2009年08月05日
Right time !
いやいや、この数日間、いやもっとか……この数週間、あまりにも目まぐるしいゴルフ界の動きに、少々私もアップアップ気味だ。藍ちゃん初優勝、続いて全英女子でメジャー優勝か、と来たら、日本では遼くん優勝、そして、アメリカではタイガー・ウッズがビュイックオープンで優勝し、あの全英オープン予選落ちから見事に復活。つい先日、「みんな復活しておくれ~」と書いたばっかりだったから、みんなが強さを発揮してくれるのは、私にとっても何よりうれしいこと。でも、まあ、どうしてこんなに全部がいっぺんに起こるの????? いや、もちろん不平不満を言ってるわけでは決してない。むしろ、うれしい激動なわけで、こういう不思議がゴルフ界にはときどき起こるから楽しい。
で、あれこれありすぎて何を書こうか迷ってしまうが、とりあえずタイガーの話。ビュイックオープンが今年で大会消滅とあって、大会側の人々にとってはエモーショナルな「最終回」だった。以前にも、スポンサー撤退による大会消滅となった「ランバー84」の「最終回」に立ち合ったことがあったのだが、その大会を自分たちの手でやってきた、支えてきた、愛してきたという想いを抱く運営サイドの人々にとって、その大会が消えてなくなることは想像以上に「別れがたき」ことなのだ。優勝者が決まり、表彰式が終わるころには、みんなが涙を流して別れを惜しみ合う。それほど大きな出来事なのだ。
わかりやすい例で言えば、何だろう?たとえば、卒業式の涙に、ちょっと似ている?もちろん事情は違うのだけれど、一緒にがんばってきた仲間たちとの決別、これからは顔を合わせて一緒に歩んでいくのではなく、それぞれがそれぞれの道を歩んでいくという淋しさ、そんな感情が込み上げるようだ。卒業式の場合は、これから歩む次なる道への期待や展望、将来があるが、大会消滅の場合は、次への期待がないに等しい。それが、卒業式との大きな違い。だから余計に、その涙に涙を誘われるのである。
今回のビュイックオープン。タイガーはこの大会が好きで、99年以来、欠場したのは2回だけ。今年は、これに出ると3週連続出場というスケジュールで全米プロに臨むことになり、そんな強行軍、今までメジャー前にやったことはなかったじゃないですかと、周囲からも言われたが、タイガーがあえてそうした背景には、やっぱりビュイックオープンへの想いがあったからだ。
タイガー優勝を望むファンは「ゴー、タイガー!」「You're the man.」なんて叫ぶのが常。だが、この大会では、「Thank you, Tiger!」が一番多かった。何に対しての「ありがとう」か?もちろん、「この大会の最終回に、あなたのような王者が来てくれて、本当にありがとう」だ。

(勝つぞ!そんな意気込み)
Photo / 中島望 Nozomu Nakajima
さすがのタイガーもエモーショナルになっていた。自らの優勝争いとは別に、彼もまた「長年、大会を運営してくれて、応援してくれて、ありがとう」の意味を込めて、いつも以上にサービス精神を発揮していた。そもそも、優勝争いの真っただ中の最終日に、ラウンド途中でファンにボールを投げ入れるなんて行為をタイガーが見せたことは、私が知る限りでは1度もなかった。だが、タイガーは17番でも18番でもボールをスタンドに投げ入れた。「もう、2度と、ここに戻ってはこれないんだから、特別だよ」

(強いタイガーもいいけど、優しいタイガーも好きだなあ)
Photo / 中島望 Nozomu Nakajima
そんな「特別」とともに、最終回を優勝で飾るという「特別」もやってのけたタイガー。王者はいつも「勝つべきときに照準を合わせ、そして勝つ」と言われる。勝つべきとき=right time=4大メジャー。それがゴルフ界の常識だ。しかし、今回だけは、right time=ビュイックオープン。本当に勝利を求められ、本当に勝利を望んだ場所で、きっちり勝った。勝つべきときに勝ったのだと、私はそう思い、うれしかった。タイガーのメジャー優勝を見るより、ビュイックオープン優勝を見たほうが感激したというのは、ちょいとおかしな話かもしれないが、ビュイックオープン消滅という悲しいニュースの中で、心をいやしてくれる温かいストーリーだった。



