい!石川遼が予選通過したよ!」なんて言いながら、その場面を映像として頭の中に焼き付けることができる。


そうやって、子供たちのモチベーションが上がることを考えると、遼くんの出現は日本のゴルフ界の将来未来にとって、とても意義深いと今更ながらに思う。


日本のジュニアたちが脳裏に焼きつけ、刻む映像――それが、遼くんのどんな姿になるのか。せっかくなら、予選通過して、決勝でがんばり……そんなシーンになってほしい。

2009年08月11日

ヘーゼルティンの記憶

全米プロの舞台、ヘーゼルティンにやってきた。ヘーゼルティンには02年大会のときも来たのだが、どうしてだか、私の頭の中にそのときのコースの印象や記憶があまり残っておらず、今回ここへ来る前も、「あれ?どんなコースだったっけ?」と一生懸命、記憶を呼び起こそうとした。だが、思い出されるのは、02年はリッチ・ビームとタイガー・ウッズが優勝争いしたことと、勝ったビームが18番グリーン上でいきなりビクトリーダンスを踊ったことばかり。湖のそばだったとか、そういうざっくりした記憶は残っているけれど、1ホール1ホールの詳細がまるで思い出せなかった。


あんまりこの仕事に向いてないのかななんて、ちょっと自己嫌悪気味だったのだが、今日、そんな不安をぬぐってくれる出来事があった。今日は石川遼と今田竜二が一緒に練習ラウンドしたのだが、ホールアウト後、今田に話を聞いたときだった。「ジョージア大学時代、このコースでNCAAの大会、出たんだよね」「はい」「そのときと比べたら、もちろんコースが長くなってるだろうけど、それ以外に違いは?」すると、今田は「風が強かったとか、難しいコースだったとか、とにかくグリーンに乗せて2パットでパーを拾わなきゃと思ったことは覚えているけど、それ以外はほとんど覚えてないんですよ」。


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Photo / Someone



あー、良かった。プロゴルファーでも、しかも大会をプレーしたことがあっても、案外、コースの詳細は覚えていないんだなあ。もちろん今田は当時はアマチュア学生だったわけだけど、そうだとしても、選手がそこまでコースを覚えていないということは、1つ1つのホールにものすごい特徴があんまりないということ。全体的に特徴はあっても、ホールごとにユニークさがさほどないということなのだろう。


そういえば、ある資料を読んでいたら、ヘーゼルティンは70年の全米オープンの際、2位になったデーブ・ヒルという選手に酷評され、大変な騒ぎになったそうだ。当時のことは、私はもちろん見たわけでもないのだけれど、なんでもヒルは、このコースはゴルフ場ではなくファーム(農場)にしたほうがいいと酷評し、ここに必要なのはコーンと牛だと言ってのけたそうだ。


そんな話を読むと、余計にヘーゼルティンって、そんな農場みたいなところだったっけと混乱してしまったわけだが、ヒルがすでに引退に近くなったころ、大幅改良され、私が知り始めたヘーゼルティンはすでにチャンピオンシップコースに姿を変えたあとなのだ。だから、私の印象が「ええ?農場??」となっても不思議はないということ。あー、少し安心できた。


タイガーは今日の月曜から、早朝ラウンドをこなし、やる気満々。3週連続出場で、しかも2連勝したその先でメジャーに臨むなんてことは、メジャー前週にオフを取る王者のルーティンを思えば、珍事だ。しかし、今季メジャー未勝利のタイガーにしてみれば、何が何でも勝ちたいのだろう。やれスランプだ、やれコーチ解任だと、次々に噂が流れるわけだから、とにかくメジャーで勝って「黙れ!」と言いたい。そんなところだと思う。


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Photo / Someone


さあ、どうなるか?今年は18ホールの中でいくつかのホールぐらいは、次にヘーゼルティンにくるときに思い出せるよう、記憶にしっかり焼き付けたいなと思う。

2009年08月09日

間もなく!

ああ、間もなく今季最後のメジャー、全米プロだ。すでに石川遼は現地入り。あの全英オープンでは、遼くんも一緒に回ったタイガー・ウッズも予選落ちだったけれど、2人ともその後に優勝してこの全米プロに臨むというところが、なんとも興味深い。興味深いというより、どうなるか楽しみでたまらない。


しかし、全米プロという大会名を聞いて私が必ず思い出すのは、やっぱりジョン・デーリーなのだ。91年の全米プロでシンデレラボーイになったあの衝撃は、たぶん私にとっては最大の衝撃だったと今でも思う。


そのデーリーが、全英で見かけたときは、なんだかずいぶん痩せていて心配になった。痩せたというより、老けたというか、げっそりしていたのだ。


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(全英で見かけたときのデーリー。痩せてる……)
Photo / 平岡純 Jun Hiraoka


その謎はすぐに解明された。デーリーは胃を縫い合わせて小さくする手術を受けていたのだ。なぜ?過食症への対策。あまりにも食べ過ぎてしまって、体重がどこまで増えてしまうため、そういう強硬手段に出たらしい。もちろんドクターの指導あってのことだが、本当にそれで良かったのかどうか。どうも不安だ。


先週のビュイックオープンでは、なんと「88」を叩いた。「手に感覚がない」と語ったデーリーは、さすがに「88」に自信を失い、引退をほのめかした。


しかし、過去チャンプの資格で、全米プロには出場する。やっぱりデーリーがいないと、全米プロがやってきたという気がしない。単純なデーリーの単純さをいいほうへ生かし、初日が良ければ「優勝を狙うぜ」という具合へ一気に自信回復してほしい。どんなに問題を起こしても、いつまでもアメリカ国民から愛されるデーリーは、ゴルフ界になくてはならない選手だと思うから。


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(がんばれ、ジョン!辞めないでね)
Photo / 平岡純 Jun Hiraoka


だから、今年の私の全米プロの楽しみは「がんばれ、ジョン!」「勝てよ、タイガー!」「予選通過してね、遼くん!」、そして、02年のヘーゼルティンで優勝し、ビクトリーダンスを踊ったリッチ・ビームに「もう1度、あのダンスをして!」。うーん、一番現実的なのは、どれだ?

2009年08月05日

Right time !

いやいや、この数日間、いやもっとか……この数週間、あまりにも目まぐるしいゴルフ界の動きに、少々私もアップアップ気味だ。藍ちゃん初優勝、続いて全英女子でメジャー優勝か、と来たら、日本では遼くん優勝、そして、アメリカではタイガー・ウッズがビュイックオープンで優勝し、あの全英オープン予選落ちから見事に復活。つい先日、「みんな復活しておくれ~」と書いたばっかりだったから、みんなが強さを発揮してくれるのは、私にとっても何よりうれしいこと。でも、まあ、どうしてこんなに全部がいっぺんに起こるの????? いや、もちろん不平不満を言ってるわけでは決してない。むしろ、うれしい激動なわけで、こういう不思議がゴルフ界にはときどき起こるから楽しい。


で、あれこれありすぎて何を書こうか迷ってしまうが、とりあえずタイガーの話。ビュイックオープンが今年で大会消滅とあって、大会側の人々にとってはエモーショナルな「最終回」だった。以前にも、スポンサー撤退による大会消滅となった「ランバー84」の「最終回」に立ち合ったことがあったのだが、その大会を自分たちの手でやってきた、支えてきた、愛してきたという想いを抱く運営サイドの人々にとって、その大会が消えてなくなることは想像以上に「別れがたき」ことなのだ。優勝者が決まり、表彰式が終わるころには、みんなが涙を流して別れを惜しみ合う。それほど大きな出来事なのだ。


わかりやすい例で言えば、何だろう?たとえば、卒業式の涙に、ちょっと似ている?もちろん事情は違うのだけれど、一緒にがんばってきた仲間たちとの決別、これからは顔を合わせて一緒に歩んでいくのではなく、それぞれがそれぞれの道を歩んでいくという淋しさ、そんな感情が込み上げるようだ。卒業式の場合は、これから歩む次なる道への期待や展望、将来があるが、大会消滅の場合は、次への期待がないに等しい。それが、卒業式との大きな違い。だから余計に、その涙に涙を誘われるのである。


今回のビュイックオープン。タイガーはこの大会が好きで、99年以来、欠場したのは2回だけ。今年は、これに出ると3週連続出場というスケジュールで全米プロに臨むことになり、そんな強行軍、今までメジャー前にやったことはなかったじゃないですかと、周囲からも言われたが、タイガーがあえてそうした背景には、やっぱりビュイックオープンへの想いがあったからだ。


タイガー優勝を望むファンは「ゴー、タイガー!」「You're the man.」なんて叫ぶのが常。だが、この大会では、「Thank you, Tiger!」が一番多かった。何に対しての「ありがとう」か?もちろん、「この大会の最終回に、あなたのような王者が来てくれて、本当にありがとう」だ。


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(勝つぞ!そんな意気込み)
Photo / 中島望 Nozomu Nakajima



さすがのタイガーもエモーショナルになっていた。自らの優勝争いとは別に、彼もまた「長年、大会を運営してくれて、応援してくれて、ありがとう」の意味を込めて、いつも以上にサービス精神を発揮していた。そもそも、優勝争いの真っただ中の最終日に、ラウンド途中でファンにボールを投げ入れるなんて行為をタイガーが見せたことは、私が知る限りでは1度もなかった。だが、タイガーは17番でも18番でもボールをスタンドに投げ入れた。「もう、2度と、ここに戻ってはこれないんだから、特別だよ」


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(強いタイガーもいいけど、優しいタイガーも好きだなあ)
Photo / 中島望 Nozomu Nakajima


そんな「特別」とともに、最終回を優勝で飾るという「特別」もやってのけたタイガー。王者はいつも「勝つべきときに照準を合わせ、そして勝つ」と言われる。勝つべきとき=right time=4大メジャー。それがゴルフ界の常識だ。しかし、今回だけは、right time=ビュイックオープン。本当に勝利を求められ、本当に勝利を望んだ場所で、きっちり勝った。勝つべきときに勝ったのだと、私はそう思い、うれしかった。タイガーのメジャー優勝を見るより、ビュイックオープン優勝を見たほうが感激したというのは、ちょいとおかしな話かもしれないが、ビュイックオープン消滅という悲しいニュースの中で、心をいやしてくれる温かいストーリーだった。

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