2009年09月28日
今、ツアー選手権最終日の朝。間もなく、10ミリオンをかけて、タイガー・ウッズとケニー・ペリーとの戦いが始まる。もちろん、優勝の可能性がある選手はこの2人以外にもいるわけだから、厳密な意味で2人の決戦や2人の一騎打ちではない。しかし、あの王者と49歳のペリーが最終組でプレーするというのは、なかなかの見ものである。

(熱射病上がりが好調の一因?)
写真/平岡純 Jun Hiraoka
ところで、ペリーは来季のセミ・リタイアを口にしたばかりだ。今年の開幕ごろには「通算20勝を目指す」と宣言し、今年は2勝を挙げて通算14勝。まだまだいけそうな気がするし、本人も自分の肉体に限界を感じているわけではないのだが、今年になって実母が白血病、実父が心臓病で倒れ、看病や介護で心が疲れてしまったようだ。「母が病気になってから、戦うモチベーションがなくなってしまった」。もともと、ゴルフより家族が第一と考えてきたペリーは、だからこそ若いころは子供たちの教育に熱心だった分、ゴルフに打ち込むエネルギーが少なかった。子供たちが成長して巣立ち、やっとゴルフオンリーの生活になった40歳代から開花。しかし、50歳目前の今、今度は両親の病気で半引退を決意……はかないなあと思う。
が、これから先のことはさておき、ペリーが昨日の3日目に大爆発できた背後には、こんな出来事があった。初日、ペリーは熱射病にかかり、猛烈な吐き気や脱水症状と戦いならプレーしていた。だから72を喫した。棄権も考えたそうだが、なんとか持ちこたえ、必死に大量の水とバナナとエナジーバーを摂取して2日目はなんとか回復。病み上がりでうまい具合に力が抜けたのが功を奏したように思う。
うまい具合に力が抜けた人は、もう1人いた。2日目に最下位まで後退したジェフ・オギルビーと、その夜、アトランタ市内の日本レストランでばったり出会った。いや、出会ったというより、私が座ったテーブルのすぐ近くに、すでにオギルビーが仲間2人と座っており、私が気付いたとき、彼はかなり泥酔状態だった。私とカメラマンが注文したオニギリが運ばれてきたとき、彼ら3人の目はオニギリに釘付け。「それ何?ライス?中に何か入っているの?フィッシュ?」と興味津々だった。「フィッシュ(シャケ)入りもあるけど、シーウィード(コンブ)とか、いろいろ中身のチョイスがあるんだよ」と教えると、3人口をそろえて「オーッ!」と感激。どうして、そんなことに感激するのだろうかと不思議に思えてしまった。

(二日酔いのほうが、いい?)
写真/平岡純 Jun Hiraoka
そして翌日の3日目。オギルビーはきっと二日酔いだったと思うのだが、なぜだか大爆発して64をマーク。そう、3日目に64のベストスコアをマークしたのは、単独首位に躍り出たペリーと、二日酔いのオギルビーの2人だけだった。
10ミリオンなんてボーナスがかかってくると、出場している30人はみんな力んでいるものだが、いい具合に力みが抜けたペリーとオギルビーは好スコアを出すことができた。いやはや何が幸いするかわからないなあ。
だが、力みがいい具合に抜けて好プレーを披露すべきは、今日の最終日だ。タイガーやペリーの力み具合は、今、どうだろう?その答えが、あと5時間後には出るはずだ。
2009年09月24日
明日から米PGAツアーのフェデックスカップ・プレーオフ最終戦、ツアー選手権が始まる。会場となるイーストレイクは球聖ボビー・ジョーンズが幼少期を過ごした場所だが、そのイーストライクがあるアトランタ一帯は今週、大雨にたたられ、開幕目前の今日水曜もコースはぬかぬか状態だ。タイガー・ウッズは今年の全米オープンのときのようにボールに泥がつくことを最も警戒している。「muddy(泥がついている)だったらコンサバティブに、クリーンだったらアグレッシブにいく」が今週のタイガーの目標だ。

(泥、泥、泥……でも、頭の中はドロドロではない?)
写真/平岡純 Jun Hiraoka
さて、このツアー選手権が終了したとき、フェデックスカップポイントで1位になった選手が10ミリオンのボーナスを獲得するわけだが、現在トップ5の全員が「優勝すれば10ミリオン」という立場にある。つまり、この5人にとっては、ウイニングパットにボーナスの10ミリオン(1000万ドル)と大会の優勝賞金135万ドルの両方がかかってくるわけで、最後の1打は「11.35ミリオンの価値」。
それほどのプレッシャーがかかるウイニングパットに直面したとき「あなたはどうする?」の質問を、よりによってPGAツアーのティム・フィンチェム会長にぶつけたアメリカ人記者のジョーク感覚には恐れ入ってしまったが、質問されたフィンチェム会長のジョーク感覚は、さらに1枚上手だった。「そのパット、どのぐらいの長さかな?」。すると、アメリカ人記者は「うーん、11.35フィートってことにしましょうか?」
記者会見で、こんなやり取りができるのは、まさにアメリカンな感覚あってこそだ。しかし、同じ質問に対するタイガーの答えは、ジョークなんかではなく、真面目そのものだった。「マネーのこと、タイトルのこと、何ひとつ考えない。インサイドロープで考えるべきことは、目の前のパットをどうやって沈めるか。それだけだ。あとは結果としてついてくる。お金やもろもろのことを考える時間は、そのあとたっぷりあるんだからね」

(ジョークも言うけど、今日は気まじめタイガーでした)
写真/平岡純 Jun Hiraoka
お手本的な答えだなあ。本当にお金のことをまったく考えずしてプレーできるのだろうかと、私のような凡人はどうしても思ってしまう。もしも自分が目の前のパットを沈めたら10億円、いや11億円以上のお金をもらえるなんて状況に直面したら、頭の中は左うちわで遊んで暮らしている自分の姿でいっぱいになってしまいそうだが……王者の頭の中は、まるで違うのだろうか。しかし、もしもタイガーが11.35ミリオンがかかるウイニングパットに直面して、それを外す結果になったら、タイガーも誘惑に負けたという証拠になるのだろうか?????ああ、早く見てみたい。
2009年09月22日
サムソン選手権最終日は考えさせられた。終盤はナ・エン・チョイと宮里藍の一騎打ちの様相。どう見ても、勢いは藍ちゃんのほうに感じられた。

写真/中島望 Nozomu Nakajima
そりゃそうだろう。チョイは独走に近い態勢で最終日を迎え、前半は一時は7打差をつけて勢いづいていた。しかし、9番のボギーからはガタガタと崩れ、逆に藍ちゃんは後半から勢いづき……こうなると精神的には追われる立場のほうが追いかける立場より苦しいものだ。チョイにしてみれば、「あんなにリードしていた私が負けてしまうのかしら……」と思ってしまい、そんなことがあってなるものかと焦る。一方、藍ちゃんのほうは「あんなに差がついていたんだから、逆転勝ちできたら、こりゃすごいぞ」という具合に、極端にいえば「儲けもの」ぐらいに思えるわけだ。
後半の藍ちゃんは攻めに攻めていた。堂々たる仕草、堂々たるショット&パット、すべてが自信に満ちていた。やっぱり初優勝で得た自信は大きい。その後のトップ10続きで得ている自信も大きい。何ひとつ、失敗を恐れることなくプレーできていることが伝わってきた。
だが、あの18番の第2打の池ポチャ。藍ちゃん自身は「後悔はない」。勢いのまま、勝利を狙っていった結果なのだから後悔はない。そうだろうなあ、きっと。しかし、AP通信の記事は、藍ちゃんの第2打を「ミスファイア(misfire)」と伝えた。つまり、暴走?攻撃による自滅?うーん、まあ、そうとも言えなくはないなあ。結果論だが、もしも18番で安全に3つで乗せてパーで上がっていれば、チョイが18番でバーディを取ってもプレーオフだったわけだから。
しかし、あれだけ勢いに乗っていたところで、「安全にプレーオフを狙う」なんてこと、勝負師にはできないだろう。そりゃあクールに分析すれば、最悪でもタイを狙うべきだったのかもしれないが、それでプレーオフになって、それで負けたら、藍ちゃんのコメントは「後悔してます」になってしまうだろうから。まあ、「勢い負け」と言われてしまうのなら、それはそれ。彼女自身に後悔がないのなら、それでいいと思う。
一方、優勝したチョイは、米ツアー初優勝にも関わらず、「私は本当にメンタル面が弱かった」と何度も口にしていた。「まるで今日プロになった選手みたいだった」「ものすごく緊張していた」。確かに、優勝の二文字が見えてきた途端、あれだけ崩れたのはメンタル面によるものだろう。ちょっとしたきっかけで崩れ始め、その流れをなかなか変えられない……確かに、新人選手の優勝争いでよく見かける光景だ。
けれど、チョイの凄さは、それほどの緊張の中でも、どうにかこうにかパットをよく入れていたこと。入れごろ外しごろのパーパットを何度決めたことか。あれをすべてボギーにしていたら、とっくの昔に藍ちゃんにもっていかれていただろう。そして何よりすごかったのは、18番のバーディパットを沈めたこと。

写真/中島望 Nozomu Nakajima
勝利へ向かう勢いは、誰がどう見ても藍ちゃんに軍配が上がっていたけれど、終盤に劣勢に陥りながらも、絶対に外してはいけないパットを外さなかったチョイ。それが彼女に辛勝をもたらしたのだと思う。藍ちゃん、残念。チョイ、初優勝、おめでとう。
2009年09月18日
今週、米LPGAはサンディエゴのトーリーパインズでサムソン選手権が行われている。日本人で出場しているのはノリノリの宮里藍ただ1人。少数精鋭の顔ぶれの中には、先日快勝したばかりの申智愛、今季はどうも調子が上がらないロレーナ・オチョアらがいる。とりあえず藍ちゃんは5位発進。エビアン・マスターズ優勝以後、ずっと好調ぶりを維持している藍ちゃんには、なんとかこの絶好調の波が途絶えないうちに2勝目を挙げてほしいものだ。

写真/中島望 Nozomu Nakajima
というのも、米LPGAの来季は、いやいや、来季どころか未来は、やっぱり雲行きが怪しすぎるからだ。キャロリン・ビーベンス会長を辞任に追い込んだものの、彼女とスポンサー企業たちの間にできてしまった確執はまだまだ尾を引いており、来季のスポンサー探しは今もなお難航中だ。
来季は一体、何試合が開催できるのだろう。すでに米ツアー出場中の韓国人選手10数名が来季は日本ツアーに出場したいという意志を大っぴらに口にしているという話を韓国人関係者から聞いた。そうだろうなあ。賞金あってのツアーだし、賞金を稼いでナンボのプロゴルファーだ。とりわけアメリカに渡ってきた韓国人選手は、その時点で両親が仕事を辞めてアメリカに移住。プロゴルファーになった娘を核にして一家が生きていくという道を選択しているケースが多い。となると、プロゴルファーである娘は一家全員の生活の要、大黒柱なわけだから、少しでも多く稼げる場が他にあるとなれば、そりゃあ日本へでもどこへでも移るだろう。
その韓国人関係者らとの会話は、こんな具合だった。
韓「来年は韓国人がごっそり日本へ行くよ」
私「なるほどねえ、もはやアメリカより日本のほうが女子ツアーの賞金は高いから」
韓「でも、韓国人選手が日本で毎試合、優勝や上位を占めると、どうなる?」
私「そうなったら日本のファンがつまらないと感じ始め、そうやってファン離れが進んでしまったら、次はスポンサー離れになるかな」
韓「そうだよねえ。今のアメリカがまさにその状況。ビーベンスのワンマンぶりがスポンサー離れに拍車をかけちゃったんだけど」
私「まあ、そうですよねえ。で、日本ツアーのスポンサー離れがもしも進んで試合数や賞金額が下がったら、今度は日本ツアー出場選手が、どこかへ移っていくことになるでしょ?」
韓「そのころには、きっと中国あたりのツアーが繁栄しているかも?」
私「アメリカの賞金が上がっていたら、またアメリカに戻るかも?」
韓国「結局、歴史は繰り返すってことか……」
私「いやあ、流れは繰り返すかもしれないけど、顔ぶれは変わるでしょ。だって、そこまで流れが戻るころには、現在の選手はオバサンになっているはずだから」
韓国「ああ、そうか」
そりゃそうだ。ビーベンス会長に退任要求を叩きつけた中にはオチョアもいたけれど、女子ゴルフの表舞台がアメリカから日本へ、日本からどこかへ、そして再びアメリカへという流れになったとしても、そのころにはオチョアは引退しているだろうから。

写真/中島望 Nozomu Nakajima
オチョア……今季の不調は結婚した幸せボケだろうか。まあ、そうだとしても、それを選んだのだから、彼女が不幸せでないことだけは確か。だから、それはそれでいい。藍ちゃんは、とにかく今が「勝ちどき」。勝てそうな流れにあるときは、その勢いに乗って連勝しちゃってほしい。悲しいかな、そういう流れというものは必ずどこかで変わるものだから、だから今のうちに、もう1勝!そうすれば、この先、米女子ツアーに何が起ころうとも、悔いることはないだろうから……老婆心から、そう思う。
2009年09月16日
今週、米PGAツアーはオフウィーク。来週開催されるフェデックスカップ最終戦ツアー選手権に備えて、パワーを充電している選手たちはドキドキわくわくしているかもしれないが、逆にトップ30に入り損ねた選手は悔しさとやるせなさを一体どうやってやり過ごそうとしているのか。そう、今週、選手たちの胸の中は悲喜こもごものはずだ。
うれしさでいっぱいなのは、ヒース・スローカムだろう。なんせ彼はプレーオフシリーズ開幕前はフェデックスカップランクが124位だったのだ。つまり第1戦のバークレーズにはぎりぎりで出場した。そして優勝してしまったのである。波に乗るというのは恐ろしいほどの力を発揮するようで、第3戦を終えた今、彼はトップ5に位置している。
ちなみに、トップ5の顔ぶれは1位タイガー・ウッズ、2位スティーブ・ストリッカー、3位ジム・フューリック、4位ザック・ジョンソン、そして5位がスローカム。ツアー選手権でこの誰が優勝したとしても、その優勝者が10ミリオンのボーナスを手に入れることになる。
スローカムとは対照的に悔しさを噛みしめる結果になったのは、たとえば35位に終わったアンソニー・キム、38位に終わったセルジオ・ガルシア、あるいは42位まで落ちたカミロ・ビジェガス。どうも今年は期待の若手が最終的には振るわない結果になった。
スタート時点でトップ30にいたのに、第3戦終了時点では31位になり、ツアー選手権出場を逃したイアン・ポールターの悔しさはひとしおだろう。彼はどうもぎりぎりで何かを逃す星の下に生まれてしまったようで、メジャータイトルもそういうパターンが多い。そんなとき悔し紛れに言葉を発すると、すぐさまターゲットにされ、また毒舌を吐いたと言われがちだから気の毒だ。そのせいか、今回は沈黙を守っているようで、今のところ、ポールター発言は取りざたされていない。

(イアン・ポールターは心の中で悔しさを煮えたぎらせている!?)
写真/中島望 Nozomu Nakajima
逆に、発言が注目されたのはローリー・サバティーニだ。彼もまた毒舌ぶりがよくやり玉に挙げられる選手だ。そのサバティーニは第3戦終了時点でランク34位になり、ツアー選手権を逃した。が、彼はその直前、プレジデンツカップ出場権も逃したばかりだった。そもそもサバティーニは、全米プロ開幕時には国際チーム入りが自動的に決まるトップ10にいた。しかし、全米プロで優勝したY.E.ヤンがトップ10にジャンプインしたことでサバティーニは11位へ押し出された。最後の望みは国際チームのキャプテン、グレッグ・ノーマンからキャプテン推薦を受けることだったが、ご存じのとおり、ノーマンが指名したのは石川遼とアダム・スコット。こうしてサバティーニはプレジデンツカップ出場を逃し、気を取り直してツアー選手権進出を目指したものの、それもまた逃してしまった。
気の毒だなあ……。サバティーニが余計に気の毒に思えるもう1つの理由は、プレジデンツカップの米国チームキャプテン、フレッド・カプルスが選んだのはランク11位と13位の選手だったことだ。カプルス同様、ノーマンが11位の選手を選んでくれれば、その11位はイコール、サバティーニだったわけだ。
そんな状況をサバティーニ本人はどんな言葉に表すのだろうと思っていたら、彼はこう言った。
Unfortunately, there was no Freddie Couples in Greg Norman.
面白い!直訳すると、「残念ながら、グレッグ・ノーマンにはフレディ・カプルス(的な考え方や要素は)無かった」となる。この表現、いろんなところで使えそう。「誰々には誰々のような偉大さは(やっぱり)無かった」とか、「誰々が誰々のマネをするなんて百年早かった」とか、まあそんなふうに使える言い回しである。これって政治の世界なんかに応用すると、きわめて痛快なフレーズになりそうだ。鳩山政権の行方はいかに?みなさんも、この言い回しで、痛快な風刺フレーズをクリエイトしてみてはいかが?
(悔しいよお~という雰囲気が溢れだしているサバちゃん)
写真/平岡純 Jun Hiraoka
投稿者 : 22:59|コメント( 4 )
2009年09月09日
ああ、やっぱり。プレジデンツカップに石川遼が選ばれた。国際チームのキャプテン、グレッグ・ノーマンが選んだキャプテンズ・ピックは、石川遼とアダム・スコット。若手2人というのは、意外な選択だった。

(こんな真剣な顔が、今度はサンフランシスコで見られる!)
写真/平岡純
アダム・スコットは、かなり意外だった。今季は成績も悪く、まるで勢いがない。一方、石川は今季3勝目を挙げたばかりと勢いは絶好調。そう意味では、石川を選んだのは頷けるのだが、スコットを選んだのは「?」のほうが大きい。
そこには、やっぱり同じオージーどうしの情もあるのだろう。情のみならず、ノーマンの立場もあるのだろう。まあ、それはそれで理解できるし、キャプテンズピックというのは、キャプテン独自の考えで決めていいとされているのだから、いやいや、独自で決めるべきものなのだから、誰にも文句は言えないのである。
不調の選手がライダーカップやプレジデンツカップにキャプテンズ・ピックで選ばれ、その選手が思わぬ大活躍を見せることだってあるのだから、スコットがこれを契機に好調に転じれば、ノーマンの顔も立つというものだろう。
逆に、石川はそうとう気を引き締めてかからなければならない。キャプテンズ・ピックでチーム入りした選手は、ランキングでチーム入りした選手より、厳しい見方がされる。ちょっと負ければ「キャプテンズ・ピックが悪かったんだ」「やっぱりランクは下だったからな」という具合に批判の的になる。だから、石川は思いきり気をひきしめてかからなければ……うーん、プレッシャーがかかるだろうなあ、遼くん。

(全米プロで見せたようなミラクルをプレジデンツカップでも披露できたらいいなあ)
写真/平岡純
だが、さらに逆を言えば、キャプテンズ・ピックの選手は他選手より最初から注目度が高いとも言える。たとえば、大会名誉会長のオバマ大統領などは、チームメンバー全員の名前と顔を覚えることができないとしても、キャプテンズ・ピックで最後の最後にインして、しかも最年少17歳(もうすぐ18歳だけれど)石川のことは必ずや気にかけるはずだ。
となると、そうか、遼くんはオバマ大統領とも言葉を交わす機会に恵まれるだろう。こりゃ、すごいことだ。海外の舞台に立つたびに、すごい経験を着実に重ねている石川。憧れのタイガー・ウッズと握手を交わし、アーノルド・パーマーと会話を持った上でフォトセッションに収まり、次はタイガーと同組で回り……そして今度はオバマ大統領とご対面。
石川には石川なりの努力と才能があるからこそ、世界に出ることができているのは間違いないのだが、そういう経験ができるチャンスに恵まれ、しかも今年1年のうちに続々とチャンス到来という環境下にあることは、ものすごく幸せなことだなあと思う限りだ。ともあれ、遼くん、がんばってね。
2009年09月07日
アメリカ時間の9月8日、日本時間ではみなさんが9日の朝に目を覚ますころには、プレジデンツカップのキャプテンズ・ピック各2名ずつが決まっているはずだ。日本の注目は、言うまでもなく石川遼が選ばれるかどうか。選ぶのは国際チームキャプテンのグレッグ・ノーマンだ。

(キャプテンのノーマン。若いころは「我が強い」ことで有名だった!?)
写真/平岡純
どうだろうなあ。米メディアの見方はということ、ポイントランクに従って順当に11位、12位のローリー・サバティーニとジーブ・ミルカ・シンが有力と考えているようだ。サバティーニは元々はランクインできるはずのトップ10に入っていたのだが、全米プロで優勝したY.E.ヤンがジャンプインしたため、ぎりぎりで押し出されてしまった。それゆえ、実力から言ってもサバティーニはきっと入るだろうという見方が強い。そして、シンはというと、穏やかな人柄がチーム戦に向いているであろうこと、それと、ビジェイ・シンとペアにするとナイスコンビになりそうなこと等々が有力視されている理由のようだ。
となると、石川はどうなる?もちろん、石川も候補の中に含まれている。が、米メディアが「有力候補」に入れていないのは、おそらく石川の世界の舞台での経験が他候補と比べればまだまだ少ないという事実を考慮してのことだ。今年、米ツアー3試合とメジャー3試合に出たとはいえ、石川の海外経験はそれだけしかないわけだから、それで国際チームに選んでいいのかどうか。そこがノーマンにとっても悩ましいところだろう。
さて、私の予想。7割ぐらいの確率で石川は「選ばれる」ように思う。最大の理由は、もちろんフジサンケイ・クラシックで今季3勝目を挙げたこと。プレジデンツカップは10月初旬と目前に迫っているため、とにかく「たった今」好調な選手であることは、キャプテンズピックの絶対条件だ。
さらなる理由。女子のソルハイムカップが先日行われ、米国チームにキャプテンズピックで入ったミッシェル・ウィーが大活躍だった。あのとき、もう1人のピックは40歳代のジュリー・インクスター。つまり、年長者と若手が1人ずつ選ばれ、それが非常にうまく作用していた。ノーマンも、このあたりの現象は必ずや参考にすると思う。
だからと言って、ノーマンが石川を選んだ場合、同時に選びそうな年長者候補は、別段、思い当たらないのだが、非常に若い選手を1人入れることで、その若手をチーム全体がサポートしながら、一方でその若手の「若さ」をもらおうという考え方は、作戦としては大いに成り立つ。そう考えると、石川は有力候補に思えてくる。
もっと理由を挙げるなら、あとは「ビハインド・ザ・シーン」、つまり裏事情の話になるだろう。プレジデンツカップに対する注目度を世界的に向上させ、単なる興味関心の喚起にとどまらず、具体的にテレビ中継や露出を増やすというのは、興業である限り、不可欠だ。石川を選ぶことで、必ずや「付随」してくる日本メディアのカバー力、露出力、そしてジャパンマネー。これらは、キャプテン・ノーマンの戦略戦術を超越したところで、大いなる魅力となる。そうなると、ノーマンの決断の直前に、どこぞから「石川を選んだら、どうかな?」という「声」がきっと聞こえてくるはずなのだ。さらに、ノーマンは名選手であったと同時に、ビジネスマンとしてもやり手だ。彼の頭の中には常に「ビジネス」が存在しているはずだ。

(「ホワイトシャーク」ノーマンは「ハニカミ王子」石川を選ぶか!?)
写真/平岡純
そんなこんなの理由で、私は石川が「選ばれる」と予想しているが、さて、どうなることか。今ごろ、ノーマンは眠れぬ夜を送っていることだろう。だが、悩める夜も間もなく終わる。ミスター・ノーマン、いざ、ご決断を!
2009年09月05日
人の口に戸は建てられないなんて言葉があるけれど、噂というものは本当に怖いと、つくづく思う。なぜって、今頃になって、全米プロでY.E.ヤンに敗北したタイガーが「ヤンの勝利を讃えなかった。スポーツマンらしからぬ態度だった」なんて噂が米ゴルフ界の「どこぞ」で蔓延しているのだから……。
あのとき、72ホール目でヤンがバーディパットを沈めたとき、タイガーはまだ自分のパットを残していた。ヤンが「精一杯のタイガーの真似だった」と言ったフィストパンプ風ガッツポーズを1度2度と取っていたあのとき、タイガーは自分のボールを見つめるふりをしながら視線を落とし、下を向いていた。
そりゃあ、悔しかっただろうと思う。しかし、すべてが終了した瞬間、タイガーは潔く帽子を取り、ニコッと笑顔を見せながらヤンに握手を求めていった。自分からヤンににじり寄り、彼の勝利を讃えていた。その様子は今でも私の脳裏に焼き付いている。
それなのに、そんな噂が、一体どこからどうやって沸きだし、広まったのだろう。だいたい、広まるほうがおかしいではないか?だって、最後のシーンを見ていた人なら、そんな噂を信じるはずがないのだから。ああ、そうか。見ていなかった人ももちろんいるわけで、見ていなかった人が憶測で作り話を口にして、見ていなかった人がそれを聞いて信じてしまい、そうやって次々に伝言ゲームのように広まっていったのだろうか。
なんとも下らない話だが、噂は実在するから厄介だ。さすがにこんな下らない話に対する取材をタイガー本人にぶつける身の程知らずの米メディアはいないのだが、「だったら、キャディのスティーブに聞いてみよう」ってことになったらしい。そのやり取りが米ゴルフ雑誌に掲載された。

(キャディのスティーブ・ウイリアムス。タイガーのキャディになる前はシニアのレイ・フロイドのバッグを担いでいた)
写真/中島望 Nozomu Nakajima
ほんの一部を紹介すると……
Q:タイガーのスポーツマンシップが問われているけど。ヤンを祝福しなかったっていう……
スティーブ:その話、一体どこから出てきたのかオレにはわからない。ツアーの誰に聞いたって、タイガーはすばらしいスポーツマンシップの持ち主だと答えるはずだ。実際、あのときタイガーはちゃんとキャップオフして(帽子を取って)、ヤンと握手をした。もちろんオレだって、そうしたよ。
そうだよねえ、その通り。結局、スーパースターは、とかく「面白おかしい話」のネタにされてしまうと思うしかないのだろうか。辛いね、タイガー。もちろん、スティーブも。
ところで、スティーブは、そんな大変な職業をいつまで続けるつもりなのかというと、タイガーの目標がジャック・ニクラスのメジャー18勝を抜くことであるように、スティーブもその日を一緒に迎えることが夢なのだそうだ。「タイガーのメジャー19勝目に立ち会うことが今のオレの夢。その後?さあ、どうするかなあ。そりゃ、わからないなあ」

(コースでは密な関係。しかしコース外では食事もなにもかも別行動)
写真/中島望 Nozomu Nakajima
私の予想。タイガーは19勝目を達成したら引退して政治の道へ、つまりは大統領への道へ歩み行くように思う。そして、スティーブは、タイガーのキャディ歴を生かしてテレビ中継のスーパー解説者になるのが1つの選択。そして、もう1つは、政治家タイガーの最も信頼しうる秘書になる……どうだろう、これ?
2009年09月03日
米ツアーの今週はプレーオフ第2戦。日本人で出場しているのは今田竜二だけだ。とはいえ、その今田も前週の第1戦終了後のフェデックスカップランクが99位だから、「100位まで出場できる」という第2戦の出場資格を文字通り、ぎりぎりでクリアした身。しかし、ここで頑張れば、第3戦にも出られる可能性はあるし、さらにがんばれば最終戦にも出られる可能性がある。
今季、今田の成績は前年と比べれば不調だ。トップ10になかなか入れず苦戦続き。その原因は主に2つ。1つは、夢のマスターズ出場を果たして気が抜けた感じになってしまったこと。そしてもう1つは、マスターズ以後、しばらくしてから取り組み始めたスイングチェンジ。
まあ、チェンジと言っても、ボールの捉え方がまったくわからなくなるような大幅チェンジではないから、一見、チェンジしているかどうかはわかりにくい。しかし彼は明らかに下半身主体のダウンスイングへ改造しようと努力し続けており、そのきっかけとなったのは、全英オープンでのビジェイ・シンとの練習ラウンドだった。ビジェイの一言アドバイスを聞き入れた今田。以後、ずっと「教え」を守り、取り組んでいる。
そう言えば、全米プロでも一緒に練習ラウンドをしたシンと今田を見て、「あの2人は仲良しなんですか?」と日本の記者たちに尋ねられた。そのとおり、仲良しなのだが、まあ、シンという選手は今田に限らず、米ツアーの外国人選手(つまりノンアメリカンの選手)全員の「お兄さん」的存在とも言える。かつてシンが米ツアーに来たころは、右も左もわからず、かと言って、そんなシンに小さなことの1つ1つを教えてくれる外国人選手の先輩もいなかったのだろう。だから、自分が体験した苦労や孤独感を、現代の若手外国人選手には味わわせたくないという思いがあるのだろう。シンは顔だけ見ていると怖い感じがするかもしれないが、実は心優しいヤツなのだ。

(バナナを食べるシン。なんか、ファンキーな感じがしませんか、この写真?)
Photo / 平岡純 Jun Hiraoka
そのシンが、20年以上もお世話になったマネジメント会社のIMGから離れ、新会社と契約することが発表された。その新会社というのは、かつてのIMGのマネージャーが独立してシンとともに創ったマネジメント会社のようだ。
うーん、複雑だなあ。近年、ずっとシンの世話をしてきたIMGのマネージャーは、とってもいい人で、私などは、あのマネージャーから離れるなんて本気だろうかと、どうしても思ってしまうのだ。しかし、時代が変われば、もろもろの事情も変わるのだろう。事情が変われば、人の心も変わるし、考え方も変わる。新しい環境というものは、それを作る前は「大丈夫かな?」「うまくいくかな?」と不安も多いものだが、蓋をあけてみると案外、「案ずるより産むがやすしだった」という結果も得られる。シンの場合も、そういう結果になってくれるのだとしたら、新しいチャレンジもいいことなのかもしれない。
新しいモノやコトが定着するまでには、どうしたって時間がかかる。米ツアーのプレーオフだって、今年が実施3回目になるけれど、毎年毎年、システム上の不都合が指摘され、「失敗だ!」と批判され、改良を繰り返している。今年も昨年の失敗を踏まえ、さらなる改良を行った上で実施しているが、今季5勝でフェデックスカップランク1位という立場でプレーオフに突入したタイガー・ウッズが、たとえプレーオフ4試合のうちの第1戦から第3戦までを連勝したとしても、最終戦が終わるまでタイガーのフェデックスカップチャンプは決まらないというのだから、これは、よーく考えてみると、かなりおかしい。なぜって、そんなタイガーでもチャンプの座が決まらないのだから、その他の選手がチャンプになるのは奇跡以上のことでも起こらない限り不可能に近いということ?????
たぶん、今年の末から来年にかけて、フェデックスカップは再検討を迫られるだろう。それでも米ツアーは改良し続け、きっと来年もプレーオフシステムをやめないと思う。新しいシステムが完全に軌道に乗るまでには長い歳月が必要なのだ。だから、負けるな、米ツアー!こうなったら意地かな?